DDT とんこつスープレックス
(2025年11月8日・土・アクロス福岡・イベントホール )
イントロダクション
2024年は両目の手術から前職を辞めざるを得ず、そこから就労支援を経て2025年3月より、施設の障害者枠で働くことになったわけだが、自分自身の健康状態と並行して両親の介護も一段とハードさを極め、時間的にも金銭的にもプロレス観戦ができない状態だった。
それまで10年近く連続でみていたDDT博多大会をはじめ、2014年の初進出から皆勤だった東京女子も2年前で記録が途絶えてしまった。
そして迎えた2025年に父と母とが両方旅立ってしまったため、図らずも介護生活からは晴れて開放されたのだった。
これを逃すわけにはいかないと思い、急遽チケットをとって数年ぶりの博多大会に出向くことになった。
下関→アクロス福岡
今回は11:30開場、12:00開始と後楽園並みに早かったことと、プロレス居酒屋がむしゃら25周年記念営業が夕方にあったので、朝9時半の高速バスで博多入りし、午後の便で一旦下関迄戻って、そこから小倉入りすることに決めていた。

という事で朝9時前に家を出て、バス停近くの駐車場に車を停めて高速バスで博多行き。

少し昨日の疲れが残っていたせいか、車内でうつらうつらしていたら、あっという間に博多に着いてしまった。
ところが久々すぎてアクロスの位置がわからなくなり、だいぶ行きすぎてしまい、慌ててもどる羽目になってしまった。


どうにかアクロスについて、売店にいくと、Tシャツもパンフもなく、クリアファイルが主という非常に質素な品揃え。
仕方なく人生初のクリアファイルを購入し、色紙も一枚買って、ツーショット撮影会にも参加してみた。

年齢的にもうグッズは増やしたくないんだけどなあ。特にクリアファイルは。
でも時代の流れでこれも受け入れないといけないのかもしれない。
まあパンフなんか1番かさばるんだけど。
オープニング
大会前にKANON、秋山準、彰人、飯野雄貴、納谷幸男の体調不良による欠場に伴い、大幅なカード変更が加えられた。
スタートコールは両国でKO-D6人タッグと併せて三冠王になった上野と、なぜか直前まで知らなかったというTo-yが登場。
寝癖を誤魔化すためのキャップを上野がとると、明らかにヘアセットしてない。

しかし、欠場者の分まで盛り上げるとTo-yが宣言し、大会はスタートした。
第一試合
オープニングマッチ 30分一本勝負
○岡谷英樹 vs ×石田有輝(10分52秒
串刺し式クレイモア→体固め)
新宿FACEからスタートしたアフター両国では、シングルマッチが続いている石田。新宿では対戦相手のクリスから高評価をもらっていた通り、試合内容も素晴らしかった。

しかし、今回はダムネでより凶暴性に拍車がかかっている岡谷が相手。まともに受け止めてくるクリスよりやりにくいのは確かだろう。
案の定というか、岡谷は今の立ち位置から1ミリもブレることなく、ラフファイト一辺倒。

と言ってもワンパターンというわけではなく、以前より緻密で巧妙なヒールの技術を備えてきたようにみえた。

しかし石田も身体こそ小さいものの、相撲で培ってきた当たりの強さや、受けの強さ、突っ張りの勢いなど、ベースにある相撲のテクニックがプロレスに活かせるようになってきた。
特に猫騙しからの小股すくいスープレックスは一戦一戦切れ味を増している。おしむらくはまだフィニッシャーとしては確立されていないが、ゆくゆくは石田の代名詞的技になるだろう。
だが、カリスマから悪の帝王学を伝授された岡谷は、もはや一流のヒールレスラーである。



もともと持っていた狂気性に加えて冷静な試合運びができるとなると、なかなかその牙城は崩しにくいだろう。
石田もいいところまでは行けたのだが、あともう一歩及ばなかった。
第二試合
30分一本勝負 ※変更カード
MJポー&○デムース vs 高鹿佑也&×葛西陽向(8分58秒 バラゲサ→体固め)
2025年8月30日にデビューした葛西陽向は、当然福岡初登場。お父さんの試合は何度も拝見しているが、ついに息子の試合を見る日が来ようとは…。
実に感慨深い。

一方、なかなか地方大会に外国人選手を帯同させないDDTでは珍しく、今回はメキシコからデヌーチがツアー参戦。
これは予想していなかったので正直めちゃくちゃ嬉しかった。D GENERATIONS(D.G.S)の高鹿&陽向組には試練かもしれないが、注目カードなのは間違いない。
序盤は高鹿とデヌーチがあまりみせないルチャの攻防を見せていく。

片やポーに真っ向から若手らしくぶつかっていく陽向だが、なかなか思うようにはいかない。
それは無理もない話でキャリア的には一番下になる陽向が、既にベテランの域にある(と思われる)ポーを倒すのは簡単にはいかないのだ。


途中高鹿が陽向をリードして、連携にもチャレンジしていたが、正直ポーだけでも荷が重いのに、デヌーチまで加わると非常に厄介。
ルチャリブレというより完全に通常のプロレススタイルに順応できている上に、ポーとの連携にも隙がない。

結局DGS2人は10分持たず陽向がデヌーチに沈められてしまった。

しかし、何事もまず試練を味わうのは大切な事。この試合もきっと陽向の糧になるに違いないと思う。
第三試合
3WAYマッチ 30分一本勝負 ※変更カード
○To-y vs ×平田一喜 vs 正田壮史
(9分55秒 腕ひしぎ逆十字固め)
一度に大人数が抜けてしまったので、各所カードが大幅変更となり、この試合は急遽3WAYに。
やはりこの中では変則的な試合を一番こなしてきている平田が、若手の有望株相手にどういう試合を見せてくれるかに注目したい。
試合前にマイクを握った平田はもともと正田とがっつりやり合うつもりでいた、となぜかTo-yを非難し始めた。

しかも、現エクストリーム王者のTo-yがいるからという理由で、ギャンブルによる決着を要求し、正田が取り出したのが、あみだくじ!
隠れている数字に従い、1の場合はワンカウント、3の場合は3カウント、5の場合は5カウントフォールをとられたら負けという試合形式らしい。
で、一番先にTo-yが3を引いたため、「つまんないやつ」と散々こき下ろされる羽目に。
さらに平田が5で、あみだくじを用意した正田はまさかの1を引いてしまう。
勝手にルールをいじくる3人に困惑する松井レフェリーだったが、とりあえずやってみようという事で、試合はスタート。

だが、今まで味方のふりをしていた平田は1をひいた正田を容赦無くフォールにいく。
もちろんTo-yもこれに続くのだが、当然ワンフォールも許されない正田は慌ててキックアウト。
逆にフォールしにいくと、ついいつもの習慣でカウント3で自ら勝ち名乗りを受けようとカバーを解いてしまった正田は、平田からの勝ちを取り逃してしまう。
更にはアントンから預かってきたという正田のごんぎつねが、試合をさらに混とんとさせていく。


こうしてある意味スリリングな3WAYはTo-yが平田を捕獲して、腕ひしぎにとらえて平田がタップアウト!

最後はフォールの数関係ない終わり方に会場呆然。ある意味でDDTらしい試合だった。
第四試合
30分一本勝負 ※変更カード
○上野勇希 vs ×松永智充(8分58秒 Jul.2→ 片エビ固め)
カード変更に伴い突発的に実現したシングルマッチ。最近はメインストーリーには絡んでいない松ちゃんだが、秋山が太鼓判押すように常日頃からいつでも試合に出られるようにしているコンディションの良さは、広く知られている話。
現在三冠王とぶつかってもなんら遜色のない実力の持ち主だけに、上野もうかうかはしていられない。
一気に期待が膨らんだシングルマッチ。現在の松ちゃんがどれだけ三冠王に爪痕を残せるか?
毎回、松ちゃんの入場で流れる「Runner」はかつて「語れ、涙」を入場テーマ曲にしていた時代の平田一喜と争って勝ち取ったもの。
「Runner」が流れて松ちゃんが入ってくると、平田と抗争していた時代をどうしても思い出してしまう。

試合開始前に松永はいきなり奇襲をしかける。
そのまま一気に畳み掛けようとするが、さすがに上野はそこまでは許さない。

会場人気が高い松ちゃんに声援が集まると「俺への声援はないんか?」と会場を煽ってみせる。またこれが全然不自然ではない。
あっという間に攻守逆転し、そのまま熱くなった2人は場外に傾れ込む。

以前西鉄ホールでみた上野対彰人戦もそうだったが、上野はキャリアをかさねていく中で、対戦相手の良さを引き出す術を身につけていったように思う。
対松ちゃんでいえば、頑丈な肉体とゴツゴツした試合運びが持ち味で、どちらかといえばスタイリッシュな上野のスタイルとは相反する。


しかし、場外戦からそうだったが、チャンピオンとして受けて立つ側になった上野は、敢えて松ちゃんの土俵に立ってゴツゴツした試合を挑んでいく。
いわば相手の土俵であっても、実力で上回るのが王者たるゆえん。まさにこの日の上野勇希は体現していたように思う。


試合後マイクで上野がかつてDDTが経営していたお店で松ちゃんと一緒に仕事していたこと、試合自体は黒パンツ時代のダークマッチ以来という事を語り、感謝を伝えた。
そして、来年4月18日にアクロス福岡でDDTの大会が開催される事を告げ、最後に「セミもメインも楽しんでください」と締めて前半戦は終了した。
休憩時間
この時間を利用して、葛西陽向選手のポートレートにサインをもらいに行く。
少しだけ話したが、アメリカンプロレスがお好きらしく、私がWWEのブロン・ブレイカーの話をしたら、「同業者としてあのスピアはくらいたくない」と笑顔で答えてくれた。

パンフかカレンダーなら以前みたいに全テーブルの選手からサインもらえるんだけど、もうそういうチャンスはないのかもしれない。
セミファイナル
30分一本勝負 ※変更カード
○髙木三四郎&クリス・ブルックス vs 樋口和貞&×佐藤大地(11分00秒 ラ・マヒストラル)
11.3両国で復帰後、To-yのもつエクストリーム王座への挑戦をぶちあげるなど、復帰以前より元気になっている大社長。
欠場者が相次いだツアーの代打にも自ら参戦して、セミファイナルで樋口&大地という巨漢コンビとの対戦を実現させた。

大社長は一旦自分の入場終わらせて、わざわざ入場口にUターンして、改めてブンブンと正田を引き連れてクリスと一瞬に入場してきた。
すっかり気分はSCHADENFREUDE International (シャーデンフロイデ・インターナショナル)の一員になったつもりの大社長は、シャーデンタワーにのぼり、ご機嫌。

調子に乗ってゴムパッチンを要求するが、レフェリーが静止。しかし正田を使ってゴムをクリスに持たせたまではよかったが、会場奥からクリスが放ったゴムが大社長に激突。


しかも反対側からは正田がゴムの端を握っており、大社長はあわれサンドイッチに!
激怒する大社長に平謝りするクリスと正田だが、この隙をついて樋口と大地が体格を活かして猛攻。

特に樋口のチョップはえげつないくらい大社長の胸板を抉っていく。

ところが復帰してからの大社長はここでズルズルやられたりはしない。うまい具合にクリスにつないで、最大限のダメージを受けないようにしていく。

その様はまるで休業前まで貫いていた大人げない大社長そのものだった。
反撃に転じた大社長はお得意の「ルーチャ」からクロスチョップをうったり、大活躍。動きにも肉体的コンディションでも年齢を感じさせない。
最後はクリスのアシストもあって、大地をラ・マヒストラルで丸め込んで見事勝利。復帰後は初めてになるユニバーサル王座挑戦に弾みをつけた。
最後は正田を交えて、SCHADENFREUDE International (シャーデンフロイデ・インターナショナル) としてポーズを取り、退場前にはブンブンを交えてファイヤー!ポーズと、すっかりユニットの一員になりきっていた。

メインイベント
スペシャル6人タッグマッチ 30分一本勝負 ※変更カード
KONOSUKE TAKESHITA&○佐々木大輔&イルシオン vs MAO with KIMIHIRO&HARASHIMA&×須見和馬(20分19秒 Dooms of day the Alpha→ エビ固め)
11月2日のNJPWにおけるIWGP世界ヘビー戦において、後藤洋央紀相手に防衛を果たし、晴れてIWGP世界ヘビー級王者として、DDTのツアーに凱旋してきたKONOSUKE TAKESHITA。
2022年4月に渡米して以降、3年7ヵ月ぶりにDDTの地方巡業に参加したTAKESHITAは、新宿FACEで、かつてハッピーモーテルというユニットを組んでいたアントーニオ本多と一騎打ち。

かつて監督(アントン)から教わったプロレスを大切にしているというTAKESHITAは、博多では自ら信頼をおいているDAMNATION T.Aの総帥、佐々木大輔と、かつて若手時代にプロレスをいちから教えたイルシオンとタッグを組む。
実はイルシオンとTAKESHITAは師弟関係にある。今回もやはりDDTにおけるTAKESHITAの「原点回帰」がテーマになるようだ。
もともとは、STRANGE LOVE CONNECTION対DAMNATION T.A というユニット対決の色合いが強かったのだが、KANNONの欠場もあって、ここにミスターDDTであるHARASHIMAが加わり、テーマとして「原点回帰」の色合いが強くなった。

入場はSTRANGE LOVE CONNECTION 、HARASHIMA 、DAMNATION T.A 、TAKESHITA がそれぞれのテーマ曲で入場してきた。
個人的には「TAKESHITA 、おかえり」という感じになるのかなと思ったら、圧倒的オーラにあてられた観客は登場したTAKESHITA の姿に思わずどよめく。
今回のダムネ版TAKESHITAは、個人的にAEWのドン・キャリス・ファミリーとして暴れているTAKESHITAに近い感じがしていた。


そもそも新宿でダムネが KIMIHIRO を襲撃している流れもあったので、場外戦になった時、TAKESHITAはKIMIHIRO を壁ドンして襲撃。今回はMAOがすばやく救出に入ったので、大ごとにはならなかったが、TAKESHITAがいなくなってもしばらくSTRANGE LOVE CONNECTION とダムネの抗争は続いていきそうな予感がした。




しかし、ここで頑張ったのが須見和馬。私の近くの席にいたお客さんがTAKESHITAを見て「ボルチンみたいにでかい」と言っていたが、その是非はともかく須見とTAKESHITAとでは明らかに体格は違うのは自明の理。



実際、人でなしドライバーからのジャーマンホイップで力の差を見せつけるTAKESHITAだったが、逆に須見は小さい体をいかして全身のばねを使ってTAKESHITAを追い込んでいく場面もみられ、大きな歓声を集めていた。
もちろんイルシオンもかつての師匠に良いところを見せようと、必死になっていたし、現在のメンターであるカリスマとTAKESHITAの連携もバッチリ決まっていた。
顔合わせがTAKESHITA対HARASHIMAになると、お互いが現在進行形の自分をぶつけ合っていく。年齢的にHARASHIMA が不利になるかと思いきや、かつてとなんら変わらない鋭い蹴りでTAKESHITAの胸板を打ち抜いていくのだから大したものである。

20分に及ぶ激闘は最後に須見をとらえたTAKESHITAとカリスマの超連携が決まって、ダムネの勝利。
IWGPチャンピオンとしての凱旋を見事に飾って見せたのだった。

エンディング
イルシオンに最初にプロレスを教え、アメリカに行く際に、一番信頼できるカリスマに弟子を託したことを明かしたTAKESHITAは、「いいレスラーになったな! 今日は組めて嬉しかったよ。でもなDAMNATIONで闘うなら、まだまだ強くならないとカリスマには追いつけないぞ」とゲキを飛ばし、「最後はお前が締めろ」とマイクを渡す。
イルシオンは感極まった感じでしゃべり出す。
「道場にきて最初に教わったのが竹下さん。教えてもらったこともたくさんあったし、怒られたこともあった。でもようやく横に立てるようになった」

そして改めて現在のキャラクターに戻って「次、来るときは4月18日、このとんこつクセェ街に俺たちが帰ってきてやるよ! それまではこんな言葉を聞いて待っているんだな! Fu○k You!」と吠えた。


最後はダムネの全員が上がって集合写真を撮って大会は終了した。
後記
大会終了後、佐藤大地選手にサインをもらって、会場を後にした。15時のバスに乗ると、17時に下関について、そこから車を運転してがむしゃらにいけばちょうどいい時間になる。

バスに乗り込んで、帰るまではひたすら観戦記を書いていた。
思い返してみると、欠場者が大量に出た大会であったにもかかわらず、11月3日と同様に成功を収めたのは、ここまでDDTが紡いできた歴史と経験がものをいったのではないかと思った。
そして選手の層も厚くなっていざという時に、いつでも備えられれる体勢になっていることも憂いを少なくできた要因の一つなのではないか。


人数だけそろっていてもだめ。常日頃から万が一のことまで考えて想定しているからこそ、ピンチの時にむしろ団体としての底力を発揮できたのだろう。
とはいえ来春は今回来られなかったメンバーにはぜひ復活してツアーに来て欲しいし、その時がくるのを楽しみに待っている。
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