[プロレス観戦記]『GAMSHARA MANIA’2017』(2017年10月1日(日)小倉北体育館)

イントロダクション

がむしゃら三度目の小倉北大会。通常「MANIA」は一年の掉尾を飾る大ビッグマッチになるはずなのだが、今年は9月の宇部大会と12月のチャリティー大会という二つの大きな大会に挟まれた結果、私的にはいつものようなビッグマッチ感が感じられずにいた。

がむしゃらプロレスは、毎年MANIAが終わるといわゆるイベント試合だけになるのが通例なだけにMANIAの前後にひとつずつ大会があるというのは過去にも例がない。それだけに今大会の立ち位置は極めて難しかったと思う。

とはいえ、小倉北が最後のビッグマッチになったのは2009年だけで、前回の2012年は春の開催だったので、箱がでかい=年末の大会になるとは限らないのだが、それでも小倉北という場所は特別な位置にある会場であるだけに、一年の総決算になることは間違いない。

以前の2大会がともに長時間になった反省からか、14時開場の15時試合開始。撤収のことを考えて?床にはブルーシートを敷かず、土禁とした。席は一部二階席を解放したスタイル。正面は入場ゲート側になっていた。

オープニング

前説は福岡よしもとのスクラップスが担当。そのあと運営がリングインしていくと、ドン・タッカーの生歌に乗ってドリームチューバ―が登場。各ユニットに難癖つけはじめるとそれぞれのユニットごとに登場。尾原に挑む野本、SMITHの挑戦を受ける鉄生がそれぞれアピールして大会はスタ―トした。

▼オープニング6人タッグマッチ(30分1本勝負)

ダイナマイト・カドワキ & ALLマイティ井上 & ×サムソン澤田 vs BIG-T & MIKIHISA & 〇豪右衛門
(14分23秒)

前タッグチャンピオンに、BIG-Tを加えたgWoはある意味出直し組。反対側にタッグのオーソリティである井上同盟がいる意味は相当でかい。しかもその中にいるサムソン澤田は、BIG-Tより先にタッグタイトルにも挑戦している。

そのあたりを考えると、gWoが我先に手柄を取りにいくのか、はたまたチームとしての完成度を高めていくのか、で試合内容はかなり変わってくる。澤田が簡単に狙えるような新人でもないからだ。

この試合は6人タッグでありながら、豪右衛門&MIKIHISAと井上同盟がいたことで非常に整理された試合になっていたと思う。新日本でもそうだが、タッグのオーソリティが混ざった多人数タッグと、そうでない多人数タッグとでは、試合のクオリティにかなり差が出る。タッグ屋がいると多人数になっても試合の流れがスムーズになる。もっとも第一試合ということを考えるとやや長かったかもしれないが、これは手が合う分致し方ないと私は思っている。

特徴的なのは、サムソン澤田が負けん気の強さで豪右衛門に真っ向勝負を挑んでいたこと。投げ技とチョップで果敢に挑んでいく姿は一皮むけた印象を私はうけた。このあたりは井上同盟がバックについている安心感もあったのかなと私は想像している。

▼団体対抗戦タッグマッチ(30分1本勝負)

②KOZZY & 〇グレートカグラ vs Barong & ×C4(9分33秒)

松江だんだんプロレス対がむしゃらプロレスという側面と、gWo対LCRというユニット対抗戦という二つの側面が見られるカード。やはり初登場のKOZZYがどんな選手なのかが気になるところである。

強いてLCRにウィークポイントはC4のキャリア不足くらいか。それもBarongがカバーできるだろうから、やはりキーマンはKOZZYということになるだろう。

出てきたKOZZYは果たしてマッチョタイプの体格を誇る選手。しかし、驚くべきはその身体能力の高さで、破壊力のある蹴りは見応え充分。パワーでは抜きん出ているC4がたじろぐ場面などなかなかお目にはかかれない。

とはいっても試合のポイントは悪のインサイドワークの差になるかなと思ってみていた。マスクなんで感情までははっきりわからないカグラとBarongだが、だんだんチームは分裂しそうでそうではないチームワークで、LCRをけむに巻いてきた。

ここぞという時に暗躍するカグラはやはり悪どさにかけては一枚上手だったか?意外と穴がなさそうなLCRを見事に分断して最後はキャリアにものをいわせたカグラがC4を仕留めて試合終了。

気になったのはやはり鉄壁と思われたLCRにわずかながらでもほころびが見えたことで、そこを見逃さずに畳みかけたカグラの方が一枚上手だたっということかもしれない。

▼がむプロ名物‼︎豪華なオマケのタッグマッチ(疲れん程度1本勝負)

③パンチくん & 〇松山勘十郎 vs ダイナマイト九州 & ×くいしんぼう仮面
(13分13秒)

プロをおまけというあたりが既にとんでもないのだが、いつもなら菊タローが入る枠に松山勘十郎が入った絵はかなり新鮮!

さて、関西と九州の笑いのコラボはどんな化学反応を起こすだろうか?こちらの心配をよそに平常運転の4人のスタイルに大いに楽しませてもらった。

試合を見ていて私が感じたのは、もはや無形文化財化しているくいえべの絡みとは全く違う展開がみられたのは収穫だった。大阪のお笑いプロレスも歴史を重ね成長してきた証だろう。

私が大阪プロレスを見ていたのはごく初期のころだったので、松山勘十郎が活躍していたのを生で見たのは数年前の博多大会以来ということになる。そこからよくも悪くも変わっていないのが安心した。

がむしゃらのお客さんたちは、はじめて見る勘十郎の一挙手一投足に大うけしていたので、九州にも十分受け入れられたと思う。菊タローとはまた違った大阪のお笑いが堪能できた試合だった。

▼GWAインターコンチネンタル選手権試合(60分1本勝負)

④〔挑戦者〕〇野本 一輝 vs ×尾原 毅〔王者〕
(9分49秒)

2009年の小倉北でデビューした野本一輝。その対戦相手が尾原毅である。GAM1で待望?の尾原越えを果たした野本が、想い出の場所でシングル初挑戦。

一方尾原は、前回自身がシングル王座に挑戦して惜敗した場所で、験直しもしたいはず。
ましてや初出場のGAM1でよもやの一回戦敗退を喫した野本を前に心穏やかでいられようはずがない。密かにリベンジに燃える尾原と、虎視眈々と頂点を狙う野本。果たして勝つのはどっちだ?

試合は前半尾原ペースで進む。明らかに前回絞め落とされたスリーパーを警戒しているのが見てとれる。執拗な左腕殺しは、確かにスリーパーとゴッチ式パイルドライバーを防ぐには有効な手段である。

しかし、私が見る限りどうも2人とも攻め急いでいる感じがした。スタミナという点では難があるのは仕方ない部分だが、配分を間違えると命取りになりかねない。私が見ている限りでは意外と野本が落ち着いていたようにみえた。おそらく想像するに前回火を噴いたスリーパーに自信をもっていることのあらわれだろう。

逆に尾原はそのスリーパーにしろ、ゴッチ式パイルドライバーにしろやや警戒しすぎたのかもしれない。同タイプの選手だからこそ、このあたりは難しいところだろう。考えすぎてもだめだし、考えなしでもダメ。プロレスはつくづく難しいものだなあと思う。

▼スペシャル6人タッグマッチ part1(30分1本勝負)

⑤×ドラゴンウォリアー & 上原 智也 & 阿蘇山 vs ハチミツ二郎 & 〇陽樹 & 藤田ミノル
(17分08秒)

試合内容はどちらかというと、混戦模様。目立ったのは陽樹対阿蘇山の師弟対決。肉弾戦を得意とする2人ならではの気持ちのよいぶつかり合いが目を引いた。

上原やドラゴンがプロと絡む場面も多々見られ、それぞれプロの洗礼を受けていた。中でもシリアスモードのハチミツ二郎が、本来隠し持つ牙を全開にしてきていたし、普段は口撃まじりで相手を煙にまく藤田も基本シリアスモード。

gWoに関しては新加入の陽樹がプロふたりに引っ張られた形でのびのび試合をしていた。やはり陽樹の場合、ヒールが似合うのかもしれない。そのぶつかり合いで、師匠阿蘇山を本気にさせた点は特筆していいと私は思う。

とはいえ、スミスの首を狙うのであれば、真っ向勝負だけでは通じないことは陽樹も百も承知のはず。今後の陽樹が本来の自分を取り戻して更なる覚醒を遂げた時に機は熟したということになるだろう。来年の陽樹はがむしゃらの中でも重要なキーマンになりえるかもしれないと私は思っている。

▼スペシャル6人タッグマッチpart2(30分1本勝負)

⑥駿之介 & ラウザ & 〇杉浦 透 vs TOSSHI & ×KENTA & マグニチュード岸和田
(15分21秒)

これも要注目カード。LCRに助っ人で加わったマグニチュード岸和田はこれだけで反則級の強さ。ただ今後を占う意味でいうなら駿之助とTOSSHIの絡みが気になるところ。一応混成軍になるチームをラウザと杉浦がどう引っ張るか?

試合内容としては今大会のベストバウトといってもいい。駿之介という刺身のつまにされたLCR的には不本意な内容だったのかもしれないが、プロの好サポートで、岸和田に立ち向かう駿之介の負けん気あふれる闘いっぷりに大いに心を揺さぶられた試合だったことは間違いないと思う。特にタッグチャンピオンとしても長期政権を築きつつある杉浦は自身が登場すると流れを変えられる選手に成長している。

こういう選手がひとりチームにいるとだいぶん違う。初登場のラウザも生き生きしたファイトをしていた。ある意味駿之助が光った要因のひとつとして考えられるのは杉浦ではないかと私は思っている。

逆にLCRというユニットの成り立ちから考えると、混成タッグの相手チームにこれといったテーマが見出しにくいというのはあったのかもしれない。しかも岸和田という最強の助っ人が加入していると、味方に存在感を消されかねない。結果的にTOSSHIとKENTAには厳しい結果になったように思う。

駿之介はただ耐えるだけではなく、逆転できる技をいくつも持っていて、それらは時に岸和田をもたじろがせた。同じく負けん気の強いゲレーロとぶちかっても面白いのではないかなと思った。

▼GWAジュニアヘビー級選手権試合(60分1本勝負)

⑦〔挑戦者〕×ジェリーK vs 〇トゥルエノ・ゲレーロ〔王者〕
(15分47秒)

がむしゃらのリングではなぜかジェリーKに全敗しているゲレーロ。9月の宇部で対戦表明されて断る道理はない。いよいよ機は熟したとみていい。

シングルでは比較的戦績のよいゲレーロもなぜかことタッグになるとあまり勝ち星に恵まれていない。そこが不安材料ではあるが、やはり盤石の王者になるためには、ジェリーKはさけて通れない相手である。

試合をみていて私が思ったのはジェリーKが普段通りの闘い方をしようとすると、なぜかゴールデンエッグスの闘い方に酷似してくることだった。序盤で見せる二―クラッシャーからの流れなどは、上原がいるとより完璧になる攻撃パターン。しかしこの試合はシングルマッチであるし、ゲレーロの得意なフィールドでもある。

ましてや過去の敗戦を糧にしないことには単なる連敗では済まされない。そういったいいプレッシャーがゲレーロをより奮い立たせていたと思う。

もちろんジェリーKが「超」のつく強敵であることは疑いようはない。しかしそれでもゲレーロは攻めの姿勢を最後まで貫いた。圧巻だったのは場外ダイブで、リングアウトすれすれになるまでジェリーKにダメージを負わせたゲレーロの空中弾だった。

自らの体を削ってでも相手にダメージを負わせたということでいうと、起死回生の一撃になったと私は思う。実際ここからジェリーKの動きは明らかに落ちていった。とはいえ二人とも身を削った全力ファイトで大いに会場を盛り上げた。まさにタイトルマッチに相応しい試合だった。

いつかまたこの二人の激闘を見てみたいものである。

▼スペシャル6人タッグマッチDX(30分1本勝負)

⑧美原 輔 & ×久保 希望 & 佐々木 貴 vs YASU & 土屋クレイジー & 〇ビオレント・ジャック with大向美智子
(15分23秒)

そのストレートな若々しいファイトぶりがプロから高く評価されている美原が、現タッグ王者に怪獣ビオレント・ジャックを交えた混成軍にいどむ。ただですら絡むと面倒な大向美智子がいるgWoに対して、久保と佐々木貴がどれだけフォローできるか?

美原に関していうなら、以前豪右衛門、MIKIHISAに挑んで敗れたタッグのベルトに絡むことは何かしら因縁めいたものを感じずにはいられない。だからこそ難敵相手に爪痕を残すことが大切になってくる。

ひとつ気になったのは駿之介が逆転の手数をいくつも出していたのとは対照的に、美原の手数はほとんど以前と変わっていない点である。GAM1にも出場し、タッグベルトにも挑戦した実績も加味すると、美原はもはや新人というくくりではおさめきれない選手になっていると私は思っている。であるならば、そろそろドロップキックとスタナーに続く逆転技を開発する時期に来ているのではないだろうか?

今後、無策でぶつかるだけの時期は早い時期に卒業していかないといけないだろう。なぜならぶつかり合いだけで、相手に一泡吹かせるには肉体的にも美原は小粒すぎる。

さて、ベルトをとって意気上がる土屋とYASUのコンビは、まるで長年一緒にやってきたかのような流れる連携を見せる。ここに怪獣ジャックやマネージャとしては小うるさい?大向美智子が入ってくるから始末に負えない。さしもの佐々木貴や久保希望をもってしても、どうすることもできなかったとしか言いようがない。

▼GWAヘビー級選手権試合(無制限1本勝負)

⑨〔挑戦者〕〇SMITH vs ×鉄 生〔王者〕
(14分05秒)

GWAヘビー級をはじめて鉄生が巻いた、あるあるシティ大会は映像がDVD化されていない。あの時の鉄生は青息吐息だったが、あれから経験を重ねて大きく成長した鉄生は、今度はチャンピオンとして、かつて盤石の王者として君臨していたSMITHを迎え撃つ。

しかし、SMITHが衰えたという感じは一切していなかったし、そもそもgWo時代に一切ベルトに意欲を見せなかったところも不気味ではあった。そのくせ陽樹に対してはきっちり王座転落のきっかけを作ったりもしていたので、このままSMITHが後進にすんなり道を譲るなどとは想像もしていなかったが、果たして本性をあらわしたSMITHは二度目のGAM1制覇を成し遂げ、意気揚々と小倉北のメインにの舞台に乗り込んできた。

一方、人気・実力ともに頂点に立つ鉄生は、名実ともに「SMITHの時代は過去のもの」にしたいと願ってやまないところだろう。実際、前回の王座奪還がフロックでない証明もしないといけないし、そのためには余裕で防衛したいというのが本音だろう。

ところがそうは問屋がおろさない。SMITHのしたたかさを私は嫌というほどこの試合で思い知らさせることになる。

まず冒頭の握手にしても、自分より多い鉄生コールにしても、SMITHの中では織り込み済みだったのだろう。まるで慌てる体を見せない。加えて自分の必殺技であるスウィンギング・リバースSTO(シスター・アビゲイル)も釣り技として使っていたようにも見えた。少なくともこの技で決めたいのであれば、エクスプロイダーも出さない時間で繰り出すはずがない。

逆に早い時間で決めたい?鉄生は序盤近くで鋼鉄ロケットランチャーをさく裂。昨年に陽樹を貶めたようなLCR総動員という手も使わず、正攻法で攻めてきた。こうなるとにわかに雲行きが怪しくなる。

じわじわと試合がSMITHペースになる中、鉄生の技の精度もだんだん落ちてきた。そこへ満を持してエクスプロイダーでダメージを与え、とどめはあるあるCITY大会でSMITHが鉄生に放てなかったダイビングエルボードロップ。タイトルを落とした時は肘のけがで使えなかったこの技を鉄生戦まで温存していたのがSMITHのにくいところである。

見ている私もよもやこのタイミングでダイビングエルボードロップを放つなどとは思いもしなかった。かくしてこの「隠し技」が奏功して見事SMITHが王座奪還!

試合後、余裕しゃくしゃくでマイクを握るSMITHは高らかに復活宣言。締めはまたしてもTUBEの歌をドンが歌って締めた。

後記

全体を通すと、6人タッグの精度にややばらつきが感じられて、第一試合と、駿之介が目立った第六試合以外はやや「新日本プロレスっぽい」試合内容になっていたかなと私は思う。シングルのタイトルマッチ以外にももう一試合くらいシングルあってもよかったかなとも思うが、これだけの大人数を8試合に収めるとなるとやはりこういう形になってしまうのも仕方ないと思う。

試合内容はどれもクオリティが高くてMANIAらしさも十分伝わったので、それだけに5年ぶりの小倉北を行うタイミングがやや難しかったなあという思いもある。とはいえ、12月がMANIAになってもそれはそれでおかしいし、難しい問題ではある。年間スケジュールを組んでその通りに小倉北が抑えられないことを考えても、今年は仕方ないという思いもあるのだけど、こういうタイミングでなかったらもう少し入場者数も伸びたのかもしれないなと思ったりもする。

ビッグマッチというのはかくも難しいものなんだなといろいろ考えさせられた大会だった。

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