[プロレス入場テーマ曲] プロレス的音楽徒然草 The Time Is Now(ジョン・シナのテーマ)

[プロレス入場テーマ曲]プロレス的音楽徒然草

プロレス的音楽徒然草 The Time Is Now(ジョン・シナのテーマ)

「The Time Is Now」

今回は、史上最も偉大なプロレスラーの一人として広く知られており、プロレス史上最も多い17回の世界王座を獲得したレジェンド、ジョン・シナ選手のテーマ曲「The Time Is Now」をご紹介します。

WWEデビュー

シナ選手は2001年、WWF(WWE)と契約を結び、傘下のファーム団体OVW時代でサイボーグギミックの「ザ・プロトタイプ」として活動を開始します。

2002年、スマックダウンの下部組織的な番組であるヴェロシティに数回出演後、6月27日のスマックダウンにおいて、当時のトップスターの一人であったカート・アングル選手の対戦者公募に挑戦し、正式にWWEデビューしました。

試合後にジ・アンダーテイカー選手が握手を交わし、シナ選手の健闘を称えています。

新スター誕生

当時WWEは、ザ・ロック選手の俳優転向やストーン・コールド・スティーブ・オースチン選手の首の怪我による引退で、トップスターが相次いで不在となっていました。

それらの選手に代わる新たなスターを誕生させるため、テイカー選手は新たなスター誕生に一役買っていたのです。

シナ選手同様、テイカー選手によって、ブロック・レスナー選手やジェフ・ハーディー選手もポジション格上げを果たしています。

キャラと私生活

シナ選手は20代のころには「ワル学博士」と呼ばれ、その「THUGANOMICS(ワル学)」で博士号を取ったというストーリーが知られていました。

このように、反逆児ギミックと過激なマイクパフォーマンスが持ち味でしたが、リングの外においては非常に勤勉・真摯で、問題を起こさない「優等生」としても有名でした。

WWEに在籍していたTAJIRI選手とは仲が良く、一緒に移動していたそうです。

この頃すでにスター選手であったにもかかわらず、シナ選手は3ドルのブリトーが大好きで、自分の写真が飾られたお店にも平気で食べに行っていたそうです。

また、2004年夏の日本武道館大会で来日した際にコーヒー牛乳が気に入り、同年や2005年7月のハウス・ショーさいたま大会では、「コーヒー牛乳大好き!!」とマイクパフォーマンスでも取り入れていました。

曲の背景

「The Time Is Now」は、2005年3月17日のSmackDownのエピソード以降、WWEで使用している入場テーマ曲です。

この曲はシナ選手といとこのマーク・プレドカ氏によって作曲され、2004年に録音されました。シナと共にアルバムを録音したプレドカ氏は、アルバムのほぼすべてのトラックに参加しています。

「The Time Is Now」にはヒップホップデュオM.O.P.の「Ante Up」のサンプルが含まれており、さらに「Soul Sister, Brown Sugar」や「The Night the Lights Went Out in Georgia」のカバー曲もサンプリングされています。

制作はジェイク・ワン氏が担当しました。

訴訟問題

2008年10月14日、そのM.O.P.はニューヨーク連邦裁判所にWWEやジョン・シナ選手などを相手取って訴訟を起こしました。

訴えではシナ選手とWWEが入場テーマのために「Ante Up」の一部を盗んだと主張し、その曲が不法にサンプリングされ、明らかに繰り返されていると訴えました。

サンプリングとは、「既存のサウンド・レコーディングの一部を新しく製作するサウンド・レコーディングのためにデジタル技術を用いて利用する方法」です。

現在、ミュージック・サンプリングはヒップホップやクラブ・ミュージックを中心に、あらゆる音楽分野で広範に利用されています。

その一方で、アメリカでは著作隣接権制度を採用していないため、レコードは著作権の保護対象となります。これにより、サンプリングを使用したミュージシャンやレコード会社は著作権侵害で訴えられることがあります。

「The Time Is Now」に関して、M.O.P.は曲の破棄と15万ドルの損害賠償を求めましたが、結局2か月後に訴訟を取り下げています。

しかし、サンプリング訴訟における著作権侵害の判断基準が裁判所によって異なるため、サンプリングを巡る法律問題は依然として混沌とした状態にあります。

引退試合

2025年12月13日(日本時間14日)にワシントンDCで開催された「サタデーナイト・メインイベント」で引退試合に臨んだシナ選手は、対戦相手の「皇帝」グンター選手のスリーパーホールドにタップアウトしました。

NEVER GIVE UPを信条としてこれまで闘ってきたシナ選手だけに、この結末には不満も多かったようですが、私はリングにシューズを置き去り、あれだけ雄弁だったシナ選手が無言で去っていったラストシーンにとても感銘を受けました。

シナ選手の引退にはハッピーエンド以外にはありえないという意見も分からなくはありませんが、あれだけのスター選手が敗北し、無言で去るということには、言葉では表しきれないメッセージが込められていたように感じます。

歌詞の一節

「The Time Is Now」には以下のような一節があります。

レスラーの価値は思考と覚悟で決まる
ギアでも宝石でも毛皮でもない
20年以上、自分を磨き続けてきた
だから今、ジョン・シナは
リングでも人生でも“勝者”として立っている

引退試合の見た目はバッドエンドだったかもしれません。

しかし、ジョン・シナという生き方には決してギブアップはなかったと私は解釈しています。

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