プロレス的発想の転換のすすめ(77) 理想を形にする闘い方
職人7割、商売3割
今回は「こだわり」と「プロレス」についてのお話です。
これは、昨年知り合った大ベテランの寿司職人の大将から聞いた言葉です。
正確には「職人7割、商売3割」と仰っていました。
職人の理想と現実
どういうことかというと、職人の世界は10割が職人脳になると、商売ができなくなってしまいます。
そのため「3割くらい商売のことが考えられると、お店を出しても続けていける」と大将は私に教えてくれました。
では、頭から爪先まで職人になると、一体どうなるのでしょうか。
頑固さが招く失敗
大将曰く「そういう人は、自分で商売を始めずに雇われで終わるか、店を出しても失敗する」のだそうです。
10割職人になってしまうと、商売のことを考えなくなるため、柔軟性が失われます。
いわゆる悪い意味での「頑固職人」になってしまうのだと大将は言われていました。
譲れない美学の追求
ここからは、この言葉を聞いて私が解釈したことを書いていきます。
人間、誰しも好きなことだけをして生きていきたいものです。
プロレスの世界でも、例えば「玄人好みの関節技だけで魅せたい」という職人気質の選手がいます。
しかし、そのこだわりが強すぎると、観客との間に「需要と供給の不一致」が生じてしまうのも世の常です。
飽きない仕事のコツ
そこで頑なに「自分が出したいもの」だけを押し付けると、それこそ独りよがりな頑固職人になってしまいます。
商売というのは、利益を上げる目的で物を売り買いすることですが、「しょうばい」だけでなく「あきない」とも読みます。
観客を想う3割の心
飽きない仕事をするのならば、独りよがりになるよりは、3割くらい人様(観客)のことを考えてもいいのかもしれません。
では、逆に「商売10割」だと何が不都合なのでしょうか。
プロレスで言えば、ファンの顔色を窺うだけの「闘い」になってしまうということです。
自分自身を見失うな
大将の言葉を引用すると、商売の割合が高まると味へのこだわりがなくなり、商品がつまらなくなるそうです。
こだわり(職人)より商売を優先しすぎると、他人の評価が気になりすぎて、自分が本当にしたいことや、レスラーとしてのアイデンティティを見失うのかもしれません。
理想の闘いを仕事に
プロレスラー志望の方は、自分の理念や夢を仕事にしたいという強い理想を持っているケースが多いようです。
しかし、プロとして活動する以上「うまくいく、いかない」の差はどうしても出てきてしまいます。
ストロングスタイルにこだわるのか、エンターテインメントに振り切るのか、その葛藤は常に存在します。
絶妙なバランスの妙
ニーズに合わせすぎると、自分がやりたくないことまでやらなければなりません。
しかし、自分のやりたいようにやりすぎると、プロとしての「闘い」は成立しません。
このバランスが上手く取れてくると歯車は噛み合い出しますが、心掛けていても「職人7割、商売3割」を維持するのは非常に難しいものです。
長く続けるための力
大将はお店を続けて50年近いそうで、おそらく様々な経験から導き出した黄金比なのでしょう。
単なる上っ面ではない、言葉に込められた重みを感じ、私も非常に勉強になりました。
私にもやりたいことはありますし、こだわりも持っていますが、大将が言われた「商売3割」という観客目線の視点は、これから学んで身につけたいと思っています。
噛み合わない需要
最後に、プロレスにおける「需要と供給が一致しない」事例を挙げます。
どれほど選手が「歴史に残る名勝負を見せたい」と魂を削るような激しい技の応酬を繰り広げても、観客がその日の「闘い」に求めていたものが「スカッとするような勧善懲悪の結末」であれば、その熱量は空回りしてしまいます。
職人のこだわりが、必ずしも観客の満足に直結しない。これこそが、プロレスという「闘い」の難しさであり、奥深さでもあるのです。
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