がむしゃらプロレスイベント試合:一足早いクリスマス・子ども食堂キッズフェスタ・いじめ撲滅イベント(2017年12月3日 日曜・八幡東区中央町商店街)
がむしゃらプロレスが八幡で試合するのは、皿倉山か八幡西と相場が決まっているため、八幡東というのは大概素通りすることが多い。厳密に言えば八幡東区も八幡駅を有し、そこそこ街中ではあるんだが、県外の人間にとっては、よほど特別な用事がなければ訪れない場所。
しかも皿倉山大会が悪天候により2年連続で中止になっているため、東区に足をふみ入れる事自体が2年ぶりとなる。
実際、八幡東の商店街は日曜のせいか、ほぼシャッターがおりている。その中で子ども食堂のイベントが行われており、真ん中にリングが設営されている。せっかくイベントやるんなら、商店街も全面的に連携しても良さそうなもんだが、このどこか「人任せ」な感じは、北九州や下関に限らずどこも似たようなもんかな?
さて試合前は、プロレス教室からなぜかスプラ◯トの一気飲み大会に。真冬に炭酸飲料の一気飲みとかかなりハードだよなあ。完飲ではなく、半分でOKになったが、ある意味かなり厳しい闘いだった。ちなみにこれは2部にも開催された。
一部 12:00〜
①◯パンチ君 vs ×竹ちゃんマン
多分今回の竹ちゃんマンは9月に登場したのとは別人(のはず)。若いとは言え、1日三試合こなすスタミナは凄いというほかない。パンチくんは、一部のみの登場だが、多分「オトナの事情」なんだろう(笑)
このふたりの絡みはこういうイベント試合のオープニングを任せるにはふさわしい組み合わせ。初めてみる人にもわかりやすい、とっつきやすいという意味では適任でもある。
さて、なぜか2人とも通常のテーマ曲ではない曲で入ってきた。特にパンチくんは、「くいしんぼう仮面」のテーマ曲を流しながら、普段着のスタイルで入ってきた。
竹ちゃんマンもあっけにとられているが、パンチくんは、おかまいなしにいきなりレフェリーを巻きこんでの土下座から試合をスタートさせると、場外をにげまわり、どっかでみた子どもを使って2人がかりで攻撃したかと思えば、再び場外に落ちた竹ちゃんマンに鮮やかなムーンサルトを決めたりとやりたい放題。
竹ちゃんマンも得意のカンチョー攻撃などで一矢報いようとするが、どうしても後手後手に回った感は否めない。最後は「八幡東、ありがとう」とパンチくんがコーナーからダイブ。キレイに決まってカウント3!
パンチくんはイベント試合では水を得た魚のようになるから素晴らしい。今回もハズレのない好勝負を見せてくれた。
②◯TOSSHI&KENTA
vs
×美原輔&トゥエルノ・ゲレーロ
今回は来年以降のジュニア戦線を占う意味で興味深いカードがいくつか組まれており、その意味で、このカードはゲレーロとTOSSHIの絡みに注目したいところだが、一方でGAM1のリベンジを果たしたい美原は、KENTAの首を狙いたいところだろう。
一見するとKENTAだけ個人的なテーマがないようにみえるが、LCRに加入して本格復帰したTOSSHIがまだ全盛期の動きやスタミナをとりもどしていない現状では、KENTAがLCRをリードせざるを得ない。そういう意味ではチーム的な課題はLCRの方が重い。若さに任せてイケイケになれるドリームチューバーとは、そこが大きく違うのだ。
入場テーマ曲はなぜかチューブの曲をドン・タッカーが生歌を披露する「炎!修一スタイル」に。ドリームチューバー、全部こんなになるのかな?それにしてもドバイの億万長者が寒い寒い八幡東区で生歌歌うためだけに来日するとは(笑)
まあ、冗談はさておき、肝心の試合だが、やはり両軍に改善の余地が見られたのは幸いだというべきだろう。ドリームチューバーでは、やはり美原。彼が必殺技にしたいスタナーは事前に相手の首を痛めつけた上で決めないと、今のままなら窮地を脱する逆転技になっているドロップキックと位置づけがあまり変わらない感じがする。連携に関しては最近よく組んでいるせいか、ゲレーロとのコンビネーションは非常によいだけにもったいない。
他方、LCRの課題はTOSSHI。彼の持ち味は、がむしゃら一痛いと言われる打撃技なんだが、蹴り技は連発するとスタミナを奪う。そこをフォローするかのようにKENTAがさかんにツープラトンを仕掛けて、スタミナに難があるTOSSHIを
手助けするが、美原が孤立したように、TOSSHIも孤立してしまう。結果的に試合を動かしているKENTAとゲレーロの絡み以外は度々流れが途切れていた。
結局キャリアによる貯金があるTOSSHIが美原を蹴り倒したが、正直二発入れないと決まらない点で、やはり往年の切れ味を取り戻せていないように私にはみえた。
ブランクを克服する必要に迫られているTOSSHIと、必殺技をよりブラッシュアップしなければならない美原。ふたりのレベルアップが両軍の戦力の底上げにつながることは言うまでもない。
③×Barong&鉄生
vs
YASU&◯陽樹
YASUの正パートナーである土屋のかわりに新たにgWo入りした陽樹が入り、因縁の鉄生とぶつかり合う。以前だとBarongの位置にゲレーロが入
った組み合わせがイベント試合の定番であり、この4人で後楽園でも試合をした。Barongはもちろん今のジュニア戦線の中では、チャレンジャー候補の1人には入るし、もちろんタッグ戦線にも絡んだら面倒くさい相手には違いない。
試合は何だかんだで久々の顔合わせになる鉄生と陽樹が激しく火花を散らし合う。コールと同時に奇襲に成功するLCRだが、最近タッグ屋としての腕前をメキメキあげているYASUが、驚異の粘りと受けの強さを発揮していく。
チームではないものの、YASUと鉄生はかつてはよくタッグを組んでいたもの同士。警戒感わ露わにする鉄生とは対照た的にYASUは、いつのまにか鉄壁の絆を誇るLCRをきれいに分断していた。
土屋とのタッグを経て、YASUのこうしたインサイドワークはある意味飛び技よりも危険で警戒が必要なことは鉄生もBarongも承知の上だったろうに、ついつい目先の怨敵・陽樹に目がいった鉄生が我を忘れがちになり、気づけばだんだんBarongがローンバトルに陥り、場外に誘い込まれた鉄生は救出もかなわず、陽樹の勝ち名乗りを聞いてしまった。
どうもシングルを失ってからの鉄生は時々空回る場面が度々みられるが、最近では、陽樹からベルトを強奪した時のような狡猾さもなりを潜めている。悪役らしいという点では入場のドクロマスクで、会場の小さい女の子が怯えていたくらいで、これといって目新しいものがないように私にはみえた。
スミスと絡んでから、調子を崩したもの同士という言い方でまとめられるのは本人たち的には本意ではなかろうが、何とか浮上のきっかけをつかみつつある陽樹と、未だきっかけをつかみきれない鉄生の差がみえたような感じがした試合だった。
地元、八幡東で凱旋勝利を飾った陽樹は上機嫌でマイクをもち、大会第1部をしめた。
二部 14:50〜
①◯Barong & KENTA
vs
YASU&×陽樹
対戦相手がシャッフルされたことで、これまた興味深い組み合わせに。4人ともタッグワークでは定評がある上に、3人がヒールターンした選手。
もともとチーム凱にいたKENTAと陽樹は袂を別けたのち、どちらもヒールになってしまった。今更因縁どうこうもないだろう。
YASU的にはBarongを切り崩して何とか連勝を狙いたいところだが、どうなるか?
しかし、狡猾なBarongは一部とちがい、隙あらばgWoの連携の穴をさがしていた。KENTAが陽樹とコミカルチックなやりとりをしている時も、1人場外でイスを握り、乱入するでなく戦況を見つめている。
そしてYASUと陽樹がKENTA狙いで一気呵成に攻めようとした一瞬の隙をついて、ロープを背にしたYASUの背後から渾身の一振り。わざとgWoを泳がせてまんまと逆転に成功したLCRは、うるさいYASUを放り出すと、ある意味扱いやすい陽樹をターゲットにして、まんまとカウント3を奪った。
かえせそうで返せないBarongの丸め込みは、全てをこの場面に合わせていたかのように正確に決まっていた。単なる反則技を使う汚い悪役ではない、狡猾さがマスクの下に隠れている。そんなBarongの恐ろしさが存分に発揮された試合だった。
惜敗に激怒する陽樹を尻目に意気揚々と引き上げるLCR。気になるのはBarong以上に、狡猾で頭が回るスミスとサシで勝負したと仮定して、この日のような試合を陽樹がした場合、スミスにリベンジできる確率は限りなく低くなるだろう。
下手したらシングルベルト再奪取への道にまで暗雲が垂れ込めかねない。陽樹が単純にBarongに雪辱すればすむ話ではないだけに、前哨戦では決して手の内を明かさないスミスが、もしこの試合をみていたら内心ほくそ笑んでいたかもしれないな、と私は想像してしまった。
②◯美原輔&トゥエルノ・ゲレーロ
vs
TOSSHI&× 鉄生
とにかく勝ち星が欲しいという点では2チームとも切実な思いがあるに違いない組み合わせ。ジュニアの戦力としてTOSSHIが計算できるとLCR的にもだいぶ楽にはなるし、美原が一本立ちすればドリームチューバー的にもありがたいはず。
しかし、試合はのっけから大乱戦。最初から美原狙いにいくTOSSHIと鉄生は容赦ない波状攻撃を加え、序盤から攻勢に出るが、暴走がすぎたLCRは、KENTAやBarongまで乱入させ、レフェリーの目の前で好き放題に暴れまわる。
さすがに制止が効かないと判断したか?レッドシューズ古賀レフェリーは、LCRの反則負けを宣告。なおも暴走しまくる黄色い軍団に対して、おっとり刀で駆けつけたのは、この日試合が組まれてない、ナスティの久保希望と、第一試合に出ていた竹ちゃんマン。
LCRを追い払うと、4対4の再試合を宣言して、これが即座に通って延長戦に突入。
再試合
トゥエルノ・ゲレーロ&◯美原輔&久保希望&竹ちゃんマン
対
鉄生&KENTA&×TOSSHI &Barong
しかし、再試合になっても美原の劣勢は変わらない。この試合で美原が良かったところは決して諦めない闘いをみせられたこと。悪かったのは、一発逆転のドロップキックはまだしも、決め技のはずのスタナーは散々相手に読まれていた点。
美原のスタナーは、たしかに諦めずに回数かけ続けて、タイミングが合えば一撃必殺にはなりうる。この試合でも結局はその粘りが勝ちを引き出した。
だが、やはり決め技にするためには、助っ人やパートナーに頼らず自力でスタナーを決め技にしないといけないだろう。結局、美原にはスタナーの次がないことが、ほかの選手にも徐々に見破られはじめている。
根気よく決め技を出し続けるのも手だけど、悪い言い方をすれば、美原のやり方は数打ってあてる式ともいえる。控えに強力な助っ人がいてこそ、美原の勝ちパターンははまりやすいが、誰の助けも借りられないシングルマッチでは不利になりやすい。
今のところ美原がシングルのベルトを目指しているのか、タッグを狙っているのかは定かではないが、どちらにせよ、流れを変えられるドロップキックからフィニッシュに持っていくまで、もういくつか打つ手がほしい。
今だとドロップキックのあとはスタナーしか来ないと思われているので、敢えてかくしておいて「実はスタナーだけじゃないんだよ」という流れに持っていけたら最高だろう。しかし、それをがむしゃらプロレスで自在に可能にしているのは、スミスだけというのもまた事実。
美原のプロレスはよくも悪くも実直で人柄通りの試合をするから、いじめ撲滅みたいなテーマがあると伝わりやすい。何よりユニットの垣根を超えて助っ人を呼び込めるくらいの魅力が美原にはある。結果的に北九州の地で自力による初勝利を呼び込んだのも美原の頑張りあってこそ。
しかし、実直なだけではなかなか結果が出にくいのもプロレスの難しいところ。今回はたまたま味方についた久保も本来はユニットが違う「敵」でもある。必要以上に助けに入らなかったことも「今回だけ」のことでなれ合っているわけではないという意思表示だったのだろう。
試合後、美原がマイクで締めて、その後記念撮影してイベントは終了した。通常の大会とはリンクしていないようで実はちゃんとつながっているというのがプロレスの難しいところでもある。この日の美原の頑張りがどういう形で、今後の試合につながっていくか?
今までは直訴という形でしか組まれなかったタイトルマッチやGAM1出場とかいうチャンスを、カードを編成する側から「美原を出したい」と自然にいわせられるくらいの試合をどのくらい積み重ねていけるか?
美原には可能性は無限にあるけど、既に後輩が着々と後塵を拝している現状ではうかうかもしていられない。北九州で試合があるのは年内だと12月17日だけ。そこで美原が何を見せようとしてくれるのか?期待して待ちたいと思う。