[プロレス観戦記] #STRONG HEARTS OWE福岡大会

GLEAT観戦記

イントロダクション

2019年4月に「旗揚げ」したOWE、いや#STRONG HEARTSの初の全国ツアー。今回は初進出になるアクロス福岡大会である。

今このタイミングでOWEを見ておきたい理由。それは提携先であるAEWの、未来における日本上陸を見据えて、世界のプロレスの潮流に触れておきたいという気持ちがまずある。

次に事実上ドラゲーとは完全決裂したと考えていい#STRONG HEARTSのトップであるCIMAの「世界戦略」である。単に上海とアメリカと日本を行き来するだけなら、わざわざドラゲー本体と距離をおく必要はない。

ぶっちゃけOWEとドラゴンゲートが登記上同じ会社かそうでないか、ということにはあまり意味がないだろう。もはやイデオロギーの面で、二つのグループはたぶんまじわりようがない。

CIMAが仮にドラゲー内に居続けていたら、たぶんウルティモドラゴン校長が、ドラゲーに出戻ることなどあり得なかったはず。今までの歴史が水に流す過去があるのと同様、決して流せない過去もある。

ドラゲーが校長を選択したということは、OWEとは現時点では交わらないという意思表示であり、違う道に分岐したと考えるのが自然だろう。それはCIMAもまた同じはずである。

オープニング

とするならば、原点回帰に転じたドラゲーに対して、CIMAや#STRONG HEARTSが目指すものはなんなのか?プロレスファンとしては気にならないわけがない。

ましてや半月もしないうちにドラゲーは年の掉尾を飾る福岡国際センター大会を控えている。このタイミングで#STRONG HEARTSが博多にくる、という意味は、闘龍門時代から博多に思い入れをもつCIMAが一番よくわかっているのではないか?

つまり今のドラゲーとOWEの間には、エンタメのフリをして、その実きな臭い感じがプンプンするわけで、見え隠れする「ガチ」な空気まで見られたら、それだけで博多くんだりまで出かけていく甲斐があると言うもんである。

さて、いざ開場してみるとグッズがしょぼい。Tシャツのデザインも微妙。ペラペラのパンフは一冊千円。しかも椅子並べすぎな感満載。先鋭的な世界的戦略と微妙なインディ感が混在している感じがした。

今回は欠場中の山村武寛が臨時でリングアナを務めた。もともとマイクはドラゲーで鍛えられているけど、リングアナは多少勝手が違うのか、ややカミカミに。一方映像を使った派手な演出はエンタメ感たっぷりで期待値は否が応でも上がっていった。オープニングアクトの中国武術のパフォーマンスに続いて、山村がCIMAを呼び込んだ。

第1試合

 ○アレックス・ゼイン&CIMA 対 ×ガイア・ホックス&田中純ニ(九州プロレス)

先にCIMA一人が入場してきて、今からでてくるアレックスがビザと飛行機トラブルで大阪は参加できなかったが、博多から参戦という話を延々としはじめる。

それからアレックスを呼び込む。はじめてみるアレックスは筋肉質でなかなか精悍な感じの選手。

一方、田中純ニのパートナーであるガイア・ホックスは台湾出身のなんと19歳!10代とは思えぬ佇まいと驚異的な身体能力!荒削りだが磨けば光りそうな選手である。

試合はやはりCIMAと純二がある程度リードしてそこにアレックスとガイアが乗っかる形になった。空中戦にはみるべきものがある二人だが、トラディショナルなプロレスのスタイルはこの試合では見られなかった。そこがあるか、ないかで評価派変わってくるんだけど、運動神経はよいので、ハイフライだけでない試合の組み立てを憶えてもらいたいかな。

そしてロングツアーから解放されたせいか、CIMAのコンディションがやたら良い。途中途中で純二を叱咤する余裕までみせる。ある意味長年ドラゲーにいて、第1試合の重要性がわかっているからこそ、みずから出張ってきたのだろう。

とりあえずCIMAが託したい未来はみえた試合だったと私は思う。

第2試合 3wayマッチ

 ○めんたい☆キッド(九州プロレス) 対 関札浩司(大日本プロレス) 対×スコーピオン2X

12月の九州プロレスワンデイタッグトーナメントで#STRONG HEARTSが出場するバーター兼リングレンタルで参戦している九州プロレス勢。

2014年のワクチンファイト・アクロス福岡大会で闘龍門時代の大先輩CIMAとめんたいがシングルで激突して以来、繋がった接点が今回のOWE参戦につながっている。

まあ、めんたいや関札が3wayという試合形式に慣れているのは当然だとしても、問題はないキャリア1年7か月のスコーピオンが、この難しい形式の試合でどう存在感を発揮するか?

序盤こそめんたいや関札がリードしていたが、スコーピオンもなかなかどうして。しかも違和感なく試合に溶けこんでいる。

スコーピオンの場合、見た感じが中邑真輔っぽいというか、スタイリッシュヒールをやらせると似合いそうな感じがする。できる素材ではあるけれど、まだヒールまでやらせるのは早すぎるかな、という感じ。

これでキャリア積んできたらたぶん期待通りに存在感のある選手になりそうである。トラディショナルな部分は置いといても記憶に残るキャラクターを最初から持っているのは大きな強みだと思う。今後の化けっぷりに期待したい。

第3試合

桜島なおき(九州プロレス)&×イーロン対ヤンハオ&○Mr.T-cool

九州プロレスの桜島を除けば全員OWE中国勢。ここまでの試合と違うのは、桜島以外が全員中国勢という事と、その中国勢が意識してプロレスの動きを取り入れていたこと。

こうなってくると、身体能力だけではどうにもならないキャリアの浅さが浮き出てしまう。例えば逆エビに決めた時に腰が落とせなくて、逃げられたりするあたり、まだまだ修行が必要な課題も浮き出てみえた。

あと、OWE中国勢は特にハイフライにこだわりがあるのか、やたら飛ぶのだが、これも見せ方で印象が変わる部分なので、これからどんどんお客さんに見られていくうちに成長していくだろう。

個人的には、大阪プロレスつながりで吉野レフェリーと桜島の邂逅が面白かった。昔馴染みということもあって、ちょいちょい桜島をいじるのだが、絶妙な掛け合いが見られたのは得した感があったなあ。

セミファイナル:OWE無差別級選手権

○[挑戦者]入江茂弘 対 ×[王者]ツインジェ
(入江が第二代王者に)

OWEで今のところ唯一存在するタイトルがOWE無差別級のシングルベルト。OWE内の同じようなキャリアの中で、なぜツインジェだけかいち早くベルトにたどり着いたのか?

その答えは試合が始まってみたらすぐにわかった。ツインジェはプロレスができて、しかもバックボーンに頼らない試合をすでにしていたからだ。

プロレスがなんなのか全く知らないところからスタートして、2年未満でこの位置にいるというのは驚異的である。

ただ、ツインジェは新人としてみたら驚異的なんであって、やはりチャンピオンとしてみたら課題があるな、と感じた。その一つが受けの弱さ。

ある程度までは耐性があるが、軽量級が多い#STRONG HEARTSの中で、ずっしりと重い攻撃を信条とする入江の攻撃に、序盤は攻勢に転じられたものの、ダメージが蓄積してきた終盤になると、青息吐息になる場面が目立ちはじめた。

ここから逆転するには無駄な動きを減らして、印象的なポイントで技を使い、動いているようにみせることが大切になってくる。CIMAをみていればわかるが、確かに40代としては驚異的な運動量を誇るものの、むやみやたらに飛んだり跳ねたりはしない。

むしろ、終盤に逆転できるスタミナを温存したり、ダメージの回復につとめたりしながら、試合を進めているので、同じ電池を使ったとしてもツインジェよりは長く試合ができる。

それは入江にしても然りで、強烈なツインジェの攻撃を受けつつ、上手にダメージを蓄積させない試合運びができていた。

そもそも団体の至宝であるタイトルマッチがなぜセミファイナルなのか?ということを考えると、既に答えは出ていたのだ。

しかし、ツインジェがこれらの課題を克服して再びチャンピオンに返り咲いた時には、たぶん入江もうかうかはしていられないだろう。まだまだツインジェの中に眠っている可能性はたくさんありそうだからだ。

メインイベント:

×チューヤン&ダーべン&ファン・ローガン 対 鬼塚一聖&エル・リンダマン&○T-Hawk

ドラゲーではちょうど若手からスター選手として羽ばたきつつあったT-Hawkとリンダマンだが、OWEでは既にメインイベンター。DDTやW-1でも存在感は示していたが、やはり自団体のメインを締めるという自覚が試合からビンビン感じられたのだ。

一方、OWE初の日本人練習生として入団してきた鬼塚はまだまだキャリアが不足していると言わざるをえない。中国勢のギラギラした感じもないし、メインで萎縮したのか?リンダマンにゲキを飛ばされる場面も見られた。

だが、鬼塚にはキャリアでははるかに先行している、同級生の山村が欠場している以上、彼には追いつき追い越したい気持ちもあるはず。

本来ならリングアナとしてでなく選手として博多のリングに立ちたかったであろう山村の想いを、鬼塚は背負って闘うべきで、残念ながらその気持ちはこの日の試合からは見えてこなかった。

とはいえ、試合自体はさすがにメインにふさわしい内容になった。特にOWE中国勢のダーべンはミレニアルズ時代のT-Hawkに雰囲気も体格も酷似しており、彼の精進次第では、将来T-Hawkとシングルでの試合を見てみたいと思った逸材である。

もちろんチューヤンもローガンもたくさんいるメンバーの中から選抜されてメインに立っているだけあって、身体能力プラスプロレスの動きにも対応できていた。

正直、彼らにないのは経験値だけなので、これほどのレベルであるならば、T-Hawkやリンダマンが負けても全然不思議ではない。むしろその日はかなり早いタイミングで訪れそうな気さえする。

後記

出足こそ、入りが心配されたアクロス福岡だったが、終わってみれば超満員札止めの入り。それもそのはず。本部席横には、あの岡村隆史・もとドラゲー社長がいたのだ。

だいたい初進出となる地では選手や代表が何度も営業に訪れて、まあ半分以上埋まれば合格かな、というのが新日本を除くいまのプロレス業界の実態である。

しかし、OWEはほぼ選手が顔出ししないで、初進出のアクロスを満員にしてしまった。そこへもってきて関係者席に岡村さんがいる…となれば、OWEの営業面でなんらかの関与をしたことは疑いようがない。

ドラゲーを退社した以上、どこにかかわろうが岡村さんの自由だけど、これによって岡村さんがCIMA派についたと捉えれば、これはかなりセンセーショナルな事件である。

つまりは校長をいれて岡村さんを切ったドラゲーと、岡村さんを受け入れて校長と距離を置いたOWEは、もはや別々の運動体ではないか、というのが私の見立てである。

これほどエンターテインメントとして高い完成度をみせながら、片一方ではきな臭さがプンプンしてくるというのは、マニア的には堪えられないものがある。今後も私はOWEやAEWには注目していきたいと思っている。

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