がむしゃらプロレスイベント試合『第9回 創造館 小文字祭』観戦記 (2017年4月29日(土・祝) 会場/創造館クリエイティブハウス 正面広場特設スペース(小倉北区大畠1-7-25 旧小文字病院跡)
イントロダクション
3年ぶりの小文字祭。毎年土曜日は何かの予定が入っていけなかったが、今年は何の邪魔もなくプロレスがみられる!このうれしさといったらない!
オープニング
しかも天気はピーカン!もうこういう状況にもなれたので、上はTシャツ一枚。駐車場が少ないのが難点なんだが、しばらく待っていたら2台出て行ったため割と簡単に停められた。
いや、しかし今年は極めつけに暑い。日陰のない創造館で試合する選手はもっと大変だったと思う。今回から衣装が若干ミル〇ーホームズっぽくなったアニスピガールズのライブからスタートし、漫才、歌と続いていつにない盛り上がり。やはり継続してやっていくと認知もされるんだなあという感じがした。
第一試合:
〇MIKIHISA対●ダイナマイト九州
現タッグチャンピオンと元タッグチャンピオンがシングルでぶつかるという大変レアな試合。試合巧者の九州相手にMIKIHISAが現王者としてどれだけの力をつけてきたかを見るには絶好のカード。実をいうと全試合中、この試合が一番良かった。理由は
①使う技が少ない
②九州の間の外し方が絶妙。
③九州のインサイドワークにも動じないでヒール王者としての力を見せつけたMIKIHISAの成長。
の3つである。①は九州よりむしろMIKIHISAのほうが使う技を抑えていて、10分過ぎまで蹴るMIKIHISA、受けては間を外す九州という非常に玄人好みなプロレスが展開されたこと。にも関わらずお客さんは決して退屈していない。一見すると馬鹿にされているような九州のムーブは、実に計算されつくしていて、時折実力派の選手でも簡単に負けてしまうことがある。その怖さを十分に承知したうえで、MIKIHISAは九州の間合いには深入りしていかなかった。それでいて、反則とキックを織り交ぜて、悪党らしいファイトもしてみせる。だから非常に試合がスイングしていた。
こういう硬軟取り混ぜた試合を柔軟にこなせるということは、MIKIHISAが、シングル戦線でも十分活躍できることを物語っていると私は思う。その証拠は前週、美原を締め落とした極楽固めにある。完全にこの技をフィニッシュ技として定着させたことで、勝ちパターンも生まれている。
九州も極楽固めだけはださせまいと必死になって丸め込みで攻勢にでようとするが、MIKIHISAに粘られて、あと一歩及ばなかった。しかしいつの間にかこういう名人芸のようなクラシカルなプロレスができるまでMIKIHISAが成長していたのは本当にうれしい誤算だった。夏のGAM1で波乱を起こす男はMIKIHISAかもしれないなと思わせた試合だった。
第二試合:
●陽樹&ジェロニモ対〇鉄生&Barong
人気も実力もブーイングもすべてを手にして会場を支配しているLCRは単なる悪役の枠組みを超えて、新しいユニットとして進化しようとしているようにも私には見える。だとしたら、もはやブーイングをもらうことに固執しないで、人気の総取りをしていくべきだろう。チーム凱が、単なる空気になるくらい存在感を消してしまうプロレスもあっていいと思う。相手を生かすのもプロレスだけど、殺してしまうのもプロレス。そういう意味では、これ以上LCRがどんな反則をやってもお客さんは支持してしまうし、逆に凱が反撃に出ても鉄生コールやBarongコールが起きてしまうようでは、LCRがどれだけ悪いことをしても、チーム凱には声援はとばないだろう。例えばこれが、美原、澤田対LCRなら、相手はやられっぷりでは定評のあるフレッシュなメンツだし、おそらく声援は二分するか、やや美原組が多くなるかだろう。でも現実問題ずっと彼らと試合をしていくわけにはいかない。だとしたら人気の総取りをして、凱には何もくれてやらないくらいの気持ちで、つぶしに行ってほしい。
一方の凱は、本来自分たちに向けられるべき人気が相手に取られていることにもう少し危機感をもってほしい。ジェロニモがいくら調子をあげてきたとはいえ、あの絶対的人気を誇ったスミスですら、制御できないLCR人気に対してもっと本気で噛みついていかないと、今のままでは本当に空気になってしまう。
あと、陽樹・鉄生両方にいえることだが、受けに回るともろく見えるのが難点。コンディションが万全ではないことは重々承知しているが、それでもあまりに一直線ファイトに固執しているような気がする。全力ファイトは気持ちがいいんだけど、やはりがむしゃらプロレスの看板カードであるならば、ベテランらしい何かも加えていってほしいなと思う。
結局、鉄生が陽樹をフォールして試合は終わったが、逆だったら会場が微妙な空気になっていただろう。本気でぶつかり合うことが一番のセールスポイントだった陽樹×鉄生の絡みはそろそろ方向転換を迫られているのかもしれないなという印象を私は持った。
第三試合:
阿蘇山&●美原輔 対 久保希望&〇トゥエルノ・ゲレーロ
阿蘇山の実年齢を考えたらこれだけ動けることは驚異的なんだが、毎回見るたびにほかの誰よりも素晴らしいコンディションでリングに上がっていることはもっと賞賛されていいと私は思っている。一つ下のライガーも驚異的なんだけど、ヘビー級の体で息子ほども年の違う選手を互角以上の圧力で跳ね返していく。この姿勢を先生に見せられると、がむしゃらプロレスにはまだまだ進化の余地が残っているといっていいだろう。
その筆頭がゲレーロであり、美原である。本来タッグ挑戦に失敗して次にいきなりタッグとはいえ、ジュニアのチャンピオンとあいまみえるチャンスなんてこないものである。しかし負け続けていても「なんか、美原ならやってくれそうだ!」とお客さんは期待感をもって彼らの試合を見ているのである。だからこそこうしたマッチメイクが実現する。それを引き寄せているのは間違いなく美原自身なのだ。もし美原が自力で初勝利をあげようものなら、会場が大爆発すること請け合いだろう。
かつて超世代軍としてジャンボ鶴田に何回もつぶされ続けた菊池毅が、博多スターレーンで6人タッグ戦で、鶴田からではないものの、鶴田軍から菊池が自力でピンを取った時のスターレーンの大菊池コールは四半世紀たった今でも私の記憶に焼き付いている。そのくらい菊池がやられ続けた「タメ」は効果的だったのだ。
そんな美原に対して普段同世代同士で戦うチャンスのないゲレーロが実に楽しそうにファイトしていたのも印象的だった。美原だけでなく普段教えをこう阿蘇山相手に先にセントーンを繰り出して、倍返しの万トーンをくらうことまで計算に入っていたのだろう。やられていてもマスクの下の顔が笑っているようなそんな印象すら私は抱いてしまった。こういうのを見ていると若さは武器だなあと思う。
美原の課題はやはりドロップキックに頼りすぎな点と、MIKIHISAの極楽固めのような一撃必殺の武器を身に着けていないこと。これに尽きると思う。ドロップキックは流れを変えるには効果的なんだが、あまりに読まれすぎているし、本人も乱発しすぎている。もはや新人枠から外れている分、先輩も簡単には受けてくれない。それはたぶん美原に対する叱咤激励なのだと私は思っている。脱・若手を目指すならこの二点はクリアしていかないといけないだろう。
しかし、負けてもその先に期待させる何かをもっている美原輔は今間違いなく一番目が離せない選手の筆頭であると私は思う。ベビーフェイスとしては機能不全におちいっているチーム凱の救世主でもあり、核弾頭でもある。彼らの若さと勢いが凱だけでなく、今後のがむしゃらプロレスの命運を握っていることは疑いようもない。そして美原や澤田の活躍に刺激された若手がどんどん入団してくればさらにがむしゃらプロレスは活性化していくだろう。
後記
前々週にマットプロレス、前週にタッグトーナメント、そして今週の小文字祭と、大忙しだった四月のがむしゃらプロレス。今後の展開に大いに期待ができるクオリティの高い試合がみられたことは幸運だったなと私は思っている。