[プロレス観戦記] アイスリボン博多初上陸『博多リボン』(2016年3月20日)

せかぷろ

アイスリボン博多初上陸『博多リボン』

(2016年3月20日・博多スターレーン)

写真はこちらから

イントロダクション

待ちに待ったアイスリボンの博多大会。当初は女子プロレス界では地方進出の最有力候補と言われながら、アイスリボンの選手はWAVEや他団体に参戦する時にしか見られなかった。そうこうする内に他団体は続々と博多に来るようになり、その流れの中にアイスリボンはなかった。

正直いえば、さくらえみさんはじめとする現・我闘夢雲勢やフリーになった各選手、引退した選手たちがいたころに見たかったのだが、タイミングが合わない時はこんなもの。

二度ほど東京に行きながら、アイスリボンの興行には当たらなかったし、仕方あるまい。

オープニング

正直、女子プロレスの記憶が全女で止まっている地方在住の私みたいなプロレスファンにとってはビジュアル中心で、短時間勝負主体の現在の女子プロレスは食い足りない。

今の選手たちは相対的に小さく、細い。芸能活動を兼務している選手もいるため、仕方ないとはいえ、海の向こうのWWEでは、その見た目と実力を兼ね備え、かつ長時間の試合ができるディーヴァが続々生まれている。

それを考えるとどうしてもものたりない。あと、アイスリボン自体には地方民の希望だった19時女子プロレスを斬られた恨みもある。

19時女子プロレスについて
19時女子プロレスについて 解説 19時女子プロレスは、かつて動画共有サービス「USTREAM」に乗せて無料配信で生中継されていた女子プロレス中継番組です。 2010年5月28日、アイスリボンの別ブランドとして設立され、当時アイスリボン所属

正直じゃあ、有料会員になってニコ動の配信みたいか?といわれたら、そこまでしたいとも思わない。それが観戦前時点での、私のアイスリボンの評価なのだ。


◆第1試合 シングルマッチ10分1本勝負

○雪妃真矢 vs ×沙弥(6分41秒逆片エビ固め)

キャリアが浅いせいかもしれないし、巡業慣れしていないのもあるのか?

2人とも正面しか向かないで試合してるので、写真撮ると北側のお客には背中しかうつらない。

沙弥はデビューしたてなんだろうけど、全体的に物足りないし、雪妃はその沙弥を引っ張り上げる度量がまだまだ足りてない。

それと10分しかない試合の弊害か、2人ともグラウンドをじっくり展開しない。

割とあっさり手を離してしまう。やはりプロレスは10分でやるもんじゃないなあと思う。

 

立ち上がりがバタバタしてると試合そのものが雑にみえる。今の女子プロレスの限界ってこういうところにも表れている気がする。

やっぱビジュアルを重視する前に、プロレスをきちんとしないといけないなあと痛切に思う。

試合は雪妃が片逆エビで粘る沙弥を下したが、この辺りは若手らしい結末になった。

今回のようにツアーに出る機会が増えると新人の試合も飛躍的に伸びるんだけど。そう多くの地方大会を組めるほど団体の力もないし。難しいところ。

◆第2試合 シングルマッチ15分1本勝負

×235 vs ○弓李(6分28秒ネ・コヒストラル)

これも第一試合と似た感じ。やはり正面しか向かないんだけど、第一試合と違う点は2人の気持ちの部分で「負けまい」とする気迫は伝わる感じがした。

ただキャリア不足なだけにどうしても試合に変化がつけられないのか、意地の張り合いにしても一本調子になる場面が度々あり、これはこれからの課題かなと思う。

ただ、やはり2人とも若さは強い武器だな、と思う。本来あるべき女子プロレスの姿は若い選手が躍動する部分にこそあるべきなんで、強さは感じなくても、こうした形で継承されているのは非常に嬉しく思う。ただ動くにしてもやっぱ10分、15分が限界なのかなという場面も多々あって、これは仕方ないのかなとも思う。

◆第3試合 タッグマッチ20分1本勝負

大畠美咲(WAVE)&○優華 vs つくし&×長崎まる子(13分13秒ダイビング・エンジェル・サンダー→片エビ固め

九州出身のまる子凱旋試合。本来ならここに成宮さんがいたんだろうなあ、と思うと少し切ない。まあ、DDTでアイス提供試合としてスターレーンで試合はしているんだけど。

つくしは当たり前だけど19時の時からすると別人みたいになっていた。そして伸びのあるドロップキックはやはり芸術級!彼女のドロップキックを見られただけでも入場料の元がとれたと言ってもいい。

ドロップキックだけではなく、ブリッジのきいた各種スープレックスには破壊力も増していた。つくしは身長のない分は闘争心でまかなうタイプなんで、大畠にも優華にも遠慮は全くしない。これはやはりプロレスのキャリアのなせる業だろう。プロレスラーに一番大切なものを持っている気がした。

そのつくしに優華が散々突っかかっていたのは興味深かった。キャリアからしたら圧倒的に下なんだけど、臆せず向かっていく姿勢には好感が持てた。この気の強さと体幹は彼女の大きな武器になると思う。運動神経もいいし、適応能力にも素晴らしいものが感じられたし。やはり噂通りの逸材だった。

大畠がその優華をうまくコントロールして試合は白熱した。やはり、大畠やつくしクラスになると正面しか向かないということはしない。四方のコーナーを有効に使い、片面のお客さんにしか顔見せしないということもない。このあたりはやはり経験値の差だろう。この2人に優華が負けまいとして割り込んできたので、まる子も試合の中でもう少し自己主張できるようになるとなおよくなるかもしれない。

◆第4試合 シングルマッチ20分1本勝負

○岡林裕二(BJW) vs ×松本都(6分51秒アルゼンチン・バックブリーカー)

(崖のふち提供試合と銘打たれていないものの、やはりその路線を期待してしまうのは、ある意味仕方ないかもしれない。それに前日口を縫ったという都は負傷個所を隠すため、黒マスクで口元を覆って登場。普通なら痛々しいとなるところが、松本都がやるとなんかネタっぽくみえてしまう。一応負傷したんだという説明はあったんだけど…

しかし、予想に反しなんと岡林に真っ向勝負を挑んだ都!さすがにチョップ一発でのされるのは仕方ないとしても、あの岡林を前にして一歩も引かないというのはさすがプロレスラー!気持ちが全く折れず、なおかついつも通りマンマミーヤまで繰り出す様に思わず会場から大都コールが起きた!

そして岡林が全く都を格下扱いせず容赦ない攻めを繰り出したのも素晴らしかった。この岡林の対戦相手に対する敬意と都の闘志が、あきらかにハンディがあるはずの試合を大いに盛り上げた。やはり最後にものをいうのはハートの部分なんだなあという、プロレスの大事な部分をよもや松本都の試合で実感することになろうとは・・・やはりプロレスは生でみてみないとわからないものだなあというのを思い知らされた。

そんな都へのリスペクトを岡林は試合後、マンマミーヤのポーズをとることでお客に示した。これもまた素晴らしい。19時女子時代からずっとみてるけど、私が見た中では文句なく松本都のベストバウトといっていい。本当に素晴らしかった!

あとでサインをもらいに行ったときに胸元が真っ赤になっていてしゃべるのもきつそうだったけど、そこをこらえて撮影に応じたりサインをしている松本都の姿はある意味神々しかった。

◆第5試合 タッグマッチ30分1本勝負

星ハム子&×宮城もち vs 藤本つかさ&○世羅りさ(15分58秒ダイビング・ダブル・ニードロップ→片エビ固め)

昔だと、広島で前哨戦があって博多で決着という流れが多かったのだが、世羅が広島県出身ということもあってか、博多で広島でのタイトルマッチの前哨戦が組まれるというかなり異例の?事態になった。

ところがやはりというかこの3人に混ざってしまうと世羅の打たれ弱さが目について仕方なかった。前の試合で松本都の驚異的な粘りを見たせいもあって、岡林ほどではないにしても、やはりパワー派のらぶりーぶっちゃーずの攻めにたじたじになる場面が多々見られたのは、ちょっとメインイベンターとして、チャレンジャーとしてどうなんだろうと思ってしまった。

世羅は攻めに回ると確かに格好いいし、見栄えもするんだけど、やっぱこの試合では自分が何とかするというより藤本つかさになんとかしてもらっているという場面も多かったように見えた。会場からも「しっかりしろ!」という声が飛んでいたけど、やっぱみなみるところはちゃんとみてるなあという気がした。一見するとアイドルに会いに来てる層とファン層が同じなようでいて、このあたりは少し違う。

そこへいくともうぶっちゃーずの安定感は半端ないし、もう何百回と絡んでいるであろう藤本つかさとハム子の絡みは外しようのない鉄板感があって、これをメインにもってきたのはある意味、大正解。

試合はぶっちゃーずが負け、形の上では世羅が一本取った形にはなったけど、正直シングルではどうかなあといったところ。

ところが試合後あまりに「広島、広島」と連呼するのが気に入らなかったのか?それとも地元でどうしても勝ちたかったのか?試合後突然まる子が乱入してきた。しかも藤本から一本取りたいのか?バトルロイヤルをやれという。かなり強引でむちゃくちゃだけど、これをリング上から千春リングアナと協議して、アイス(都含む)勢のみのバトルロイヤルが追加された。

特別試合:アイスリボン全選手参加バトルロイヤル

勝ち残り○藤本つかさ(9分22秒ビーナス・クラッチ)長崎まる子
(退場準:沙弥・235・弓李・雪妃真矢・宮城もち・優華・つくし・世羅りさ&星ハム子・長崎まる子)

あとで考えたら女子全員というくくりにしておけば大畠もはいったんだけど、ギャラの問題もあるし、座談会をすっとばしてバトルロイヤルというのも地方大会らしくて面白い。

いきなりはじめた割には皆さすがに適応力が高い。そしてまる子はしばらく戦いの輪には入らずうまく立ち回っていた。このあたりは自分が仕掛けた手前もあるし、結構執念を感じた部分だった。全試合のダメージが出かかったもちも休んではいたけど、大日の提供試合も考えてか、割と早めに退場。

全選手二試合目だけど、そこまでの疲れも感じないのはさすが団体の平均年齢が若いからだろう。まる子を除けば(まあ、ある意味ネタ的ではあったが)楽をしてる選手もいなかった。そして気が付けばなんと藤本つかさ対まる子という顔合わせに。

キャリアであわやというシーン(オーバー・ザ・トップロープありなので)も作り出し、会場を大いに盛り上げ、まる子に声援が集まるようにしていたのもさすが藤本つかさというかなんというか。

でもやっぱ勝ちは譲らなかったため。まる子が一本取られると大ブーイング。このあたり藤本もわかっているけど、お客もわかっている。

笑顔で「ブーイングどうもありがとう」とマイクを握った藤本は「こんな形ではなく、ちゃんと初勝利をあげてまた博多に来よう」といって最後は握手~「プロレスでハッピー!アイスリボン」で締め。

後記

正直入り自体は大日の半分以下という厳しいものでこれが今の女子プロの限界かなとも思える。まだまだ地方に届けるにはアイスでさえ何もかも足りてないなとしか言いようがない。だが続けてこないとどんな団体でも地方に定着することは難しい。学生が多い分ツアーを組みにくい事情はわかるんだけど、そこは年一でもいいので博多リボンは続けていってほしい。最初はDDTだって厳しい入りだったのをしつこく開催したからこそ、今があるんだから。

とにかく連続開催しないと、新日であろうとどこだろうと地方は満員にはならない。コツコツ営業かけて地道にやり続けたものだけが満員の会場の中に立つ資格をもつ。そこにインディもメジャーも関係ないのだ。

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せかぷろ | プロレス“ザ・モンスター”ハラダのプロレスブログ
プロフィ―ル~MY STORY~がん・緑内障・うつ・介護の4重苦にも負けないプロレスブロガーの壮絶な人生
プロレスオタクで心理カウンセラーの資格を持ち、両親の介護をしながらガンサバイバーとして生きる著者が、自分の人生や仕事について赤裸々に語ります。プロレスやオタク文化に関する豊富な知識や経験、心理カウンセラーとしてのスキルや活動、介護やガンサバイバーシップに関する悩みや工夫など、興味深く感動的な内容が満載です。あなたも著者のストーリーに共感しませんか?







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