この日は北九州ラーメン選手権の横でイベントプロレス。朝は肌寒い感じ。しかし10時過ぎると急激に暑くなってきた。11時になるとリングで練習している選手が裸で受け身が取りにくいくらいキャンバスが焼けていた。屋外の大敵、日光とどう闘うか?
がむしゃらのイベントはなぜか雨に祟られるか、晴れると焼けるような暑さに苛まれるある意味過酷な状況が多いだけに、晴れたら晴れたで色々問題もあるのだ。
【第1部 対戦カード】12:00~
▼オープ二ングタッグマッチ(30分1本勝負)
①×美原 輔 & タシロショウスケ vs ダイナマイト九州 & ○陽樹
(12分10秒)
チーム凱としてはタシロの奮起も緊急課題の一つ。覚醒するようでなかなか芽が出ないタシロに爆発してもらうには、ダイナマイト九州に寄った試合内容にしないで、陽樹とバチバチ打ち合うくらいでないと厳しいかもしれない。しかし、やはりやり慣れた方に流れるのが性なのか?九州とやりあうといつものタシロだが、陽樹とうち合うと急に弱々しくなる。本来なら美原をリードすべき先輩がこの体たらくでは、本当に凱の戦力としては計算できない。
ココナッツクラッシュで見せ場は作るがそれ以降の展開がみえないのでは、最初から試合結果はみえたも同然。こうしたイベントでの実績も本戦を占うには重要になる。
本調子とは言い難い陽樹をのびのび試合させたのでは、なんのためのチーム内対抗戦なのかわからなくなる。結局美原を見殺しにしてしまう形で試合が終わったのは残念というほかない。
▼GWO vs LCR 対抗戦 6人タッグマッチ(30分1本勝負)
②○ジャンボ原 & MIKIHISA & 豪右衛門 vs 鉄生 & ×Barong & KENTA
(13分22秒)
悪のユニット対抗戦は全勝で波にのるLCRとgWoのぶつかり合い。ジャンボ原を擁して意気上がるgWoのお株を奪うように、LCRは先制攻撃。そのままMIKIHISAをターゲットにローンバトルが続く。ここでLCRが極悪の限りを尽くすと、人気先行のヒールにならずにすむのだが、予想外にMIKIHISAに粘られたのが誤算だったか?試合は一進一退。新しいヒールを模索しているLCRとしては、MIKIHISAの息の根を止められなかったのは誤算だっただろう。
さて、豪右衛門対鉄生のぶつかり合いは次期へビー級タイトルマッチを予想する上では興味深い。もっとも今のところタッグ路線に集中している豪右衛門がいきなりシングルのベルト獲りに来るとは考えにくいが、機会があれは狙いたいところだろう。
LCRはおそらく原の出方に警戒していたのだろうが、ヒール転向でのびのび試合している原の予想外の動きのよさに、今度は逆にbarongがローンバトルに。結局豪右衛門相手に熱くなった鉄生も、MIKIHISAに足止めされたKENTAも、カットが間に合わず、こちらは見殺しという形になった。
gWoはジャンボ原の加入が予想外によい影響を与えていることを結果で実証した。一方LCRはベビーとヒールの境目が曖昧になりはじめている。鉄生だけはなんとなく危機感を感じられるが、KENTAがより奮起しないと人気に流される恐れが十分にある。
▼GWA Jrヘビー級選手権試合(60分1本勝負)
③【挑戦者】×ジェロニモ vs ○トゥルエノ・ゲレーロ【王者】
(13分12秒)
だれがなんと言おうと断酒に聞く耳持たなかったジェロニモが、2月末以降酒絶ちを続けている。大日本の打ち上げでも一滴も飲んでいない。食べて飲むことがある意味生きがいのジェロニモがここまでするのは相当の覚悟がないとできないだろう。
確かに試合前の練習では軽やかなロープワークを披露していたし、体つきも近年にないくらいしまっており、コンディションは万全。しかし最近の試合運びの雑さは、あまり改善されてはいなかった。ジェロニモの必殺技、ジェロバスター への布石として、好調な時に繰り出すダイヤル固め(両足で胴締めしたまま、回転する、大日本時代のTAJIRIの得意技)は、同じ回転技であるローリングクレイドル(股裂からてこの原理で回転して足を決める技)と比較した場合、足の力頼みで回す分、回す方にも負担がかかるうえに、ジェロニモの唯一の勝ちパターンになってもいる。従って、ゲレーロからしたら、ダイヤル固めがきた時点で、ジェロバスターを警戒して備えることができる。
もし、勝ちパターンに繋げる技があといくつかあれば、相手にフィニッシュを悟られにくいはず。しかし、ダイヤル固め→ジェロバスターのワンパターンでは、残念ながらタイトル獲得には至らないし、それだけで破れるほどゲレーロはやすっぽいチャンピオンでもない。
ジェロニモが練習しているのは誰でも知っている。それでもこの日を持って復活かというとそうとは言い切れない。動けないジェロニモが動けるようになったからOKというわけではないのだ。やはりブラスアルファで何か新しい技、新しい勝ちパターンを開発しないと、本人がよく言う「進化」とは程遠いと私は思う。現段階ではマイナスがやっとゼロになったくらいだろう。真の復活を目指すならここからどれだけプラスが積み上げられるか?ジェロニモの努力する背中をファンだけでなく、後輩や同僚もしっかり見ているはず。ジェロニモの真の復活ロードは、この試合からやっとスタートしたのだ。
そう思ってこれからも精進していってほしい。プロレスにゴールなんてないのだから。
【第2部 対戦カード】15:00~
▼オープ二ング6人タッグマッチ(30分1本勝負)
①×ダイナマイト九州 & タシロショウスケ & ジェロニモ vs ジャンボ原 & MIKIHISA & ○豪右衛門
(15分57秒)
本来なら凱サイドは、長身でヘビー級のタシロがチームリーダーになって先輩二人を引っ張る役所…のはずが、タシロ自身が率先してgWoに捕まり、自らピンチを招く有様。おまけに攻撃を「許してくれ」というポーズで、タシロに攻撃をやめるよう懇願するMIKIHISAに対してタシロは「プロレスだよ、これ」と困惑していた。彼の中でプロレスがどういうものなのかは知らないが、少なくともMIKIHISAがやっていたのは、リック・フレアーら、主にアメリカのヒールチャンプがベビーフェイスにやっている古典的な作戦であることは間違いない。私に言わせれば、むしろ「これぞ、プロレス」なんだが、タシロが躊躇している隙に、いいようにMIKIHISAに付け込まれていては、勝算も何もあったものではない。
そもそもgWoに「タシロさーん!」と小ばかにされているようでは、戦力以前の問題。入団時にはほぼ全ユニットから勧誘されていた期待の人材もここまで落ちてしまうと、どこからどうしていいのやら言葉に窮してしまう。
ある意味、この試合もタシロが九州を見殺しにしたといってもいい。いい時と悪い時の差がありすぎなのは、本当に困ったものである。これではタイトル挑戦も遠い先の話になりそうである。
一方、光明だったのは、タイトルマッチを終えたジェロニモが、何かふっきれたような表情で試合をしていたことが印象的だった。凱にしてみたら唯一の救いといっていいかもしれない。
▼チーム凱 vs LCR 対抗戦 6人タッグマッチ(30分1本勝負)
②陽樹 & トゥルエノ・ゲレーロ & ×美原 輔 vs 鉄生 & Barong & ○KENTA
(13分00秒)
ここの位置で美原が狙われるのはむしろ当たり前。戦力としていち早く新人枠を脱したい美原としたら、先輩にいいところをみせたいはずだが、そうは問屋が卸さない。相手のLCRにしたら凱を調子づかせることだけは避けないといけない。案の定徹底的に美原は狙われるわけだが、ここで屈しないのが美原のいいところ。自分で逆転のチャンスをつかんで先輩にスイッチするあたりは、少しずつ確かな進化を遂げている。
一方のLCRだが、こっちにはチームとしての問題が浮上しつつある。何をやっても声援を浴びてしまう、まるでベビーフェイスのような人気ぶりが、だ。特に今までは怖がって近寄らなかった?子どもたちからの声援がダントツに多いユニットになってしまっている。これでは、特にKENTAが何のためにユニットに加入したのかが見えにくくなってしまう。それでも必死になんとか罵声を浴びようと努力をしている3人をみていると、「頑張ってほしいな」と私もついつい思ってしまう。制御不能を売りにしているユニットが、自身の人気を制御できなくなっているさまは、正直痛々しい。人気絶頂の今だからこそ真剣に対策を打っていかないと、gWoにお株を奪われかねないし、この日は参戦してないナスティ・アウトサイダーズに寝首をかかれるやもしれない。
C4も含めて真剣に方向性を検討して、なんとか自分たちのユニットを制御可能にしないと人気の高さにつぶれかねない危険性を感じた。彼らが目指しているのがベビーフェイスならば特にとめはしないけれど、そうでないのであれば、結構危機的な感じがしなくもない。
結局新人の美原をいたぶって勝ったことで、この試合ではギリギリヒールとしての面目は保たれたが、今後生き馬の目を抜くユニット抗争の中で生き抜くには常に気を付けておかないといけないだろう。そのくらい今の彼らの人気はやばい感じがするのだ。
▼▽全選手参加バトルロイヤル(30分1本勝負)
③全選手参加
○勝者=美原 輔(焼うどん30食獲得!)
(4分39秒)
イベント試合の花形でもあるバトルロイヤルはこうした晴天の屋外でみるとまた格別。全日のバトルロイヤルのテーマ曲でもあった「王者の魂」がかかって選手が入場すると結構オールドファンはテンションがあがる。からあげ選手権の時は出場拒否したLCRも景品に「焼うどん三十食」がかかるととたんにやる気を見せる。特にKENTAの大人げないまでの食への執着がこの試合をやたら盛り上げた。
正直、この中でうまく立ち回っていたなと思ったのはMIKIHISA。こういうバトルロイヤルとかの闘い方をいつの間にか習得して、自分でコントロールできるようになっている。やはりチャンピオンになっての急成長がこういうところにも現れているなと感じられた。
結局、あまりに目先の焼うどんに固執しすぎたKENTAは美原にまさかのオーバー・ザ・トップロープで失格になるという失態を演じて、残った美原が優勝となった。
しかしそこで収まらないのが今の美原。現タッグチャンピオンに改めて挑戦を表明すると一端は断ったMIKIHISAも、根負けして挑戦を受諾。4月23日にタイトルマッチが決定した。かつてはMIKIHISAも時期尚早といわれていたことを思うと隔世の感があるけど、こうして人材が育っていくことはとてもいいことだと思う。美原とサムソン澤田の奮起に期待したい。
終わってみれば、個々にはいろいろ課題があるものの、全体的にはいい大会になっていたと思う。昨夏、雨で延期になったハーバーデッキ大会を時を経て、好天の中実施できたことはとてもいいことだったと思う。朝方は寒く、日中はリングが焼けるほど熱く、また夕刻になると肌寒くなってきた。ラーメン選手権を向こうに回し多数のお客さんにみてもらえたことは、きっと各個人の、団体の財産になっていくだろう。おつかれさまでした!
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