[プロレス観戦記] FREEDAMS北九州門司赤煉瓦プレイス大会(2014年7月13日・日:門司赤煉瓦プレイス)

せかぷろ

FREEDAMS北九州門司赤煉瓦プレイス大会(2014年7月13日・日:門司赤煉瓦プレイス)

写真1はこちからから

写真2はこちらから

イントロダクション

毎年恒例のFREEDAMS北九州大会。今年は初進出になる門司赤煉瓦プレイスで開催。

赤煉瓦は傾斜のある客席で、場外戦が絵になりやすい。結構エニウェアを得意にしてたりフリーに暴れまわる選手にはうってつけの場所。

FREEDAMSの聖地としてはぴったりな場所だと思っていた。観客の盛り上がりぶりがそのままリングに届きやすいことも大きいと思う。

すでに前売りでかなりの枚数をさばいていたので、観衆は253人(超満員・発表人数)と大入り!がむしゃら以外はここを埋めるのも苦戦していることを考えると、もちろん殿の営業努力も一番だが、FREEDAMSの団体としての魅力が無かったらここまでにはならなかっただろう。

4年間で着実にリピーターを増やしていったのは、まさにそこなのだ。得意のデスマッチ路線もなく、売りのひとつになっている小鹿軍との抗争もなく、北九州大会はほかの地域のどこよりも、プロレスというベースの部分で勝負してきて、それが形になって成熟してきた。

だからいきなり奇をてらったりせずに、小細工なしでぶつかってきたのが逆によかったのかもしれない。

もちろん機会があればデスマッチだってやっていいとは思う。だが、その前にプロレスでベースを築いたことは間違いではなかったと思う。だからこそ子どもからお年寄りまで安心していける場所になったのだから。

オープニング

今回も実は九州圏では興業戦争になっていた。

福岡ではIGF、熊本では九州プロレスが同日大会を行っており、FREEDAMS含めて三団体を選択せざるを得ない状況になったとき、どこを選ぶかがファンだけでなく、フリーの選手もまた選択せざるを得なかった。

案外こういう時選手の取り合いになったりもする。

たとえばFREEDAMS常連の高岩が今回北九州大会にはでられなかったし、九プロ常連でもある藤田ミノルはFREEDAMSを選んだ。

というわけで、実は興業を彩る選手たちが、どこの団体も「どこか足りてない」中、いかにして自分のところの色を出し切るかが大事になってくるのだ。

試合前はアニスピガールズによる、ダンスとうた。そしてそのまま殿が入ってきて一緒にオープニングアクトを務めたが予想通り盛り上がりが半端ない。やはりこの会場を選んで正解だったなと思った。

第一試合:◇がむしゃらプロレス提供試合

○セクシーロージィ&TOSSHI&鉄生(体固め 10分20秒)パンチくん&●YASU&陽樹
※ランニングボディプレス

第一試合はがむしゃらプロレス提供試合。ここのところ本戦以外はフレッシュな顔ぶれが多くなっている中、クロスオーバーにおまけ軍が加わった6人タッグという形式の試合が組まれた。

若い選手に特化してチャンスを与えるということは、世代闘争の次を見越せば結構重要になってくる。

未来のがむしゃらの図式をみるにはこういう若い取り合わせが大切だからだ。ましてや6月一か月を仕切り直しにして、試合を組まなかっただけにその本戦一発目ということで、期待値はでかかった。

もちろん試合のでき自体は多少のミスはあったものの、悪くはなかった。

だが、TOSSHIとYASUはともかく、陽樹対鉄生の絡みまで「プロレスの枠の中」に入り過ぎていたと思う。今は同じユニットだけど、こいつだけは出し抜いてやろうというきな臭いが漂うからこの顔合わせは面白いのだ。

その爆発力が時にプロレスの範疇をこえるかこえないかを行き来するところが魅力だったんだけど、パンチくんやロージーの存在感に消されかねない中、彼らとも勝負しようとしてて、お互いがお互いをしっかりみてなかった感じがした。

正直、手が合うYASUとTOSSHIみたいに試合内容が進化しなくていいのだ。同じ会場で昨年やったような熱いぶつかり合いは、その危険なにおいを漂わせていた。

だから面白かったのだ。ましてやここはフリーダムスのマット。他にない自由な空間だったからこそ、第一試合とかプロの試合とか関係なしに、俺たちが一番面白いという自己主張をもっとしてもよかったと思う。そこまでいい人になっちゃうといくら凄んでも、いい人で終わってしまう危険性がある。

特に陽樹対鉄生の遺恨は一生消えないだけに変にきれいにまとまろうとせず、会場を、興業をこわす勢いでやってほしかったな。メインのバトルロイヤルでマンモスに二人がかりで挑んだYASUとTOSSHI、鉄生を出し抜くように積極的にGENTAROに立ち向かっていった陽樹の姿の方がこの第一試合よりぐっと魅力的だった。

ああいう感じの試合をしてほしかったんだけど、世代闘争もしつつ、個人闘争もというのはなかなか大変だとは思うけど、どうかこじんまりだけはしないで欲しいなと思った。

第一試合:◇タッグマッチ

○ジ・ウインガー&SUSUMU(飛び付き変形十字固め 11分30秒)神威&●正岡大介

ここから華☆激より単独参戦のZEBRA那須レフェリーが登場。九州地区で技術の高いレフェリーTOP2の一人が、そこにいると安心感が違う。ぜひとも自団体とかぶらなければ継続参戦してほしいところ。で、もともと華☆激のリングにもあがっていたSUSUMUがでてくると何かさざんぴあに来たかのような勘違いをしてしまいそうになる。

しかしウインガーはどの立ち位置にいても自由というか、どこへいってもあのなんともいえないゆるさとベテラらしい試合運びでなんとなく煙にまいていく。名勝負は少ないけど、安心感はあるという感じかな。がむしゃらとはまたカラーが異なる試合になったので、これはこれで面白かった。なんとなく若い相手をうまくいなして自分のカラーは崩さず、気が付いたら勝っていたという空気のような存在だが、安定感は抜群といういつものウインガーらしい試合になっていた。このカラーを崩すには若手がいろいろ知恵を絞らないといけないとは思うのだけど、なかなかこういう軟タイプの選手のカラーは消しようがない。この辺がプロレスの面白いところでもある。

第二試合:◇タッグマッチ

○バラモンシュウ&バラモンケイ(横入り式エビ固め 12分18秒)グルクンマスク&ハイビスカスみぃ●

バラモン兄弟対琉球ドラゴンプロレスとの対抗戦。沖縄大会ではFREEDAMSと毎回コラボしているドラゴンプロレスがまさか九州にまできて闘うのが、バラモンとは・・・・

あとで聞いたら「いつの間にか闘うことになっていた」といっていたが、正直荒れるとは予想していたものの、ふたをあけるとそれ以上!もうバラモンがいきなり会場真上からあらわれた時にはもうびっくり。逃げまどう観客、ひな壇のあちこちが戦場になり、あちこちに水を吹きまくるバラモン。

幸か不幸か今回は墨汁吹かなかっただけまだましだったが、よくあれで負傷者がでなかったな、と思った。

ただし、意外に女性受けはよかったみたいで、あとで「バラモンかっこいい」という女性が結構いた。

もっとも私にとってはセーラーボーイズなんてつい昨日の出来事だけど、彼女たちには全く知らない歴史なわけだし、あの異形の恰好になってなお、イケメンぶりがにじみ出るのは彼らが望んでいること・・・なのかどうかはわからない。

実際移動時間が迫っていたこともあって、出待ちの女性ファンガン無視で帰路を急いでいたバラモンの姿はなんか哀愁さえ感じられた。

さて試合に戻ると、アップルあらためハイビスカスみぃお得意の泣きまねももちろんバラモンには通用しない。

「整形してやるぜ、ぶす!」だの「(顔面攻撃で)整形してやってやっとブスになったぜ」といいたい放題。

得意のボウリング攻撃もグルクンマスクにやったあと、ご丁寧にみぃにまで見舞う周到さ。そして同士討ちこそあったものの、パウダーからの横入り式エビ固めでバラモン勝利。おまけに「今日はこのぐらいにしといてやる!」と負けた側の常套句をなぜか言って立ち去るバラモン。

2年ぶりに北九州をこれでもかとバラモン色に染め上げた試合だった。グルクンとみぃには気の毒だったかな?でもまあこんなカードがみられるのもFREEDAMSならではだし。

第三試合:◇シングルマッチ

○GENTARO(体固め 15分56秒)久保希望●
※雪崩式サイドスープレックス

これは、GENTAROの九州復帰戦。二年前の大会直後の札幌で脳梗塞を発症し、奇跡の復活を遂げた不屈の男がかえってきた!しかも相手はGENTAROが逆指名した久保希望!これが燃えないわけがない。

そしてプロレスリング華☆激15年の歴史を知るものとしては、GENTAROと久保の試合をZEBRAレフェリーが裁くという図がもう感涙もの!

所属時期が異なるため三名が在籍していた期間は存在しない。だが、やはり彼らは華☆激15年の歴史に外せない登場人物たちである。

そう思うとやはりGENTAROが考えるベーシックに基本があって、強さが感じられるプロレスの継承がテーマになるのではないかなと思って見ていたらまさにそんな感じの試合になった。

意外と耐える部分はフィーチャーされがちな久保だが、こうした技術継承マッチというのは今までなかったような気がする。

実際、すぐには組み合わず、たっぷり間合いを計って緊張感を漂わし、そこから腕をとり、足を殺す展開まで無駄な動きが一分もない。

そのうえ、久保のいいところを引き出しつつ、それじゃやられないよ的なアピールもしっかり織り込んでいく。理論派のGENTAROらしさが随所に感じられた。

一点集中攻撃をよくいう選手の中には最初から最後まで同じ個所だけ攻撃すればいいと思っている人もいたりするが、できる選手は最初から手の内を明かしたりしない。

必殺技をいかに最後、効果的に決めることができるかどうかを計算できる選手は、気が付いたら一点集中の攻撃に相手をはめてしまうものなのだ。

ドリーファンクJrあたりが足殺しだけでなく、上半身殺しで相手に気取られないように足をきめていくレスリングムーブをよくみせていたけど、日本人でここまでクラシカルな展開を味わい深く見せられる選手はGENTAROを置いてほかにいないのではないかとさえ思ってしまう。

しまいにはZEBRAを巻き込んでのレフェリー失神→3カウントが入らないという王道な世界まで作り出したGENTAROのプロレス頭にはただただ頭が下がりっぱなしだった。

そのくらい奥が深かったGENTAROのムーブに久保もよく食らいついたとは思う。

と同時にただ耐えるだけでは勝てないという現実も思いしったのではないだろうか。

強さをアピールするためには簡単にヘッドロックをとかないとか、腕をとるにしてもリストをきちんと固めてひねるとか、そういうところをカチッと見せていける選手になることが全国区になる条件のひとつだと思う。

もっとも久保も簡単に屈したわけではなく、粘りに粘って、GENTAROをあわてさせる場面も作り出した。

決まり手になった雪崩式サイドスープレックスの前にコーナーで何回も頭突きを入れて久保の反撃を断ってから投げたGENTAROの小技がその焦りを証明していたと思う。

気が付けばGENTAROの復帰ということより、久保に対しての魂伝承マッチになっていたけど、これはかけがえのない財産になると思う。10年後、あとに続く選手に久保が魂を伝える試合をするとき、この試合のような胸につきささる試合をしてほしいなと思った。

第四試合:◇ 6人タッグマッチ

佐々木貴&マンモス佐々木&●杉浦透(片エビ固め 17分15秒)葛西純&○藤田ミノル&吹本賢児
※パールハーバースプラッシュ

なにげに藤田ミノルがFREEDAMSに上がりだして、実はおひざ元の北九州では負け知らず。最初はGENTAROがいいようにやられ、昨年は殿があろうことか「いくら営業で頑張っても、税金をおさめ、ガス水道代も払っている北九州市民には勝てないんだよ!」とまで言い放たれた手前、今度こそは勝ちたいに違いないFREEDAMS正規軍。そんな意気込みも殿のコールと同時に、奇襲で先手をかけたUNCHAINが打ち砕く!またしても場外大乱戦。ここでこの会場でよかったのはひな壇だとある程度の試合展開を間近でみられたことかな。北九州パレスだとステージ上からしか確認できないあちこちの戦闘を体感できたのは幸いだった。

FREEDAMSの歴史の中で組んだり闘ったりしてきている葛西と佐々木貴だが、この二人はやはり同じコーナーにたつよりは分かれて立った方が面白いなと思った。お互いの持ち味はそれぞれが異なるため、消えることはないのだけれど、闘うことでより鮮明になる。一年目だったか、組んでバラモンと闘ったときに感じていた違和感がなくなっていたことに気が付いてからは特にそう思うようになった。

でもやっぱ九州プロレスが悪いとかいう意味ではなく、愚連隊以外でもっとも藤田がイキイキしてるマットはやはりFREEDAMS以外にないかもしれない。初参戦時GENTAROの発病ということがあったにせよ、ここが自分を輝かせるにふさわしい場所だということを藤田自身が肌で感じているのかもとも思える。自由度がやはり他の団体にあがるときより何割か増しになっている感じがするのだ。特に藤田ミノルの試合をみる機会が多いこちらの人間としては、その違いが分かりやすい。

その藤田を味方にして吹本と葛西も暴れ放題。殿も頑張ったしマンモスも杉浦も頑張ったが、試合後しっかり葛西に「杉浦、お前ちょっとはましになったかと思ったが、まだまだだな」と失格宣告までされてしまった。が、この日のUNCHAINをみていたらちょっと言い訳できないだろう。ということで藤田ミノル、北九州大会負け知らずの連勝記録を伸ばす結果になった。で、そのままの勢いでバトルロイヤルに。

メインイベント:◇全選手参加バトルロイヤル

○久保希望(オーバーザトップ 11分1秒)神威●
※退場順 TOSSHI、YASU、マンモス、鉄生、陽樹、正岡、SUSUMU、GENTARO、杉浦、葛西、吹本、貴、ロージィ、シュウ、ケイ、グルクン、みぃ、藤田、ウインガー、神威

がむプロ勢も混じっての全選手バトルロイヤル。バトルロイヤルは一時期は地方大会のよくある光景だったはずなんだが、最近はとんと見なくなってしまった。なんでなんとなく今みると嬉しかったりもする。ロイヤルランブル形式も悪くないけど、こういうカオスな空間を作らせたらFREEDAMSの右に出る者はいないだろう。まあ、殿の性格を考えたらセミで負けてメインで自分が勝つという図式にはしないだろうとは思っていたけど、ふたをあけたら予想外にカオスな展開になった。序盤のがむしゃら対プロの禁断の展開や、中盤のバラモンの暴走、UNCHAINを裏切って終盤北九州タッグで久保と組んだ藤田の自由すぎる試合運び・・・・他団体ではちょっとお目にかかれない感じで、なかなか面白かった。祭りの最後を締めくくるのにはこういうのもアリなんだなと思った。

で、最後の方にちゃっかりウインガーが残っているというのがさすがというかなんというか。最後4人になった時に思わず笑ってしまった。要領がよくて、気配が消せるという利点を最大限に活用できるウインガーはこの手の試合形式だとよく最後まで居残るタイプだとは思っていたけど、本当に居残ってると、もはや可笑しいとしか思えなかった。

でもあのメンバー全員を裁いたZEBRAレフェリーは本当大変だったろうなあ。これだけ奔放に暴れまわることはダークサイドFTOでもそうはないはずだし。

最後は久保が地元で錦を飾って優勝。でも殿に締めを譲って大盛り上がりで大会を締めくくった。

後記

でも今回は年数重ねてきて今まで一番面白かった大会だと思ったし、正直今年見た中ではベスト5には入る大会だった。やはりFREEDAMSの来ない夏は考えられない。そのくらい北九州に根差したプロレス団体になったといことはすごいことだと思う。殿の人柄が手づくりの温かさを醸し出すFREEDAMSの大会は闘う癒し空間なのだ。これを味わうと本当に病み付きになってしまう。来年が今から待ちきれないなあ。

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