プロレス想い出回想録・さよならの友よ①哀しみと奇跡の写真
哀しみと奇跡の写真
人間の生涯は決して短いものではないし、永遠でもない。
お互いに若かったあの頃から、時代が変わり、年齢重ね、それぞれの人生の節目を迎え、それはこれからも続いていくと思っていた。
しかし、別れはある日突然訪れる。
昨年は、父、叔父、母の順でいなくなり、今年は大切な友人がひとり旅立った。
当然、その度に悲しみに包まれていると思われるかもしれない。
涙が出ない理由
だが、20数年前から心を病んでしまった私は、ストレートに哀しみを感じることができないでいる。
だから、実の両親が亡くなって1年過ぎても全く泣けずにいる。悲しみすら感じていない。
いや、悲しみは感じているはずなのだが、自分でそれがわからないのだ。
その代わり、身体の痛みや体調不良、睡眠障害といった形で、ダメージが出てくる。 それが一時的なものではなく、何年も何十年も続いていくのだ。
だから発病して20数年、泣く事ができないかわりに、身体のあちこちが不調に悩まされたり、痛みに襲われたりしてきた。
今回、こうした文章を書く事で少しでも負担を軽くできれば、という気持ちがあるのと、私の友人にこんな人がいたのだ、という記録を残しておきたくて、少しずつ書き進めていくつもりだ。
運命の出会い
5月に亡くなった友人にはペンネームがあったので、ここから先は「メディコ」さんと呼ぶ事にする。
メディコさんとは1999年に出会ってから、2026年4月までずっとプロレスを共に観戦してきた、なくてはならない仲間であり、友人であった。
出会ったきっかけはお互いが所属している週刊プロレスの投稿常連会「プレッシャー」というサークルで、入会は私の方がいくらか早かった。
ただ「プレッシャー」には、メディコさんたちが入ってくるまでは、中国地区に会員が私以外一人もいなかった。
そんなわけで、長らく私は中国地区唯一の会員だったため、SNSもない時代では、文通か電話しか他の会員とは交流の手段がなかった。
そんな会員不毛地域に新しい会員が入ってくるという。しかも年齢は10歳上。 私と当時リアルに交流があった会員は、だいたい歳下だった。
そこへきて、いきなり歳上の方が入ってくるという戸惑いは今でもハッキリ覚えている。

今考えるとメディコさんには、大変失礼な話ではあるし、そもそも私はこの時点で接客業10年以上の経験者である。
ただ、仕事だと思えば苦手意識も何もないのだが、そうでないと元来ある対人に関する苦手意識が表に出てきてしまう。
それはここから30年過ぎた現在でもまだ大なり小なり残っているのだから、人間の根本はなかなか変わりようがないのだなと思う。
下関での初対面
そうこうしているうちに、メディコさんと初めて対面する日がきた。
それがJWP「ROLL OVER」第3戦1999年3月17日、山口・海峡メッセ下関大会だった。
この時分は、女子プロレスに限っては、九州の会員さんが下関までやってくるようになってきており、1対1で対面しないという事はわかっていたので、ちょっと安心していた。
海峡メッセ展示見本市市場の前には広いフロアがあり、座る場所も確保されていた。
そこを目印にして集まろうという話になっており、試合後集合していた我々に一人の男性が声をかけてきた。
その人こそがメディコさんだった。
話してみると、とても感じがよくて、しかも大のプロレスファンだという事がわかって、たちまち私達は打ち解ける事ができた。
奇跡の一枚
たまたまだと思うんだが、この時私は使い捨てカメラを所持しており、多分通りすがりの誰かに頼んで写真を撮影していただいた。

今みたいにスマホやデジカメが当たり前にあるわけではない時代に、はじめて会えた瞬間を写真に残せていた事は奇跡ではないだろうか。
この写真を見つけたのは単なる偶然であり、しかもメディコさんが亡くなるほんの少し前だったので、間に合って本当に良かったと思う。
メディコさんからは「ありがとうございます。写真懐かしい。みんな若い!」と返信をいただき、これが最後のやり取りになってしまった。
メディコさんとの出会いと別れを繋いだ一枚の写真。
それがとてつもなく貴重なものになるとは、あの時は想像もしていなかった。
今となっては写真の中でしか会えない友人の笑顔をみながら、色んな記憶が頭の中を駆け巡っているのである。

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