STARDOM GoldenWeek Fight Tour 2023 in SHIMONOSEKI
(2023年5月3日・水祝・海峡メッセ下関:観衆341人)
イントロダクション
コロナ禍前に西鉄ホールに行って以来のスターダム。
その間にチケットの購入システムが変わり、スターダムのファンクラブ会員にならないと買えなくなってしまったのだ。
個人的にはいかなる団体のファンクラブにも加入したくないという気持ちがある。
特にスターダムには思い入れもないし、なおさらだった。
しかし、その気持ちを翻意させたのが下関大会というキーワードである。
かつてはテレビ中継も入っていた時代もはるか昔。今ではプロレスが開催されるだけでもありがたいプロレス僻地で、プロレスが見られるという魅力には、信念を曲げざるを得なかった。
どのみち新日同様、スターダムが継続して下関にやってくる確率は極めて低い。一瞬13時開始のスターダムと、17時過ぎ開始のレスリングどんたくのハシゴも考えたが、移動距離と体調面を考慮して断念した。
自宅→海峡メッセ
自宅から市内に移動するのには、通常車を使用する。
しかし、5月3日はコロナ禍で久しく開催されていなかった下関の祭りがあるため、駅前周辺は交通規制がある。
それを4月末に知ったため、海峡メッセ観戦では初になる、最寄駅から電車+徒歩という方法で会場に向かうことに。
ここ10数年は、レスリングどんたくに行っていたため、下関でも祭りがある事を完全に失念していたし、そもそもゴールデンウィークに下関でプロレスを観た記憶もない。
天気予報では曇りだったが、意外と晴れたせいもあり、祭り目当ての観客で電車も結構な混み具合。
海峡メッセは駅前にあり、祭りの会場からは少し離れている。ただ、下関駅の改札がアホすぎて、九州と西日本の出口が分かれていたのだ。
道理で改札が混雑しているはずである。JRの会社ごとに改札が通れないとか、東京や九州ではありえない。こんなんだから下関駅は衰退するんだよ。
会場到着
すでに開場は終わっていたので、チケット見せて中に入る。2年ぶりの海峡メッセで、この場での女子プロレスは4年ぶり。
その上スターダムは初開催なんだが、なんとハーフスペースではなく、フル仕様。
ハーフスペースなら間違いなく超満員なんだが、見栄を張ったのか?新日がフルハウスだったから強気ででたのか?
それにしたって3月に山口市で大会やって、5月にまた来るってどう考えても来すぎだろう。
そうはいっても、太客が連なった南側&北側はきっちり埋まっているんだから、初進出でも強気でいられるのだろう。
でもブシロードルールで、第二試合までしか売店をあけないというのは正直どうかと思う。
そもそも一見さんは試合みてからグッズの購入を決めるパターン多い。これは40年会場に通って観戦しているとよくわかる。
だいたいブシロードが相手したいのは、ジャンルを潰すマニアではなく、一見さんだったんじゃないのか?
そこらへんに一貫性が感じられないのはなんともいえない思いになった。
まあ、新日も含めてブシロードとはそんなものなんだけど・・・
第一試合:15分1本勝負:3WAYバトル
○桜井まい(Donna del Mondo)vs ●さくらあや(新人)vs 琉悪夏(大江戸隊)
(5分11秒ダイビングエルボードロップ→片エビ固め)
スターダムが現在のような体制になってから、能動的に情報を入れていないせいで、琉悪夏以外は誰が誰だかわからない。
でもいかなる団体であろうと、そこにプロレスがある限り観に行くのがプロレス・モンスターなのである。
この中で一番安定していたのは、やはり琉悪夏。さくらは空手少女というわりに、蹴りに鋭さがないし、桜井もどちらかというとキャラクター先行にみえる。
新人に経験積ませるんなら、普通にシングルマッチとかの方がいいような気がするんだが、人数多い弊害なんだろうか。
結局、初めて開催する場所で、たいしたルール説明もなく、さらっと終わってしまった。
スターダムというか、ブシロードが相手にしたいのは、ジャンルを潰すマニアではなく、初心者のはずなんだが、大会通して見ていると、マニアの方しか向いていない選手が非常に多かった。
そりゃ、たくさんお金落としてくれる太客は大事だろう。だけど矛盾していないかな?
試合に勝った桜井は「貴婦人キャラ」全開のマイクで、下関をアジる。
「貴婦人はふぐ刺しを食べるので、庶民の皆さんは瓦そばでも食べているがいい」と言っていたが、実は瓦そばも店で食べると結構高い。
もはや庶民の食べ物ではないのである。
今度来る時は是非フグだけではなく、ぜひ瓦そばも食べて貴婦人の食べ物として紹介して欲しいものである。
第二試合:15分1本勝負:タッグマッチ
○AZM&天咲光由(Queen’s Quest)vs ジェシー(Club Venus)&●HANAKO(新人)(9分25秒 あずみ寿司)
いくら現在のスターダムを知らないとはいえ、AZMと天咲くらいは知っている。
いわゆる「推されている新人」としてメディアにも取り上げられてきた。
しかし、流れの早いスターダムにはもう天咲の下が試合をしている。もう彼女も新人ではいられないのだ。
HANAKOはジェシーとならんでも見劣りしない長身。レディCを抜いて日本最長身女子レスラーでもある。
入門時に話題になっていたが、もうデビューしていたのか・・・
さて その注目のHANAKOであるが、その巨体を生かしてのアルゼンチン・バックブリーカーや、串刺し式ビッグブーツなど、ダイナミックな攻撃が映える選手だった。
だが、キャリア不足はいかんともしがたく、アルゼンチンに関してはパワー不足を露呈し、ビッグブーツについても、まだ必殺技になれるほど磨きはかかっていない。
それでも持って生まれた体格は才能であり、武器である。
これをどう生かしていくかによって、今後のレスラー人生は大きく変わっていくと思う。
とかくビジュアルが先行しがちに見られるスターダムにおいて、強さは大きな武器になると思う。
引退したひめかが自分の大きさを武器にしたように、HANAKOもまた自分の体格を持て余さない試合運びができるようになれば、立派な メインイベンターになれるだろう。
その日が来ることを期待したい。
第三試合:15分1本勝負:タッグマッチ
羽南&●飯田沙耶(STARS)vs ○渡辺桃&スターライト・キッド(大江戸隊)
(8分29秒人でなしドライバー→エビ固め)
こちらは、純血のスターダム生え抜き四人のタッグマッチ。実力派の飯田が対角線にいれば、大江戸隊は好き放題できるはず。
家に帰ってから気がついたのだがカメラの SDカードが破損しており、この 第3試合と次の第4試合のほとんどが撮れていなかった。
せっかくいい写真が撮れたと思っていたのに、残念でならない。
第3試合が生え抜き同士ということもあり、内容的には一番良かったのだが、これが残っていないというのはもどかしい。
予想した通り頑丈な飯田がいる分、大江戸隊は好き勝手できるという試合展開になっていったのは収穫だった。
ただ飯田もそろそろ 縁の下の力持ちだけでなく、 第一線に出てくるくらいの欲を持ってほしい選手の一人である。
そういう意味で言うと相手を活かすだけでなく、自分を活かすこともこれからの課題になってくるのではないだろうか?
どんな技でも受け切ってみせるという意味で、飯田はスターダム随一の実力者であることは間違いないのだから、あとは本人の気持ち次第。
次に見たとき、飯田がどうなっているのか?楽しみにして待ちたいと思う。
第四試合:15分1本勝負:6人タッグマッチ
林下詩美&○上谷沙弥&レディ・C(Queen’s Quest)vs 鈴季すず&星来芽依(フリー)&●水森由菜(7Upp)(9分20秒フランケンシュタイナー)
前回の西鉄ホール大会では怪我で欠場していた林下詩美。今回ついに生観戦になる。
体格線上には多分前団体を退団しなければ下関で見られなかったであろう3人がいる。
スターダム一強は正直よく思ってはいないので複雑だが、これもご縁だと思って受け入れよう。
先発は星来が買って出て、その後をすずがつないでいく流れになっていく。
コーナーに控えている ゆなもんはなかなか出番が回ってこない。
無理矢理タッチして出てきたら、試合はほとんど終盤の方になっていた。
これだけのメンツが揃っていると、なかなか自己主張したくてもできないもどかしさはあるのではないかと思う。
それでも前の団体にいたらかなわない、地元凱旋興業ができるスターダムを選択したのは彼女自身である。
それを思うとゆなもんの決断を間違っているとは言いにくい。
体が大きい分、技の迫力も桁違いなのだが、どうしても相手の技を食らってしまうという点では、飯田と同じくゆなもんも縁の下の力持ち側に回ってしまうのは仕方ないのかもしれない。
もっとも外様でありながら、そこまで信頼されているという意味では、実力を買われていると言ってもいい。
ただ、 飯田同様上に上がりたいのであれば、もう少し何かアクションを起こさないと難しいような気がする。
それは星来やすずにも言えることで、生き馬の目を抜くスターダムの中で、どうやって上に上がっていくか?それが今後問われるのではないだろうか?
第五試合:15分1本勝負:タッグマッチ
中野たむ&○なつぽい(COSMIC ANGELS《meltear》)vs 刀羅ナツコ&●鹿島沙希(大江戸隊)(9分33秒フェアリアルギフト→片エビ固め)
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なつぽいになってからは初観戦になる。
チャンピオンとして団体の顔の一人になったたむとのチームmeltearは、今やスターダムの看板でもある。
まあ、そこにヒールの大江戸隊がぶつかるわかりやすい構図なんだが、地方らしいといえば地方らしいカードになる。
連携という点では 大江戸隊もmeltear メルティアも遜色ないチームである。
どうしてもアイドル的人気があり、たむ自身もシングルベルトを保持している現段階では、meltearの方に声援が集まりがちなのは仕方ないかな?
しかしこの試合のスパイスはやはり、大江戸隊だったと思う。ヒールとしての大江戸隊が機能していないと、meltearもまた輝くことができない。
そう考えていくと、この試合は地方でも分かりやすいベビーフェイスとヒールのプロレスになっていたと思う。
なつぽいは、博多以来になるが運動神経の良さは相変わらず。
それがタッグ ワークにも活かされており、なるほど人気があるのは頷けるところでもあった。
ただ鹿島の線がやや細いという点は気になった。
もう少し体に厚みが出ると、受ける側としても説得力があるんじゃないかなという風に思ってしまった。
セミファイナル:20分1本勝負:8人タッグマッチ
朱里&MIRAI&○壮麗亜美&小波(God’s Eye)vs 白川未奈&月山和香&マライア・メイ&●ジーナ(Club Venus)(13分25秒ブルーサンダー→エビ固め)
試合が行われた5月3日は、MIRAIのデビュー4周年記念日である。
かつて東日本大震災で被災したMIRAIは、巌流島で行われたレジェンドプロレスに招待され、そこで初代タイガーマスクの試合を見て感銘を受け、プロレスラーになることを決意したという。
そんな思い出の地にある意味凱旋してきたのが、今回の大会になる。
ところが、これだけ人数がいるとなかなかMIRAIだけが フィーチャーされるということはなく、流れ的に壮麗の出番が多くなってしまった。
せっかく、God’s Eyeはテーマ曲も、MIRAIのものを使って入場してきたのだから、もう少し華を持たせても良かったような気がする。
それでもレスリングどんたくというビッグマッチがありながら 、真裏に大会を強行した意味は確かにあったと思う。
MIRAIにとってもいい思い出になったのではないだろうか?そう願わずにはいられない。
メインイベント:30分1本勝負:6人タッグマッチ
○岩谷麻優&葉月&コグマ(STARS)vs ジュリア&舞華&●テクラ(Donna del Mondo)(18分3秒ムーンサルトプレス→片エビ固め)
3月に待望の山口凱旋を果たし、IWGP女子も戴冠してグランドスラマーになって勢いにのるスターダムのアイコン・岩谷が今年二度目の山口大会に登場。
対戦相手はおさわがせ女ことジュリア率いるDonna del Mondoだが、実はジュリアも前回観戦時はいなかったため、今回が初観戦になる。
さすがに東京じゃないんだから、山口県に2ヶ月に一度凱旋するというのは、ちょっと数的にも多すぎると思う。
ましてやハーフスペースならば満員になっていた海峡メッセを、フルスペースで使ったんだから、この結果は仕方ない。
だがそのフルスペースがまさかこういう形で生かされるとは夢にも思わなかった!
会場の中にバスを入れるというのは、なかなかありそうでない光景である。
海峡メッセが展示見本市場であるという特性を生かした形にはなるのだが、そのバスの上から岩谷自身がまさかのダイブ!
これは予想もしていなかった。かつて山口市体育館でリッキー・フジ選手が2階席からダイブしているのを見たことはあるのだが、バスの上から選手が飛ぶ場面は長いプロレス観戦人生の中でも、初めて見た。
これを見ることができただけでも、今回は当たりだったと思う。
結局のところ岩谷に始まって、岩谷に終わる、そんな大会になってしまったが、それはやはりスターダムのアイコンがアイコンたる所以なんだろうと思う。
エンディング
試合後のマイクで岩谷は「下関大会にお越しのみなさん、こんばんは! 先月の山口大会で、私はIWGP(女子)のベルトを取るって宣言しました。そして、いま、今日、有言実行したぞ!」とたからかに宣言。
「自分はこの山口県を誇りに思ってこれからも岩谷麻優、山口県出身レスラーとして、もっともっと羽ばたいていくんで、みなさんも山口にはすげえレスラーがいっぱいいるんだよって、とくに岩谷麻優すげえんだよって自慢してください。」と選挙演説みたいなコメントも。
「また来年も、いや今年中にまた来たいね。まだわからないけど、これから何回も何回も帰ってくるから待っててね。」とも言っていたけれど、岩谷の知名度がもっともっと上がって、このフルスペースの会場が満員になれば、不可能ではないと思う。
最後は岩谷と葉月、コグマで「いまを信じて明日に輝け、We are STARS!」で大会を締めた。
後記
新日本みたいに地上波があるわけではないから、最初は苦戦はするかもしれないけれど、継続してもらえれば形になると思う。
私の隣にはおそらく 一見さんと思われる小学生の男の子とお母さんが座っていた。楽しそうにプロレス観戦をしていたのを見てすごく微笑ましい気持ちになった。
本来スターダムはこうしたお子さんや保護者の方に向けて試合をするべきだと思う。
南側の太客にばかり向いていると現状は、正直なんだかな・・・という気持ちもしないではない。
だが確実に岩谷のダイブはこの親子には刺さっていたのではないかと思う。
また次の機会があればこの親子にもぜひ足を運んでもらいたいところではある。
ただ、観客数が何とも寂しいものになってしまったので、ひょっとしたら下関での次回はないかもしれない。
5月3日は下関からレスリングどんたくを見に行く人も結構多い。
それを考えたら同日開催というのはどうにかして避けて欲しいものである。
カード的には決して強いものがあったわけではないけれど、地方大会らしいいい大会だったと思う。
個人的には、また下関でスターダムを見てみたいと思っているが、果たしてどうなるだろうか?