【プロレスブログ】 プロレス的発想の転換のすすめ(79) 格闘プロレスの功罪と進化

[プロレスブログ] プロレス的発想の転換のすすめ

プロレス的発想の転換のすすめ(79) 格闘プロレスの功罪と進化

総合の礎を築いた潮流

今回は極私的なUWFのお話です。

UWFは世代的にど真ん中でしたが、当時の私は基本的にスルーしていました。

とはいえ、現在の総合格闘技(MMA)の礎となったのが、プロレス界におけるUWFの一連のムーブであったことは疑いようのない事実でしょう。

強さへの渇望と出自

「UWFはどれほど強いのか?」という問いに対し、初期メンバーに本格的な格闘技経験者がいなかったという指摘をよく目にします。

しかし、出自がプロレスしかない選手だからこそ、「自分は一体どれだけ強いのか?」を知りたいと切望するのは、ある種、必然だったのではないかと私は想像しています。

競技をやり尽くした先

一方で、アマチュア時代に国体やオリンピックに出場し、強さのみを基準に競技人生を送ってきた選手にとって、日本でいうところの「真剣勝負」はすでに「やり尽くしたもの」かもしれません。

プロの世界では、競技とは違う自分を表現したいと考えても不思議ではないでしょう。

その典型例が武藤敬司選手だと私は考えています。

上田馬之助に火をつけた

武藤選手は柔道時代に国体へ出場するほどの強者でしたが、プロレス入り後は柔道の色をほとんど出さずに闘っています。

それは若手の頃から一貫しており、22歳でのテレビ中継デビュー戦では、すでにムーンサルト・プレスを披露していました。

対戦相手の大先輩である故・上田馬之助さんに火をつけてしまった場面は今も語り草です。

暗黙の禁忌を破る心臓

上田さんの時代なら、新人の若手が派手な空中殺法を繰り出せば、試合後に先輩レスラーから厳しい説教を食らうのが通例だったはずです。

プロレス界の暗黙の禁忌を、若手時代にしれっと破ってみせた武藤選手の強心臓には、ただただ舌を巻くばかりです。

前田日明に言い放った一言

武藤選手ら「闘魂三銃士」がデビューした頃、第一次UWFを経て新日本プロレスにカムバックしたUWF軍団が猛威を振るっていました。

熊本での親睦会にて、酒の入った武藤選手がUWFの前田日明選手に対し「あんたたちの闘いはつまらない!」と言い放ったという伝説があります。

旅館破壊事件の衝撃

この飲み会は、結果として旅館を一軒破壊するほどの大惨事へと発展しました。

業界の大先輩である前田選手に正面から異を唱えた武藤選手の度胸には驚かされます。

近年は総合格闘技が確立されたことで、プロとしての表現力だけでなく、アマチュアの延長線上で勝敗を追求できる環境が整い、ある意味では良い時代になったと言えるでしょう。

船木と鈴木の二刀流

UWFが生んだ「二刀流」の象徴といえば、船木誠勝選手と鈴木みのる選手です。

船木選手はプロレスの華やかさを捨ててパンクラスを設立し、ヒクソン・グレイシー戦という「真実の闘い」に身を投じました。一方、鈴木選手は総合のリングで勝負の厳しさを極めた後、再びプロレスのリングへ戻り、総合の技術とプロレス特有の感情表現を融合させた唯一無二のスタイルを確立しました。

彼らの歩みこそが、UWFが求めた「強さの証明」の答えと言えるかもしれません。

現代へ息づくUWFの魂

UWFの技術体系は、現在のプロレス界にも深く浸透しています。

新日本プロレスの柴田勝頼選手が見せた「殺伐とした打撃とグラウンド」や、プロレスリング・ノア(NOAH)における拳王選手たちの峻烈な蹴り技は、まさにUWFの遺伝子です。

かつてカール・ゴッチさんはプロレスへのキック導入を危惧しましたが、現代の選手たちはそれを「魅せる技術」として昇華させ、よりスリリングな闘いへと進化させています。

UWFが残した功罪

今やキックのないプロレスは考えられないほど浸透していますが、グラウンドレスリングや関節技の攻防など、本来あるべきレスリングの姿からは離れているようにも感じられます。

そう思うと、UWFの出現は必ずしも「功」だけがあったとは言い難いのではないでしょうか。

UWFの最大の功罪は、プロレスが内包していた「強さの幻想」というベールを剥ぎ取ってしまったことにあります。

人間心理には「本物を見たい」という残酷な好奇心と、「夢を信じたい」という切実な願望が共存しています。

UWFはその狭間にリアリズムという楔を打ち込み、観客を熱狂させると同時に、プロレスを「格闘技的整合性」という物差しで測られる過酷な土俵へ引きずり出しました。

信じたいものを信じるという純粋な心理を、あえて残酷な真実の影に晒したUWF。

その闘いの系譜は、幻想が壊れた後の荒野に「プロレスと格闘技の両立」という新たな花を咲かせましたが、私たちが失った「古き良き魔法」への郷愁も、また消えることはないのです。

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