がむしゃらプロレス「GAM1 CLIMAX 2013」
(2013年9月22日・日:門司赤煉瓦プレイス)
イントロダクション
今年もヘビー級の№1を決めるGAM1がやってきた。
といっても春の「騒動」で阿蘇山選手がフライングしてしまい、その時点で開催予定のなかった本大会が開かれることになってしまったのが前年とは違うところ。
組み合わせはガチ抽選というのが、がむしゃらプロレスのならわしで、今回も事前に抽選会がおこなわれたのだが、春の騒動のもとを作った鉄生と陽樹が一回戦第四試合でいきなり激突するというありえないことがおきてしまった!
しかも春にそこで強引な大岡裁きを見せた阿蘇山はその次の試合に出場がきまっているので、この試合には立ち会えない!GAM1いきなり大ピンチ!
今回はもう一つ目玉があった。それは待望の正レフェリーがデビューすること。
雄大レフェリーが多忙になり、BEE那須レフェリーも熊本から月一で裁きに来てる現状ではこれは必要急務な案件ではあった。
かつてのレフェリー遠賀さんに臨時を頼んだり、手の空いた選手が交代でレフェリングすると、どうしても試合にむらができてしまう。
また選手兼任レフェリーは、たとえば抗争相手の試合を裁く事態になった際に黒子に徹して試合を裁けない・・・などのマイナス面もあり、このままイベント試合が増えるといずれ破たんするのは目にみえていた。
で、その有望株の名はレッドシューズ古賀。
実は彼のことを私はしっていた。彼はもともと福岡のFNWのレフェリーだったのだ。
耳に障害がありながら実に的確に試合をさばいていた彼の姿をみて、印象に残っていたのである。
とはいえ、畳の上でレフェリングできても、リング上で同じことができるとは限らない。がむしゃらサイドも人材難のおり、彼ががむしゃらのレフェリーになりたいという意向にこたえたい反面、けがの懸念もあって採用を見送っていた。
だが、古賀の熱意とスキルはリングと畳という全く異なるステージを克服できるくらい高いものだったのだ。
それが証明されたので、晴れて正デビューが決まったのだ。
オープニング
その古賀と先輩レフェリー2人、そしてKAG大塚がこの日の前説担当。
やっぱ盛り上げ役としてのKAGの存在は欠かせない。最初がむクロいりを表明したときは「?」と思ったものだが、いまやメンバーのだれよりもがむクロらしくなっている。彼がいるおかげでNIKKYとSMITHの負担は相当軽くなってるはずなんだが^^
しかし前説時に気が付いたんだが、レッドシューズの後輩がデビューするその日に雄大レフェリーも同系の赤シューズをはいてきていたのだ!・・・ってなにげに後輩つぶし???^^いやらしいなあ(冗談です^^)
なお、前座をつとめたアニスピガールズは今回「檄 帝国華撃団」をほぼ即興のダンスつきで披露.今回で卒業するイブ目当てにきてるファンもおおかった. といってもアニスピいってないからなあ^^ラジオの人という印象しかない^^でもドンタッカーがマスターの代読で花束を渡すサプライズもあって前半はあったまった^^
第一試合:Aブロック一回戦:(30分1本勝負)
●ニコラス今中ジョリー 対 ○マスクドPT(11分00秒)
なぜかドン・タッカーがレニー・ハートばりの高音、巻き舌の英語コールをしていた。最初は「どうせ飽きるよな」と思っていたら最後までやりきってしまった^^
だいたいGAM1の方向性は第一試合できまる。前回鉄生対野本一輝が激しいごつごつした試合でほかの選手の魂に火をつけた。
さてその役割を今回はニコラスが背負えるか?相手は前チャンピオンマスクドPT。二年連続で前チャンプとあたるニコラスにしてみれば、こちらも奇縁なめぐり合わせ。しかし一回戦で強豪を破ればそのまま勝ち上がれる勢いも手にできるところ。
トーナメントにはトーナメントの戦いがあるわけで、前年度覇者のSMITHは一日三試合を一つの試合としてイメージトレーニングを積み、実際に勝ち上がり、現チャンプになっている。要するにスタミナとしたたかさの勝負ということになる。
そこで両者の戦いがどうだったか?PTにはBブロックで同士、鉄生が勝ち上がって、決勝で戦い、勝ってSMITHからベルトを取り戻すという青写真がえがかれていたはすだ。
要するに一日3試合する計算で試合を組み立てていたのだ。
徹底した膝攻撃はもちろんニコラスのキック封じもあるが、同時に必殺PTコースターへの布石でもあった。
対するニコラスは痛めてるPTの右腕を集中攻撃・・・・お互いが一点集中の我慢くらべになれば、一回戦としては合格点が出せる試合になった・・・はずだった。
だが、勝てるチャンスを今中は自分で放棄してしまう。
いつもの飛び技にこだわり、キックも右腕破壊に使うのではなく胸元に蹴っていく。しかしすでに膝を殺された状態での攻撃がどれほど効いていたかは疑問の残るところ。いつもの自分らしさをかなぐり捨てるのもトーナメントの重要要素なんだけど、ニコラスの計算は全部点でしかなく、線として三試合戦うという計算も意思表示もみられなかった。
確かに本人的にはやりたい技がだせて満足だったかもしれない。
だが、勝ち上がる今中が見たいと思って声援を送っていたお客の思いは結果的に無視された格好になった。
反省はしてるけど後悔はしてない、という感じのニコラスは確かに人としての生き方ならば、それで正しいのである。
しかしプロレスラーとして、表現者としての採点になるとやはりそれではだめなのだ。観客を失望させ、中盤からPT絶対優位(しかもけがしてるのに)が動かない状態になったときの観客の「あ~あ、やっちゃった」感は半端なかった。
もっとも本人がいうとおり「勝てるチャンスがありながら飛んでしまう馬鹿さがぼくらしいでしょ」という部分に期待してみてる人にとっては安定の試合運びだっただろう。
しかしこのままではいつまでたってもいい試合どまりで結果は一生ついてこないということだけは断言できると思う。こうしてニコラスは二年連続一回戦敗退が決まった。
第二試合:Bブロック一回戦:(30分1本勝負)
●林 祥弘 対 ダイナマイト九州(9分46秒)
波乱があるとしたらここかなと思っていたのがこのカード。
なんせ相手はまともにかえしてこないダイナマイト九州である.実は楽に勝てると思ったら大間違いで、前回のジュニアトーナメントの試合でいつでもどこでもGWA挑戦権を頭脳プレーで、チャンピオンのSMITHから奪取したのが九州なのだ。
足のけがというハンデがなければ、実はお笑いも封印できる実力者でそのうえ何を考えてるのかわからないというのはある意味大変不気味な存在である。
そもそも普段闘わない相手と戦うというのはトーナメントではかなり不利な状況である。
なぜならまず闘いのリズムが違う.のらりくらりと相手のペースにはまると自分の得意とする流れも崩されてしまい、思わぬ墓穴を掘りかねない。
リズムというのは勝ち上がる意味では勢いをつけるのにとても大事な要素で勝っても負けても林が不利なことにはかわりないのだ。
足の負傷、そして見た目負ける要素がなく、会場人気でも上を行く九州を相手にするということは、林にブーイングが飛ぶことを覚悟の上で挑まねばならない.そういう意味では馬鹿正直な林はトーナメント組み合わせ抽選会で対九州戦が決まった瞬間「やった!」とおもったのだ。
もうこの時点で九州の掌の上にいたことも知らずに・・・
はたして試合は九州の一方的な展開に.といっても同じおまけ軍のガムコツくんとパンチくんを介入させレフェリーのブラインドをついてやりたい放題。
こうなると人気イケメンレスラーがやられてるところをみたくなるのがファン心理。悪役がやれば大ブーイングのところを逆に大喝采がおきるんだからますます九州は調子にのっていく。
しかもなにげに悪役殺法とお笑い殺法をミックスさせてくるから試合のリズム自体超変則で、打てば響くことで輝く林の持ち味まで完封されてしまった。
悔しかろうが、やはりけがした足を非情に殺すくらいの覚悟が林にはほしかった。
それをやる前に完封されてはいいわけもできまい。勝って当たり前のところが完敗してしまったのだからなにをかいわんや。これで次世代の扉は閉ざされたかに思えたが・・・・
第三試合:Aブロック一回戦:(30分1本勝負)
○ジャンボ原 対 ●七海健大(7分07秒)
ジャンケンタッグとして長くタッグ王座を保持しがむしゃら髄一の名タッグのパートナー同士の対決。メインでもおかしくないこのカードが一回戦というのも贅沢な話ではある。
で、ここでの注目はやはりジャンボ原。なぜなら、タッグ王座奪取後、すぐにけがで欠場し、昨年はパートナーの戦いを見るしかなかったからだ。
「自分もここにでたい」という気持ちは人一倍あったに違いないし、実際本人もそういってたし。
で、対する七海健大。年齢はジャンボの方が上だがキャリアは七海の方が上。タッグ時はジャンボが七海をたてる場面も多く、どちらかというと縁の下の力持ち的存在であったジャンボの方が実は、七海の癖や技を出すタイミングを熟知していたのかもしれない。
どうしてかというとジャンボが試合のリズムを作って七海につなぐのが彼らの必勝パターンだったからだ。
逆に七海はいつもの自分の試合のリズムにもっていければ勝てると踏んでいたのかもしれない。しかしいつもの自分で戦おうとした選手がここまで全敗してる流れからいうと、今思えば見通しが甘かったかな?と言わざるを得ない。
なぜならいつも通りの試合をするということはジャンボの想像通りの七海健大がそこにいるわけである。
だとしたら相手の裏をかくとかそういう以前の問題で、自分の動きが相手に全部読まれてるという想定がなかった時点で七海健大の敗北フラグはたっていたのだ。
それにしても読みだけでなく、ジャンボの試合運びは格段に上達していた。序盤の稲妻レッグラリアットでペースをつかむと最近封印していた膝をガンガンいれて相手のスタミナを奪う。
実は現チャンプが一番嫌がっていたのが、ジャンボの膝攻撃だったことを思うと、そこらへんの対策も七海は不十分だったように思う。
そして密着してのグラウンド。特に最近の選手が使わない首四の字を出したあたりはさすがのセンスだなあとうならされた。
グラウンドといえば七海も得意な分野でここは負けてはいられないところ。しかし、ここでも見落としがひとつ。
タッグ王者時代にジャンボがつかまってローンバトルになりながらも、必死で耐えてきたその姿をだれよりみてるはずの七海健大が、ジャンボの打たれ強さに関して甘く見ていたのだとしたら、これも対策不足の最たるものだったということになろう。
はたして読みだけでなく七海の厳しい攻めもどんどんクリアしていくジャンボ・・・・
結果、ジャンボのペースでスーパーノヴァに固執した七海が見事自爆し、そこからの巻き返しもないまま、いいようにやられた感じの試合だった。
09年デビュー組がここにきて課題をたくさん抱えてしまったということはいい方にとれば改善できるチャンスがいっぱいあるってことだけど、人のいいまま時間だけ過ぎていくと、後続に追い抜かれるのは確実・・・・そうはなってほしくないんだけどねえ・・・
第4試合:Bブロック一回戦:(30分1本勝負)
●陽樹 対 ○鉄生(10分47秒)
プライベートでも因縁を抱え(といっても単純に馬が合わないというだけのことなんだけど、そこが一番厄介なところ。
なんせ顔もみたくないというくらいだから・・・)、春のジュニアトーナメントで阿蘇山にぼこぼこにされてもなお、まだまだ懲りない二人。そもそも試合として成立するのかどうか?一番みたいカードだけど一番危険なカード・・・・
まあでも禁断の対決というのはプロレスファン魂を大いに刺激するカードではある。
しかしこれが一回戦で実現してしまうというのは本当プロレスの神様は罪なことをなさる。
まあ阿蘇山がいったとおり、GAM1で決着をつけることになったのではあるんだけど、この2人にとってトーナメントなんか眼中にはいってないだろうし、最悪没収試合とかも覚悟した方がいいかなと思っていた。
だから事前予想投票で勝ち上がってほしいと思った陽樹と鉄生にはあえて票は入れなかった。むしろ予想がはずれてほしくて他の選手にいれたんだからその期待にはこたえろよ、と祈るようにみてはいたんだが・・・
まあのっけから乱戦、乱戦。
すぐさま場外にでると観客席を縦横無尽に暴れまわっていく二人。
しかし2人がみてるのはお互いの対戦相手のみ。いかにしてぶっつぶそうか?それしか考えてないから、もう殴るにしても椅子攻撃にしてもいっさいの手加減がない。
というかこの後の試合、どうでもいいんだろう?と思わせるくらい激しくやりあう両者。なんとかリングインさせようとする雄大レフェリーも容易に近づけない中、なんとかカウントを取りつづけながら「戻れ!」と指示を出すが、全く聞いてない。いや聞こえてないのだ。
ここまで私怨がこもった試合は久々にみた。意地の張り合いもスポーツライクにやりあう昨今ここまで殺伐とした試合ができるのもこの2人くらいなものだろう。
いや~でも狭い赤煉瓦に超満員の観客という状態で「選手のまわりは広くあけてください」といわれても逃げる場所がない。これには本当参った。
あとで陽樹に聞いたら本気で観客席ひな壇でブレンバスターする気だったらしい。
いや、それはさすがに鉄生が全力で阻止したんだけど。しかし聞こえてないカウントが18の時偶然リングサイドに戻っていたのが幸いした。
あわててリング内に駆け込んだ両者は今度はプロレスの試合で意地の張り合い・・・になればよかったんだが、あまり外とかわりのない乱戦模様・・・^^
とはいってもお互いだけしかみてないわけではなくて、トーナメントに賭ける両者の意気込みもちゃんとあることはあった。
陽樹は現タッグチャンプとして、かつてマスクドPT以外なしとげていないはずのヘビー、タッグの二冠を本気で狙っているし、鉄生は御大将PTと決勝で思う存分戦いあうという目的もある。そこがかろうじて二人をプロレスに踏みとどまらせた要因ではあった。
だから不思議とガチ遺恨があるのに凄惨な試合にはならなかった。今回はたまたま鉄生が勝ちを拾った格好になったが、この意地の張り合いがいい方向に向かうと間違いなくがむしゃらプロレスの発展には貢献できると思う。
このエネルギーのほとばしりは尋常ではない。やっぱ今こうしてPCの前に向かい合っても思い出せるのは第四試合の場面が一番多い。
それだけ印象に残せる試合を若い二人がしてみせたことにこそ意義があったと思う。まさかの時のために会場後方でスタンばっていたらしい阿蘇山も正直ほっとしたに違いない^^
第5試合:がむプロ名物!プロとイロモノとチャンピオン混じりの8人タッグマッチ(疲れん程度1本勝負)
セクシーロージィ&●パンチくん&タシロショウスケ&藤田ミノルvsSMITH&ガムロ・レイ&○マスクドX&阿蘇山(11分20秒)
疲れん程度といいつつ最近は結構みなマジになっていて疲れてる感じがするんだが^^
それにしてもここに放り込まれてもちゃんとそれようの試合をする藤田と阿蘇山はたいしたもんである。
もっとも阿蘇山の肩が不十分ということを配慮したうえで組まれたのもあるとは思うけど、でもそういうのはおくびにも出さない。
年齢的にいえば、普段からこういういろもんマッチばっかやってそうなんだけど、今もってハードな試合もこなせる阿蘇山だけにまだまだ元気に暴れまわってほしい。
さてこの試合の見所はなんといってもマスクドXとガムロ・レイ。一説によるともとプロ選手らしいのだが正体は不明(これ書いてる時点でも中身は知りません^^)。
それほどの実力があるのか?そしてガムロのガンダムネタ(といってもガムロ自身がヲタク知識に乏しいという欠点も抱えているのだが・・・・)がどこまで通用するのか?
そもそも「親父にもぶたれたこともない」キャラがプロレスするのもどうかとは思うんだけど、その元ネタのアムロを「二度もぶった」ブライトさん(SMITHのこと)が同じコーナーにいてはネタが成立しないだろ?と思っていたら案の上、ロージーはガンダムを知らないため「マチルダさん」と呼びかけられてもオールスルー^^だめじゃん・・・・
ガンダムリアルタイム世代としてはつっこみどころ満載だったんだけど、まあかわいそうなんでこの辺でやめておこう。本筋から遠ざかるだけだし^^
最近やたらと楽してるSMITHは珍しくやる気になっていて、藤田と絡んだり、いろもんマッチではまず出さないエクスプロイダーを繰り出したりそれなりに本気モードになっていた。
まあこの人の場合は何考えてるかが全く読めない人だから、案外12月に向けての試運転でもしてた可能性もあるのかな?
そうそうマスクドXは見た目が「今の」エル・サムライから身長を差し引いたような選手。
マスクもなんかサムライの出来損ないみたいなマスクで、最初はどうだろう?と思っていたけど空中戦もほかのムーブもそつなくこなすいい選手だった。
だいたい出オチ感があったんだけど、いい意味で裏切られた。このお客の予想を一歩も二歩も先で裏切っていく資質もレスラーとしては大事な要素。お客の求めに応じてばかりではリングにあがる資格もないし、考えなしといえわれても仕方あるまい。
フィニッシュになったコーナー最上段からのフライングボディプレスもきれいなフォームだったしこれならぜひまたみてみたい。
そうそうふれてなかったけどタシロはこの日からレインメーカー仕様で登場。確かに雰囲気は近いんだけど、まだまだレヴェルが違うところまではいきついてない。でもSMITHとのチョップ合戦は迫力あってよかったなあ^^
やはりドロップキックを習得するまではチョップにもっと磨きをかけてバリエーションを増やしてほしい^^
いいところはどんどん伸ばしていく時期でもあるしね。なにより長身から繰り出すチョップは迫力がある。性格もまじめだし、少なくとも「頼むから練習してくれ」と山本小鉄さんに懇願されたT野K磁みたいにはならないだろう^^
試合後、めったにマイクもたない藤田がいきなり神妙な顔つきで話し始めた。「12月1日九州芸術劇場、シングル、タッグ、ジュニアの防衛戦があります。自分らプロはこうしたお笑いマッチか、タッグで花を添えることも多いです。しかしみなさん、もうひとつベルトの防衛戦をみたいとは思いませんか?」
なんと!藤田が持つ東京世界ヘビー級王座の防衛線をぶちあげたのだ。しかも相手は自分がコーチをつとめるがむしゃらプロレスの中からやりたいやつが名乗りをあげてこい!という。これは楽しみだ。
でも今このタイミングで即名乗りをあげられてもGAM1が薄くなるし、まだトーナメントも残っている。この後出る選手の中にも対戦したい選手がいるだろうし、ここは「挑戦待ってるぞ!」でしめたのは藤田らしい気配りだと思った。
第6試合:Aブロック準決勝:(30分1本勝負)
○マスクドPT 対 ●ジャンボ原(6分47秒)
この日からテーマ曲をTHE MODSの「激しい雨が」に変えたジャンボ。
80年代ど真ん中の自分らにしてみればうれしい選曲なんだが、ただ自分の好きな曲を入場テーマにするだけだったらそこいらへんのスポーツ選手と変わらない。
選んだからにはそれに見合った内容の試合を見せないといけないのがプロレスラー。
実は入場テーマを選ぶセンスもプロレスには必要な要素で、耳に残る名曲が必ずしもお客に受け入れられるとは限らない。
そこへいくとこの選曲は合格点だったと思う。はたして試合で激しい雨が降らせられるかどうか?
で、試合は第一試合同様レッグラリアットで先手をうっていくが、やはり体格の違うマスクドPTには猫だましは通用しない。
出足こそ止められたが、やはりもと絶対王者の壁が厚く立ちはだかる。しかし観察力の高いジャンボはニコラスが途中で投げ出した一点集中攻撃を継続していく。
それも膝を使っての右ひじ破壊。もともと一発に威力があるジャンピングニーをPTの右腕に集中的に絞ってあてたため、中盤からPTの動きがぴたりととまってしまった。
ここで追い打ちをかけられる関節技のバリエーションがあったらスタミナを摩耗しないで済んだと思うのだが、いかんせんトーナメント初参加のジャンボにはその分の貯金がない。
初参加といえばPTもGAM1ははじめてなんだけど、こっちにはやはり多くの修羅場をくぐった経験がある。
そうやすやすとはくたばらない。確かに一矢は放てたが次の一手が出せなかったのがジャンボにとっては大きいものになってしまった。
とはいってもここまでジャンボに食い下がられたのはPTにとっては大誤算もいいところだっただろう。
右腕に力が入ってないのは明らかだったけど、かろうじてジャンボを仕留めたときにはもう次の試合はまともにできそうになかった。
けがだから仕方ないんだけどねえ。この試合は、でもPTが万全な時にもう一回みてみたいカードにはなった。
「激しい雨が」の歌詞の一節を借りるならば、その時こそ「何もかも変わり始める」のでは?と期待できるからだ。
ジャンボの大健闘で大いにもりあがった今年のGAM1だったが、PTがまず先に決勝進出。さてBブロックはだれが出てくるのか?
第7試合:Bブロック準決勝:(30分1本勝負)
ダイナマイト九州 対 鉄生
・・・・が、行われるはずだったが、なんと運営部から九州の膝の古傷が悪化。
本人は強く出場を志願したらしいが、まわりの説得で断念。かわりに一回戦敗退した林がここにエントリーすることになったとアナウンスが。残念だが九州の膝はガラスの膝なんでこればかりは仕方ない。
普段の仕事に差し障るようだと、いけないしねえ。もしもはいいたくはないんだけど、九州を前にした鉄生の対応力もみてみたかった。
第7試合:Bブロック準決勝:(30分1本勝負)
○林 祥弘 対 ●鉄生(11分03秒)
で、結局善玉対悪玉で両方とも打てば響くもの同士の対決。
内容は保証されたけど、展開はある程度読めるというか、この2人だったらこのくらいのクオリティーにはなるよなという顔合わせになってしまった。
林の代打進出がなぜそんなに喜べなかったかというとやはり古傷がある九州を攻めきれず、術中にはまって敗退した一回戦のイメージが悪すぎたからに他ならない。
うがった見方をすれば運営が林をそうまでして推したいか?という風にもとられかねない。
それを払拭するだけの内容を残さないといけないのだから実は林にとってはチャンスであると同時に非常にハードルの高い展開ではあったのだが。
一方の鉄生はモチベーションも最高潮。そのまま居残ったPTと「決勝であたろう」と誓い合い、ボルテージはあがる一方。
宿敵陽樹を僅差とはいえ得意の鋼鉄のど輪で仕留めたわけだから、勢いに乗るのは当然。
しかし、林も手を打ってきた。自分のテーマ曲を途中で切って、野本とのタッグで使っていたテーマ曲を流し、野本がしていたようにタオルを頭からかけて入場。
だがそれをやるなら最初か一番最後にしてほしかった。このタイミングだと野本の思いを一緒に背負うというより野本の力を借りて闘おうとしてるのかも?ともとれるからだ。
確かにタナぼたでもあるし、このチャンスをものにしたいという気持ちはつたわってはきた。でも何度もいうようだけど、九州戦の内容でこの曲かけられても・・・という気持ちの方が強かったのは事実だし・・・・
そういう複雑な思いで見始めたこの試合。実は両方ともけがらしいけがもしてない。
鉄生が一回戦で死闘を演じた分、疲れもあったかもしれないが、むしろあれで勢いづいた分、鉄生が有利ともいえた。実際悪役に戻った鉄生はイキイキしてたし、師匠PTが待ってるとあってはテンションもあがるだろう。
だが好事魔多しとはよくいったもので、鉄生お得意の場外戦にもっていったところで悲劇は起きた。
この赤煉瓦プレイスのステージはとても狭く、リングを組んで観客席をいれると本当にわずかなスペースしかない。
その中で場外戦をやろうとしたらそれこそお客をどかさしてでもやらないといけないのだが、そっちではなくエプロンサイドや鉄柱を使うと悲劇が起きる。
なぜなら人がいなくてもそこのスペースは十分狭いからだ。PTもしかりだが、誤爆でダメージをおった選手がこの日は実に多かった。
そして鉄生も序盤は有利に進めながら、あろうことか林が反撃を試みた際、勢いあまった鉄生はなんと後頭部を鉄柱にぶつけてしまった。
それも受け身とるとかそういう事以前にあまりに鉄柱との隙間がなさすぎてダイレクトにごつんといってしまったので、鉄生は脳震盪をおこしてもう立ち上がれない。目が完全にイっていたのが見ててもわかった。無理やり林が引きずりあげてリング内にいれたんだけど、あれは危険だった。
一歩間違えれば大事故になっていたかもしれない。でもなんとか試合中に意識が戻った鉄生は試合を続行したが、ダメージはやはりでかい。
万全ならばかえせたかもしれないが、やはり力尽きたかな?という印象の方が強い。陽樹戦の方がこういう事故をおこしやすい状況だったのに皮肉といえば皮肉なものである。こうしてBブロック代表は林で決定!
第8試合:ユニット対抗戦6人全員アルファベットタッグマッチ(30分1本勝負)
TOSSHI&DIEZEL→JERONIMO&○TA-KIvs●KAG OOTSUKA&NIKKY&YASU
やや強引なアルファベットマッチ。そもそもこれに合わせて無理やりローマ字表記にしたKAG・・・・でも急きょDIEZELのかわりにJERONIMOが参戦。
2月以来の復帰戦となった。セコンドでは散々あくどいことをしてるものの、CCが出てるときは先頭にたって仲間を鼓舞する姿が観客の印象に残ってるもんで、この復帰はブーイングまじりで歓迎された。
やっぱJERONIMOのいないがむしゃらはお世辞抜きでなんか一味たらないし。
で、この試合はYASUとTOGSSHIとの因縁が中心に進むのかとおもえば、さにあらず。
もちろん絡み自体はたくさんあったのだが、この二人はよくいえば手が合うので、技のやりとりもどんどん高度に進化していってる名勝負数え歌としては鉄板の顔合わせなんだけど、鉄板である分、どこで見ても同じというか、新鮮味はない。
攻防が高度になっていけばいくほど、印象に残らないというのも酷なんだけど、試合自体は不細工な林対野本の方が後々記憶には刻まれやすい。
プロレスって奥が深い・・・
そもそもOTLとがむクロはヘビー級の王座をめぐっては対立してるが、幸か不幸かジュニアでは利害対立がない。
だから正統派同士でタッグも組めるんだが、YASUが楽しい方にシフトしてしまうと、OTLでいる意味を失ってしまう。
試合のテーマ自体がぼやけてしまうというか。一方のCCにしてみればどっちも「いいもん」なんでこいつらを蹴散らして憂さを晴らすにはもってこい。ましてや盟友JERONIMOの快気祝いなんで、勝つ気は満々。
モチベーションの差が試合をわけた感があった。最後は盟友TA-KIがKAGから3カウントとって花を添えた。
でも心配したほどJERONIMOのブランクは影響なかったみたいで、ちょっと呼吸があらくなっていた以外はいつものJERONIMOだった。これを試運転として12月はぜひ大暴れしてもらいたい。
第9試合:GAM1決勝(30分1本勝負)
○林 祥弘 対 ●マスクドPT(8分44秒)
※優勝した林選手は12/1の10周年記念大会でGWAヘビー級王者・SMITH選手に挑戦
考えてみたら林は二年連続の決勝進出。
しかも相手はもと王者。このシチュエーションだとどうしても惨敗を喫した昨年の汚名をそそがねば、無駄に勝ち上がってきたことになる。
しかし、林もいっていたが、確かに運も味方についていたのは事実。入場時あらわれたマスクドPTは一瞬腕をまくるしぐさをしたが両腕に痛々しいテーピング。
これではまともに戦えまい。とはいってもそこは奥の手も隠してる可能性もあるPTのことだから油断はできないと思っていた。
しかし林はここで執念を出してきた。あえて痛めてる腕ではなくPTの首に一点集中攻撃をしかけはじめたのだ。
今までPTコースター封じに腕とか足を一点集中で攻める選手はいたけれど首ねらいというのは盲点ではあった。
もちろんファルコンあたりにつなげるであろう狙いはあったとは思うけど、これが意外と功を奏する。
首からじかにつながってるのは腕。要するに腕より首を攻められた方が、踏ん張りがきかなくなる。正攻法にみえてなかなか考え抜いた作戦だったと思う。
一方のPTはやはりというか本部席のSMITHしかみてなかった。あてこするようにSMITHの得意技の一つテキサスクローバーで、林のうるさい足殺しに移行しようとしたがその時はすでに林の首狙いが効いていて決める力さえ残っておらず、形が崩れてデスロックに移行するはめになってしまった。
マスクで表情は見えないがPTとしては「こんなはずでは!」という悔しさでいっぱいになった場面かもしれない。
試合中ずるずる失速していくマスクドPTに大声援が起こる。やはり強い「絶対王者」マスクドPTを見てきているお客にしてみればここで終わってほしくないという気持ちでいっぱいだったのではないだろうか?
しかし試合中ついにPTは力尽きた。フィニッシュはおまけみたいなものといっては林には悪いけど想像以上にダメージのでかかったPTにはもはやかえす力さえ残っていなかった・・・
初優勝を盟友野本に報告する林。そこへ半沢直樹モードのSMITH登場。
同世代のPTとの宿縁を感じたか?PTの仇討ちとばかりに倍返しを林に通達。
しかし同番組が当日最終回というのもちゃんと知っての計算だろうから本当SMITHはあなどれない。
「運で勝ち上がっていつもぎりぎりでしか勝てなくて、でもそんなチャンピオンがいたっていいじゃないですか」と主張する林。確かにそういうタイプはいてもいい。
いてもいいんだけど、それだけではSMITHは倒せない。SMITHのいうように「永遠に次世代エース」にされてしまわないためにも今後2か月での実戦や練習がさらに重要になってくるであろう。
しかも相手は「久々本気モードでくる」とまでいっている。SMITHがああいうことをいうときは決まって「本気」なのだ。
果たしで次世代エースのままで終わるのか?それとも新しい時代の扉を開くのか?それは結果もそうだけど、当日集まったお客さんに納得してもらえるかどうかにかかっている。
GWAのベルトは案外重いのだ。
今年のGAM1はトータルとしては前年を上回る内容ではあった。
しかし個々人の反省点ももろに浮き彫りになった大会でもあった。
やっぱ普段ではまずない一日3試合のトーナメント戦というのは色んな意味で面白いなあと思うし、一試合一試合を点でみてるときには気が付かない部分にも気が付くことがある。
見てる側にも新しい発見があるなあと感じた。来年はだれがだれを迎え撃つ格好になるのか?楽しみで仕方ない。
追伸:
打ち上げでいきなり吉江豊があらわれたのはみなびっくり!
なんか小倉でのみたいから来たとかいっていたけど、まさかのサプライズ!我々はもちろんあとから来たマスターはじめ、阿蘇山、藤田、がむしゃらメンバー全員が驚いていたので、本当に突然の来訪だったらしい。いや、すごいおまけがついた夜でした^^
それと古賀レフェリーのデビューは120点!十分すぎる合格でした。
あれだけできるとは思いもしなかったんで、この日みてたリングサイドの常連は絶賛の嵐!実は本大会影のMVPは彼だといってもいいくらい。
これでイベント試合のレフェリング問題は一夜にして解消されたといっていい。まさしく逸材降臨!いや今後がマジで楽しみだ^^こっちは確実に新時代の扉が開いたと思う。
みなさん、長時間お疲れ様でした。いや、がむしゃら観戦記は本当に気力も体力も使い切るんで私も心地よくバテました・・・・ありがとうございました!