[プロレス観戦記] 大日本プロレス「BIGJAPAN FULL METAL」福岡・博多スターレーン大会 (2017年12月10日)

せかぷろ

大日本プロレス「BIGJAPAN FULL METAL」福岡・博多スターレーン大会

(2017年12月10日 日曜:福岡・博多スターレーン)

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イントロダクション

年に二回大日本観戦するのは私的には大変珍しい。デスマッチは特に嫌いでもないのだけど、単に大日が近隣にこない以上、観戦ペースは落ちてしまう。

大日の博多大会は例年約4〜6回は行われているが、だいたいどこかの団体と抱き合わせでくるため、どっちかひとつをとるのか、二団体通しで見るか判断に困って結局いかなかったりする。確かに満員の会場で見る大日は面白いのだけど、田舎の片隅でみる大日もまた風情があってよい。

そういう意味では門司とかだけでなく、もっと山口県にも来てほしいのだが、どうもスルーされてしまうので、個人的にはあまり気分がよろしくない。

オープニング

とはいえ、選手自らが営業をかけるスタイルではない大日本がただ単にドサまわりしたところでお客が入るはずもないので、やはり見るとなると博多になってしまうのかなあ。

本当は翌日の新日本も見に行きたかったのだが、連戦はさすがにこたえるので断念して自宅でテレビ観戦していたら、まさかのクリス・ジェリコ登場に悔しさでほぞをかむはめになってしまった。プロレスというのはつくづくカードで判断しちゃいけないなあと身に染みて思った次第。

第1試合:15分一本勝負

谷口裕一〇 vs 森廣祐基●
(10分25秒 横入り式エビ固め)

大日本の前身であるNOWに練習生として入団していたのが、山川竜一(引退)とこの谷口裕一である。後輩が次々と離脱していく中にあってもひたすら大日本に留まり続けた。エースになりたいという欲も感じられず、どんな役回りもしっかりこなす意味では数少ない仕事人レスラーでもある。長い欠場もあり、もはや生で試合をみることも叶わないか?と思っていただけに、こうして試合が見られるのは嬉しい限り。

見ているといかにもベテランらしい見ごたえのあるムーブは健在。若手選手の悪い癖として「リング中央で試合しない」というものがあるが、谷口は端に寄っても必ず中央に戻ってくる。後期NOWの実質エースで初期大日本の代表選手だったケンドーナガサキさんを連想してしまう。

随所にお笑いを散りばめるが、それだけではない。リストの固め方は基本通りだし、高さは若干低くはなっているがノーザンライトも健在。全体的に図らずも先日なくなったドン荒川さんを彷彿とさせる。

プロレスラーの全てがメインイベンターである必要はない。谷口のような生き方が受け入れられているうちはプロレスもまだまだ大丈夫だと私は思っている。

第2試合 6人タッグマッチ 20分1本勝負

宮本裕向&吉野達彦●&関札皓太 vs 星野勘九郎〇&橋本和樹&青木優也
(7分54秒 ダイビング・セントーン→片エビ固め)

これがメインでもおかしくない顔ぶれが並んでいるという意味では総花的、悪くいえば新日本っぽいマッチメイクだが、団体旗揚げからみている大日本が、こうしたカードを組める時代がこようとは。まさに隔世の感ありといったところだろう。

試合では宮本組の吉野と関札の動きに目がいった。若々しいキビキビしたムーブは見ていて非常に気持ちがよい。一方でムキになってつっかかっていく星野のイキのよさも目に付いた。橋本がもっとガンガン前に行くかと思ったけど、若手陣がそれ以上に前に出ていたのも非常に良かった。

6人総出の空中戦などデスマッチとはまた一味違う華やかなプロレスを披露してくれた。実はストロングとデスマッチだけではない大日本の奥深さがこんな形でも現れているのだ。

第3試合 6人タッグマッチ 20分1本勝負

関本大介〇&中之上靖文&宇藤純久 vs 浜亮太&河上隆一&菊田一美●
(10分23秒 アルゼンチン・バックブリーカー)

大日本の大看板でもある岡林を欠いた状態でエース関本を第三試合に出せる。考えれば考えるほど大日本は凄い団体になったものだ。内容は超一流なだけに、営業にさえ力を入れたらもはやメジャーといってもいい団体力がある。

ストロングBJWがスタートした時にはまさか団体の屋台骨を担うまでになろうとは正直想像もしていなかった。それだけに非常に感慨深いものがある。

この試合で気になったのは、ロープに走ってタックルというムーブがやたら多かったこと。しかし、この中でそれが絵になるのは背の高い宇藤、幅がある浜、パワーで鳴らす関本くらいで、ほかの選手が同じことをしても迫力にかける。

この試合で一番わいたのが関本と浜のぶちかましだったことを考えると、若手がただ自分の体格も考えずにぶつかり合うだけでは能がなさすぎる。

前の方でも書いたけど、若手になればなるほどリングの端で試合をしたがる。あとコーナーへの串刺しも多すぎる。やはりプロレスラーならロープワークで魅せてナンボだと思うので、コーナーに頼る試合運びからはそろそろ卒業してもいいのではないだろうか?

キャリアから考えると宇藤も菊田も素晴らしいのだけど、だからこそもうワンステップ上を目指してほしい。関本、浜あたりと他の選手ではかなりの差があった試合のように私にはみえた。

第4試合 TLCタッグデスマッチ 30分1本勝負

伊東竜二&”黒天使”沼澤邪鬼● vs 植木嵩行〇&佐久田俊行
(12分48秒 ラダーからの敬礼式ダイビング・ヘッドバット→片エビ固め)

若手が躍動する大日本のなかではもはや大ベテランになる伊東と沼澤だが、デスマッチ新世代を前にしても意気盛ん。

しかしTLCの経験豊富な伊東と沼澤は落ち着き払ったもの。どのアイテムも手足のように使い回す2人に、肉体だけで勝負しようとする新世代組はやや後手に回る。

ラダーならば佐久田が先に空中戦で仕掛けるなり、アイテムの使い方に関してはもっと自由な捉え方で勝負していかないと、積年の経験があるふたりの壁はそう簡単には超えられない。

ましてや普通にプロレスやらせても伊東と沼澤には実力もあるんだから、余計にたちがわるい。佐久田などミニマムな体格を生かして長身の伊東の懐に潜り込んで撹乱するなど、よい面もたくさんあっただけに非常にもったいなかった。

何よりこの日の会場の声援はほとんどナウリーダーズに浴びせられていた。新世代が時代をかえたいなら、単にベルトとりました、とかだけでなく、この日の声援を自分たちに向けさせかいといけないだろう。

試合は植木がとって、勢いでベルト挑戦までこぎつけたのはよかったけど、伊東がいうように「長い」し、要領をえたマイクも考えないとね(笑)

セミファイナル 世界ストロングヘビー級王座前哨戦~タッグマッチ 30分1本勝負

鈴木秀樹&野村卓矢● vs 橋本大地〇&神谷英慶
(10分26秒 ミドルキック→片エビ固め)

本人たちには不本意な捉え方かもしれないが、やはりオールドマニアとしてはビル・ロビンソンの最後の直弟子と、橋本真也の遺伝子が同じ時に同じリングで相見える図式はゾクゾクするものがある。どうせなら前哨戦ではなく、タイトルマッチを観て見たかったというのが本音ではあるが、やはり全国区の団体が東京・大阪以外でタイトルマッチを組むことはまずないのだろう。

さて、毎回思うけどシングルの前哨戦をタッグでやる意味ってないような気がする。しかも鈴木対大地で決着するならまだしもそうでないなら、やる意味がない。

だから前哨戦というより野村や神谷に注目して見ていた。神谷や野村のキャリアを考えるとやはり驚異的と言わざるを得ない。グラウンドも素晴らしいし、やはり若手のなかではぬきんでている感じがした。

他方、鈴木と大地は意識し合うほどは絡まないパターン。たしかに蹴りよりグラウンド重視で勝負にきた大地の度胸は買うが、鈴木があまり乗り気でないようにみえたのが気になった。

鈴木の場合、自分よりでかい相手と闘うことが少ないせいか、どうしても背を丸めて相手に対峙することが多々ある。ビル・ロビンソン直伝のレスリングがベースにある以上、グラウンド重視な試合運びになるのは仕方ないが、ダイナミックさにかける。

関本との試合はグラウンドであってもアグレッシブだったことを考えると、エンジンがかかり切れていないのか?鈴木の方からは前哨戦という空気すら感じられなかった。

最後、野村を大地が仕留めるというありがちなエンディングになったが、前哨戦というテーマからは外れた感じの試合だった。

▼メインイベント デスマッチヘビー級王座前哨戦~

蛍光灯200本タッグデスマッチ 30分1本勝負
竹田誠志&藤田ミノル● vs 高橋匡哉〇&アブドーラ・小林
(15分25秒 源之助クラッチ)

藤田ミノルがデビューした当時、まさか20年後、彼がデスマッチファイターに転身するなど誰が想像していただろう。アブドーラになる前の小林源太郎には既にデスマッチにいく素養はあったものの、小林がここまで表現力豊かな選手に成長しようとはさすがに想像し得なかった。

その重みと歴史に誰よりも苛立ちを感じていたのが高橋だろう。デスマッチ新世代の旗手としては対角線にいる竹田や藤田はもちろん、小林ですら邪魔で邪魔で仕方ないはず。

しかし、試合は藤田を含めたベテラン3人が全てにおいて圧倒的な存在感を放つ。3人同時に敵視するなら、高橋はもっともっと存在感を示しておくべきだった。それこそ試合後に吠えても後の祭りというやつである。

とにかく竹田、藤田、小林は大日本デスマッチの現在進行形であることは間違いない。ベルトを持つ竹田を中心に世界が回っていることは否応なしに伝わるし、その軸になりきれてない高橋は、苛立ちをぶつけながらついにこれという形で爪痕を残せなかった。

試合後のマイクで「横浜の主役はおれだ!」と高橋が吠えるものの、藤田は「負けたけど北九州、福岡の主役は俺だ!」と譲らず、竹田は「今ベルト持っているのは俺だから俺が主役だ」とこれまた譲らない。小林の視線には高橋すらいない感じがした。

この試合で、勝敗にも絡んでいない高橋のマイクはデスマッチナウリーダーズの「俺が、俺が」の自己主張の前にはかき消されたようにみえた。植木にしろ、高橋にしろ、実力はある選手たちであるのは間違いない。だが、突き抜けたキチガイぶりを発揮する藤田や竹田や小林といった並み居る強豪をこえるには生半可な気持ちではこえられまい。

後記

全体的に横浜文体の前哨戦という形で試合が組まれていた。

まあ、文体まで足を運ぶほど熱心なファンにはそれでもいいかもしれないが、博多は博多で完結するカードを組んでほしいなというのが正直なところある。

メンツも内容も悪くないだけに、一個くらいは文体の前でも博多で完結する物語があってもよかった。

全部「文体に続く」じゃ、わざわざ博多くんだりまで足を運んだ甲斐がない。いい試合も多かったし、楽しかったんだけどなんかもったいなかった。

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