- プロレス的音楽徒然草’Til the Break of Dawn(エル・ファルコのテーマ)
- ◆ エル・ファルコ選手とテーマ曲の関係
- ◆ MYWAY独自王座「我蛇王」とは
- ◆ ファルコ選手の音楽的バックボーン
- ◆ Upon a Burning Body(UABB)とは
- ◆ メタルコアとデスコアの違い
- ◆ UABBの音楽性:グルーヴメタル&サザンメタル
- ◆ UABBの活動と評価
- ◆ 4thアルバム「STRAIGHT FROM THE BARRIO」
- ◆ ラテン・ヘヴィネスとEX-MEX
- ◆TEX-MEX 音楽の特徴
- ◆ 「’Til the Break of Dawn」の文化的メッセージ
- ◆ アルバムの1曲目に置かれた意味
- ◆ ファルコ選手との個人的なエピソード
- ◆ まとめ:ファルコ選手の“内なる炎”を映す曲
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プロレス的音楽徒然草’Til the Break of Dawn(エル・ファルコのテーマ)
◆ エル・ファルコ選手とテーマ曲の関係
今回はプロレスリングMYWAY所属 “不死鳥”エル・ファルコ選手のテーマ曲「’Til the Break of Dawn」(夜明け前)のご紹介です。
エル・ファルコ選手は、福岡・糸島にあるレアル・ルチャ・リブレで2016年4月10日にデビュー(エル・ファルコ&ベスティア・マルバダ vs エキス・オダジモ&エル・バリエンテ戦)し、2020年まで在籍した後、フリーに転身。
2021年3月26日には、レアル・ルチャで一緒に活躍していたヴァンヴェール・ネグロ&ジャック親子が旗揚げしたプロレスリングMYWAY に入団しています。
ファルコ選手はMY WAYでは、第2代、第5代 我蛇王に輝く実力派です。
◆ MYWAY独自王座「我蛇王」とは
我蛇王は3カウントを採らず、ジャベ(関節技)またはサブミッションによるギブアップ、もしくはレフェリーストップで決着するMYWAY独自の王座です。
ルチャリブレの「絡みつくジャベ」を蛇に見立てて命名され、王者には「ジャベ=鍵(スペイン語)」にちなむ鍵型トロフィーが授与されます。
◆ ファルコ選手の音楽的バックボーン
ファルコ選手はプロレスラーになる前にヘヴィメタバンドのドラマーをやっていた前歴があり、音楽全般好きなことを本人が明かしています。
さて、「’Til the Break of Dawn」(夜明け前)は、Upon a Burning Body(アポン・ア・バーニング・ボディ)というバンドによる楽曲になります。
◆ Upon a Burning Body(UABB)とは
2005年にアメリカのテキサス州サンアントニオで結成されたUpon a Burning Body(略称:UABB)は、メタルコア/デスコアバンドに分類されます。
◆ メタルコアとデスコアの違い
メタルコアは、ヘヴィメタルとハードコアパンクを融合したジャンルで、シャープなギターフレーズ、激しいドラム、メロディアスな歌唱スタイルと叫び声の使い分けが特徴です。
一方、デスコアは、デスメタルとハードコアパンクが組み合わさったサブジャンルで、重いドラム、低音の効いたギターリフ、獰猛なシャウトが特徴です。
メタルコアはメロディ性、デスコアはよりダークで攻撃的な印象を与えます。
デスコアは極端に低いチューニングやデスヴォーカルが多く用いられる傾向があります。
◆ UABBの音楽性:グルーヴメタル&サザンメタル
UABBはメタルコア、デスコアを基調にしながら、グルーヴメタルやサザンメタルの要素も取り入れています。
● グルーヴメタル
・「リズムの気持ちよさ」「身体が自然に動く重いノリ」
・速すぎないテンポ、太く重いギターリフ
・うねるようなビートが特徴
● サザンメタル(Southern Metal)
・南部ロックの土っぽさ
・ブルース由来の哀愁
・メタルの重さと融合
音に“南部の空気”を感じさせるのが特徴です。
UABBの音楽にはこの二つが濃く、パワフルさとラテンの陽気さが同時に宿っています。
◆ UABBの活動と評価
UABBは力強いサウンドとキャッチーなサビ(フック)が特徴で、ラテン要素を取り入れることもあります。
主要メンバーは、
・ボーカル:ダニー・リオール
・ギター:ルーベン・アルバレス
・ベース:トーマス・アルバレス
・ドラム:ティト・フェリックス
2010年『THE WORLD IS OURS』でデビュー。
2012年『RED. WHITE. GREEN』が全米ヒートシーカー1位。
2014年『THE WORLD IS MY ENEMY NOW』は全米39位を記録。
2013年にはSUMERIAN TOURで来日し話題になりました。
◆ 4thアルバム「STRAIGHT FROM THE BARRIO」
2016年10月28日、Sumerian Recordsから4枚目のアルバム「STRAIGHT FROM THE BARRIO」をリリース。

「BARRIO」はスペイン語で「地区」「地域」を意味します。
このアルバムではラテンの血潮を大胆に注入し、スペイン語歌詞も導入した“究極のラテン・ヘヴィネス”を展開しています。
◆ ラテン・ヘヴィネスとEX-MEX
ラテン・ヘヴィネス(モダン・ヘヴィネス)は主に1990年代以降の日本ヘヴィメタルシーンで使われる呼称で、重厚感とダークさを重視しつつ、身体が動くリズムを大切にする音楽です。
UABBは以前からフラメンコ的ギターやTEX-MEX要素を採り入れていましたが、今作ではより大きく踏み込んでいます。
TEX-MEX とは、Texas(アメリカのテキサス文化)と Mexico(メキシコ系文化)が融合して生まれた音楽・食文化・ライフスタイル全般の呼称で、特に音楽的には以下のような特徴を持ちます。
◆TEX-MEX 音楽の特徴
・もともとはメキシコの伝統音楽(ノルテーニョ、ランチェーラなど)をベースに、テキサスのカントリー、ブルース、ロックなどが混ざりあったスタイル
・アコーディオンの旋律が象徴的
・打楽器やギターのリズムはラテン特有の跳ねるビート
・明るく陽気でダンサブルな雰囲気
・“移民としての誇りや家族の絆”を歌う文化的背景が強い
UABBが取り入れる TEX-MEX の音楽的エッセンスは、より「ラテンの血脈」「南部の空気感」「コミュニティの誇り」を強調する役割を果たしています。
ラテン系のメロディライン、グルーヴ感の強いビート、そして「俺たちは南サイドの誇りだ」というチカーノ文化由来のメッセージを、重厚なメタルサウンドの中に違和感なく融合させています。
そして今回のアルバム『STRAIGHT FROM THE BARRIO』では、従来のフラメンコ・ラテン要素に加えて、TEX-MEX的な“地域文化の誇りやアイデンティティ”をより強く前面に押し出した作品となっています。

スペイン語の歌詞、陽気でいながら獰猛なサウンド、そして移民文化に根ざした熱量が合わさり、UABBならではの「ラテン・ヘヴィネス」が完成したと言えるでしょう。
その「STRAIGHT FROM THE BARRIO」の一曲目に入っているのが「’Til the Break of Dawn」なのです。
◆ 「’Til the Break of Dawn」の文化的メッセージ
この曲は、チカーノ(メキシコ系アメリカ人)やテハーノ(テキサスのラテンコミュニティ)の文化を祝う楽曲です。
歌詞には:
・「U-A-B-B は南サイドを代表している」
・「純チカーノ、純テハーノ」
・「出身地を胸張れ」
など、ルーツへの誇りと仲間意識がストレートに刻まれています。

テキーラ、喫煙、パーティーの情景も描かれますが、それは“文化を祝うための祭り”を象徴しています。
「夜明けまで騒ぎ続ける」という表現には、自分たちの文化を守り、楽しむ強い決意が込められています。
◆ アルバムの1曲目に置かれた意味
アルバムの一曲目は、その作品全体の印象とコンセプトを決める重要な位置になります。
プロレスでも第一試合の重要性が再認識されているように、この曲がアルバム冒頭にあることは、強い意図を感じさせます。
「’Til the Break of Dawn」は「STRAIGHT FROM THE BARRIO」の象徴であり、まさに“一曲目にふさわしい曲”なのです。
◆ ファルコ選手との個人的なエピソード
最後にテーマ曲とは直接関係しませんが、私とファルコ選手とのご縁を少し。
実はファルコ選手のデビュー戦が決まった時、私は生観戦しに行くと約束していました。
しかし当時、公私ともにお世話になっていた方が急逝され、葬儀に参列する必要がありました。その日が2016年4月10日だったのです。
後に抗がん剤治療のスケジュールすらずらしてプロレスを観に行く私ですが、この日ばかりは葬儀を優先し、泣く泣く観戦を断念しました。
その後なかなか試合を見る機会に恵まれず、ようやく約半年後の華☆激笹栗大会でお会いできました。

願っても叶わない時はありますが、辛抱強く待てばチャンスは訪れます。
今では全国から声のかかる選手となったことを、私は本当に嬉しく思っています。
◆ まとめ:ファルコ選手の“内なる炎”を映す曲
「’Til the Break of Dawn」が今後いつまで使われるかはわかりません。
しかし、COLD BLOODと呼ばれるファルコ選手の内面に秘められた熱を表現するには、まさにぴったりのテーマ曲です。
これからも会場でこの曲を聴ける限り、耳を傾けていたいと思っています。
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