プロレス的音楽徒然草 テキサスファイト
伝統の応援歌
本日は、故・ディック・マードック選手の入場テーマ曲「テキサス・ファイト(Texas Fight)」をご紹介します。この曲は、プロ野球・埼玉西武ライオンズのチャンステーマ(旧・福岡本拠地時代の名残から九州限定で使用)として一般的に有名ですが、もともとはテキサス大学オースティン校のアメリカンフットボール部「ロングホーンズ」の公式応援歌です。
異なる音源
実はこの「テキサス・ファイト」、バージョン違いがいくつも存在しています。メロディ自体は同一ですが、演奏を担当する「テキサス・ロングホーン・バンド」は大学の組織であるため、日本でいうところの吹奏楽部のように年次ごとにメンバーが入れ替わるわけです。そのため、録音時期によって微妙に響きや勢いが異なるテキサス・ファイトが存在していてもおかしくないのです。
多彩なテーマ
マードック選手は全日本プロレスから新日本プロレスへ電撃移籍した経歴を持ちますが、全日本時代には「チャンピオン」というオリジナル曲を使用していた時期もありました。この「チャンピオン」は、もともとジャイアント馬場さんの新テーマ曲として制作されたものでした。しかし、馬場さんが曲調をあまり気に入らなかったのか、結局使われることなくマードック選手のテーマになったという数奇な経緯があります。
必殺の職人技
マードック選手の代名詞といえば、必殺技「カーフ・ブランディング(子牛焼き印押し)」です。
技術的には、四つん這いになった相手の背後に立ち、片脚を相手の首にかけ、もう片方の脚で相手の腕を制しながら前方へ飛び出す豪快な技です。自分の膝を相手の後頭部からマットへ叩きつける衝撃は凄まじく、テキサスのカウボーイが子牛に焼き印を押す様子を模したこの技は、彼のキャラクターを象徴していました。
また、「元祖」キラー・カール・コックス直伝と本人が語る、キレ味鋭い垂直落下式ブレーンバスターや、巨体に似合わぬテクニカルなエルボードロップなど、その技術は豪快かつ精密でした。
伝説のコンビ
新日本プロレス参戦時には、アドリアン・アドニスとのタッグ「マンハッタン・コンビ」で一世を風靡しました。
暴れん坊のマードックと、テクニシャンのアドニスによる連携は世界最高峰と謳われ、1984年にはWWF世界タッグ王座も獲得しています。二人はプライベートでも非常に仲が良く、夜の街へ繰り出しては豪快に飲み歩く「最強の遊び仲間」でもありました。アドニスが不慮の事故で早世した際、マードックは深い悲しみに暮れたといいます。
荒馬の素顔
ジャイアント馬場さんとマードック選手の関係は、全日本離脱後も続きました。巡業先で馬場さんに遭遇すると、何事もなかったかのように「ビールを奢ってくれよ」とねだり、馬場さんも「しょうがないなあ」と苦笑しながらご馳走していたそうです。
アントニオ猪木さんとの関係は諸説ありますが、対UWFの抗争では新日本軍の強力な助っ人として参戦するなど、その貢献度は計り知れません。
陽気なテキサン
実力は世界チャンピオン級でありながら、アメリカではその破天荒な性格ゆえにプロモーターから「使いづらい選手」として睨まれていたらしいマードック選手も、日本の水は合っていたのでしょう。
日本各地に馴染みのお店を多く持ち、ファンに愛された彼は、まさに「テキサスの荒馬」でした。1996年に50歳の若さでこの世を去りましたが、今でもこの曲を聴くたびに、私は愛すべき陽気なテキサンの笑顔を思い出すのです。
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