プロレスリング華☆激こども夢応援プロジェクト「炎の友情」さざんぴあ博多大会(2019年11月28日木)
イントロダクション
考えてみれば2002年11月10日、仮面舞闘会ではじめてライガー対アステカをみてから約20年。年月の経過は残酷で、アステカは心筋梗塞、ライガーは来年で引退。
ついでに、見ている私は脳梗塞はじめ様々な疾患を抱えながらも観戦を続けている。気持ちだけ元気なつもりでいても、明日はどうなるかは誰にもわからない。
だからこそ今この瞬間を大事にしたい。今年はそれを強く意識させられた1年だった。そのために動ける範囲では動いて「現状維持」につとめている。現状は意識して維持しないと、すぐ後退してしまう。それもこの1年で痛感してきたこと。
アステカや華☆激が一期一会だと思い、これでもかと現在繋がりのある選手をぶち込んだ結果、全試合タッグマッチという新日本プロレスみたいなマッチメイクになってしまった。それだけ参戦選手にとっても獣神サンダー・ライガーは特別な存在なのである。
オープニング
特別なのは観客側も同じ。発売と同時にチケットは即完売。私はここぞとばかりにアステカコネクションを利用してチケットをゲット。長年の付き合いというのは時に福を呼び込むものなのだ。まあ、普段から損得を考えていたら23年も付き合いが続いちゃいない。ちなみにアステカ本人からチケット買ったのはこれが二度目である。
こういう大一番になると、やはりソワソワしてくるのは仕方ない。朝から病院にいても心ここにあらず、という感じだった。結局、14時には小倉を出て、16時には雑餉隈についてしまった。
開場して中に入ってまもなく前説でアステカ&ハラキリコンビが登場。爆笑トークと諸注意、そして、NHKと新日本ワールドのカメラが入っていることを告げて退場。
第一試合
×聖氣 & ×エル・ファルコ 1/20 ○磁雷矢 & RANMA(ダブル卍固め)
華☆激では毎度お馴染みのレアルルチャリブレ提供試合。四人が四人ともライガーにはそれなりに思い入れがあるだろう。対決はかなわかったにしても、同じ会場で試合するということには深い意味があるはず。
個人的には4人ともに思い入れがあるため、客観視するのは難しいが、敢えて冷静にみてみたいと思う。
ネグロもそうだったけど、だいたいレアルの生徒が一本立ちする前には、概ね校長が立ちはだかるのだが、今回は純粋に校長と教頭のチームが、生徒と闘う図式になっていた。
基本、聖氣もファルコもこうなるとルード色強目でいかないといけないわけだが、RANMAと磁雷矢をいくら二人がかりで攻めてもブーイングじゃなくて、声援が飛んでしまう。
という事は観客の多くは、RANMAも磁雷矢も攻め込まれてるけど、ピンチではないよね、という捉え方をしているとかんがえて間違いないだろう。
もちろん、レアルの2TOPに食い下がるチャンスなんてそうそうないんだから、いつも以上に聖氣とファルコの連携も冴えていたし、途中まではRANMAと磁雷矢も分断できていた。だから、彼らに意欲がなかったわけではない。
でも、どうかしたらワンチャンスをものにできるキャリアと能力がRANMAと磁雷矢にはあるわけで、終盤のワンミスに見事につけ込まれたという点では反省が必要かな、と思う。
それにしても、さすがは磁雷矢というべきか。ジャベリブレの創始者らしく、最後は二人まとめての変形卍固めで決めるあたりはなかなかに心憎かった。
第二試合
○HANZO & 超電戦士バトレンジャー & ハラキリ・ハカタJr. 1/20 xXXx & バトル・シャーク & ×平野洋太(サソリ固め)
新旧取り混ぜて華☆激に関わりがある選手が集合している本大会。ダークサイド以外のFTO勢が大挙して参戦しているのもレアケースなんだが、ハヤブサの系譜にいるパトレンジャーの参戦は、オールドファン的には嬉しい限り。
ライガー引退がテーマの大会でなければ、Gヴァリオンやブレイブのヒーローチームも見てみたかったが、このカードもなかなか興味深い。
周知の事実だが、ハラキリハカタの初代はアステカで、二号になったのはライガーである。その3代目であるハラキリハカタジュニアはこの大会には外せないメンバーの一人なのだ。
さて、この試合で一番目立っていたのは若い平野。小柄ながら運動神経もよく、HANZOやバトレンジャーといったレジェンドにも全く臆するところがない。
ぶっちゃけ記念試合だろうがなんだろうが、全員を食ってやろうという気満々なのは、見ていて気持ちが良かった。
平野に挑発されたせいか、レジェンドの動きも軽やか。特にHANZOは往年のコーナーポスト倒立を含め、コンディションも良さそう。
またバトレンジャーも試合数がそんなに多くない中、きっちり仕上げてきたのは、素晴らしかった。
第三試合
パンテーラ & パンテーラ・ブレイド 1/20 ドラゴン・ユウキ & ヴァンヴェール・ネグロ
(ラ・マヒストラルによるダブルフォール)
この試合はライガーの原点であるメキシコ繋がりの4人。プロレスというよりルチャテイストが色濃く出た試合。パンテーラ見るのも久々だけど、個人的にはイホ・デル・パンテーラの弟にあたるパンテーラ・ブレイドが気になるところ。
試合後判明したのだが、パンテーラ・ブレイドはまだ19歳らしい。そして日本人ながらヒールを買って出たネグロとユウキは、セコンドについていた、ヴァンヴェールジャックを試合に介入させた。
普通ならブーイングものだが、じつの我が子にメキシコのレジェンドを体感させたいという心意気には涙が出そうになった。メキシコプロジェクトがうまくいったとしても、パンテーラクラスのレジェンドと逢いまみえるチャンスはなかなか巡ってはこない。
そしてパンテーラの血を受け継いだブレイドは間違いなく、ジャックやユーセーたちと未来のルチャリブレを作っていく逸材である。
やり方は多少強引だが、それでもこの邂逅には大きな意味があったと信じたい。自分たちだってパンテーラと闘えるというのは、チャンスなはずだけど、ネグロもユウキもジャックのために動いていた。
それは善悪を超越した素晴らしいドラマだったとわたしは思う。こういうのがあるからプロレスはやめられないのだ。
第四試合
○スペル・デルフィン & スカルリーパーA―ji & 超人勇者Gヴァリオン 1/20 二代目上田馬之助 & ×アズールドラゴン & 竹村豪氏(デルフィンクラッチ)
デルフィンとライガーといえば、ベストオブザスーパージュニア決勝でのデルイガー対ライガーが思い起こさせられる。あの大阪府立第一体育館を埋め尽くした観衆の一人だった私は、今でもあの「大・デルフィンコール」が忘れられない。
それだけに叶うならばライガー&デルフィン&アステカというチームも見たかったのだが、それはそれで永遠の夢としてとっておきたい。
さて、この試合のキーマンはなんといっても10年ぶりに復帰を果たした竹村だろう。すっかり太々しくなり、ガタイもいい感じで仕上げてきていて、一時はGヴァリオンが捕まり放題になってしまったのだから、たいしたもの。
実際、復帰したはいいがブランクに苦しむ選手は枚挙にいとまないのだが、竹村が影で積み重ねてきた努力の賜物というやつだろう。
これを馬之助&アズールの絶妙なフォローが入り、デルフィン組は本当に手がつけられない状況に追い込まれた。
だが、ワンチャンスをものにできるのがベテランのベテランたる所以。あまり出番のなかったデルフィンが、アズールを捉えてスイングDDTからの、デルフィンクラッチで見事に勝利。
ライガー参戦が刺激になったのか、この日はとにかくベテラン勢が元気すぎた。あんなにコーナーでガンガン声出してるデルフィン見たのっていつ以来だろうか?
新時代の予感とベテランの踏ん張りがよい化学反応を起こして、セミまでは非常に盛り上がった。さあ、いよいよメインである…。
スペシャル エキシビション マッチ
獣神サンダー・ライガー & ○コスモ☆ソルジャー & 小川聡志 1/20 アステカ & 新泉浩司 & ×エル・ブレイブ(ダイビングフットスタンプ)
新日本とのディスカッションの末、華☆激メンバーでライガーを送り出す流れになってのこのカード。誰が誰と組んでもそれなりに面白くはなるのだが、普段から華☆激では最年長になる小川が、ライガーの存在によって、年齢的に「中堅」になってしまう。
今でも忘れられないのだが、対ライガー選手で思い出すのが、福岡国際センターで行われたG1クライマックスでの、ライガー組対アステカ&コスモ&ディアブロの試合。インディの意地を見せつけつつも、当時絶頂期にあった新日本ジュニアの壁に跳ね返されたのも、今となっては懐かしい思い出である。
それから20数年を経て、散々悩んだ挙句に組むより闘うことを選んだというのもまたアステカらしいと私は思った。
先発はアステカとライガー。エキシビションということは抜きにして、やはり1秒でも長く絡みたいという気持ちからか、グラウンドで勝負をかけるアステカだが、やはり藤原道場で鍛えらたライガーは、何もかもが違いすぎる。
注目はやはり事前にライガーとの対戦を直訴したブレイブ。普段からこのくらいの気合いで試合してもらいたいものだが、コーナーのライガーに食ってかかると、瞬間湯沸かし器のライガーが発動。たちまちボコボコにされてしまう。
しかし、この日のブレイブは必要以上に食い下がった。たしかにライガーを慌てさせるとこまでは行かなかったものの、いまの自分の全力は出せたのではないだろうか?
逆に新泉が一歩下がって、フォローに回ってしまったのは残念だった。人間性からして「俺が、俺が」というタイプではない新泉だからこそ、ライガーとの一期一会を大切にして欲しかった。この試合で不満があるとしたら、それくらいかな?
試合後ノーサイドで健闘を称えあう両軍。最初にマイクを握ったアステカは感極まって涙のマイク。これに対しにライガーが「リング上で泣くな。おっさんの涙は見苦しい。これだけのお客さんがきてくれた華☆激をもっと大きくしていけ」と諭した。
後記
最後はロープを外しての記念撮影から、ライガーの提案で円陣を組み「プロレスリング華☆激バンザイ!」。さらにはライガーを胴上げしたあと、アステカの音頭で選手,会場全員で「ライガーさん、ありがとう!」で締めた。
正直、これだけの人数の選手が揃ってしまったことで、フルハウスなのに始まる前から赤字確定という大会だったのだが、身銭を切ってでもライガーを送り出したかったアステカの心意気にはグッとくるものがあった。
歴史の終わりに歴史の始まりもみえた本当にプロレスの良さがこれでもか、というくらいに詰め込まれた大会だった。見終えてこんなに清々しい気分になったのも久しぶりだった。本当にプロレスって素晴らしい!みなさん、ありがとうございました!