プロレス的音楽徒然草 Blut Im Auge(Acoustic Version – Sagas)
全てドイツ語
今回はジャパニーズ・バズソーこと、TAJIRI選手が全日本プロレス参戦時に使用している入場テーマ曲、EQUILIBRIUM(エクリブリウム)の「Blut Im Auge」(Acoustic Version – Sagas)(血眼)のご紹介です。EQUILIBRIUMは、ドイツのメタルバンドで、歌詞はゲルマン民族の話やゲルマン神話を主題としたものが多いそうです。
従って、バンド名もタイトルも全てドイツ語なんですね。ちなみに「Blut Im Auge」は、2枚目のアルバム「サーガス – Sagas -」に収められています。この「サーガス – Sagas -」は、全編ドイツ語である上に、ベースになっている神話は全部EQUILIBRIUMによる創作で、当然Blut Im Augeもその一つになります。
先程、EQUILIBRIUMはメタルバンドと紹介しましたが、厳密にはエピックメタル、あるいはフォークメタルもしくは、ヴァイキングメタルなどと呼ばれているそうです。
エピックメタルとは
ちなみにエピックメタルとは…
ヘヴィメタルのサブジャンルの一つ。主に叙事詩的なヘヴィメタルの総称として用いられる。1980年代初期に誕生したスタイルであり、タイトルの「エピック」という言葉は叙事詩的なファンタジーや神話に由来する。音楽性に関しては、主に正統派メタルの影響が強く、大仰なドラマ性とヒロイックなスピードを融合させたサウンドが一般的。また、その壮大かつ勇壮なスタイルから、近年ではシンフォニックメタルやヴァイキングメタルとの関連性も強くなっている。(wikipediaより抜粋)
という事らしいです。
日本では知名度が低い
もともとエピックメタルが題材にしていた世界観は、主に古代や中世、近未来などを舞台にした実在の史実や架空のファンタジーで、叙事詩や中世騎士物語、ヒロイック・ファンタジー(剣と魔法の物語)、戦士の勇気や名誉、壮大な戦争などを描いたものが多いそうです。
伝統的なエピックメタルの題材としては、アメリカだとロバート・E・ハワードの「英雄コナン」のような「ヒロイック・ファンタジー」系、ヨーロッパだとトールキンの「指輪物語」のような「ハイ・ファンタジー」系の2つの流れがあるそうです。
オリジナルの世界観
ですが、近年ではこうした題材から離れたオリジナルの世界観を表現するバンドも増えてきているそうです。EQUILIBRIUMもその一つと考えて間違いなさそうですね。
1980年代に出現したエピックメタルは、21世紀に入ると、海外のアンダーグラウンドシーンで着実に支持を獲得し、ヘヴィメタルのサブジャンルとしてヨーロッパを中心に大きな人気を集めているそうです。ですが、これとは逆にエピックメタルは、日本での認知度が低いことも有名なんだそうです。実は私も今回調べるまで恥ずかしながら、こういうジャンルがあること自体知りませんでした。
フォークメタルって?
ちなみにフォークメタルというのは、民謡とメタルを融合させたジャンルのことで、土着の民謡や神話を土台にしたものも現れました。ただ、特に明確なサウンド像があるわけではないそうです。したがって非常に多くのスタイルを内包しているので、エピックメタルの一部とも共通項があるという事らしいですね。
更に北欧のメタラーは彼らの先祖であるヴァイキングの勇壮さを取り入れ、ヴァイキングメタルなるものを生み出しました。フォークメタルやこのヴァイキングメタルは北欧系のバンドが多く、日本ではヴァイキングメタルという呼ばれ方でひとくくりにされることが多いようです。
日本ではフォークといえば、フォークソングを指すのが一般的で、民謡とは別なジャンルとして扱われていますが、これは日本だけの事で、海外ではフォーク=民謡となるわけですね。日本語英語の「フォーク」という意味からすると「フォークメタルってイメージできない」となりますが、もともとの意味からするとごく当たり前な表現であることがわかるのではないかと私は思っています。
フォークメタル=聖飢魔Ⅱ
さて、では日本でフォークメタルと呼ばれるバンドがあるのか、というと実は聖飢魔Ⅱが代表として取り上げられているんですね。さらに調べてみると、聖飢魔Ⅱは、能や花柳流の日本舞踊とも共演しておりました。また、デーモン閣下が大の好角家としても有名ですよね。こうした背景から推察するに、悪魔というと西洋のものという固定概念で聖飢魔Ⅱを見てしまうと、イメージしにくいのですが、日本のバンドとして考えると特におかしなことでもないわけです。
ただしフォークメタルのムーブメントが世界的に本格化するのは、聖飢魔Ⅱよりずっと後になるそうですので、聖飢魔Ⅱが共演当時フォークメタルを意識していたのかどうかは定かではありません。
民族楽器の音
EQUILIBRIUMの音楽的な特徴は、ドイツ出身だけあって、ワーグナーの歌曲を連想させるようなドラマティックな展開が主体です。それを支えているのが、フルート、ヴァイオリン、アコーディオンに女性ヴォーカルまで参加した音にあります。まさにSaga=長編物語』らしく大仰なサウンドです。そして勇壮にして重厚なシンフォニカル・メロディ。フルートとアコーディオンが民族音楽の響きを強く打ち出しており、ギターやベース・ドラムがなんの違和感もなく融合してるのです。
さて、そんな「Blut Im Auge」は、アコースティックギターが印象的な一曲です。弾いているギターがアコースティックなだけで、速弾きも含めて「メタルっぽい」感じがする一曲です。単なるメタルを入場曲にするレスラーはあまたあれど、フォークメタルというジャンルを選曲してくるあたりに、TAJIRI選手の非凡なセンスが伺えますね。
テーマ曲を選ぶセンスのよさ
最もWWE時代にTAJIRI選手が使用していた「Imperial City」にしても「Green Mist」にしても、和楽器の音色が必ず混ぜられていました。この二曲はメタルではないにしても、民族楽器の音を取り入れているという点で見るならば、一見するとバラバラな印象があるTAJIRI選手の入場テーマ曲にも、一つの「共通項」が見出せるのではないでしょうか。
しかし、Blut Im Augeを繰り返し聴くにつけて、プロレスラーが入場テーマ曲を選ぶセンスのよさには感心するほかありません。ほかの格闘技だとこうはいかないんですよねえ。センスのいい入場テーマ曲は、プロレスファンの誇りでもあるわけです。少なくとも私はそう思っていたいですね。