[プロレス観戦記] FREEDAMS・葛西純プロデュース興行 広島デスマッチカーニバル2019

せかぷろ

イントロダクション

2019年夏のデスマッチカーニバルは産業会館の東館だった。西館より少しちいさいが、ハコとしては申し分ない。福岡県の会場が全てデスマッチNGになった今、距離的に広島産業会館が一番近い会場になる。土曜から8月とは思えないくらい気温が低くなっており、ジメジメはするものの過ごしやすいのもありがたい。小倉は寒いくらいだったが、広島は通常運転でやや湿度が高い。

さて、今年のデスマッチカーニバルは、例年と少し感じが違う。菊タローの手ほどきで、米国デスマッチ団体のCGWが新木場で二連線を開催。これにFREEDAMSが協力したことで、日本公演後に残留したGCW勢がそのまま参加している。海の向こうからきたデスマッチクレイジーたちの試合が生で見られるとあっては行かない選択はできなかった。

オープニング

ちなみに、場内アナウンスでは「過度なヤジはご退場いただきます」という内容が。広島も決して柄の良い土地ではないから、対策としてはわからないではない。時代的に心無いヤジは、土地を問わず淘汰されるべきだろう。いちいちアナウンスしないといけないのも悲しい話だが、これは必要なこと。映画のマナーCMだってあれだけ流していてケータイのライト光らせるケースが散見されるんだし。

◇シングルマッチ

×鎌田直樹 vs ○岡田剛史

一時期、オカダツヨシ名義になっていた岡田が再び名前を漢字に戻して?登場。対する鎌田は、昨年のヤングダムスではまだ練習生Kとしてエキシビションを戦っていた。月日が経つのは本当に早い。

岡田は近年現れている総合とプロレスを行き来できる選手。かつてはプロレスラーは総合に、総合はプロレスに対応できないとされていた時代から比べるとこちらも確実に時代が変わっているのである。

やはりテクニックでも見せ方でも岡田に分があるようで、なかなか鎌田はペースをつかめない。自分からグラウンドにいく意気はよいのだが、まだ実力が伴っていない感じがした。

かたや、岡田はホームでもあり、終始試合をコントロールしていた。最後も切り返しで決めた脇固めでタップアウト勝ち。アウェイという部分で鎌田には気の毒な部分があったけど、是非実力をつけた上でリベンジしてほしい。そうなれば鎌田のセコンドについた殿の思いも無駄にはならないだろう。

◇タッグマッチ

進祐哉&○ジョーイ・ジャネラ vs ×神威&近野剣心

第2試合からいよいよGCW勢が登場。とは言ってもこれは通常のタッグマッチなんで、デスマッチ以外の彼らを見る上では大切な試合になる。昨今のデスマッチは、まずプロレスができた上で、アイテムを使いこなすデスマッチ脳が求められるから、まず普通のプロレスができなければ話にからないのだ。

ましてやジョーイのパートナーはテクニックではFREEDAMS随一の腕前を誇る進だし、対角線にはインサイドワークにたけた神威と、総合のベースがある近野剣心。まさにジョーイの力量を見るにはうってつけのカードなのだ。

入場してきたジョーイにはバッドボーイという二つ名がつけられていたが、たしかに風貌は若い頃のショーン・マイケルズとクリス・ジェリコを足して二で割った感じ。

だが、独特な腕の取り方や時折みせるキチガ○じみた笑みに、確かなテクニックが加わっていて、バッドボーイというより、クレイジーボーイといった趣がする。特にスイート・チン・ミュージックなんて、オリジナルのマイケルズみたいな感じもした。かつてはGENTAROも使い手だった技だし、これが出るとアメリカンな匂いがする。

ジョーイと近野とのマッチアップもよかったが、神威とも手があっていて、普通の試合もこなせたとわかれば、やはりみたいのはデスマッチということになる。みた感じデスマッチファイターには見えないが、素養はありそうだから、開花したら面白い選手かもしれない。

試合はマッチョマンばりにジョーイがコーナーからのダイビングエルボードロップを決めて快勝!

◇6人タッグマッチ

○デビルマジシャン&菊タロー&塚本拓海 vs GENTARO&レイパロマ&×ドラゴン・リブレ

こちらは、GCWをアメリカから連れてきた菊タローが、ダブプロレスと絡む6人タッグ。菊タローとFREEDAMSというと今ひとつピンとこないものがあるだろうが、菊タローの若手時代を知る人間としては、佐々木貴との長い歴史からその関係性を読み解くことが可能である。

つまり佐々木貴と菊タローは単なる業界の先輩・後輩という間柄だけではない。佐々木貴というプロレスラーの原点において、菊タローは密接な関わりがある重要な人物であり、それが令和の時代に線になってCGW招聘につながっているというわけなのだ。CGW来日は裏返すと、菊タローと佐々木貴の信頼関係が長年紡ぎ上げてきた一つの結晶なのだ。

こういう時代をこえた流れは、昔から見ている人間にとっては非常に感慨深い大河ドラマ。プロレスは長く見ていると面白いことがいっぱい起きる。こんなことはプロレスくらいしかおこりえない。だからプロレスはやめられないのである。

始まってみると、入場からしてすでにカオス。パロマのダンスに乗って、GENTAROまでがノリノリでパロマダンスを披露。かたや菊タローは菊タローで、元・大阪プロレスの吉野レフェリーがいるせいか、いつもより腕時計をはじめ、小ボケをたくさんしこんでいたため、なかなか試合がはじまらない。

かと思えば、パロマのタイツが序盤で脱げてしまい、赤いTバック姿でやりたい放題やりはじめるし、GENTAROはなぜかマジシャンを相手にこれぞ「レフェリーのブラインドをつく」反則ざんまい。

これだけ個性派が揃うと目立つだけでも一苦労に違いないだろう。試合は一人で袋叩きにあっていたマジシャンが火炎攻撃から形の崩れた感じで、フィッシャーマンズバスターが決まって勝利。

ただ、マジシャンは相手を担ぐ時にふらつくクセがあり、もう少し下半身が安定しないと、フィニッシュのように崩れた形で相手を落とすと、下手したら受ける側がケガしかねない。みた感じ相手の技もあまり受けないし、今回は悪いところがやたら目に付いた。このメンツに混じるとボロがでるということかな?

◇シングルマッチ

×平田智也 vs ○グンソ

実はFREEDAMSのホームページでカードを確認していた時は対戦相手未定となっていたこの試合、蓋を開けたら平田の相手は難敵・グンソ。何よりホームだし平田の場合、肉体のデカさ以外何一つ有利に働かないアウェイぶり。

グンソは入場してくるなりいきなり平田に襲いかかり、場外でハードコアパーティ開幕。当然のように音楽が鳴りだし、ますますグンソペースで試合は進んでいく。

だが、しかし序盤の一方的な展開を逆転させていったのが、平田の肉体だった。身体一つで勝負できるというのは、プロレスラーにとって何より強い武器になる。

しかもグンソによって流血させられた額を赤く染めながら反撃する平田には大声援が送られる。アウェイだけどその空気を味方にできる力が平田にはある。これは大いに誇っていいだろう。

フィニッシュはグンソが平田の背中に馬乗りになり、キャメルクラッチかカバージョみたいな形で平田がギブアップ負け。残念ながら反対側の席だったのではっきりした決まり手はわからないけど、グンソの手のひらの中でしっかり自己主張できた平田は間違いなくFREEDAMSの明るい未来そのものだと私は思っている。

◇softbankスポンサード・有刺鉄線ボードデスマッチ

ミエド・エクストレモ&○シクロペ vs 吹本賢児&×藤田ミノル

昨年は葛西と組んで壮絶なデスマッチを披露した藤田ミノル。今回は同じunchain の吹本賢児と組んで、シクロペ&ミエドの2人と戦う。ある意味お互い勝手がわかっている相手同士だけに、どこまで相手の持ち味が引き出せるか、がカギになりそうな戦い模様ではある。

個人的に若い時代の藤田を知っているだけに、今の体型は正直だらしないとは思う。同期の本間と比べたら一目瞭然。だが、あれだけ身体を隠していた藤田がついに上半身裸てデスマッチに挑むようになったという意味ではまた感慨深くもある。実際、藤田の狂気とメキシココンビのクレイジーさは奇妙なくらいスイングしていたのは事実だろう。

有刺鉄線ボードだけでなく、吹本が持ち出したホチキスもデスマッチ要素を強めていたし、四人ともそのホチキスの洗礼を受けるなど、前半戦の締めにしてはなかなかの狂いっぷり!

最後は、息のあった連携を駆使したメキシココンビに流れがきて、シクロペが藤田の上に敷いた有刺鉄線ボードの上にムーンサルトを決めて勝利。収まりがつかない藤田はシクロペから勝利者賞をうばいとりにいき、試合後も大荒れになった。

しかし、有刺鉄線ボードデスマッチに会社の冠をつけた上に、勝利者賞まで出したソフトバンクもなかなか狂った会社だと思う。広島だけかもしれないが、一流企業もキチガ○になるという、いかにもデスマッチカーニバルと言った感じの試合だった。

◇ハードコアタッグマッチ

○ビオレント・ジャック&宮本裕向 vs 佐々木貴&×杉浦透

広島でデスマッチとくればやはり宮本裕向を外すわけにはいかないだろう。凱旋だし、主役につく資格は十分。だが、この試合でポイントになりそうなのが、近年デスマッチでも頭角を現してきた杉浦透。

スギウラマンタオルは絶対に買わないけど、プロレスでもデスマッチでも彼が凄いことをしている事実は十分認めている。あとは葛西や殿のようなカリスマ性がほしい…というか杉浦に足らないのはまさにそこで、凄いのに自分の価値を上げられてないところなのだ。

このデスマッチの猛者たちを食ってどれくらい杉浦が中心に立てるか?ポイントはそこだけ、と言ってもいい。

試合は見る前に危惧していた通り、杉浦がどうしても一枚落ちてみえる。頑張っているのもわかるし、ハシゴをはさみがわりにして、宮本の腕を攻めるなど、いいところもたくさんあったのだが、連携に関して言うと、明らかに急造コンビのはずであるジャック&宮本の方が一枚も二枚も上手だった。

思うに、杉浦はまだ全体を把握できる能力に欠けている感じがした。杉浦以外の3人は空間把握が非常によくできているため、特に普段組んでない宮本とジャックが阿吽の呼吸で試合していたのとは対照的だった。

連携に関して言うとデスマッチ云々はあまり関係ない領域でもあるんで、スギウラマンが真の意味でカリスマになるためには。だまだ超えなければいけないハードルがたくさんあると言うこと。少なくとも今回の内容でメインを超えたとはお世辞にもいうことはできない。

逆に言えば、そういう高いレベルを求められる位置まで杉浦透が成長してきている証でもあるのだ。あとは杉浦がこの結果を受けてどう変わっていくか?我々ファンはただ見守るだけである。

◇日米デスマッチサミット・蛍光灯300本デスマッチ

○葛西純&竹田誠志 vs シュラッグ&×アレックス・コロン

新木場二連線では煮え湯を飲まされた竹田としては葛西とのコンビでGCWに遅れはとりたくないはずである。

他方、新木場で手ごたえを掴んで勢いにのるCGWは追い風をそのまま広島に運んでくるだろう。この試合は、タイトル通り、事実上デスマッチの世界一を決める闘いになってもなんらおかしくはないのだ。

CGWの二人は、ヒゲに全身タトゥーの刺青モンスターがシュラッグ。そして一人だけTシャツ姿ながら向こうのトーナメントで優勝しているのがアレックス・コロン。

試合が始まる前からメインはすでに異様な空気になっていた。まずCGWコンビは互いに蛍光灯がぶら下がったロープにパートナーを叩きつけ、まさかのロープワークをすれば、竹田&葛西も頭で蛍光灯をかち割りこれに対抗。

しかも、ある意味日本デスマッチ界の最強2トップを前にクレイジーだけでなく、アイテムを使うセンスもベースになっているレスリングもCGWはなんでもできちゃうから驚いたのなんのって!

いや、世界は広い!こんな逸材がゴロゴロしてるんだから、本当にアメリカは底なし沼のような国だ。これは新木場が熱狂したのも頷ける話だ。葛西の竹串にも臨機応変に対応する能力といい、CGWコンビはバケモンか?といいたくなるくらい、中盤までunchain のカリスマタッグはおされていた。

しかしそこは長年にわたり第一線で活躍してきた意地もある。近年デスマッチでは、どこかに余裕らしきものすら感じる葛西と竹田がこんなに追い詰められるとは、正直恐れ入ったというほかない。しかも、必殺のパールハーバースプラッシュも返してしまうタフネスぶりには舌を巻くしかなかった。あれを返すという事実が受け入れがたいくらい、本当にびっくりした。

試合後、葛西がマイクで「こいつらはじめて日本にきて、こんな狂った試合してる。こいつらどうですか?」と会場に問うと、広島産業会館全体に「大・キチガ○」コールがこだました。竹田も「ご覧の通り無傷です。まだまだこの身体をカープのような赤に染めてやりますよ!」と引き続き、CGWとの継続対戦を約束。

後記

全体的に大ハッピーエンドだった今大会だが、実はデスマッチが開始されてから少し火種が残っており、なかなか座ろうとしない前列のお客に、後列のお客が大声でキレ始めてしまい、ヒヤヒヤする場面がいくつもあった。

幸い大事には至らなかったのだが、前もってマナーについてのアナウンスをしていなかったら、お客同士のトラブルにつながっていきかねない空気だった。広島という土地は書いた通り、お世辞にも柄が良いわけではないし、ましてやデスマッチ見せられて興奮状態にあるお客がへたすれば暴発しかねないとなれば、事前の対応は慎重にしておいて間違いないな、と思わされた。

熱狂と冷静は相反するだけに、なかなか難しい問題ではあるけど、基本気持ちよくみんな帰りたいから、やっぱりファンも視野が狭くなることには気をつけたいものである。

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