[プロレス観戦記]『FREEDOMS熊本初進出』17.5月20日(土):熊本・くまもと森都心プラザ5Fホール)

せかぷろ

『FREEDOMS熊本初進出』(17.5月20日(土):熊本・くまもと森都心プラザ5Fホール)

前回熊本に行ったのが約25年前。まだ20代だった私は故・上田馬之助(初代)さんが経営されていたお店によく足を運んでいた。実はそれ以降熊本には行っていない。

だから九州新幹線が開通してからなお、博多より先に行ったことがない。そもそも熊本自体に愛憎渦巻く想い出があり、長くそれにひきずられていたため、なかなか足も運ぶ気にはならなかった。

それが…もう2度と行くことはないと思っていた熊本に行く羽目になるのだから人生はわからない。あれから地震もあったし、色んなことがあった。変わらないのは私がプロレスを好きでい続けていること…それだけである。

そして熊本にFREEDAMSがくる。これだけで、私の意思はほぼ固まっていた。

25年ぶりの熊本はかなり変わっていた。そして駅前に会場が!事前に新幹線の中で会場検索したら、駅のど真ん前でびっくり!

しかし、駅周辺に店舗らしい店舗が全くないのは、25年たっても変わっていなかった。でも、昔は博多から在来線に乗り換えて泊りがけで来ていた熊本から日帰りできるんだから、まさに九州新幹線様々である。

会場につくと、殿が出迎えてくれた。こういう機転が利くのが素晴らしい!

とはいえ、開場まで二時間以上あるし、熊本駅から観光地も繁華街も無駄に遠い以上、路面電車移動するわけにもいかず、再び駅に戻って早い夕飯。そういえば熊本に来て熊本名産って食べたことないのに気がついた。からし蓮根も馬刺しも普通に食べていたから気がつかなかったけど。

熊本というのは基本城下町であり、お城の周りに繁華街があって、駅周辺がへき地という、よそ者からすると変わった土地でもある。普通新幹線駅前というのは一等地のはずだが、熊本市民的には「駅の方にわざわざ行く」という感覚らしい。だからくまもと緑都心のような立派な会場でも賃貸料が安いのだろう。でもよそ者からすると駅から徒歩5分の場所にある会場というのはいきやすいことこの上ない。

さて、初進出のFREEDAMSはどんな闘いをみせてくれるだろうか?

◇シングルマッチ
○FREEDOMSの誰か(杉浦透) vs ×トゥルエノ・ゲレーロ

このところプロ団体にあがる機会が多いゲレーロがFREEDAMSでは初の対プロのシングルマッチに挑む。カード発表時点では「?」になっていた対戦相手は果たして…?

事前にゲレーロは控え室に隔離されていたらしく、だれかは本人もわからない。そうして鳴ったテーマ曲に乗ってあらわれたのは、杉浦透!これは面白そうだ!がむしゃらプロレス的には、ナスティ対凱の対決でもあるが、熊本の人にはゲレーロのチャレンジマッチにみえただろう。

内容はゲレーロがプロ相手にした試合の中では一番だった。特に杉浦の好リードが光っていた。体格差を生かしたダイナミックな攻撃は一つ一つがとてもきびしいものだったが、これを受け切ったゲレーロも大したもの。逆に杉浦がしびれを切らすくらい粘りにねばった。

やはり普段がむしゃらにも参戦機会がある杉浦は、ゲレーロを決して格下扱いにしない。セコンドのジェロニモのあおりもあるにせよ、初登場の選手がゲレーロコールをあびたのはまさしく本人の頑張りによるもの。それは誇っていいし、ゲレーロコールをおこす流れを作った杉浦の実力もすばらしいと私は思う。

最後はねばるゲレーロをドラゴンスリーパーで仕留めた杉浦だが、確実にチャンピオンとして成長を遂げていることがうかがえる試合だった。

◇がむしゃらプロレス提供試合
陽樹、○美原輔 vs 鉄生、×Barong

チーム凱対LCRというより、ここに起用された美原が試合のカギになると私は読んだ。決して本調子でない陽樹をカバーしつつ、鉄生の破壊力と、Barongのインサイドワークに対峙せねばならない。初のプロマットにして、熊本というアウェイの地で、どれだけのつめあとが残せるか?

やはりというか陽樹と鉄生はコンディション度外視でぶつかり合うが、今までなら美原がこの輪に入れずにいた。しかし彼の「いつまでも新人ではいられない」という強い思いは想像以上に美原輔というレスラーを強くしていた。

提供試合とはいえ、初のプロマットにあがるだけでも緊張が半端ないはずなのに、LCRの歴戦のツワモノたちを相手にしても、美原は引き下がらなかった。確かにこの日の美原はひと味もふた味も違っていた。

度々ピンチを招きながら、自力で脱出するあたりこれまでの美原とは明らかに違う!それを察したか陽樹は鉄生一本に的を絞り出す。普通なら一番キャリアが浅い美原がイカれると誰しもが思う展開。しかし、ドロップキックで流れを変えて、スタナーに繋ぐ美原は、この技の精度を高めていた。

確かに一撃必殺ではないものの、ハマればでかい!見事美原が難敵Barongから堂々の自力勝利!いや、お見事!

これはうかうかしていると先輩方もくわれかねない。美原輔の成長は今もっとも目が離せない!

◇タッグマッチ
進祐哉、○KAZMA SAKAMOTO vs 藤田ミノル、×ドラゴン・リブレ

昨年こちらにFREEDAMSのツアーがきた際はまだデビュー前だったドラゴン・リブレ。満を持しての九州初上陸である。パートナーは今やFREEDAMSには欠かせない選手になった藤田ミノル。

しかし、相手は急成長した進と、潜在的なクオリティは非常に高いKAZUMAである。つい数年前なら追う立場だった進も今や下を迎え撃つ立ち位置にいる。それだけ進化してきた先輩に対してリブレがどれだけの内容を見せてくれるか?

藤田がお膳立てしたとはいえ、リブレがこのメンツの中で気後れしないファイトをみせていたことにまずびっくり!

いくら先輩がお膳立てしても、そこに乗れない選手はいるものだが、驚異の強心臓ぶりは大物に出世する予感さえ私に抱かせてくれた。

藤田もプロレス専業に戻ってから格段と動きがよくなっている。もともとセンスだけでもプロレスができてしまう藤田だけど、やはり重圧から解き放たれた充実感に満ち溢れているファイトぶりはみていて実に気持ちがいい。

しかしながらKAZMAや進がやすやすと美味しいところを譲るはずもなく、だんだんリブレはキャリアの浅さを露呈し始める。最後は藤田から分断されたリブレがKAZMAの二発目のみちのくドライバーであえなくピンをとられてしまった。

しかし、こうした新人が後から出てくるのは団体が活性化するには必要不可欠。リブレの成長はFREEDAMSの未来に繋がる。そう私に思わせてくれた試合だった。

◇シングルマッチ
○阿蘇山 vs ×力

力道山三世という話題先行でデビューしてしまった力だが、いまや親離れも果たし、シングルで高い壁に向かう時期にきたのだろう。相手は、壁というより山、それもかなり険しい活火山、阿蘇山である。

九州プロレスでも熊本大会はやっているが、どういう形にせよ、ご当地凱旋は特別なものだろう。ましてやそこで力道山の遺伝子と相対峙するというのは、阿蘇山にとっても感慨深いものであったに違いないと私は想像している。

さて、初登場の力だが、阿蘇山との体格差は明確。そこへきて情け容赦ないのが阿蘇山。露骨に体格差をいかした攻撃で度々力を劣勢に追い込んでいく。

地元凱旋なのに、大ヒールを買って出た阿蘇山の人の良さもあるのだが、同時に容赦しない攻撃にひたすら耐えた力も、デビュー当時ほど酷い感じではなかった。だからその諦めない姿勢が素直に伝わったからだろう。大・チカラコールに後押しされて必死の反撃をこころみるも、やはり実力差は歴然!

最後は万トーン二連発からの、マグマスプラッシュで力、轟沈!しかし、頑張る力はこのひの誰よりも声援をあびていた。それは誇っていいだろう。

◇タッグマッチ
○マンモス佐々木、杉浦透 vs ビオレント・ジャック、×GENTARO

地方初見参のビオレント・ジャック!最近は新日本以外では地方で外国人プロレスラーの試合自体観られる機会がなくなってしまった。そういう意味では古き良きプロレスが観られる予感があった。なんといってもジャックのパートナーは古式ゆかしきプロレスを知り尽くしたGENTAROである。

一方ライオンズゲート出陣にタッグ王座防衛と内外に実績を積んできた杉浦もここはノンタイトルだからといって、気をぬく場面ではない。やはりマンモスとの連携をより盤石にしないと、そう簡単に勝てる相手ではないのだ。

しかし、戦前の予想よりマンモスギボンバーズ
は予想外にタッグとして成熟していたチームになっていた。GENTAROの度々みせる絶妙なインサイドワークや、ジャックの怪獣的破壊力抜群の攻撃により度々ピンチにはなるのだが、杉浦なり、マンモスなりがカットにはいる。このタイミングが実に絶妙。そこへいくとどうしてもタッグチームとしては、GENTARO・ジャック組は急造の域を出ない。その差が結局、GENTAROを見殺しにする結果につながってしまったのだろう。

終わってみれば王者組が盤石の完勝!このチーム、長期政権を築くかもしれないと私は思うがさて、マンモスギボンバーズを脅かす存在が現れてくるだろうか?

◇TLC+凶器持ち込みデスマッチ
正岡大介、○佐々木貴 vs 葛西純、×吹本賢児

熊本初上陸のメインにデスマッチを持ってきたFREEDAMS。山口大会もそうだが、会場の要件さえ整えば、最上級のもてなしをしてくる団体、それがFREEDAMSである。

とはいえ、現在は大仁田や大日本が地方を回っていることもあるため、単にデスマッチがスペシャルではないことはファンも先刻承知。FREEDAMSだからできる自由な闘いこそ、求められるべきもののはずなのだ。

試合は葛西らUNCHAINの奇襲からスタート。熊本に限らずカリスマデスマッチファイターとしての葛西人気は今や絶大。あまりに自分に声援が集まるせいか、葛西自ら「お前ら(殿・正岡組を)応援しないと(試合が)終わっちゃうぞ!」と煽るくらい、葛西人気は絶大。ラダーに上っていくと「キチガイ」コールまでおきる。こんなの北九州でも体験ない!

しかし流血しながらもゾンビのような再生力をみせつけた殿は窮地から自力で大逆転!結局勝利も自力でものにしてしまった。ここらへん、何かに懸ける執念みたいなものが、吹本や正岡からもっと感じられるとなおいいのだけど、まだそこまでは至っていないか。でも櫛を額に刺したまま、売店にたっていた吹本のプロ魂には敬服せざるをえなかった。

終わってみれば熱狂の渦の包まれていたくまもと緑都心ホール。キャパ的にはちょうどいいし、アクセスもいい。出足は鈍かったものの、終わったら満員というありさま。なんといっても観客の熱狂度が半端ない。北九州の熱を持っていくといっておきながら、逆に私が熊本とFREEDAMSからエネルギーをもらってしまった。やっぱFREEDAMSはいつみてもはずれがない!来年もぜひ熊本&門司のはしごを実現したいなあと思う。












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