【プロレスコラム】 プロレス想い出回想録 ・プロレスと街の記憶をたどる④好きなものを好きと言えるようになるまで

[プロレスコラム]プロレス想い出回想録

プロレス想い出回想録 ・プロレスと街の記憶をたどる④ 好きなものを好きと言えるようになるまで

【ゆっくり始まった私の本当のプロレス観戦】

1987年4月30日に晴れて下関市体育館でプロレス観戦デビューした私でしたが、この時は招待券でした。

自腹でチケットを購入し、観に行ったのは、それから約半年後でした。それが1987年10月23日に開催された87’新春ジャイアントシリーズ第17戦下関大会でした。

これが正真正銘初の全日本プロレス生観戦となったわけです。

【生観戦ならではの“ちょっとした出来事”】

しかし、生観戦というのは当然「ナマモノ」ですから、良いこともあれば悪いこともあります。

この日は私というプロレスファンにとってある意味厳しい洗礼が待っていました。

席に座って試合が始まるのを待っていると、隣の男性客がいきなり私に話しかけてきたのです。

この時点で生観戦三回目だった私は、見知らぬ人間に会場で話しかけられた体験など全くありませんでした。

【隣の新日ファンとの、気まずい時間】

その男性客は新日本の熱烈なファンだったようで、目の前で繰り広げられる全日本の闘いをいちいちくさしながら、私に新日本を見るように勧めてくるのです。

確かに昭和62年といえば、まだ男子だと新日本、全日本、UWFくらいしか団体がなく、猪木さんや馬場さんもまだ現役でした。

したがって、プロレスファンも猪木派、馬場派、あるいは新日派、全日派、UWF派と大まかに分かれて、それぞれ争っていました。

さて、私は、全日本プロレスを楽しみにして見に来てるのに、新日本を持ち上げては、目の前の全日本をくさすというそいつの話を横で聞かされるというのが、すごい苦痛だったんです。

【ロード・ウォリアーズ登場と、ひとつの安堵】

この旗揚げ15周年記念のジャイアントシリーズには、あのザ・ロード・ウォリアーズがシリーズ後半から特別参戦しており、下関大会でも試合が組まれていました。

対戦相手は、ジョン・テンタと高木功の大相撲コンビ。この巨漢タッグを、暴走戦士は短時間であっという間に片付けてしまいました。

ウォリアーズの試合を見終わったウザい新日本ファンは、メインを見ずに席をたって、帰っていきました。

この日の事は約40年たってもまだ覚えている位嫌な出来事だったので、私は10年ぐらいプロレスファンの友達は作らなかったんです。

【静けさの中で始まったメインの6人タッグ】

ウザいやつがいなくなった後のメインは、ジャンボ鶴田&ザ・グレート・カブキ&ハル薗田 対 天龍源一郎&阿修羅・原&サムソン冬木という6人タッグでした。

1987年10月は、天龍革命がスタートしたばっかりだったんですね。天龍革命は、地方でも手を抜かないというのがテーマでした。

この試合では冬木さんが鶴田さん、カブキさんの厳しい攻めを受け続けて、受け続けて、手に汗握る展開になりました。

そして、それまで単なる中堅のイメージしかなかったハル薗田選手が、この試合ではすごく活躍したんです。

これが、若手三羽烏と呼ばれた男の実力だったんだっていうのを見せつけられて、改めて虜になっちゃったんですね。

このメインを見逃して帰ったやつは馬鹿だと思いましたよね。

もうそれが嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、帰りがけ天気も悪かったんですけど、すんごい上機嫌で帰った覚えがあります。

【マウントの裏にある“ちいさな不安”】

マウントをとる人たちは、自分より凄い人に対して、劣等感を覚えがちです。

劣等感があるからこそ、自分のことを大きく見せて、相手を支配しようとします。相手を見下し、優位に立とうとする人ほど劣等感があるのです。

もしかすると、私に絡んだ男は全日本に劣等感があったのかもしれません。そもそもわざわざ全日本のチケット買って?全日本の会場で新日本の布教するというのは、冷静に考えてもどうかしていますよね。

【“プロレスそのもの”を好きになっていた頃】

生観戦三回目の時点ですでに私はいろんな団体に興味を持っていました。

よく考えたら特定の選手・団体を推した記憶がなく、プロレスと言うジャンルそのものを推すという下地はもう出来上がっていたといってもいいでしょう。

プロレスとそこに関わる全ての事象が私にとっては興味の対象であり、団体や選手といったものはその中の要素のひとつでしかなかったのです。

それを明確にしていったのが旧・下関体育館で観戦をはじめた時期だったのだろうと今は思っています。

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