[プロレス観戦記] プロレス居酒屋がむしゃら 祝15周年記念イベント『GAMSHARA MANIA’2015』~TEAM凱 vs GWO全面対抗戦

がむしゃらプロレス観戦記

プロレス居酒屋がむしゃら 祝15周年記念イベント『GAMSHARA MANIA’2015』~TEAM凱 vs GWO全面対抗戦~

(2015.11.1 北九州芸術劇場大ホール)

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イントロダクション

がむしゃらプロレス年間最大のイベントGAMSHARA MANIA’がくるといよいよ今年も残り僅かなんだなと思う。今年は居酒屋がむしゃら15周年記念ということもあって前日にパーティーがあってさらに機運も高まっていた。パーティー自体もとても楽しくて、2時間があっという間だった。

10周年の時も思ったのだが、5年というのは本当にあっという間。特に居酒屋がむしゃらとがむしゃらプロレスの旗揚げ時期に時間差があるため、間に「がむしゃらプロレス

10周年」というのもはさんでいたから余計にそう思うのかもしれない。

しかも、例年になく今年は気温が低く肌寒い。もう冬に近い感覚になっているのも余計時間の速さを感じたのかもしれない。

▼オープニング全面対抗戦 & マサル プロレスチャレンジマッチ!!(30分1本勝負)

①マサル(スーパーワン=福岡よしもと) & ジャンボ原 & ○尾原毅 vs ×MIKIHISA & 豪右衛門 & マスクド・PT(11分00秒)

理想をいうと、第一試合にはメインを張れる人材か、新人枠でやってほしいのだが、このカードには最初から両方入っていた。そういう意味ではよく考えられたカード。

ただし、マサルに関してはあくまで本業は芸人である。多くの場合、社会人プロレスラーは職場とリング内の顔が違う。

それはプロレスのリングと言う非日常な場所で、人前に立つから至極当たり前なんだが、芸人と言う職業は常に非日常の舞台に立ち続けているので、本人はどう思っているかはわからないが、顔を変えるにしてもかなり難しくなるような気がする。

見ている側もいち新人レスラーとして純粋に見づらいので、どういう気持ちでプロレスに取り組んでいるのかは、試合をみないとわからないのだ。

最近でこそ芸人さんがガチで頑張る姿が売りになるような時代にはなったが、そもそも笑いをとりにいく人間に感動はいらないと言う考え方は依然根強くある。

かといってふざけ半分でプロレスに挑まれても不快感がのこる。このさじ加減が非常に難しい。かつて福岡よしもとの同僚芸人たちは真摯にプロレスに挑んだので好感は持てたが、反面笑いの部分は捨てざるを得なかった。

しかし、後々彼らは自分たちが真面目に取り組んだことを話のタネにして、笑いには結びつかないが、つかみには使えているように思う。

多分マサルの落とし所は、先にチャレンジした同僚同様、ガチでプロレスに挑むしかなかったのだ。だから、格好こそ白ブリーフだけど、新人レスラーなみにローンバトルにも耐えたし、対戦相手のマスクドPTを挑発することもした。

やはりマサルにばかり目がいきがちだが、PTにしろ、尾原にしろ試合が久々とは思えないコンディションのよさ。尾原の蹴りと関節はMIKIHISAを凌駕していたし、PTも因縁あるジャンボと激しく渡り合う。見応え充分すぎる攻防が第一試合から惜しげもなく繰り出される。

仕事が第一である社会人だからこそ、限定出場になる彼らが彩ったことで、単なるマサルのチャレンジマッチという意味以外の色合いを試合につけられたのは、怪我の功名かもしれない。

確かに彼らが第一線で活躍し続けていたら、がむしゃらの歴史も大きく変わったことだろう。しかし、彼らの仕事が忙しくなったのもまた何かの巡り合わせかもしれない。そう思うといろいろ感慨深い試合だった。

マサルのプロレスチャレンジについては成功といっていいと思う。新人レベルとしては及第点をあげられるだろう。豪右衛門やMIKIHISAにしても、あまり触れる機会のない尾原毅の凄みに対峙できたのはいい経験になったと思う。特にMIKIHISAが尾原のファイトスタイルを会得すれば本物では絶対実現しえないスタイルを確立できるだろう。

▼大阪・なにわ vs 小倉・片野2丁目 対抗戦10人タッグマッチ!!(30分1本勝負)

②○なにわ1号 & なにわ3号 & なにわ16号 & DIEZEL & ベポちゃん vs 紅 & タシロショウスケ & ブラック☆スティック & パンチくん & ×竹ちゃんマン(14分15秒)

第一試合と色が被りそうな第二試合だが、こちらもうまい具合に色分けができていた。なにわはセンセーショナルな出方をした割にはやはりお仕事の関係(多分)で、限定出場になってしまったのだが、今やがむしゃらのビッグマッチには欠かせないメンツ。当初の殺伐とした雰囲気はなくなったものの、プロレスを楽しんでいるのが好感もてるポイント。

一方皿倉山で出直しを迫られた紅はさすがに一週間では、軌道修正はできないでいたが、それでも何とかしようと言う気持ちは伝わってきた。

だが、前説で紅夜叉に間違えられているようではまだまだ。がむしゃらに所縁ある芸人さんに最低顔と名前を覚えてもらえるくらい、試合でインパクト残さないと、七海健大のゲキも無駄になる。ただ強いだけではやっていけないプロレスの難しさはこのあたりにある。

パンチくんや竹ちゃんマンや黒棒は安定しているし、彼らがいつも通りなんで久々の試合になったタシロも安心して試合ができていたみたいだった。

なにわ側に入れられたDIEZELも忙しい時間を割いてコンディションを整えてきていた。彼も限定出場にするにはもったいない逸材なんだが、やはり仕事第一である社会人プロレスでは避けがたいことではあるので、たまにこうして元気な姿が見られるだけでもよしとしたい。

▼6人タッグマッチ(30分1本勝負)

③スサノオKID(MDP) & ALLマイティ井上(MDP) & ×KAG大塚 vs グレート・カグラ(JOKER) & L.O.C.キッド & ○SMITH(11分18秒)

さて、注目の松江だんだんプロレスの本格参戦。ゆくゆくは西日本の社会人プロレスオールスターをみてみたい私としては、彼らがこの大舞台で実力を発揮してもらわないと、先の夢もみられないと思っていた。

2年連続の登場になった井上とカグラは相変わらずコンディションがいい。ただ今回は若干サポートに回っていたようにみえた。その分初登場のスサノオが大活躍。同じキッドの名を持つLOCキッドと素晴らしい攻防を連発。被災地プロレスの提供試合の映像をみて、いつか生でみたいとは思っていたが、これほどLOCキッドと手が合おうとは!

ジュニアのトーナメントが無理なら正直YASUのタイトルに挑戦してほしい逸材でもある。これは他のがむしゃらジュニアもうかうかしてはいられまい。何よりLOCキッドがかつてないくらい試合から燃えるものを感じたし、いつかキッドコントラキッドで闘ってほしいくらいである。

多分今年初試合になるスミスも相変わらずののらりくらりぶりで、突貫型の井上を煙に巻いていたし、師弟対決になるKAGとの絡みでは非情な一面もみせていた。カグラは変幻自在のファイトで魅了させてもらえたし、もうこの時点でお腹いっぱいになっていた。

▼全面対抗戦タッグマッチ(30分1本勝負)

④○阿蘇山 & 菊タロー vs ×ダイナマイト九州 & くいしんぼう仮面(14分16秒)

対抗戦の色合いか一番薄いのがこのカードだと思ったのだが、ダイナマイト九州のコスチュームには明らかに手製とわかるGWOの文字が…

しかし近年のプロアマ混合の流れで一番違和感なく溶け込んでいるのは、さすが九州。鉄板対決のくいえべに引けを取らないあたりはさすがとしかいいようがない。

面白いのはお笑いファイトもこなせる阿蘇山があえて厳しめの闘い方をしていたことで、これはベテランなりに自分の立ち位置を計算した結果なのだろう。だから試合内容が金太郎飴にならずに、コントラストをうみだしていた。このあたりはさすがである。

そしてここまで第三試合を除くと比較的いろもの系なカードが並ぶ中、老舗の意地をみせたくいえべもまたあっぱれである。特に本職の芸人が参戦する中で、笑いで勝ちに行く姿勢は彼らのプライドを感じずにはいられなかった。

▼GWA 無差別級タッグ選手権試合(30分1本勝負)

⑤[挑戦者]マツエ デラックス(MDP) & ○ミステリコ・ヤマト(MDP) vs TA-KI(TEAM凱) & ×ジェロニモ(TEAM凱)王者

さて、チャンピオンチームには悪いんだが、じつは波乱の予感しかしてないタッグタイトル戦。なにせチャレンジャーは現・山陰統一王者とだんだんプロレスのエースなのだ。巨漢のマツエデラックスと均整の取れたヤマト。パワーとテクニックでも穴がなさそうだし、このメンツだけで、だんだんプロレスの本気が伝わってくる。

一方のチャンピオンチームは、がむしゃらで酸いも甘いも噛み分けてきた2人である。当然デラックスやヤマトのようなタイプとの対戦経験もあるのだが、実はここに落とし穴があった。

確かに経験はあるのだが、あまりに経験則に固執しすぎると、かえってそれが足かせになる。当たり前だが、今回のチャレンジャーチームの2人と、かつてチャンピオンチームが闘ってきた相手は「同タイプだけど違う人間」なのだ。

仮想敵としてのシミュレーションはできても、対策としてはそれだけでは不十分だったのかもしれない。普段なら二重三重と周到な準備を怠らない彼らが、なぜかこの試合に限っては個別で立ち向かっていっているようにみえた。

連携してないようで、モチベーションが予想以上に高いだんだんプロレスサイドは、リズムよく試合を進めていたし、それは多分TA-KIやジェロニモが今迄闘ってきたどの相手とも違う気がしていた。

団体内で実力を競い合う場合、ある程度自分を過信するくらいでないと、なかなか頭角は表せないが、他団体との対抗戦ではそれが裏目になる場合もある。かねてより他団体と絡んできた経験値があるだんプロと、ここ数年でプロや他団体と直接絡み出したがむしゃら。敢えて差を探すならそこが勝敗の分かれ目だっだかもしれない。まあ、団体ごとにカラーや方針の違いはあって当たり前だし、だんだんプロレスと同じことをがむしゃらに求めてはいないのだが、今回の試合に限っては明暗を分ける結果になってしまったかな。

しかし、驚いたのはデラックスとヤマトが完璧な意思疎通ができていて、しかも素晴らしいくらい頭がいいこと。特にチームの司令塔、TA-KIを長時間出させないという点では徹底していた。完全にジェロニモをローンバトルにしてしまうのも分断だけど、少しずつ相手に悟られないように、巧妙にTA-KIを釘付けにしていく様は圧巻だった。試合後にTA-KIがかなりカリカリしていたが、たぶんジェロニモのせいで負けたように見えたかもしれない。

だが、見ているとだんだんサイドが綿密な罠を張り巡らせていた。まさか自分たちの得意分野である頭脳戦で、それを上回る相手にしてやられるとは想像もつかなかっただろう。

ともあれ、この時点でチーム凱、というか九州からGWAのベルトは全て本州に流出するという異常事態になってしまったのだった。

▼REINA女子プロレス 提供試合!!(30分1本勝負)

⑥×真琴 vs ○朱里(6分50秒)

最初に結論いっておくと、試合内容は悪くなかった。ただどこか物足らなかった気がした。それは真琴が目指す目標にWWEディーヴァがあるということを知っていたからかもしれない。

正直全女全盛の頃なら「日本の女子プロレスは世界一!」と言い切れたけど、今は違う。海の向こうでは、ディーヴァ同士の女子王座戦が史上初のメインを飾り、しかも素晴らしい内容を残しているのだ。あのベイリーとサーシャのアイアンマンマッチは、WWE(NXT)の女子部門の実力を満天下に知らしめた。そして会場と視聴者を熱狂の渦に叩き込んだ。しかもダスティローデス杯決勝を脇にしてのメインである。その役割を全うしたことがいかにすごい事か!やはり世界は違うなと思い知らされた試合だった。

で、それらを踏まえた上で、この試合を振り返ると、まず朱里にとって真琴という対戦相手は必ずしも本領発揮できるタイプの選手ではない。朱里の持ち味は鋭い蹴りであるから、WNC時代に対戦した下野佐和子のような受けて耐えるタイプだとより攻撃が映える。

しかし、真琴は相手の技を受けて耐え忍ぶ姿が下手をすると痛々しくなりかねない。もちろん今の真琴には一流の技能が備わっているので、昔の彼女ほど弱々しくはみえないが、耐え忍ぶ泥臭さはやはり似合わない。

だが、これは朱里にもいえることで、仮に真琴に朱里を追い詰められる武器があったとしても、やはり彼女が受ける絵は想像しがたい。

そうなるとある程度お互いの出せるものを最初から出し合う展開になりがちになるのは仕方ないかもしれないし、実際持ちうるすべてを出し合ったこの試合は確かに素晴らしい試合になっていた。

ただ、彼女たちが全力で闘っていた(強いていえば朱里が蹴りを繰り出す割合は少なめではあったが)にも関わらず、ややダイジェストみたいな内容になり、約6分強闘い抜いても「意外とあっさりしてたな」とか「もうちょっと見たかったな」という声が出てくる結果になったのかなと想像しているのだ。これが15分一本勝負ならまた違う感想になったかもしれない。もちろん満足したお客も多かったのは事実だし、会場の総意ではないことは十分に承知している。ただ、物足りないと感じたお客が一定数いたことにはなる。これもまた事実である。

でも、個人的には彼女たちが、いつもと違う新鮮なお客の前で生き生きとした表情で試合をしていたのは脳裏に焼き付いているので、次回があるのであれば、これに懲りずにまた来てもらい、再び素晴らしい試合を見せていただけたらと思う。

正直真琴と朱里がここまでレスラーとして成長していたのは予想外だったし、うれしかったけれど、だからこそ「頑張ったね」では終わらせてあげたくないのだ。

やはり彼女たちにはどうせなら世界を目指してほしいのだ。かつての同僚だった華名改めASUKAが全米デビューした事実があるからこそ、さらなる研鑽と奮起を期待したい。

▼全面対抗戦 ハードコアデスマッチ!!(30分1本勝負)

⑦七海健大 & ○佐々木貴 vs ×鉄生 & 葛西純(16分24秒)

このところ、ほとんどの試合でプロに絡まされている七海健大と、その七海健大にベルトを取られた鉄生がGAM1以来の再激突。しかもパートナーが殿と葛西という申し分ない相手だが、なぜかこの試合だけハードコアルールになっている。プロの2人はこの道のエキスパートなんで任せて安心…というわけにもいかないのが困り物である。

心強い味方がそれぞれについているということは、鉄生に対しては殿が、健大に対しては葛西が高い壁として立ちはだかるわけだ。正直因縁に気を取られて試合ができるような敵ではない。

しかも、芸術劇場という普段はあまり縁がなさそうな(失礼)自由すぎるプロのふたりにしてみれば、逆に暴れ甲斐があろうというもの。

案の定最初から大乱闘でスタートした試合はそのまま客席になだれ込んでいき、九州では珍しい二階席バルコニーでの乱闘まではじめてしまった。これぞFREEDAMS魂!二階から落ちそうで落ちないハラハラ具合は、この会場でなければなかなか見られない。このあたりの見せ方は、さすがに殿も葛西も心得ている。

そしてリングに戻ってからもパイプイスが飛び交う乱打戦。毎度思うことだが、パイプ椅子を設置してその上に正確に相手を測ったかのように落としていく葛西は、本当に後ろに目があるかのような素晴らしいコントロールをみせる。

健大も鉄生もプロとあたるだけの力がある素材だが、こうした細かい匠の技で畳み掛けられるとどうしても旗色が悪い。本来だと上から目線で相手にかかってくる鉄生も、健大同様下から食らいつく以外に術がないというほかなかった。それくらい殿と葛西は卓越していたし、相手が社会人だからといって一切手抜きはしなかった。

まさにプロレスを愛するものにプロもアマま関係ないという言葉を試合で体現してくれたのが、本当に嬉しかった。芸術劇場サイドはいい顔しないかもしれないけど、いつかFREEDAMS単体の芸術劇場大会もみたくなってきた。

試合後に殿が健大と鉄生に「いつでも挑戦受けてやるぞ!」と激を飛ばすと、健大が「ベルトを巻いて必ず挑戦しますから待っていてください!」と返礼。

しかし、対殿ということに関しては現時点の王者・林がすでに先鞭をつけている案件。果たして殿への挑戦権を得るのは誰になるのだろうか?

▼GWA Jrヘビー級選手権試合(45分1本勝負)

⑧[挑戦者]×トゥルエノ・ゲレーロ(TEAM凱) vs ○YASU(GWO)王 者

今春デビューして瞬く間にタイトルチャレンジャーの位置に上り詰めたゲレーロはまさに規格外の新人である。ベルトはTOSSHIからYASUに移動したけれど、狙うベルトがそこにある事実はゲレーロにしてみれば変わらない。

だが、誰が巻いていてもベルトがとれるならことは簡単なのだが、そうはいかない。関節技と打撃に長があるTOSSHI、飛び技のスペシャリストYASU、キャリアとインサイドワークのキッドとざっとみても全員タイプが違う。

一見すると一番リスキーな技を多く使うYASUが狙いやすいように思うが、実は誤爆率はとても低い。同じような技で試合するプロよりも、技の成功率も命中率も高いのだ。

そうすると同じ飛び技で勝負するより、YASUの翼をもぐ戦法が効果的なんだが、そこはメキシコでルチャを会得したゲレーロにしてみると、飛び技もジャベ(メキシコ流関節技)も含めてのルチャ、ということに拘りがないはずもない。

それに加えて、いい意味でも悪い意味でもゲレーロは若さを出してくる。そのフレッシュさと、勢いは確かに挑戦アピールした時に決め手にはなったはずだが、戦績が伴わないのもまた若さである。確かに前ヘビー急チャンピオンの鉄生からピンフォールを奪ってはいるが、同じ手をYASUに使えるかといえばそうでもない。

若さという点ではまだYASUも若いのだが、キャリアの積み重ねでだんだん老獪なテクニックも身につけつつある。そこへきてのヒールターンで、これがまたサマになっている。

反則しなくても、強さだけで嫌われるチャンピオンになれるのりしろが見えつつあるのは、正直な若いチャレンジャーには厄介だろう。見た目がベビーフェイスだし、一見するとファイトスタイルに大きな変化が見られないだけに、わかりにくい部分ではあるが、YASUはまだまだ成長しうるチャンピオンなのだ。

そうすると追いかける側としてはいつまでも背中に届きそうで届かない感じになるだろう。プロレスの試合では、自分の切り札をいかに相手より後に出せるかが決め手になる場合が往々にしてある。

この試合ではゲレーロもかなり我慢したと思うが、しびれを切らしたように見えたのはやはりゲレーロだった。そして今のYASUはそれを見逃さない強かさも備えている。

確かにギリギリの攻防だし、今大会のベストバウトがこの試合であることに異論はない。ただ、薄氷の防衛ではなかった。何度もペースをつかみかけながら、ゲレーロに最後まで主導権を渡さずにきたのは、さすがとしかいいようがない。

見た目のベビーフェイスに騙されがちだが、意外とYASUは激選区のがむしゃらジュニアで長期政権を築きそうな予感さえする。もちろん計算しづらい他団体からの刺客がくればまたわからないが、本人がマイクでいったように、「ベルトしかみていなくて、相手がみえていない」チャレンジャーならYASU政権は当分揺るがないだろう。

▼全面対抗戦6人タッグマッチ(30分1本勝負)

×久保希望 & 小川内潤 & 田中純二 vs ハチミツ二郎 & 新井健一郎 & ○KENSO(18分11秒)

17年前のバトラーツ入門をネタにして、当時の鬼教官・田中純ニにいびられた過去をもつハチミツが純二に復讐アピール。しかし、開始数秒で絞め落とされ、再試合アピールするいつものパターンから試合は再スタート。

実はプロ同士の絡みながら、ハチミツとKENSOがgWoメンバーなんで、急遽?久保がチーム凱になり、純二と小川内が助っ人という形になった。

試合の本筋ではないものの、滅多に見られないシークレットベース(小川内)対ドラゲー(アラケン)の対決や、昨年来の対決になる久保とKENSOの対決など見どころもたくさん。

しかしどんな会場でもKENSOのモーションは大きくてわかりやすい。それでいて破壊力もあるから、本当に厄介である。全日だけでなく、おそらくDDTでもKENSOはKENSOのままだろう。それが通用するからすごい。やはり世界をまたにかけてきた男は一味もふた味もちがう。

最近肉体改造をはじめている久保にしてみれば、その過渡期でスーパーヘビー級の技をくらうことはさぞかし大変だったと思う。まあ、結果はKENSOの圧勝だったが、以前に比べると爪痕は残せていると思う。あとは結果だすだけだ。

▼GWA ヘビー級選手権試合(60分1本勝負)

⑩[挑戦者]○陽樹(TEAM凱) vs ×林祥弘(GWO)王者

実は前日のパーティで殿に強烈な激励を受けた陽樹。これで気合いが入らねばレスラーではない。一方の林は初防衛にして、芸術劇場二度目のメイン。だが、前回は挑戦者でありながら敗北を喫して会場をあとにした。

ときは移り今度は林が王者になり、しかもヒールとして受けて立つ側になってはいるのだが、そんな余裕は微塵も感じられなかった。

まあ、スミス以降の王者って余裕もって試合するようなタイプは皆無だったし、生真面目な林がナーバスにならざるをえないほど、陽樹が強敵なのは間違いないだろう。

試合は林が腕狙い、陽樹が足狙いと一点集中攻撃のオンパレード。特に林の執拗なキーロックと何度も腕を伸ばした腕ひしぎ十字はあわやセコンドがタオル投入か?とヒヤヒヤするくらいかなりヤバイ決まり方をしていた。

そこまで腕を狙われながら足殺しを徹底した陽樹もまた見事!たぶん会場では場所によっては見えにくい席もあったので、映像で改めて見返したいくらい完成度の高い攻防であった。

正直大会場のメインにふさわしい素晴らしい試合であったし、どちらからも意地でも負けたくない気持ちは伝わってきた。

しかし、せめても攻めてもギブアップしない陽樹に焦ったのか?先に決め技のファルコンアローを繰り出したのは王者・林だった。たぶんプロレスで根負けした瞬間があるとしたら、こういう場合がそれにあたるのだろう。

逆にそれを返した陽樹は、更に足攻めに出てきた。これで林が、全体的にがくっと切れた感じがした。スミス戦でもそうだったが、林は緊張の糸がキレる瞬間がわかりやすい。明らかに動きが変わるからだ。

とにかく終始一貫して足ねらいにいき、林との我慢比べに勝った陽樹がこの試合では一枚上手だったと思う。陽樹にしてもかつて鉄生に挑戦し破れている。林にも負けられない理由があったけど、陽樹にしても負けられない闘いだったのだ。

試合はチーム凱4勝、gWo4勝のタイに終わり全面対抗戦は痛み分け。これに異を唱えたスミスが「負けてないから!」と捨てぜりふを残し、遺恨は次回2月大会に持ち越しになった。

注文つけた割にはいやにあっさりgWoが引き下がったが、この続きは来年2月のgWo興行と、4月のチーム凱興行の出来で勝負ということになった。どっちが面白いかという点ではかなり面白いアイディアだと思う。数字で割り切れない部分まで勝負の対象になるということは、よりハイクオリティな大会になることは間違いないだろう。

たいがい離合集散する年末のビッグマッチで珍しく両チームとも越年という形にはなったけど、これも新しい試みかもしれない。だんだんプロレスという新しい強敵も現れたし、来年はどうなるのかとても楽しみである。

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