【プロレス入場テーマ曲】 プロレス的音楽徒然草 スーパースター(ドン・エリス・バージョン)

[プロレス入場テーマ曲]プロレス的音楽徒然草

プロレス的音楽徒然草 スーパースター(ドン・エリス・バージョン)


魂を揺さぶる名曲

今回は、プロレスファンの記憶に深く刻まれている名曲、『スーパースター』をご紹介します。

この楽曲は、かつて全日本プロレスのリングで「若手三羽ガラス」の一角として、眩い光を放っていた若き日の大仁田厚選手が、自身の入場テーマ曲として使用していた珠玉のナンバーです。

実はこの楽曲、有名なカバー版であることをご存知でしょうか。

オリジナルが持つ繊細なイメージとは一線を画し、ドン・エリスによる編曲は、重厚なホーンセクションが鳴り響く荘厳なアレンジが施されています。

大仁田選手といえば、FMW設立以降の爆破デスマッチで流れる『ワイルド・シング』が代名詞ですが、会場のボルテージを静かに、かつ極限まで高めていくドラマチックな旋律は、テーマ曲マニアからすればやはり『スーパースター』に軍配を上げたくなる逸品と言えるでしょう。

革新者のジャズ道

この曲をカバーしたドン・エリス(Don Ellis)は、アメリカのトランペット奏者であり、作曲家、そしてバンドリーダーとしても名を馳せた革新的なジャズ・ミュージシャンです。

彼はビッグ・バンド編成において、当時としては異例の変拍子やポリリズムを導入。電子音響や特殊な奏法を駆使し、1960年代から70年代にかけてのジャズ/フュージョン界において、誰にも真似できない独自の道を切り拓きました。

ドン・エリスは小編成のセッションで腕を磨いた後、やがて巨大なオーケストラを統率するリーダーへと進化を遂げます。

彼のバンドはジャズ特有の即興性を重んじながらも、クラシックの構築美とロックの強烈なグルーヴを融合させたスタイルを確立。

その圧倒的なライブパフォーマンスは、まるでメインイベントのリング上で繰り広げられる「負けられない闘い」のような緊張感と高揚感に満ちており、映画音楽の世界でも高い評価を獲得しました。

若き三羽ガラスの光

多くの昭和プロレスファンが、プロレスラー・大仁田厚という存在を想起する際、脳内でこの『スーパースター』が再生されるはずです。

当時の彼は、渕正信選手、ハル薗田選手と並び、ジャイアント馬場さんが手塩にかけた「若手三羽ガラス」として、全日本プロレスの輝かしい未来を一身に背負っていました。

特に、ルチャ・リブレの血を引く故・チャボ・ゲレロ(シニア)選手とのNWAインターナショナル・ジュニアヘビー級王座を巡る抗争は、まさに手に汗握る名勝負の連続。

クラシックなレスリング技術の応酬の中に、若き情熱がほとばしる至高の闘いでした。この時代の彼は、泥臭い「邪道」のイメージとは真逆の、真っ白なリングシューズが似合う清廉なジュニア戦士だったのです。

必殺のジャーマン

大仁田選手とチャボ選手、このライバル両者に共通していたのは、互いに「ジャーマン・スープレックス」の稀代の使い手であったことです。

その切れ味は、見る者を釘付けにする一級品の芸術。二人のライバル関係は、当時の全日本マットにおける「ドル箱カード」として、満員の観客を熱狂の渦に巻き込みました。

しかし、輝かしいキャリアに影を落としたのは、ライバル団体である新日本プロレスに「黄金の天才」初代タイガーマスク選手が突如として出現したことでした。

大仁田選手も卓越した技術を持っていましたが、初代タイガーが披露する四次元殺法やタイガー・スープレックスは、あまりにも時代の先を行き過ぎていました。この「天才の影」が、大仁田選手の苦悩の始まりだったのかもしれません。

膝の爆弾と再起

当時の新日本と全日本は、動員数からファンの熱量まで、あらゆる面で比較される宿命にありました。

初代タイガーという空前絶後のスターと比較され続けることは、大仁田選手が正当に評価される機会を阻んでいた側面も否定できません。

焦りや対抗意識から、彼はより過激な空中戦に活路を見出しますが、その代償はあまりにも大きく、着地の衝撃によって彼の膝は悲鳴を上げます。

「膝の爆弾」が爆発し、伝家の宝刀であったジャーマン・スープレックスすら封印せざるを得なくなった彼は、1985年に志半ばで一度目の引退を表明します。

しかし、この絶望こそが、膝が万全でなくとも魂で観客を揺さぶる「新しい闘い」を生み出す原動力となりました。まさに、マット界に激震を走らせる「涙のカリスマ」誕生の前奏曲だったのです。

邪道が拓いた荒野

引退後の雌伏の時を経て、彼は単なるレスラーとしてではなく、覚醒したアイディアマン、そして冷徹なビジネスマンとしてマット界へ舞い戻りました。

それが、のちに有刺鉄線電流爆破デスマッチをウリにした団体「FMW」の設立です。彼は一度引退した選手や、メジャーのリングには立てない無名選手たちを次々と戦場へ送り込み、血と涙の人間ドラマを構築しました。

この混沌とした「玉石混交」の状態から、現代のインディープロレスや多様なプロレス文化が形成されたのは紛れもない事実です。もし彼が、あのまま『スーパースター』が似合う正統派ジュニア戦士としてキャリアを終えていたなら、現在のプロレス界は全く違う景色になっていたでしょう。大仁田選手の功績は、プロレス界にとって計り知れないほど巨大なものなのです。

涙のカリスマの軌跡

功罪のどちらもが極端に巨大であること。それこそが「大仁田厚」という男の生き様の本質です。全日本時代の正統派な闘いから、FMWでの血みどろの抗争まで、彼の歩んだ道は常に常識を破壊し続ける旅路でした。

現在、彼がリングで見せる姿は往年とは異なりますが、その原点にある『スーパースター』の調べを聴けば、当時の熱き闘いの記憶が鮮明に蘇ります。プロレスというジャンルを「生き様」の表現へと昇華させた男の、紆余曲折に満ちた軌跡。その旋律に耳を傾けながら、かつての情熱に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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