プロレス的音楽徒然草 奇跡の獣神
時代を創った黄金リレー
今や「世界の獣神」としてその名を轟かせるリビングレジェンド、獣神サンダー・ライガー選手。彼の代名詞といえば、あまりにも有名な入場テーマ「怒りの獣神」です。この楽曲は、永井豪さんの漫画を原作とし、サンライズが制作したテレビアニメ『獣神ライガー』のオープニングテーマでした。
1989年3月から1990年1月にかけて放送されたこの作品は、当時のプロレスファンにとっても特別な存在です。当時のテレビ朝日系列では、夕方4時からの『ワールドプロレスリング』に続いてアニメ版『ライガー』が放送されるという、まさに「プロレスからアニメへ」の黄金リレーが組まれていました。この編成が、子供たちの心理に「ライガー=最強のヒーロー」という刷り込みを完璧に行わせたのです。
進化し続けたバイオアーマー
アニメのストーリー展開に合わせ、ライガー選手のマスクとコスチュームは幾度もの変遷を遂げてきました。初期の「獣神ライガー」から、パワーアップした「ファイヤーライガー」、そして最終形態である「獣神サンダー・ライガー」へ。
この進化の過程は、単なるタイアップの枠を超え、ファンの所有欲や期待感を煽る心理的ギミックとしても機能していました。1989年の東京ドーム大会での衝撃的なデビュー以来、彼はアニメの枠を飛び出し、現実のリングという過酷な戦場でその肉体を激しくぶつけ合ってきたのです。
封印された「奇跡」の曲
興味深いのは、アニメが最終形態に移行した際、オープニング曲も『奇跡の獣神』へと一新された点です。歌詞の中に「奇跡の獣神サンダー・ライガー」と明記されており、本来であればこちらがレスラーとしての現行名に合致するはずでした。
しかし、ライガー選手はあえてこの曲を採用せず、デビュー当時の「怒りの獣神」を使い続けました。では、なぜ入場曲を変えなかったのか。そこには、初志貫徹を貫く「漢の美学」が感じられます。結果として、歌詞が旧リングネームのままであっても、それが逆に「歴史の重み」へと昇華されたのです。
初代タイガーとの対比
この「不変の美学」は、先達である初代タイガーマスク(佐山聡さん)と比較するとより際立ちます。初代タイガーは新日本プロレス在籍時のわずか2年余りの間に、入場曲を頻繁に変更していました。
一方で、ライガー選手が公式に使用したテーマ曲は、実質的に「怒りの獣神」と、後にWWEへ参戦した際に使用された「Thuhn-Der」の2曲のみといっても過言ではありません。
昨今のプロレス界では、心機一転を狙って入場曲を頻繁に変える傾向にありますが、ライガー選手のように頑なに同じ旋律を守り抜く姿勢は珍しいともいえます。
最小の巨人が見せた意地
アニメ版のライガーは巨大なバイオアーマーであり、圧倒的な質量を誇ります。対して、現実のライガー選手は当時の新日本プロレスにおいて、身長170cmという最も小柄な体躯の持ち主でした。この「最大」と「最小」のコントラストは非常に示唆的です。
1994年の「スーパージュニア」で見せた凄惨な死闘や、ヘビー級の猛者たちをなぎ倒す掌底。小柄な体で巨大な相手を翻弄し、ねじ伏せるその姿は、判官贔屓の心理を突くだけでなく、見る者に「勇気」という名の奇跡を与えました。アニメの記憶が風化しても、現実のライガー選手の存在感は、伝説として肥大し続けています。
宿命が交差する声の縁
最後に、アニメで主人公・大牙剣を演じたのは、『ONE PIECE』のルフィ役でお馴染みの田中真弓さんでした。実はプロレス界には、自他共に認める『ONE PIECE』フリークの鈴木みのる選手が存在します。
かつてパンクラスのリングや新日本のマットで、ライガー選手と数々の激闘を繰り広げた両雄。ライガー選手のバックボーンに、敬愛する作品の主人公の声が流れていることに対し、もしかすると鈴木みのる選手は、リング上での激しい闘いの裏で、密かな羨望を抱いていたのかもしれません。

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