全日本プロレスSUMMER IMPACT 2013~ The beginning of evolution ~下関大会観戦記(2013年8月21日(水) 於:海峡メッセ下関)
イントロダクション
実は下関には武藤を応援する地盤があって、下関はその恩恵を受け、武藤全日になってからずっと毎年大会が開催されてきた。
だから小倉に来なくても下関には来るということは結構ざらにあったりする。
このツアー自体はおそらく分裂前に決まっていたんだろう。
大きな後ろ盾がない新生全日でははたしてどうするつもりなんだろう?と思っていた。
なんせ会場の海峡メッセにポスターが貼られたのが約一週間前。街中ではもちろんポスターなんかみることもなかった。だいたい住んでる自分がこの大会の情報知ったのもがむしゃらでだし、正直行こうかどうしようか?迷っていたのも事実。
後押しされた理由はやっぱAAAコンビの実力が見たいからかな?日本人勢には全く期待がもてなかった。
ましてや分裂のもとになった騒動もあまり気持ちいいものとはいえなかったし、そもそも前年の下関大会は過去の全日の興業でもワーストに入る部類のひどさだったから二の足を踏んだのも当然といえば当然だった。
で、この日は小倉で直前まで授業を受けて電車で下関に戻っていつもなら8階の教室にあがるところをまっすぐ一階の展示見本市市場に足をむけた。
オープニング
はいってみてびっくり!
これ観客50人いる?って感じ。招待席もあったんで実質有料入場者数はどれくらいいたんだろう?
当日券売り場にもほとんど人らしき影もなかったし。結局休憩明け前には150人程度(招待いれたら200超くらいかな?)は入っていたけど、正直去年まで椅子4列しか並べてなかった所に、いきなり6列配置はいくらなんでも強気に出すぎだろう!
おかげで、なんかスカスカな感じになっていた。もう少し列減らしてもよかったのになあ。
おまけに定刻開催が常だった全日がまるで一昔のインディーみたいに開始時刻の19時過ぎてもはじまらない。まあこの時点で100切ってる入りではもう少し粘って待ってみよう・・・と思ったのかもしれないけど・・・
第一試合:30分一本勝負
●渕 正信 対 ○SUSHI(16分16秒:TEKKAMAKI)
第一試合がこのカードなんで明るく楽しいの部分はここが担うのかな?と思っていた。しかし試合は意外にもまじめモードというか、渕の独壇場になっていた。なんせ出した技はバリエーション違いのサーフボードストレッチ、バックドロップ、ボディスラムの3つだけ!いや、この3つで試合ができるんだっていうのも驚きだったけど、一個一個の技に説得力があって、なるほどとうならせるものを持ってるのはさすがレジェンドクラスの選手ならではだ。
しかし、渕の狙いはおそらく技をかけて相手のスタミナはロスさせて自分のスタミナロスは最小限にするところにあったはずなんだけど、結構相手が予想外に粘るもんで根負けしてバックドロップでけりつけようとしたら、この一発もSUSHIに返されてしまった。ならばと現在の渕にしては大技の部類に入るボディスラムで畳み掛けるが、かえって腰に負担をかける結果になりこれがあだになってSUSHIの反撃を許してしまった。でも説得力ある攻撃と、SUSHIの粘りが時に明るさと楽しさを織り交ぜた熱戦になったのは幸いというか、気が付いたら15分たっていたというのがすごいなあというか、そんな試合だった。しいて言うなら百田光男が6時半の男とよばれていた時代の全日の第一試合の系譜に入るかもしれない。渕も一時期そういう若手の壁をやっていたことがあったけど、本当はもうすこし楽な試合がしたいのかもしれないなあ^^でもこの試合のおかげで少ない会場もぐっとあったまった!これは予想外だったけど、いいほうに予想がはずれてくれたんでうれしかった!
第2試合 タッグマッチ30分1本勝負:アジアタッグ選手権前哨戦
青木 篤志&●井上 雅央 対 ドラゴ&○アルへニス (12分12秒:変型メキシカン羽根折り固め)
しかし全日からノアへ移籍して、そのノアから放り出されてまた全日に戻るって雅央も流浪のプロレス人生送ってるよなあ^^しばらく見ないうちにファミリー軍団時代のラッシャー木村さんみたいな動き方していた。
さてこの試合のミソはそんな雅央ではなくて、AAAから来た期待の刺客、ドラゴとアルへニスである。この時代に未知の強豪!それも層の厚いAAAからやってくるとあっては期待値も高まるではないか!そもそも全日の夏といえばマスカラスである!まあ今の70こえた年齢のマスカラスを呼んでもさすがに「あれ」なんだけど・・・・でも夏の全日のシリーズが下関来るのって相当久しぶりだし、そこへやっぱルチャドールが参加してるというのは長年全日みてた人間としてはうれしい限り。ましてや初物とくればどんなもんか見たいと思うのはファンとしては至極当たり前のこと。
結論から言うと2人は大当たりだった。いわゆるルチャの動き以外にも順応性があって青木のスピードにも雅央の笑いにも対応していた。そして飛び技ももちろんだが、極めつけはフィニッシュになった、羽根折り固め系のジャベ!入り方が全く分からないくらいスピーディーさで気が付いたらあっという間に決まっていた。完璧にラマヒ系の丸め込みを想像してたので、かなり意表をつかれたし、雅央もなんだかわかんないうちにギブアップ。これすげえわ!ルチャの奥深さをまざまざと見せられた衝撃の一戦だった。長いキャリアを誇り、ギブアップした当人である雅央が唖然としていたのが印象的だった。これはとんでもない拾い物したなあ^^いや~全日に来るルチャドールははずれがないね。お見事でした!
第3試合 シングルマッチ30分1本勝負
ジョー・ドーリング 対 宮本 和志(8分43秒:レボリューションボム→エビ固め)
身長2メーター級の選手は基本リング中央にたって、対戦相手がぶつかってさえくればそれなりに試合の形になるもの。相手が基本「俺様プロレス」の宮本であっても、さすがにそのくらいの初歩はわかってるみたいだし、そもそも相手に花もたす気がないんだから、まあ真っ向からぶつかっていけば形にはなる。
でもそこらへんのでくの坊と違うのはドーリングがでかくて動けてクレバーなところ。
宮本の引き出しを散々開けさせておいて十分ためを作ることもできるし、グラウンドにもっていかれても全然余裕で対峙できる。かといって攻められてもスピード・パワーは落ちないし、こうなってくると時間がすぎればすぎるほど宮本は不利になっていく。
最後は満を持してのレボリューションボム一閃!
受けるだけ受けていたドーリングの余裕を宮本は最後まで消し去ることはできなかった。
まあでも宮本は俺様プロレスもさることながら、普段の素行もどうにかしないとね・・・っていまさらいってもどうしようもないけど^^まあ馬場さんの最後の弟子というフレーズは最低限封印してほしい。
休憩
AAAコンビがサイン会に登場したのでサインもらおうと思ったけど、ポートレートが一枚1000円は高いだろう!全日は基本今までパンフにサインはしなかったんで買わないでおこうと思ったら、なんとほかのお客がパンフにサインもらっていたので急いで一冊買ってサインもらってきた!いや、近くでみても恰好よかったなあ^^しかしあれだけ頑なにパンフにはサインいれなかった全日も貧すればなんとやらか?融通がきくようになったもんだ。これもうれしい変化ではあったけど^^
第4試合 タッグマッチ30分1本勝負
○大森 隆男&KENSO 対 秋山 準&●鈴木 鼓太郎(16分36秒:アックスボンバー→体固め)
この組み合わせだとやっぱ大森対秋山に目がいきやすい。デビュー当時から紆余曲折を経てまたこうして闘ってるこの2人、本当に腐れ縁で結びついているとしか思えない。
だがこの間に割って入ったのがKENSOだった。なぜか地方ではやたらイキイキするKENSOはこの日も秋山・大森を一人で食う活躍ぶり。得意の張り手をアクセントにして鼓太郎、秋山をかく乱。中でも強烈な一発で控えの秋山が崩れ落ちた場面では会場にどよめきが走ったほど。
意外となんでもできるKENSOは中盤からほとんどワンマンショー状態。秋山がある意味馬鹿負けするほど、この日のKENSOはノリノリだった。一方鼓太郎が決してやられ放題だったわけではなく、大型のKENSOや大森を大いに苦しめたのはさすがとしかいいようがない。この試合も気が付けば15分越えの白熱した攻防になった。やはり大型選手同士のぶつかり合いは全日の大きな魅力の一つではあるし、その中で小さいなりに力を発揮する鼓太郎のような選手もいるのがまたいいところでもある。正直ノアに残っていたらこんな存在感は出し切れなかったかもしれない。鼓太郎にとってはいい形での移籍になった感じがする。
しかし試合は秋山がKENSOに夢中になっている間に大森がアックスボンバーで粘る鼓太郎を振り切った。チームとしての総合力はバーニングのほうが上だったけど、やっぱリズムの読めないKENSO相手だとそれも通用しなかったか?だが大森と秋山の対立構図だけでは正直新生全日の看板としてはいまいちだろうし、ここでKENSOの存在が試合を大きく左右していたのは注目すべきところだろう。
第5試合 タッグマッチ 60分1本勝負 三冠ヘビー級選手権・世界ジュニア選手権前哨戦
諏訪魔&●佐藤 光留 対 ○潮﨑 豪&金丸 義信(28分41秒:ゴーフラッシャー→片エビ固め)
この試合のみどころはたぶん下関初登場(少なくとも全日マットでは)のひかるんと、今シリーズを最後に返還が決まっている三冠ベルトの見納め。やっぱあの骨董品ベルトがみられなくなるのはさびしいというか、名残り惜しいというか・・・
しかし旧ベルトラストの三冠王者が諏訪魔というのには若干ひっかかるものを感じた。というのも正直看板をはれる器だと万人が認めている選手だったら、武藤派の大量離脱に際しても「諏訪魔が残留してくれたから大丈夫」となるだろう。でも現実はそうではない。相変わらずキレなくていいところでキレてみたり、チャンピオン自らが椅子攻撃(それもそういう計算ではなくて、どう考えてもマイク投げた事件と同様、我を忘れて暴走してるようにしかみえない)したり、場外で散々潮崎をおいかけまわしたり・・・これは潮崎が現王者の諏訪魔をターゲットにして、しかけたのならいいんだけど、現王者が次期挑戦者にこれやると「そんなに次回防衛に自信がないの?」ともとれかねない内容だっただけに諏訪魔については正直苦言しかでてこない。
しかしこの試合は9割ひかるんが作っていった。だから諏訪魔の暴走があっても決して試合の体が崩れることがなく、しかも白熱した攻防が展開される好試合になったのだ。
正直、佐藤光留がいたからこそこの試合は「前哨戦」として成り立ったと思う。金丸だけでなく体格差も大きい潮崎ともバチバチやりあうひかるんは、さすがハードヒッター。そして受ける時も豪快に受ける。ある意味全日イズムにあふれた闘志ある闘いっぷりに会場は大盛り上がり!
関節と打撃に対して順プロレス技で真っ向から勝負を挑む金丸と潮崎もひかるんを相手にすると本当に絵になったし、バリエーション豊富な関節技でジュニアとはいえ、潮崎をおおいに苦しめたのは評価されていいと思う。ジュニアの技は軽くてヘビーには通用しないという概念をもひかるんは軽く打ち破っていく。その攻めの姿勢は見ていて本当に気持ちがいい。変態だけど^^
中盤諏訪魔が暴走してひかるんを孤立させなかったら正直どっちが勝ってもおかしくはなかっただろう。選手として進化はしてるんだけど、やっぱ三冠の器としてはあのぷっつん癖はどうにかしてほしい。でないと団体の顔としてはやはり推せないのだ。
しかしあれだけ重い打撃くらってから、一度目のゴーフラッシャーでフィニッシュかと思いきや、潮崎の胴に足で組み付いてのフロントネックロックであわやのシーンを作り出したひかるん、まさにパンクラシストの本領発揮といった場面だった。何度も言うけどあれで中盤のロストがなかったら佐藤光留の大金星になっていたかもしれない。そのくらいきわどい攻めだった。
まあ結局は二度目のゴーフラッシャーで轟沈するんだけど、一地方のメインで、28分もの熱戦をみせてもらえるとは思わなかった。いろいろ課題はあったけどひかるんの健闘に免じて結果オーライにしておいてもいいかな?
後記
とはいうものの全5試合中4試合が15分越え、メインが28分と武藤時代とはまるで違う様相を呈していたのには驚いた。確かに分裂騒動もあり、新社長の失言ありので大分評価をさげた新生全日だけど、すくなくとも現場の雰囲気は明るくなっていたように思えた。レスラーは結局万言ならべたところで、いい試合を提供してお客との信頼関係を再び築いていくことしかすべはない。そういう意味では現場の選手たちの覚悟はつたわったと思う。招待いれれば200ちょいの観客が次も足を運んでくれるかどうかは今後の精進しだいだと思う。でも今回の大会をみて私はまた全日をみたいと思った。これは事実。はっきりいって今年みた興業ではベスト10に入れていい内容だったし、全く期待してなかっただけにうれしい誤算でもあった。こういうことがあるからやっぱプロレスはやめられない!