新日本プロレス・ ヤマダインフラテクノス Presents G1 CLIMAX 35
(2025年08月03日 (日) 福岡国際センター:2,534人 )
イントロダクション
7月24日。鬱と介護に苦しんで途中がんにもなったけど、ついに身障者手帳が交付された。20年かけてはじめて結果出す事ができた。
とはいえ、JRでは片道100キロ越えないと割引対象にならず、新下関〜博多間は対象外。
したがって、本当に久々となる高速バスでの往復をする事になった。時間はかかるが、バスだと割引がきくためだ。

この日は大橋でサマーフェスティバルがあり、迷いに迷った末、G1を選択した。今年は特に酷暑だし、夏の屋外プロレスはだんだん厳しくなってきそうではある。
来年はどうするかわからないけど。
とはいえ、だんだんしょぼくなってくるG1クライマックスも正直興味は薄れてきているんだが、NJPWの大会も気づけば久しぶりになるし、たまには涼しい場所でみるプロレスも悪くないか、と軽く考えてこちらを選択した。
下関→福岡国際センター
実は高速バスを使うのは10数年ぶり。国際センターへは、2011年8月のG1クライマックス2連戦の国際センター以来だった。
まだオカダがでてなくて、2日目のメインが棚橋対永田だったことはよく覚えている。
当然それだけ時間が経過しているため、バス停の場所も駅前から駅裏にできたシネコンの真下に移動していた。
これは完全日陰でしかも海側だから風通しもいい。こんな酷暑でも屋外で待てるのはありがたい。

隣の椅子には韓国から来たらしい一家がバスを待っていた。すぐ近くに関釜フェリーの船着場があるので、そこ経由で下関素通りして博多に行くんだろう。
こんな寂れた駅前じゃ観光客すら立ち寄ってはくれない。厳しいけどそれが現実なのだ。

バス移動の悪いところはクッションがそれほど良くなくてずっと座っていると非常にきつい点にある。

しかし、裏返せば下関から博多間を一切自分の運転で移動しなくていいので、このあたりは楽。
結局、15時過ぎには国際センター近くの蔵本に到着。そこから徒歩で国際センターに行くと、ちょうど売店があいていたので、パンフを購入。40年前は500円だったのだが、今や2,000円。時代は変わるものだなあ。

オープニング
しばらく日陰で涼んで列がはけた頃に入場。今日のサイン会対象者はELP。同じ誕生日だし、タイミングがあえばいつかサインもらいたいが、今ではない。

とはいえ、ファンタズモも私もまさかがんになってしまうとは夢にも思わず、運命というのは皮肉なもんである。

NJPW会員限定の撮影会はハートリー・ジャクソンが担当していた。ハートリーだってNJPW専属じゃないのに、よくやってくれるよなあ。

どちらも割と長い行列ができていた。しばらく会場で会った友人と談笑してから自席へ。

やはり国際センターの席は恰幅のいい我々にはかなり堪える狭さ。あれどうにかならんもんか。

第1試合 20分1本勝負
KONOSUKE TAKESHITA&○ロッキー・ロメロ(8分13秒 スライスロッキー→片エビ固め )YOSHI-HASHI&●嘉藤匠馬
嘉藤はSNSで、かつてTAKESHITAから「いつか大阪でシングルやろう」と言われたそうだが、そのための一歩としてこの試合にかける意気込みを綴っていた。

ならば、次に控えるYOSHI-HASHI対TAKESHITAの前哨戦ではなく、嘉藤が一番目立って、YOSHI-HASHI以上にTAKESHITAへ食い下がるべきなのだ。
自分の獲物はたとえタッグパートナーの先輩にも譲らない。それくらいガツガツしてなければ、ヤングライオンの名が泣くというもの。
しかし、試合はYOSHI-HASHI先発で嘉藤は下がらされてしまう。ここで物分かりの良さを見せちゃダメなんだけどなあ。

あげく、YOSHI-HASHIは次戦であたるTAKESHITAを意識しまくり。何度もぶつかり合って、前哨戦の流れを作り出す。
しかし、TAKESHITAと嘉藤のマッチアップになり、TAKESHITAから嘉藤を挑発すると、遅ればせながら嘉藤もガンガン突っ込んでいく。


もう少し早いタイミングでTAKESHITAにガン飛ばしていてもよかったんだけど、実際にぶつかり合ってからは、TAKESHITAにも一泡吹かせようと必死にはなっていた。
まあ、途中からYOSHI-HASHIより目立とうとしていた分まだマシだったけど、TAKESHITAが完全に振り向くところまでは及ばず。

最後はYOSHI-HASHIとTAKESHITAが激しくやり合う中、ロッキーの巧みな技で嘉藤は仕留められてしまった。

戦前嘉藤自身が言っていたような第一歩になったかどうかは微妙だけど、いつかTAKESHITAの対角線上に嘉藤が立つ日もくるのかもしれない。

第2試合 20分1本勝負
成田蓮&○金丸義信(7分16秒足4の字固め)グレート-O-カーン&●ジェイコブ・オースティン・ヤング
いい選手なのは誰しもが認めるジェイコブだが、階級がジュニアでもあり、特別テーマらしいテーマがないまま、G1のツアーに参戦している印象がある。
カラムみたいにいずれヘビー級に転向するならまだしも、今ひとつ先が見えない中、彼が何をテーマに戦っているのかを生で見届けたいところである。

試合自体はHoTが先制し、成田がテクニックとラフを絡めて、広島でザックに痛めつけられたオーカーンの右腕と膝を破壊しにくる。



ラフも金丸とふたりでオーカーンを捉えて、ジェイコブを完全孤立。加えてジェイコブの足も破壊して、最後は金丸の職人芸・4の字固めを決めて、タップを奪った。


オーカーンの負傷と度重なるメンバーの離脱で苦境に立たされた連合帝国。
会場の支持率はオーカーンへの声援が大半だったが、結果は惨敗という事で、暗雲が垂れ込める結果になってしまった。

第3試合 20分1本勝負
●邪道&エル・ファンタズモ(6分05秒 変型片エビ固め )○石森 太二&ドリラ・モロニー
ゲイブの敵討ちに意気込みすぎてTAKESHITAに苦杯をなめたモロニーと、TVチャンピオンでありながら、決勝トーナメントに脱落確定のファンタズモ。
シリーズも中盤になってくると、要するに消化試合が発生してくるため、公式戦とは違う何かをテーマにしなくてはならないし、テーマなしで凡庸な試合をしてしまう事も許されない。
G1後を見据えたコメントを発して不穏な空気も流れているファンタズモはこのままNJPWからフェードアウトしてしまうのだろうか?

しかしながら、モロニーは既に切り替えてターゲットをELPに切り替えると、ファンタズモのポーズでドッグシャウト。
だが、意外とこの二人は噛み合うようで、シングルマッチを見ているような感じの流れで試合は展開。
ここにスパイスとしてELPのもとパートナーである石森が一味加えていくため、試合はかなり締まった感じになっていった。




しかし、邪道とのマッチアップになって、クロスフェイス・オブ・JADOを石森が丸め込んでカウント3。

展開は悪くなかったんだが、結末が唐突すぎて、ちょっともったいない試合だった。
第4試合 20分1本勝負
●永井 大貴&鷹木 信悟(7分16秒 デスバレーボム→片エビ固め )○ハートリー・ジャクソン&ザック・セイバーJr.
今回のG1で一番不思議なのは、なぜハートリーがリーグ戦にエントリーされていないのか?という点。
実力的には申し分ないし、体格もいい。確かにフリーランスなんで、さまざまな団体と掛け持ちしてはいるんだけど、これだけの体格かありながら、人数合わせで使っているNJPWのやり方にはどうも解せないものを感じる。
そりゃザック対鷹木が大一番なのはわかるが、鷹木のカラーが最も生きやすいのはハートリーの方だと思うんだが、何のための最強決定戦なのか?疑問に思えてならないのだ。
ここで面白いことに永井がハートリーに突っかかっていく。体格差はいうまでもないんだが、この無鉄砲なところがいかにも若者らしい。


しかし、岩のようなハートリーには当然及ばず。代わってザックが相手になると、これが関節技の見本市になり、永井はなすすべなし。

鷹木も敢えて助け舟は出さなかったが、永井は自力で脱出。
ザックと対峙した鷹木は意地でも肉弾戦にもっていく。どちらも公式戦では負けられない立場だけに、必死になっているのは、見ていて面白かった。
しかし、やっぱりハートリーはこの試合でみていても、どうしてG1本戦に出られないのかが全くわからない。


会場人気もあるし、実力もあるんだから、シングルマッチで色んな選手との試合が見たかった。


こういう試合でも手を抜かないので、次回は是非本戦に出場してもらいたいもんである。
第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 35』Aブロック公式戦
○ボルチン・オレッグ(10分54秒 カミカゼ→片エビ固め )●カラム・ニューマン
こちらは期待の若手同士の対決。力のボルチンに技のカラムというわかりやすい対決。

まあ、結果的に本戦にでているからいいようなものの、当初は参戦選手から外れていたカラム。そのカラムが5月に後藤のIWGPに挑戦したのが国際センターだった。
なのに、来年引退が決まっている棚橋は最初から名前が入っていて、カラムは予選からという扱いの差。昨年は棚橋すら予選からスタートだったのに、これでは思い出作りと批判されても仕方あるまい。
カラムもボルチンもこれからの選手なんでどうか未来がみえる試合をみせてほしい。そう願わずにはいられない。

試合内容は最初の予想よりもカラムがパワーと蹴りでボルチンに対抗してきたのが意外だった。

最初はオスプレイのコピーみたいな事をしていたけど、本来の持ち味はこうしたゴツゴツな試合なのかもしれない。
こうなると、頑丈な肉体がウリのボルチンは真っ向からレスリングテクニックと、カラムを上回るパワーで、だんだんと削りにかかってくる。

おそろしいのは、これを計算ではなく、本能でやっている点で、ボルチンが未来の怪物たる所以の一つなんじゃないか、と思ってしまった。

最後に決めたカミカゼは強烈の一言につきるとしかいいようがない。あれは説得力がありすぎた。
とはいえ、同世代のライバルとしてカラムとはいい勝負ができそうだし、これからも切磋琢磨して、素晴らしい選手になっていってほしい、と思えた試合だった。
第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 35』Aブロック公式戦
●タイチ(11分50秒 THE GRIP→体固め )○大岩 陵平
予選敗退からファレの代打として再予選を勝ち上がったタイチは、G1を若手世代の壁になるとテーマづけて毎試合戦っている。
今回の対戦相手はNOAH育ちの大岩。ルーツを辿れば似たような場所に行き着くタイチとしてみれば、自身に課したテーマをやりぬくには避けてはとおれない相手。

この試合自体は多分いい試合になるんだろうが、見る側としては、想像を超えた試合になるかどうか。
頑張ってるなあ、だけではタイチにも大岩にも失礼になる。だからこそこの試合で二人が何を見せたいのか?が知りたいのだ。


ところが始まってみたら、壁は壁でも二つの壁がひたすらぶつかり合うという、ある意味シンプルな試合内容になっていった。

全体を通して、テクニックでも見せられる二人だからこそ、単純なぶつかり合いにプラスアルファが欲しかったかな、というのが個人的な思いが残った。


更に欲を言えば二人とも上背があれば迫力は倍増するんだが、90年代のラリアットプロレスみたいな流れになってしまったのは残念だった。
タイチはアックスボンバーが決め技ではないけど、THE GRIPを必殺技にする大岩にはラリアットの連発はむしろマイナスイメージになるように思える。

一撃必殺の技に磨き上げるためには、ここぞという場所で使って、仕留めてほしい。
昔からラリアット合戦は見栄えもするけど、乱発すると批判もうけやすい。

まだまだ大岩がトップに立つには学びが必要かな、と思わされた試合だった。
なお、この試合だけモニターの不調で入場PVが流れなかった。せっかくの見せ場なのに、残念極まりなかった。
第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 35』Aブロック公式戦
●上村 優也(11分41秒 ギターショット→体固め )○SANADA
福岡の大学に籍を置いていた上村にしてみればこのカードも凱旋試合になる。
しかし、ことはそう簡単にいきそうにない。相手はHoTのSANADAだからだ。

元を正せば同じJust 5 Guysのメンバーだった両雄だが、テクニック派に舵を切った上村に対し、テクニックにプラスサイコティックなヒールに変貌を遂げたSANADAは、かつてのテクニシャンとして鳴らした姿は影も形もない。

おまけにHoTはいつ他のメンバーが介入してくるかわからないのだから、あまり多くを期待しない方がいいのかもしれない。


ところがあにはからんや、SANADAは上村のテクニックにテクニックの応酬で返してきたのだ。
これは私がまさに望んでいた状況!前半はそのコッテリとしたレスリングの攻防に酔いしれていた。前半は!

だが、今のSANADAはHoT在籍のヒール。上村をレフェリーにぶつけてからは、通常通りのHoT劇場がスタート。
ファレの介入に金丸の乱入。加えてギターショットで上村、絶対絶命の危機に!
しかし、一度は自力で脱出しかけた上村が金丸にかんぬきスープレックスをしかけたところで、金丸がウィスキーミスト!

これが決め手になって、SANADAがギターショットで上村を痛打。堂々と勝ちを収めたのだった。

試合後、飛び散ったギターの破片をセコンドが箒で掃いていたけど、昭和脳だとあそこは○菱の掃除機だろ、と思ってしまった。

○菱じゃなくてもスポンサーつけば需要ありそうなんだけど。
セミファイナル:30分1本勝負
『G1 CLIMAX 35』Aブロック公式戦
○デビッド・フィンレー(10分31秒 オーバーキル→体固め )●“キング・オブ・ダークネス”EVIL
この試合は、前試合と連続するHoT。こちらはバレットクラブ時代から続く因縁抗争。
そもそもHoTの方が敗北してバレットを追い出されたはずなのに、人数は拡大するわ、やりたい放題やるわで、勝ったはずのWAR DOGSより明らかに勢いがある。
個人的には怒り心頭のデビットとしては、ここで何とかHoTに一矢報いたいところ。
果たしてEVILの入場時に、背後からデビットが奇襲。そのまま大乱戦に突入!


だいたいWAR DOGSもHoTもラフ主体のユニットではあるのだが、ゲイブ効果か、HoTがあまりに反則三昧を繰り返すものだから、本来ヒールであるはずのバレットクラブがどんどんベビー化してしまっているのだ。


それが普段から因縁がある対HoTだと余計に鮮明になってしまうのだ。
したがってHoTには大ブーイングや「カエレ」コールが浴びせられ、デビットには「デビット〜!」「フィンレー!」という声援やコールが巻き起こる。
特別やってることに変わりはないのに、比較対照してより悪い方にみえると、罵声が飛んで、そうでない方はベビーフェイス化してしまう。
プロレスの不思議なところは役割をお客さんが決めることができるという点で、これはいくら送り手が、WAR DOGSはヒールです、と言ってもどうにもならないのだ。

結局、悪いやつら(HoT)は、WAR DOGS(いいもん)に制裁され、観客は溜飲を下げたわけだが、これはG1のリーグ戦であり、本来悪いとかいいとかいう役割の話は二の次にして、勝つか負けるかにテーマを絞ってほしいな、という希望もある。
それこそ「決めろ!最強」と謳っているんだから、全選手がG1の間だけでも最強を基準に表現してほしい。
そういう意味では、私にとってこの試合は、WAR DOGSにもHoTにもモヤモヤしたものを抱えてしまう結果になってしまったのだ。
通常のビッグマッチだったらよかったんだけど、G1クライマックスだからなあ。
メインイベント:30分1本勝負
『G1 CLIMAX 35』Aブロック公式戦
○棚橋 弘至(16分46秒 ハイフライフロー→片エビ固め )●辻 陽太
ファン時代に棚橋から直々に「プロレスラーにならないか?」と言われ、実際にNJPWに入門した辻にしてみれば、この試合がG1以上の特別なカードであることは間違いない。
だが、今回棚橋引退という別なストーリーが紐付けられた事で、本来夏の最強戦士決定戦というG1の「あり方」自体がぼやけてしまっているような気がしてならない。
本来G1ってもっとシンプルにプロレスにおける「勝った、負けた」がより楽しめるはずなのに、サイドストーリーが目立ちすぎてしまうのは、個人的にはどうも腑に落ちない。

35回目という節目も、棚橋引退の前に霞んでしまっているし、本来あるべき姿に戻すためには辻が完膚なきまでに棚橋を叩き潰して「恩返し」するしかないと私は思っている。
しかし、辻が勝負に対して非常になればなるほど、プロレスでは受けて立つ棚橋の方がどんどん輝いていく。

攻めても受けても落日の逸材は、鈍い光を放ち続けるのだ。それは「引退」という御旗の錦を掲げた者だからこそできる。

しかも、かつてアントニオ猪木との想い出と闘って、勝てなくて?結果道場から猪木の写真を外してしまった棚橋が、今度は自身の想い出を武器にプロレスを仕掛けてくるのだから、辻にとっては明らかに分が悪すぎる。
だからこそ、引退や落日といった部分は拾わずに、G1クライマックスは「決めろ最強」というシンプルなコンセプトが必要になってくる。

それでも生き様や歴史、想い出は勝手に見る方が描いてしまうので、選手は必要以上に自己表現につとめるよりは、単純に強いか弱いかという部分だけで勝負してほしい。
だが、いくら選手が勝ち負けに固執しても、見ている側がそれを求めなくなると、勝った負けたの興味は薄れてしまう。
強いて言えば、勝てるはずがないコンディションの棚橋が、どんな試合をするか?辻に対してどれだけ食い下がるか?あわよくば勝てるか?

だが、勝ち負けでみても結局、辻サイドから語るべきポイントがなさすぎる。どっちに転んでも棚橋が主役になるしかない試合なのだ。
今更だが、「決めろ最強」をテーマにするならば、引退を決めている選手をエントリーしてはダメだったのだ。
確かにこの日の棚橋は歩くのもおぼつかないし、コーナートップにあがるのもヨタヨタしていた。
それに対して会場のあちこちから厳しい声が飛んでいた。
しかし、試合が進むにつれてだんだんと「棚橋だからいいや」という流れがうまれ、気づけば「棚橋最高!」という空気が出来上がってしまっていた。

これではどうやっても辻に勝てる目はない。棚橋引退ロードとしては満点の試合だったけど、G1クライマックスの公式戦としてみたら引っかかる内容になってしまっていた。
だが、結局G1の勝負論より、ラスト福岡になるであろう棚橋の多幸感を会場は選択したのだ。
これは今のプロレスファンが求めているものだから、それに逆らっても仕方ない。何よりその多幸感に浸る落日の逸材はまた絵になっていたのだから、どうしようもない。
もし辻陽太がこの日の棚橋に勝てる日が来るとしたら、それは辻が一時代を築き、棚橋同様の落日期にきた時なんじゃないだろうか。
しかし、その時には辻にもG1クライマックスでの居場所はなくなっている。こうして時代は繰り返されていくのだろう。
ハイフライ三連発を棚橋が繰り出したときは、もう会場中が棚橋を押しまくっていて、悪いけどNJPWの新時代は影も形もなくなっていた。
エンディング
メイン後、大棚橋コールを受けてリングに留まり、マイクを握った棚橋は、「本当に不思議なもので、皆さんの応援が聞こえるたびにレスラーはエネルギーを貰って、どれだけでも立ちがることができます。生まれてから諦めたことないですから。最後まで全力でちょっくら優勝してきます」

再度の大棚橋コールが発生すると棚橋はエアギターを受け取ると、久々のエアギターを披露。
さらにアンコールから再アンコールで、この日エアギターは3度目。そのエアギターを叩きつけて破壊して、観客の「棚橋最高!」コールを背に「じゃあ最後に福岡の皆さーん、愛してまーすッ!」

マイクを終えた棚橋は四方のコーナーに上がってポーズを決めて、観客の声援に応える。そしてリングを降りると会場を回って四方のファンと長く触れ合いながら引き上げ、入場ゲートの前で再び勝ち名乗りを受け、試合より長い時間をかけて退場していった。

そういえば2011年もこんな光景をみたなあと思っていた。あのときはオカダ登場前夜で、まだ「夜明け前」だったけど、そこから変わらぬ姿勢で一貫している棚橋の姿勢はやはり素晴らしいと思った。

後記
帰りは一緒に観戦していただいた友人と語りながら、蔵本まで。メインで棚橋がインディアンデスロックを決めるシーンがあったのだが、後方の観客が「四の字みたいな技」と言っていたのが、2人とも気になっていたみたいだった。


インディアンデスロックといえば、基本的なプロレス技だし、棚橋だからこそセレクトした技だったのかもしれないが、そもそもはどの選手も出来て当たり前の技。
我々だって、たくさんの選手が使うのを見て、技名を覚えていったのだから、今のファンにだって伝わるはず。
どこが決まっているのかわからない複雑な技より、これぞレスリングといえる技を後世に伝える作業を、今リングに上がっている選手がもっとやっていかないと、技名と共に技も滅んでいく危惧を抱いてしまった。
知識としてファンが知らないのは、リングでその技を使わない選手たちの責任である。強さを決める大会で、ある種強さの象徴みたいな技を、周知徹底できていないのは、問題だと思った。
これから裏方になる棚橋社長には是非ともクラシカルな技を使う重要性を、後継者たちに口酸っぱく説いていってもらいたい。後楽園でやった上村対大岩みたいな「希望」はあるんだから!

そうでないと、プロレスの将来が心配でならない。
とはいえ、今の状態はギリギリ。貴重なシングルマッチが見られるという意味では
まだG1クライマックスというブランドに価値はあるように思う。
ここから先はどうなるかわからないけど、期待せずに経過を見守っていこうと思う。

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