プロレス的音楽徒然草 サンダーストーム(THUNDER STORM)
運命を呼ぶ公募
今回は、2015年11月に惜しまれつつ引退した風雲昇り龍・天龍源一郎選手の入場テーマ曲『サンダーストーム』をご紹介します。
天龍選手がこの曲を初めて使用したのは、1982年2月4日の東京体育館大会、ミル・マスカラス選手とのIWA世界ヘビー級王座挑戦という大一番でした。当時の『全日本プロレス中継』では、天龍選手のテーマ曲を視聴者から公募。実況でも「公募によって決定した」と語られています。
後に天龍選手は「公募に良い案がなかったから、日テレのディレクターが独断で決めたらしい」と証言していますが、真相は今も霧の中です。しかし、個別テーマ曲の保持がトップ層の証だった時代に、公募企画が成立すること自体、天龍選手への期待がいかに破格だったかを物語っています。
孤高の天才ギタリスト
『サンダーストーム』を生み出した高中正義さんは、1971年に高校生でデビューして以来、日本のロック・フュージョン界を牽引し続けています。伝説のサディスティック・ミカ・バンド等を経て、1976年からソロ活動を開始しました。
ソロ転向当初、本人はボーカルを志望していましたが、「先天的な音痴だった(笑)」という理由から、ギターでメロディを奏でる現在のスタイルを確立しました。
華麗なるステージング
高中選手は「上手いボーカルを入れればいいけれど、自分がメインじゃなくなるのは嫌(笑)」と語ります。
また、ラメを施したド派手なジャンプスーツや、1970年代から金髪や緑色の髪で被り物を被るパフォーマンスは、徹底的に「派手」を追求する姿勢が、楽曲の力強さを支えています。
虹伝説から生まれた曲
この名曲は、高中さんが1981年に発表したコンセプトアルバム『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』に収録されています。
イタリアの画家ウル・デ・リコの絵本をモチーフにした本作は、日本レコード大賞企画賞を受賞。ステージ上に絵本の世界を再現した大掛かりなライブは、当時の音楽シーンを震撼させました。
意外なアニメとの接点
実は、当時高中さんが所属していたキティレコードがアニメ『うる星やつら』(昭和版)の音楽制作を担当していた縁で、劇中では度々彼の楽曲が使用されていました。フュージョンブームの波に乗り、そのサウンドは全国のお茶の間に浸透していたのです。
これは、バックバンドに参加していた小林泉美さんが同アニメの主題歌を手掛けていた影響も大きいでしょう。私自身も、全日本プロレス中継がレギュラー放送されていなかった山口県にいたため、このアニメ経由で高中サウンドの洗礼を受けました。
革命仕様の音源構成
アルバム版の『サンダーストーム』は、物語を象徴する英語のナレーションから始まります。
入場用バージョンではナレーションをカットし、代わりに「ゴロゴロ……」という重厚な雷鳴音を追加。
イントロも一部編集され、聴く者のアドレナリンを沸騰させる「入場テーマ曲」へと変貌を遂げたのです。このもとになった音源はアルバム『プロレスQ9』にも収録されています。
引退興行での感涙
2015年の天龍選手引退という最後の闘いでは、高中さん本人がリングサイドで生演奏を披露しました。名曲『ブルー・ラグーン』を織り交ぜたスペシャルメドレーは、すべてのプロレスファン・高中ファンを涙腺崩壊させました。
私がかつて足を運んだライブでも、高中さんはアンコールで玉乗りをしながらギターを弾くという、驚愕パフォーマンスを披露してくれました。30年以上経っても、その色褪せない技巧には脱帽するばかりです。
唯一無二のオリジナル
サンダーストームには、WAR時代や他アーティストによる無数のカバー版が存在します。しかし、やはり「本家」に勝るものはありません。
かつてSWS移籍の際、天龍選手は新テーマ曲を試用しましたが、ファンの猛反発もあり、結局はこの曲へと回帰しました。唯一、SWS時代のハルク・ホーガン戦で見せた「ゴジラの咆哮」入りバージョンは、まさに怪獣大戦争を彷彿とさせる凄みがありました。
ジャンボ鶴田選手との「鶴龍コンビ」による合体テーマも捨てがたいですが、それはまた別の機会に。
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