【プロレス入場テーマ曲】プロレス的音楽徒然草 LOVE & ENERGY(棚橋弘至のテーマ)

[プロレス入場テーマ曲]プロレス的音楽徒然草

プロレス的音楽徒然草 LOVE & ENERGY(棚橋弘至のテーマ)

新たなテーマ「LOVE & ENERGY」の出発点

今回は新日本プロレスのエース・棚橋弘至の現行(2025年11月現在)テーマ曲「LOVE & ENERGY」のお話をします。


「LOVE & ENERGY」は2004年から使っていた入場テーマ曲「High Energy」を封印し、2017年の1.4東京ドームから使用している楽曲です。


本楽曲初使用となった内藤哲也選手との試合では、残念ながら勝利を飾ることができませんでした。

自らのチャント(掛け声)“GO ACE!”を収録した新しいバージョンで臨んだ6・11大阪城ホール大会では、見事内藤選手への雪辱を果たし、当時のIWGPインターコンチネンタル王座を奪取しています。

作曲は新日本プロレス所属の多くの選手のテーマ曲を手掛けている北村陽之介さんの手によるものです。
「LOVE & ENERGY」は制作開始時に棚橋選手からの要望を採り入れて作られた楽曲だそうです。

謎多き前テーマ「High Energy」の背景

2004年まで使われていた「High Energy」の作曲者は、ジュリア・クラリス(Julia Claris)となっていますが、この方が実在するのかは分かりません。作曲者がペンネームとして便宜的に付けたものかも不明です。

「High Energy」は2000年代やそれより前のギターサウンドが特徴的で、今もファンの支持がある楽曲です。

しかし、「High Energy」は「大人の事情で使えなくなった」と言われており、実際NJPW WORLDだと曲が差し替えられているようです。

ちなみに、中邑真輔選手がNJPW時代に使用していた「SUBCONSCIOUS(サブコンシャス)」も同じジュリア・クラリスさんの作曲です。こちらもおそらく同じ理由で使用が難しいと思われます。

音楽使用に立ちはだかる“権利”という壁

権利関係の問題は、音楽にはつきもので、以前使えていたものが使えなくなることはよくあります。

たとえ著作権が切れている曲であっても、それを現代のミュージシャンや音楽家が演奏しCDに録音した場合、その特定のCD音源には著作隣接権が発生し、保護期間内であれば無断で使用することはできません。

また、権利者が複数存在し、許諾が複雑なため一つの音楽作品には、作詞家、作曲家、編曲家、実演家、レコード会社など、複数の権利者が関わっています。

これらのすべての権利者から個別に許諾を得る必要があるため、手続きが煩雑になり、結果として使用を断念したり、商業利用が難しくなったりするケースがあります。

「私的利用」と“商業使用”の境界線

さらに音楽の利用には「私的利用」の範囲が定められています。

個人的に楽しむ目的であれば問題ありませんが、動画投稿サイトへのアップロード、店舗でのBGM使用、イベントでの使用など、公衆送信や営利目的での利用には、原則として権利者の許諾が必要となります。

これらの理由から、「この音楽は自由に使えそうだ」と思っても、実際には何らかの権利に抵触する可能性があり、結果として使用が難しくなることが多いのです。

既存曲をプロレス入場テーマに使う難しさ

プロレスの入場テーマ曲に既存の作品を使用する場合、いくつかの法律的・実務的な問題が発生する可能性があります。

棚橋選手の場合はほとんどオリジナルテーマ曲ばかりですが、既存の音楽作品を使用する場合、著作権法に基づく権利を侵害する可能性があります。

著作権は音楽の創作者や音楽出版社に付与されており、無断で使用すると、著作権侵害として訴えられる危険があります。

また、プロレス団体や選手が勝手に商業イベントで特定の曲を使用した場合、曲の権利保持者からの訴訟や損害賠償請求を受ける可能性があります。

既存の楽曲を使用するには、原則として使用許可が必要です。この許可を得るためには、著作権者や音楽出版社と交渉し、契約を締結せねばなりません。

しかし、著作権者との交渉は時間がかかる場合があり、場合によっては高額な使用料が発生することもあります。このため、予算やスケジュールに影響を与える場合もあるのです。

権利処理の複雑性と団体規模の問題

また、音楽作品には、作詞者、作曲者、演奏者、制作側(音楽出版社、レコード会社など)といった多くの権利者が関与しています。

使用する場合、これらの権利者全員から許可を得る必要があるので、権利処理が非常に複雑になります。

例えば、ある曲の作詞と作曲が異なる人物によって行われている場合、両方からの許可が必要になります。

この手続きが煩雑になることは、特に小規模な団体やインディー団体にとって厄介な問題です。

使用条件・ブランドイメージ・信頼リスク

楽曲によっては、その使用条件が厳しく設定されていることもあるのです。

商業利用やプロモーションに制限が加えられることがあり、プロレスイベントでの使用が許可されない場合もあります。

たとえ使用許可を得たとしても、特定の条件や制限(例えば一定の時間帯にのみ使用可能など)が課せられる場合があります。

さらには既存の楽曲が持つイメージやコンテキストが、レスラーや団体のブランドイメージに影響を与えることもあります。

また、著作権者との契約違反や問題が発生すると、将来的なコラボレーションや使用許可に影響を及ぼす可能性もありえます。

現代の潮流:オリジナル曲へ

このように、プロレスの入場テーマ曲に既存の作品を使用する際には、著作権侵害のリスク、使用許可の取得の複雑さ、権利の多様性、使用条件の制限、イメージの問題、さらには信頼関係のリスクといった多くの問題が考えられるのです。

これらのリスクを回避するためには、オリジナルの楽曲を制作するか、著作権者との明確な契約を結ぶことが必要です。

こうした問題回避のため、現在では世界最大のプロレス団体WWEを筆頭に、既存の楽曲使用からオリジナルテーマ曲使用に切り替え、権利関係を団体が管理するスタイルに方向転換がなされてきました。

「High Energy」が抱える“謎”は解けるのか

「High Energy」がどの問題に該当するのか、はたまた別な理由があるのかは、調べても出てきませんでした。

しかし、なんらかの権利関係で使えないのは事実でしょうから、仮に棚橋選手の引退試合で流れたとしても、2026年1月4日のNJPW WORLDでは差し替えになる可能性が高いと思われます。

今のところ、地上波中継およびCSテレ朝で放送されるワールドプロレスリングLIVEであれば、会場と同じ状態で聞ける可能性は大でしょう。

「LOVE & ENERGY」が語る“ファンとの距離”

「LOVE & ENERGY」のCDはファンとの交流を大切にしたい棚橋選手の要望もあり、ファンの声を収録した「オーディエンスバージョン」、初使用から6・9まで使用された「prototype」、初期のデモまで収録されているため、完成版に至るまでどのような段階を踏んでいったかも楽しむことができます。

また、NJPWのテーマ曲を集めたアルバム「新日本プロレスリング NJPWグレイテストミュージック 50th. SP」の中でも聴くことはできます。

入場テーマという“記憶の装置”

しかし、プロレス入場テーマ曲のCDや配信はあくまで実際に行われた試合や大会の想い出とセットになっている場合が多いため、単純に楽曲を聞いて楽しむのとは少し事情が異なります。

個人的にはいくつかある棚橋選手の入場テーマ曲の中で「LOVE & ENERGY」と「HIGH ENERGY」がベストオブベストだと思っています。

“伝説”となるテーマ曲とは何か

大変難しい問題ですが、さらにどちらかを選ぶとしたら、私は思い入れ込みで「HIGH ENERGY」を選ぶと思います。

やはり棚橋選手の全盛期と「HIGH ENERGY」は密接に結びついているから、というのが理由でしょうか。

使用期間は短いながらいまだに根強い人気を誇る武藤敬司さんの入場テーマ曲である「トライアンフ〜伝説」を例にとってみましょう。

この曲が支持されている理由は間違いなく、1995年10月9日東京ドーム大会、新日本プロレス対UWFインターナショナル全面対抗戦での対高田延彦戦で使われたことに尽きると思います。

この一戦だけでトライアンフは伝説になったと言っても過言ではありません。

「LOVE & ENERGY」は“伝説”になれるのか

「LOVE & ENERGY」が「HIGH ENERGY」を超えられる「伝説」になれるかどうか。その闘いも含めて棚橋選手の引退試合には注目せざるを得ないですね。

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