GAMSHARA NEW YEAR DASH~前提万里~(順延イベント)(2021年4月18日(日)会場/門司赤煉瓦プレイス)
二月のイベントが延期になり、四月に開催。タイミングよく大会が開かれたのは、幸運というほかない。同月開催予定だった丹の国プロレスが、関西のコロナ禍で中止に追い込まれた事を考えると、関西並みに福岡で感染が広がっていたら、がむしゃらだって、中止になった可能性もあったのだ。
それにしても、昼前で気温14度というのは、がむしゃらプロレス春の大会では、ついぞ記憶にない。普段なら外の風も心地よいのだが、今日に限ってはめちゃくちゃ寒い。
天気自体は春の陽気っぽいのだが、この気温差にはほとほと困っている。
今回は試合開始前から色々盛りだくさん。イベント試合でこなしてきた因縁作りも、昨今のコロナ禍で、開催が叶わず、仕方なく動画などを使って、煽りを行っていたが、周知徹底するために、試合前の前振りに時間を割く形になった。
1番サプライズだったのは、首の怪我により突然の引退発表となった七海健大のセレモニーだった。私ががむしゃらプロレスを見始めたのが、2009年の小倉北体育館大会からで、そこでデビューしたのが、七海健大、野本一輝、林祥弘、二夜、レイ・タクマという5人がデビューした。
あれから12年。後にも先にも5人同日デビューというのは、記憶にない。そんな選手のデビューから、引退までをほぼ全試合見届けられたのは、非常に感慨深い。
そもそも引退式(引退試合)が組まれても、本人が来なかったケースがあるんだから、ちゃんと健大本人が、肉声でケジメをつけた意味は非常に大きい。寂しくなるけど、大事になる前に引く勇気も大切。心からおつかれさまでした、といいたい。
ほかにも、本日デビューの新人、HAGGARと、KENZOの挨拶、そしてGWAヘビーの調印式と、これだけで30分越えのボリューム。子どもの喧嘩みたいな調印式のあとは、なんと一試合も始まらないまま、休憩に入ってしまった!これも前代未聞である(笑)
▼BS軍団増殖 6人タッグマッチ(疲れん程度1本勝負)
①×ダイナマイト九州 & パンチくん & リキ・ライタ vs ○セクシーロージー & ブラック☆スティック & ブラック☆スティック・スカイ
(14分43秒)
久々になるセクシーロージーは、なぜか黒棒軍団を率いての登場。なぜか前回からやたら増殖してくるブラック☆スティックだが、今回はブラック☆スティック・スカイという謎感たっぷりのパートナー。
前回もそうだが、オリジナル黒棒は、基本ほぼ何もしないで、ひたすら増殖した方が動くのだが、今回はどうだろうか?
ロージーサイドは、ロージーが黒棒軍団を従えて登場。片や九州組は、謎の聖火リレーをしながら入場。なぜか黒棒軍団にまで、聖火がリレーされていく。
試合もロージー中心に回っていくので、時間が経つにつれて、聖火の事は綺麗に脳裏から吹き飛んでいた。
途中、リキ・ライタがとっつかまる場面がみえたが、九州のオリジナルムーブも出せず、結局ロージーのキャラクターに押し切られてしまった。
スカイは結局人数合わせでいただけだったような気もしたが、次に出番があるなら、ロージーのいない時にでてくれたらよかったかもしれない。
今回はとにかくロージーの元気の良さがらやたら目立った印象の第一試合だった。九州のローテーションもやろうとして、途中でぶち切られた事もあり、余計そう見えたのかもしれない。
▼新人デビュー戦 Part1 シングルマッチ(20分1本勝負)
②×HAGGAR vs ○尾原毅
(8分12秒)
期待の新人HAGGARがデビュー!新人デビューも久々なら、ヘビー級戦士が2人もデビューするのも異例。
対戦相手の尾原はかつて七海健大のデビュー戦にも関わっている。いわば新人にとっては厳しい洗礼を浴びせる係なわけで、それは12年経ってもあまり変わらない。
さて、HAGGARはこの難関を乗り越えられるだろうか?
見ていて気になったのは、HAGGARが声を出してないこと。マスクマンというのは表情がみえない分、肉体表現や声で感情をお客さんに伝えなければいけない。
セコンドの七海健大が盛んに「声出して!声!」と連呼していたが、新人のうちは、肉体表現までは無理なんで、声出す以外に、感情を表現する術がない。
HAGGARが、なぜ第二試合でデビューなのか、その理由がわかった気がした。
とはいえ、素材は一級品だし、真面目に練習もしているのは、尾原が見せたグラウンドに一通り対応できていたことからも明白。
あとは、それこそ肉体とパワーを生かした必殺技がほしい。たとえばベアハッグ(こちらのハグは、HUGになるけど)や、アルゼンチン&カナディアン・バックブリーカーあたりが決め技でもいいかもしれない。
特にベアハッグは、人間発電所ブルーノ・サンマルチノ以降、目立った使い手がいない「空き家」でもあるし、綴り違いだけど、狙ってみる価値はあるかもしれない。
尾原の鋭いローキックや、各種関節技は、そこまでしないと、HAGGARを倒せなかった証拠でもある。それは誇っていいだろう。
▼SMITH代表独断 副代表対決シングルマッチ(30分1本勝負)
③×鉄生 vs ○トゥルエノ・ゲレーロ
(12分32秒)
私の記憶違いでなければ、両者のシングル初対決は、5年前の周南まで遡る。ちなみに周南の対戦では、ゲレーロが鉄生を押さえ込み、ヘビー級キラーぶりを発揮した。
あれから年月も経て、取りこぼしが減った鉄生としては、副代表対決と銘打たれた以上、ゲレーロをジュニア扱いしてこないだろう。
ありそうで意外とないレアな対決だけに、見どころはたっぷりありそうで、期待しかない。
試合は、ジュニア対ヘビーとは思えぬ真っ向勝負でぶつかり合う好勝負。体重はジュニアながら、上背があるゲレーロにしかできない無差別の闘いである。
バチバチやりあう分には、鉄生も引き下がれない。次第に試合は熱を帯びていく。が、一つ気になるのが、鉄生の首から肩にかけてのコンディション。
もともと身体が硬く、丸め込みや関節技に弱いという弱点がある鉄生のフィニッシャーは、コーナー最上段からの、鋼鉄ロケットランチャー(ダイビング・ヘッドバット)である。
これは実に首から肩にかけての負担が大きい技である。プロでもハーリー・レイスや、ダイナマイト・キッドら著名な使い手の晩年が、全員車椅子になった(キッドの場合は、ステロイド禍もあるが)ことを考えると、体重のある鉄生にしたら、非常にリスキーな必殺技である(その分、威力は半端ないわけだが)。
ただ、今回もそうだが、コーナーにのぼったところを切り替えされる場面も見受けられるようにもなってきた。また運良く登り切っても、とんだ瞬間よけられることもあって、命中率が年々下がってきたのだ。
対ゲレーロ戦2連敗中の要因は、一重にこの首への負担が、負の要素になってしまったからで、早急にパワーを利して、クビに負担が少ないフィニッシャーの開発が待たれるところである。
残念ながら、パワーは年齢と共に衰えていくので、永久不滅のパワーファイターというものは存在しない。
ハルク・ホーガンが例外的に長寿なレスラーだったのは、早いうちにステロイドを手放した事と、アックスボンバーに代わるフィニッシャーとして、アメリカではギロチンドロップを使っていたからで、工夫次第では、パワーファイターのイメージを保ったまま、選手生命を伸ばす事は可能である。あとは、本人がなにをどう選ぶかだけである。
結果は周南の再現のように、またしても上半身から丸め込まれた鉄生が、黒星を喫して、なんと対ゲレーロ戦3連敗!
メイン終了後「丸め込みで勝ったと思うなよ!」と毒づいた鉄生だが、下の世代の突き上げが本格化する前に手を打たないと、下手したら陽樹の露払いで終わりかねない。それは本人的にも不本意だとは思うが。
▼新人デビュー戦 Part2 タッグマッチ(30分1本勝負)
④×KENZO & SMITH vs ○MIKIHISA & 久保希望
(14分32秒)
私ががむしゃらプロレスに通いだしてから12年。その間で新人がセミファイナルでデビューするという破格の扱いは今までになかった。
それを考えると、KENZOにかかる期待は大きいのがわかる。しかも相手には久保希望がいて、パートナーはがむしゃらプロレス新代表のSMITHだから、ここまでお膳立てされたら、何か結果を残さずにはいられまい。
登場した時にHAGGARとの大きな違いにまず気づいた。それは「声が出ていること」。マスクマンではないKENZOは、とにかく陽気なキャラクターだった。
タイプは違うが、同じくSMITHをパートナーにしたHIROYAに近い感じがする。KENZOは、あそこまで強心臓ではなかろうが、場の空気を明るい雰囲気で変えていけるのは、彼の強みである。
先発が久保希望だったのも、際だってよかったと思う。実力者・久保希望の前でも、KENZOは明るさを失わなかった。普通厳し目の攻めの前では、下を向きがちになるけれど、KENZOも HAGGARも前を向いていた。これは大いに評価したい。
そして、陽のキャラクターであるKENZOは、なんかやってくれそうな雰囲気がある。だからMIKIHISAも久保も手加減なしだったし、SMITHも必要以上の介入はしなかった。
いち選手の時代なら、自分だけ目立つはずのSMITHが、代表になってから、一歩引いて全体を見ている図も非常に新鮮だった。初観戦した12年前、SMITHはこれからのし上がろうという野望に満ち溢れていた。
あの頃のギラついたSMITHも良かったが、今の代表職を真っ当しようとするSMITHも魅力的だった。四者四様に見せ場があり、素晴らしい内容のセミファイナルだった。
▼GWAヘビー級選手権試合(60分1本勝負)
⑤【挑戦者】
【挑戦者】×HIROYA vs ○陽樹【第14代王者】
(28分21秒)(王者・二度目の防衛に成功)
コロナ禍やら、ドンタッカーの逝去などで、なかなか組まれなかったGWAヘビー級のタイトルマッチ。
チャンピオンに言わせれば「挑戦を名乗り出る相手がいない」という事になるが、そこにまったをかけたのが、GWAタッグチャンピオンのHIROYA。
最近成長著しいHIROYAが、次世代の旗手として台頭してくるのも、面白そうだが、陽樹もまだまだ下に抜かされたくはあるまい。
SMITHから散々苦労して手に入れたベルトだからこそ、次世代への橋渡しは、まだまだだと思っているだろうから。
調印式では生意気な若造対アラフォーという図式にされていたが、実はもう少し入り組んだ様相がこの試合にはある。
それは、苦労して時代を勝ち取った経験の差。鉄生にしろ、陽樹にしろ、上の世代(SMITH&マスクドPT)に散々煮湯を飲まされ続けた。特にSMITHのあの手この手の策略には、何度となく悔しい思いもしてきた。
それだけに、タイトルマッチ立会人として、SMITHの前に立つ陽樹は、どうしても負けられない理由があった。
もし、ここで簡単に次世代に王座を渡せば、Re:ZARDの存在価値すら問われかねない。その危機意識は序盤からHIROYAの膝殺しに出た事で証明された。
一点集中攻撃というのは、古典的だが、一番理にかなった戦い方である。陽樹が選択した膝攻撃は、HIROYAのフィニッシャーであるファルコンアロー封じにもつながっていた。
場外で椅子を使おうが、反則ギリギリの手を駆使してでも、陽樹は勝ちに行っていた。その覚悟はHIROYAの陽のキャラクターを完全に飲んでいた。
HIROYAのターンになった時に放ったファルコンアローはどれも決め手にならなかった。一発だけ旋回式になったようにみえたが、これも膝の踏ん張りがきかないため、陽樹に返されてしまう。
エンディング
最後は力尽きたHIROYAに陽樹がマイクで勝ち誇る。お前になくて俺にあるもの、それは悔しさであると。
試合終了後、ガッチリSMITHと握手した陽樹は、バトンを渡された責任をきっちり果たした安堵感で溢れていた。
たしかに陽樹が言う通り、挫折知らずで上り詰めたHIROYAにしたら、はじめて経験する躓きだったと思われる。タッグパートナーのゲレーロからも、張り手を見舞われ、孤立無援?になったHIROYAの物語は、ここから第二章が始まっていくのだろう。
終わってみれば、サプライズなしの、がむしゃら純メンバーによる本大会は、非常に中身の濃いものになっていた。内容的には、文句のつけようがない素晴らしい大会になっていた。
次の挑戦者は7月18日のGAM1 CLIMAX優勝者が陽樹の前に立つのだろう。久々の夏開催になるGAM1が、今年はどんなドラマを生み出してくれるだろうか?楽しみでならない。