[プロレス観戦記] がむしゃらプロレス 秋の最強戦士決定戦‼︎『GAM1 CLIMAX’2016』〜力戦奮闘 〜(一日目)(門司赤煉瓦プレイス:2016・9・17土)

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イントロダクション

長いことプロレスに関わっていると色々な出会いと別れがある。今回の場合は突然の別れがあった。それについては別に時間を設けてゆっくりお話したい。触れてしまうと本題からそれてしまうからだ。追悼大会も決まったらしいし、それに向けて私も気持ちの整理をしていきたい。

さて5年目にして史上初となるGAM1二連戦。エントリーもはじめて他団体から4名の選手が参戦しぐっと盛り上がる予感大。緊急参戦する野本一輝、三連覇を狙う陽樹、何をするかわからない優勝経験者スミス、そしてGAM1に関しては未だ未勝利という七海健大、ジュニアの逸材にしてヘビー級をも苦にしないゲレーロ、gWoを脱退し動向が注目される鉄生と、今回は非常に盛り上がる可能性が高い。近く台風をもモノともしない熱い闘いが期待できそうである。

オープニング

試合開始前に故・林祥弘さんへ一分間の黙とうがささげられ、沖縄からのゲスト安里ミムさんのライブの後、入場式があって前年度、前々年度覇者にして現二冠王、陽樹が高らかに三連覇宣言。過酷な闘いがここからスタートした。

▽GAM1トーナメントAブロック1回戦 第1試合(30分1本勝負)

①○ドラゴンウォリアー vs ×トゥルエノ・ゲレーロ

山口は毛利道場エゴイストプロレスより参戦のドラゴンウォリアーはがむしゃらにはいないタイプの選手である。プロでいうなら全盛期のダイナマイトキッドを彷彿とさせる素晴らしい筋肉と、スピード感溢れる技の数々はまさにカミソリファイターである。

一方がむしゃら初の海外経験者にしてメキシコルチャ・リブレをベースにもつゲレーロは、ヘビー級も苦にしない戦績を誇りながらタイトル戦は全敗。なにか勲章がほしいところだが、焦るとせっかくのチャンスもふいになる。

試合は序盤こそ明るく楽しい雰囲気を醸し出しつつも、ドラゴンがメキシコ仕込みのゲレーロの動きに対してひけをとらないスピードで対応。これに対してゲレーロは体型からは想像つきにくいが自慢のパワー対決で挑んでいく。ただ、自信がいつの間に過信にかわることもまたよくある話。ゲレーロはスリーアミーゴスに行きながら、3回目を雪崩式に変えた。このあたりでいつもとパターンを変え始めて、見ている私は凄くイヤな予感がした。

実はドラゴンも今までみせていないテキサスクローバーなどを繰り出し、未知の引き出しをあけていたのだが、このあたりはドラゴンが作戦的に餌を巻いていた感がある。 ゲレーロがこれに応じて自分の試合のリズムを崩せば、ドラゴンには有利になる。

実際、勝機とみるや、ドラゴンは終盤に伝家の宝刀、カミソリ・スィンギング・ネックブリーカーを決め、ゲレーロの動きを一発で封じてしまった。散々警戒していたはずなのに、いつも通りの試合運びができなかったゲレーロの完敗パターンである。結局これが響いてゲレーロはまたしても大事な星を落としてしまった。

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▽GAM1トーナメントBブロック1回戦 第1試合(30分1本勝負)

②○ジャンボ原 vs ×豪右衛門

春のGWA挑戦では同門のチャンピオン陽樹を散々苦しめたジャンボと、宿願のタッグ王座奪還でノリにのる豪右衛門の激突はまさにシングル最強を決めるに相応しいカードである。二人とも勢いにのると、共に怖いはずなんで、先んじて相手の勢いを封じていかに自分が有利な試合をするかがカギ。一発勝負ならある程度身体にダメージを刻んでも頑丈な二人なら大丈夫だろうが、GAM1はトーナメント、しかも史上初の二連戦となれば、そこらへんは考えざるを得まい。

試合は序盤からジャンボがレッグラリアットで先制し、そのまま勢いをつけて、豪右衛門のリズムを崩しにかかった。想像だが、いつものペイントもせず、林と共に巻いたタッグのベルトを二本下げてでてくるなど、らしくないことをしていた時点で豪右衛門のメンタルは平常ではなかった。だから流れを変える前にジャンボの後手に回ってしまった。

フィニッシュにアニマル浜口さんの得意技、エアプレーンスピンからのバックフリップで昭和プロレス好きのジャンボがタッグチャンピオンの豪右衛門をくだした。予想通り短時間勝負になったが、故人に捧げるつもりで闘うより現実的に勝ちを狙った方が勝つ。プロレスの神さまは時に残酷な顔をみせることもあるのだ。

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▽GAM1トーナメントAブロック1回戦 第2試合(30分1本勝負)

③×モミチャンチン vs ○鉄生

山口の最終兵器、モミチャンチンは毛利道場ゴイストプロレスの中ではかなり警戒が必要な選手である。なぜならば4月からみてきて、急成長を遂げていると私が感じているのが彼だからだ。今までタッグマッチしか見ていないけれど、シングルの実力は未知数。しかしながらタッグでみせる状況判断の鋭さと、試合の流れを的確につかむ力は、外見からは想像がつかない。加えて対戦相手の研究のため?わざわざ周南から北九州まできてイベントプロレスの観戦までしている研究熱心さ。どこまでもプロレスが好きでたまらないという熱いハートも強力な武器である。

相変わらず食えないキャラのモミチャンチンだが、テーマ曲を「THE RED SPECTACLES」(イゴール・ボブチャンチンのテーマ・もとはソビエトレッドブル軍団のテーマ)にして入場してきたことから気合の入り具合がみてとれた。

果たして試合はいきなりモミチャンチンのスクールボーイで幕を開けた。あわてて場外エスケープする鉄生。しかしその後もモミチャンチンの勢いが止まらない。180センチ超ある恵まれた体に抜群のパワー。そこへきておとぼけを決め込んでいたかと思えばいきなり場外で鉄生のお株を奪うかのようなヒールモードにチェンジしたりと実に変幻多彩。圧巻はラリアットをのどもとではなく、鋼鉄ボディの鉄生の腹めがけて何発も打ち込んできたこと。鎧の上から鉄の棒でたたきこんだようなセオリー無視のように見えるこの攻撃は意外と鉄生から余裕すら奪っていった感じがした。そのうえとにかく徹頭徹尾、鉄生のウィークポイントである右膝破壊にこだわったモミチャンチン。試合の進め方も実にセオリー通り。大男ながら実に知恵もまわる。間違いなく将来化け物に覚醒することは間違いないだろう。

ただ、やはりシングルマッチでは鉄生に一日の長があって、肘がいかれそうになっても最後のツメまでは許さなかった。しかしモミチャンチンがこれで経験を積んで来たらとんでもないことになりそうだ。エゴイストおそるべしを印象付けた一戦だった。

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▽6人タッグマッチ(30分1本勝負)

④タシロショウスケ&×ダイナマイト九州&TA-KI vs MIKIHISA&○YASU&マスクド・PT

余りというわけではないが、ここにも出られない選手がいることを思うとがむしゃらも随分層が厚くなったものである。

マスクドPTやTA-KI、YASUや九州は別として、残ったメンバーは次回のトーナメント出場を見据えた闘いをみせる必要がある。別にカツをいれるためでもないのだろうが、PTモードによった激しい試合になった。フル出場できない分、ここぞという時の暴れっぷりはさすがというほかない。やたらと椅子攻撃をしていたのは気になったが、普段のストレス発散をしたかったのかな?とこの時はそんなことを考えていた。

そういえば自分から言い出してチーム凱を追放されたTA-KIがどさくさに紛れて凱側にいたのだが、まあいつの間にかgWo入りしていたMIKIHISAもいるので、そこはあえて問わないことにしよう。

タシロも大型の体を生かした攻撃は見栄えがするのだが、小回りの利くYASU相手にもっと圧倒するような試合をしないと、逆に手玉に取られているようではGAM1の舞台には立てないかな?MIKIHISAもいいところまではきているのだけど、全体的にキック以外で「これは!」と思えるものがない。格闘系の先輩に太刀打ちするにはヒールの色以外にもうひとつMIKIHISAならこれだ!というものがほしい。体をでかくすることも急務だけど、対抗戦の舞台に立とうと思ったらそう簡単にはいかないだろう。

試合はまあベルトの数と連携でも上回っていたgWoが余裕の勝利。慣れないレフェリングでKKさんも大変だったとは思うけどよくやったと思う。

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▽GAM1トーナメントBブロック1回戦 第2試合(30分1本勝負)

⑤ALLマイティ井上 vs 七海健大

GAM1が始まって5年未勝利ながらエントリーされ続けている七海健大だが、いくらなんでもここいらで結果出さないと流石にまずい。しかも対松江だんだんプロレスにも二連敗中で、よりによって対戦相手がその対抗戦の中で因縁が生まれたAllマイティ井上とくれば、これはもう背水の陣どころの騒ぎではない。

ふと以前カブキさんにお話を聞かせていただいたときに「佐々木健介対小橋建太」のチョップ合戦に苦言を呈していらしたのを思い出した。「お客に合わせてお客の望むものを出すのはいいけど、お客の想像をちょっと裏切ってみるのもプロとしては大事。お客のいいなりになっている試合をしちゃだめだ」・・・・・

なぜこの言葉を思い出し方たかというと今の七海健大が、お客の言いなりになって試合をしているからだ。相手を寝かせて何発も平手うちをする、ここ最近のお決まりパターン。「もう一回」といわれるとまた調子にのって同じことをする。でもダメージを与えているようで、実は相手は受け手に回って休んでいるだけという事実にいい加減健大は気づくべきである。寝かせて関節もとれる技術ももっているのに安易に受け狙いに走って自滅するというパターンで今回も健大は黒星を喫してしてしまった。正直もはや健大はエントリーから外れてほしいと思う。せっかくのチャンスを、ここまで台無しにしたのでは、GAM1の名に傷がつく。どんな名選手でも素材をいけせなければ上で試合する資格はない。ここまで応援してくれてるファンにも失礼だと思う。

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▽GAM1トーナメントAブロック1回戦 第3試合(30分1本勝負)

⑥×グレートカグラ vs ○野本一輝

北海道から緊急参戦の野本一輝に対して7月大会で試合ブランクを敗戦の原因としてあげていたカグラは井上共々西日本の社会人団体をサーキット!ってプロかよ!と思わず言いたくなるくらいGAM1にコンディションのマックスがくるよう調整してきた。とはいえ井上も普段から声がかかるとどこにでも現れて試合しているので、今回は死角らしい死角がない。

陽樹戦の反省を踏まえた上でシュミレーションもおこなりないはずなんで、相手がいきなり野本に変わったからといってさほど問題ではないだろう。

しかし、盟友林祥弘の代打として彼の遺志を受け継ぐ野本もタダでは終われない。色んな仕事をキャンセルしてわざわざ北海道から負けに来たわけではないからだ。移動のハンディからいうとこれは五分と五分!

・・・と思っていたら「俺は林と闘いに来たんだ。こんなに簡単にカード変更できるんなら俺にも考えがあるぞ」といってカグラはセコンドのPTにマイクを渡した。なんとPTは代打で野本打倒に乗り出してきたのだ。ということで突然カードが野本対PTに!これはこれで見たいカードだったけど、実はどこかPTが一輝を挑発しながら彼のほうを向いていない感じがしたのが気になった。椅子やセコンドの介入などで、散々暴れまわった後にレフェリー暴行で反則負け。

一見すると「?」としか思えない。PTいわく「GAM1で生まれた借りをGAM1でかえした」ということだったが、どうも釈然としないものが残ってしまった。

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<h3▽GAM1トーナメントBブロック1回戦 第3試合(30分1本勝負) ⑦SMITH vs 陽樹

三連覇を狙う現チャンピオン陽樹と、もとチャンピオンにして初代GAM1覇者のスミス。一身上の都合で第一線から退いたとはいえ、本人的には一歩下がった気などサラサラないだろう。

しかもどんな結果になっても相手に爪痕を残すのがスミスである。あの難攻不落の怪物、マツエデラックスにしたたかにダメージを与え、結果的にタッグ王座陥落に繋げた手腕で王者を今回も苦しめることが予想された。

そもそもイベント試合などで試合前リングで練習をしていても別ユニットの人間が来ると途端にやめてしまうくらいスミスは他人に手の内を見せたがらない。この両者は今回シングル初顔合わせではあったが、かつて別なイベントでタッグマッチながらスミスはわざと陽樹を避けて試合をしていたことを思い出した。スミスは自分の敵になるかもしれない相手に自分から積極的に絡みもしない。相手には研究させず、自分はしっかり相手を警戒し、研究する。それがスミスなのだ。

スミスは24時間365日スミスでいられる人間なのだ。

そこで以前GAM1を制覇した際にスミスが語っていた言葉を思い出した。「トーナメントは3試合で一つの試合をするつもりでいかないと勝てない」…この言葉通りだとすると、前の試合で唐突に昔の因縁を持ち出したPTの不自然さに合点がいったのだ。6人タッグでも必要以上に椅子を使い、更に野本を反則暴走で痛めつけたPT。その理由が昔の因縁の清算というのは、スミスに並ぶクレバーな頭脳を持つPTらしからぬ姿だった。彼のヒール美学から考えて、これに意味がないはずがない!

案の定スミスが場外にでて椅子を手にすると陽樹はあからさまに警戒感を露わにした。しかしそれをあざ笑うかのようにスミスはコーナーでイスに腰掛けてセコンドに肩や腕をマッサージさせている。そう、前試合の暴走の数々はスミスの言葉を借りればこの試合の一部であり、「フリ」に過ぎなかったのだ。そしてスミスに心酔してgWoに誘ったPTは、スミスを勝たせるために自分が捨て石になったのかもしれない。今のPTならそのくらいのことは平気でやるだろう。つまりは一見無秩序にみえたPTの暴走も全てはこの試合のための作戦だったのだ。

gWoが過剰に反則に走るイメージをお客にも対戦相手にも焼き付けておいて、当のスミスは絶対に汚い手を使わない。疑心暗鬼になる陽樹はイライラするからますます自分のペースがつかめない。ところが反則しないようでリング内に陽樹が戻るとスミスは容赦なく畳み掛け、反則スレスレのことは仕掛けてくる。もっともこれはベビー時代からのスミスのお家芸。

しかも自分が勝てると確信しないと絶対に真っ向勝負には応じないからタチが悪い。終盤にスミスが陽樹の技を受け始めた時は、既に陽樹の方のスタミナが切れていた。

こうなるとエクスプロイダーでじわじわ真綿をしめるように二冠王を追い込むスミスの一方的ペース。最後は新技スウィンギング・リバースSTOでカウント3。昨年の覇者にして二冠王初戦敗退が決定した。

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いや、久々にスミスの真骨頂をみた試合だった。とぼけるところは徹底的にとぼけ、試合が組まれるよりはるか前から伏線を敷き、セコンドの力も最大限に利用し、おのれの勝利に徹底的に貪欲。これこそがミスターがむしゃらプロレスといわれるスミスである。いくら王者が変わっても象徴としてのスミスが依然頂上にいる、ある意味がむしゃらプロレスのいびつな構造が今回図らずも露呈してしまった。これはチーム凱的にはゆゆしき事態かもしれないが、マツエデラックス戦の敗北イメージを一試合で覆したスミスの底知れぬおそろしさにはひたすら舌を巻いた。

後記

一日目は天候不順などの関係やお休みが取れない事情もあって、超満員とはいかなかったが、それでもたくさんの人がかけつけてくれた。やはり信頼にたるブランドとしてGAM1が定着した証と考えるべきだろう。さて初日に続いて二日目も嵐が起きるか?

(2日目の観戦記はこちらから)






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