【プロレス観戦記】がむしゃらプロレス | GAM-1 CLIMAX 2023 | (2023.9.10)

がむしゃらプロレス観戦記

がむしゃらプロレス | GAM-1 CLIMAX 2023

(2023年9月10日(日)/門司赤煉瓦プレイス)

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イントロダクション

本家G1クライマックスが終了し、秋の訪れとともに、がむしゃらプロレスにはもう一つの夏がやってくる。それが1日で最強戦士を決定するワンデイトーナメント「GAM-1 CLIMAX」である。

通常のGAM-1 CLIMAXだと、参加選手の人数によっては、どこかでシードができてしまうのだが、今回は6名参加のシードなしとなっていた。

したがって、決勝に勝ち上がるまでには、全員1日3試合を戦い抜かなければならない。

すでにベテランの域にいる陽樹にとっては、優勝経験があると言っても過酷なトーナメントとも言える。

中でも注目なのは、がむしゃら参戦経験が長い割にGAM-1 CLIMAX初参加となる土屋クレイジーの存在である。

関節技もうまい上に、飛び技も操れる厄介なヘビー級である土屋はパワー型が多いがむしゃらプロレスの中では異彩を放っている存在である。

普段はスペシャルマッチなどで大会に花を添えることが多い土屋だが、本戦に本格的に絡むのは今回が初めてである。

純粋にがむしゃらプロレス内だけで強さを競ってもいいのだが、他団体から土屋のような存在が加わることでトーナメントの面白みが増すのはファンとしては大歓迎である。

さあ今年はどうなっていくのだろうか?

下関→門司赤煉瓦プレイス

天候は土曜日に続いて、日曜も快晴となった。

午前中に洗濯などを済ませて昼食を食べてから下関を出発。

日曜の下道はいつものように混んでいたが、早めに出たので約50分ほどで門司赤煉瓦プレイスに到着。

例によって開場前に日陰に集まって、あれこれ話をしているとあっという間に時間が過ぎ開場の時間となった。

10月の大会と12月のマニアは別な会場で行われるため本大会が年内最後の赤煉瓦になる。

といっても、年末の西日本総合展示場も結構海沿いなので、赤煉瓦同様寒風大作戦をしなければならないだろう。

オープニング

オープニングアクトは代表SMITHと副代表ゲレーロのコンビ。

いつもより15分早めに前説を行い、カード発表およびマニアの告知を行った。

普段ならこの後、全選手入場式があるのだが今年はなし。

トーナメントを含めた全9試合ということになるとそこら辺はやむを得ないのかもしれない。

ただ進行上は非常にスムーズに進んでいったのでこれはこれで良しとしておこう。

第一試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 1回戦
× KENZO (6分01秒) ○ HIROYA
※ラリアット

トーナメント1回戦は若きがむしゃらの未来を担う2人の対決となった。成長著しいKENZOは土曜日に日田でシングルマッチを1試合こなしてきての本戦である。

かたやHIROYAはこの夏、東京のガンバレ☆プロレスで武者修行を行い、貴重な体験をしてきた。

その成果を披露するには持ってこいの場面である。

SNSで優勝宣言をしていたKENZOは入場間もなくHIROYAを襲って自分のペースに持ち込もうとする。

ただ、残念ながら奇襲攻撃をかけた若手がその後勝てるかというと、そうではなかったりする場合が多い。

こういう時に舞い上がってしまうのか?それとも落ち着いて対処できるのか?でトーナメントは勝敗を分けてしまうのかもしれない。

以前のHIROYAだったら自分が先に襲いかかっていただろう。

だけど夏の貴重な体験は、彼を想像以上に大きく成長させていたように思う。

それはがむしゃらプロレスの次世代が、次の時代を引っ張っていくという責任感みたいなものを試合から感じられたし、何より非常にHIROYAは落ち着いていた。

KENZOはここが勢い任せ、力任せにならず、全体を見渡せるような広い視野を持てるようになると、今日のHIROYAの立ち位置に近づけるのではないだろうか?

結局、奇襲とパワーで勝負をかけながら、最後ラリアットで吹っ飛ばされたKENZO。彼ならいつかこの課題はクリアしてくることだろう。

第二試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 1回戦(時間無制限1本勝負)
× 尾原毅 (5分09秒) ○ サムソン澤田
※ブルドッグチョーク

がむしゃらプロレスきってのテクニシャン同士の対決となった第2試合。

私の記憶では両者はシングル初対決のはずである。

序盤から緊張感あふれる攻防はこの2人にしかできない。

1回戦で実現してしまうのはもったいないカードだったかもしれない。

全体的に全員が3試合しなければいけないという条件を考えると、一回戦が短時間決着になるのは仕方ないのかもしれない。

この試合もできることならばもう少しじっくり見たかったのだが、意外なことにグラウンドで尾原が締め落とされるという衝撃の結末になった。その前にサムソンが決めた強烈なスピアーがあったとはいえ、ここで尾原が終わるとは・・・

昨年までチャンピオンだった尾原は今なお現役の6人タッグチャンピオンである。実力も今年に入ってから衰えたわけでもない。

まさにGAM-1には魔物が棲んでいた。そう思わずにはいられなかった試合だった。

第三試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 1回戦(時間無制限1本勝負)
○ 豪右衛門 (7分12秒) × 陽樹
※大花火

がむしゃらプロレス屈指の肉体派がぶつかり合う第3試合。

新世代の旗頭を自認する豪右衛門だが、ブランク含めたキャリアでいうと、陽樹のほうに近い。

一方陽樹は現役のタッグチャンピオンでもあり、GAM-1の優勝経験もある。

つまりトーナメントの戦い方に関しては両者とも経験があり、どうやって戦っていけばいいのかすべて頭に入っていると言ってもいいだろう。

試合は派手な場外戦あり、真っ向からのぶつかり合いありと、いかにもこの2人らしい肉弾戦になっていった。

意外なのは、場外戦でも常に豪右衛門が優勢にみえたことで、これは負けたとはいえ、まだタッグ王座を狙っているという意思表示かもしれないなと思った。

そして見事チャンピオンに打ち勝った豪右衛門は、陽樹の持つタッグベルトを持ち逃げ!

陽樹にしてみればまさかの一回戦負けで、ベルトまで持ち逃げされるという踏んだり蹴ったりの結果になってしまった。

第四試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 1回戦(時間無制限1本勝負)
× HAGGAR (5分07秒) ○ 土屋クレイジー
※カニバサミ返し

KENZOと同日デビューしたHAGGARは、同期が持っている若さと勢いを試合で感じられない。

せっかく鍛え上げた肉体と、鋭い蹴り、そしてグラウンドを苦にしないテクニックもあるのだが、新人らしい遮二無二な感じが試合から伝わってこない。

そうなると、キャリアもありながら躍動感があり、グラウンドも苦にしない土屋は俄然有利になる。

勝てる要素は少ないにせよ、それこそKENZOみたいに一か八かで、HAGGARは奇襲に出てもよかったかもしれない。

KENZOもそうだが、HAGGARもトーナメント三試合を勝ち上がる戦略が試合からは感じられなかった。

とはいえ、こうした経験を積むことでみんなスター選手になっていく。HAGGARにも「いつかこんなこともあったな」と振り返る日がくるだろう。

第五試合:(タッグマッチ/疲れん程度1本勝負)

帰ってきた❗️おまけ軍式レゴデスマッチ‼️
× リキ・ライタ & ダイナマイト九州(13分31秒) MIKIHISA & ○ 弾女郎
※ 宮津湾トーンボム半ケツver.

2022年4月17日以来となる「レゴデスマッチ」が帰ってきた!

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この時は「代表のSMITHの強い要望で実現した」と発表され、序盤は九州組が好き放題にいつも通りの試合をしていた。

しかし、今回は序盤から九州と弾女郎がグラウンドのテクニックを繰り広げ、 お笑いなどどこかへ行ってしまったような感じで試合が進んでいく。

途中で我に帰った弾女郎が「いやいや、こんなんじゃないだろう」と強引にレゴデスマッチに戻していくと、今度は九州もデスマッチバージョンの顔を覗かせていく。

自らレゴを頭からかぶり、レゴを使った凶器も辞さない攻撃性は、 普段のダイナマイト九州から伺い知れない荒っぽさで、こういう顔もあるんだなというのを改めて思い知らされた。

ところが、終盤になってくると、 場外に出たダイナマイト九州が弾女郎のタイツをつかんで離さない。

弾女郎が強引にリングへ戻ろうとすると、タイツが脱げてお尻が丸見えになってしまった。

そのまま弾女郎は試合を続け、最後はケツ出しのまま宮津湾トーンボムを決めてリキ・ライタをレゴの海の中に沈めた。

MIKIHISAとともに勝ちどきを上げる弾女郎のタイツは下がったままだった。

対する九州は最後までお笑いの顔はほぼ封印。こういう試合もありっちゃありなのかもしれないなと思った。

第六試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 準決勝
○ HIROYA (13分06秒) × 豪右衛門
※ランニングニーアタック

1950年代から60年代にかけてのプロレスは、ひたすらヘッドロックをかけあうような今だと地味にしか見えない攻防が繰り広げられていた。

しかし、この基本技一つで説得力ある試合を生み出すのもプロレスラーである。本来飛んだり跳ねたり、大げさな受け身をとらなくてもプロレスは成立するものなのだ。

ところが、このヘッドロックはかけられる方もそうだが、かける方も結構消耗する。

だから自分のスタミナにも自信がないと、なかなかこれ一本で勝負するのは難しくなってくる。

ところが今回のHIROYAは、そのヘッドロックで勝負に出た。

普段だったらロープワークに移行すると、技をほどいてしまうものだが、これでもかというくらいHIROYAは、しつこくしつこく締め上げていく。

あまりのしつこさに豪右衛門が音を上げそうになる場面が何度も見られた。

そもそもヘッドロックはかけられただけでも痛い上に、スタミナも奪われる技であるから、 2戦目の豪右衛門にとってはこれは苦しい戦いに違いない。

一方、HIROYAは若さ故に スタミナも無尽蔵にある。8月のガンバレ⭐︎プロレス体験も大きな財産になったのだろう。

しかし豪右衛門もただただやられているだけではない。

HIROYAの腕をとって強引に変形の首四の字固めに取ろうとするが、これはHIROYAが暴れて激しく抵抗する。

ならばと豪右衛門は、打撃技に切り替えて自らもお返しにスリーパーをかけていくが、これはHIROYAが強引にカット。

最終的にはHIROYAの粘りが豪右衛門を退け、初の決勝進出に進むこととなった。

この辺は初優勝にかけるHIROYAの意気込みが最も顕著に見られた試合だったのではないだろうかと思う。

第七試合:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 準決勝
× サムソン澤田(7分13秒) ○ 土屋クレイジー
※ギロチンチョーク

この試合、場外乱闘がひどくて写真がほぼ撮れていない。帰宅して確認したらスマホに一枚だけ撮れた写真があった。

 

…ということは荒れた試合になったということ。まともにいけばテクニック合戦になるはずだが、サムソンは最初から傘を手にした陽樹を引き連れている。

片や土屋はドン・タッカーTシャツを着込み、遺影に一礼。このトーナメントにかける意気込みを試合前から全身に現していた。

しかし、Re:ZARDモードのサムソンは土屋を場外に叩き出すと、陽樹に好き放題襲わせる。

傘だけでなく激しい場外戦から椅子が変形するくらい叩きつけられた土屋は大ピンチ!

だが、こうしたラフにも強いのが土屋クレイジーである。だてにクレイジーとは名乗っていないというわけだ。

結果的にはRe:ZARDの全てを受け切った上で土屋がドン・タッカーに捧げる勝利を飾り、初出場で決勝進出!

奇しくも優勝戦は初出場同士の一騎打ちとなった。

セミファイナル:(6人タッグマッチ/30分1本勝負)

ドン・タッカーメモリアルマッチ
『最高!』
× 鉄生 & 久保希望 & 藤田ミノル (17分33秒)トゥルエノ・ゲレーロ & SMITH & ○ 阿蘇山
※マグマスプラッシュ

前日にKO-Dタッグを奪取したばかりの藤田ミノルが、久々になるがむしゃらプロレス凱旋!

いずれもドン・タッカーとは深い縁のある6人が集まったメモリアルマッチは、お互いの「現在」をバッチバチにぶつけ合う激しい内容になった。

普段プロとはあまり絡まないSMITH代表が自らこの輪の中に入っているのが、覚悟とも解釈できる。

普段あまり敵対しない阿蘇山と久保の絡みも新鮮だし、そんな激しさの中にあって、通常運転で飄々と通常運転する藤田ミノルと、各人各様の色も見せていく。

そんな中、師匠に自身の成長を見せつけるかのように立ちはだかったのが鉄生だった。

普段のキャラクターは崩さないまま、真っ向から阿蘇山のチョップを受け、逆に師匠へ渾身の一撃を叩きつける鉄生にもやはり覚悟のようなものを感じた。

もちろん弟子の成長に師匠が張り切らないわけがない。藤田ミノルが通常運転なら阿蘇山も通常…いやそれ以上に大噴火して、容赦なく叩き潰しにきた。

こういう阿蘇山はなかなか九州プロレスでもお目にかかれない。むしろ数年前より若返っている印象すら抱いてしまった。

試合はその阿蘇山が鉄生のダイビングヘッドバットをキックアウトしてからの、強烈なダイビングボディプレスによって、GWA現王者の鉄生からカウント3!

見事、副賞の居酒屋がむしゃらお食事券を手にしたのだった。

熱戦が続くGAM-1 CLIMAX内にあって、トーナメントに勝るとも劣らない大熱戦に会場のお客さんも酔いしれたのではないだろうか?

メインイベント:(時間無制限1本勝負)

GAM-1 CLIMAX 2023 優勝決定戦
× 土屋クレイジー (16分03秒) ○ HIROYA
※ファルコンアロー

お互いがここまで二試合ずつ消化して、勝ち上がってきた優勝決定戦。

HIROYAも土屋も勝てば初優勝となる。それだけに負けられないのは、どちらも同じ。

ここまでの試合を観る限り、それぞれが戦略を練って、決勝戦にコマを進めてきた。

特に勝ち気にはやりがちだったHIROYAが、ここまで俯瞰から全体を見渡せているのは、土屋にとっても脅威。

明らかにGWAタッグをめぐって争っていた頃のHIROYAとは別人になっているからだ。

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実はここまでHIROYAも土屋も自分の必殺技や、ここぞという時にしか出さない技を封印して挑んできている。

もはや決勝までくれば出し惜しみする理由はない。あとは技を出すタイミングだけ。

それだけに勝負どころを読み合うかのような展開は、まさに決勝に相応しい内容になっていった。

強いて勝敗を分けたとしたら、決勝の先に進む強いモチベーションがあったかどうか?

「いつまでも鉄生、陽樹の時代ではない。自分たちの世代ががむしゃらプロレスを引っ張るんだ!」

この想いが強かったのはやはりHIROYAの方だった。

もちろん個人的には土屋対鉄生のタイトルマッチも見てみたかった。おそらく内容保証付きの名勝負になり、GAMSHARA MANIA のメインを飾るに相応しい内容を見せてくれただろう。

だが、HIROYAには「よい試合をしたい」以上に「自分ががむしゃらプロレスなんだ!」という信念に似た気持ちがあったのかもしれない。

だから、HIROYAは土屋の厳しい攻めを凌ぎ切れたし、逆に土屋はHIROYAに対して致命的なダメージを負わせられなかった、と私は見ている。

結果的には最後の最後までためにためた、HIROYAこだわりのファルコンアローで土屋を振り切り、見事HIROYAは悲願の初優勝を遂げた。

エンディング

試合後マイクを握ったHIROYAは鉄生を呼び出すと高らかに、がむしゃらプロレスの新時代到来を宣言。

対する鉄生は「12月までベルト磨いておいてやるよ!」とまるでチャレンジャーのような捨て台詞を残して去っていった。

その間、なぜかゲレーロがマイクを握り、年末のジュニア王座チャレンジャーにYASUを指名。

山口でもさまざまな体験を積んできた今のYASUをチャレンジャーとしたゲレーロに対し、YASU自身は「今YASUさま負けが込んでいるけど、光栄だ!」と、これまた「今の」ゲレーロに興味津々。

かくして年末のゲレーロ対YASUは、これまた新時代のがむしゃらプロレスを見せる闘いになりそうだ。

最後はHIROYAが再びマイクを握り、やや駆け足気味に大会を締めた。

後記

今年のGAM1 CLIMAXは常に時代を切り開いていこうとする前向きな闘いが多かったように感じる。

もちろんプロレスはノスタルジーでも全然構わないし、なんならHIROYAのヘッドロックはノスタルジーを何周かして逆に新しい風景を生み出していた。

奇しくも12.3で行なわれる決定戦カードは、ジュニアもヘビーも「今」をテーマにしている。

20周年という記念大会に過去ではなく「今」を見せようという流れになっているがむしゃらプロレス。

ノスタルジーも闘いも包み込んだ先にある「今」はどんな風景になるのだろうか?

楽しみで仕方ない。

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