[プロレス観戦記] 全日本プロレス 2018 チャンピオン・カーニバル(2018.4.15 日 福岡・博多スターレーン )

四月初のプロレス観戦は全日本プロレスを選択した。まあ、昨年と違い、最終戦ではなかったけれど、2月にカードが発表になってからずっとたのしみにしていたし、いざいけるとなると、ワクワクが止まらない。

前日までの春の嵐が嘘のような天気になり、午前中に晩飯の仕込みと洗濯と仕事を済ませて、仮眠とって出発。実家暮らし時代には考えられなかった「時間的ゆとり」が今はある。本当にありがたい。

さて、今回カードを見ると、ほぼ純正の全日本に近いメンツが揃っている。ゲストもヘビー級中心になっており、2月のジュニアリーグ戦とは明確に見せたいものが違う、ということだろう。これは非常に興味深い。スターレーンでも満員が続いている以上、同じ顔触れで同じ激闘を提供することもできたはずだが、それはすでに馬場全日本の四天王時代にやってきたこと。秋山全日本はこれからの団体である以上、満員に奢らず攻めの姿勢は貫いてほしい。

九州各地はこの時期プロレスの大会が開催されることが多い。今日もいろんなところでやっているみたいだが、タイミングと内容を考えて全日本にしたのだ。果たしてこの選択は吉とでるか、否か?

第一試合:

○中島洋平 対 ×岡田佑介
(6分13秒 逆エビ固め)

カード変更に伴い岡田が第1試合に。以前と違うのは、テーマ曲がついて、エボリューション入りした結果、タイツの色が青になったこと。基本的に岡田はまだまだ失敗を恐れずにガツンガツン先輩にむかっていく立場には違いない。そういう意味では攻めの姿勢も失われていないし、中島に臆しないところは好感が持てるが、いかんせん技の精度がなかなか上がらない。

そろそろ成功率をあげていかないと、なかなか勝ち星には繋がらない気がする。せっかく自分から名乗り出て掴んだチャンスなんだから、試合の組み立て含めて、もう少し勝てる要素を増やしてほしい。正直、今の岡田だと新人という域からはまだ出ていないので、エボリューションの戦力としても、個人的には求めがたい。とはいえ、天龍同盟に加入したての小川良成(現・NOAH)も、最初のうちはそんな感じだった。

岡田も精進を怠らなければ、可能性は十分にある。試合後に悔しがることができるんなら、次は勝って実績を積み上げてほしい。勝ち負けはプロレスに関係ないというけれど、悔しいという気持ちをなくしたらリングに上がる資格もなくなってしまう。

それは中島だって同じことなんじゃないだろうか?

第二試合:

大森隆男&○吉江豊 対 青木篤志&×佐藤光留
(11分03秒ダイビングボディプレス→片エビ固め)

これもカード変更に伴い、スーパーヘビー級対ジュニアという図式に変化。しかし、エボリューションの中で変態自衛隊の2人は、頭が回ることでは定評のあるチーム。加えて何をするかわからない不気味さもある。パワー対決では勝ち目がないが、寝かせて関節技にいけば、まだわからないからだ。

だが、試合はきわめて淡白な感じで終わってしまった。吉江はまだしも大森のコンディションが万全ではないのか?いずれにせよ、どちらのチームもあまり長期戦を想定しない闘い方をしていた。

悪い意味での前座試合というか、本編がチャンカンだからか?極めて控えめな自己主張に終始した試合は、吉江の説得力抜群なダイビングボディプレスでひかるんを轟沈!

第三試合:8人タッグマッチ

ゼウス&ボディガー&KAI&×丸山敦 VS 野村直矢&ヨシタツ&〇ディラン・ジェイムス&岩本煌史(12分15秒チョークスラム→片エビ固め)

この試合ではやはり大型外国人のディランに注目したいが、個人的には岩本がいかにして同じチームの3人をいかにして慌てさせるか?

ヨシタツはいわゆるチームリーダーみたいな役割は不向きだし、ディランは未知数。たるんだ体形から覚醒する必要がある野村らに火をつけて回るには、岩本が適任…というか岩本しかいない。

寄せ集めチックながら、大阪繋がりのビッグガンズと丸山にインディ大好きなKAIが加わった対戦相手は言うまでもなく難敵である。分が悪いからこそ、どう立ち回るのか?わたしはそこがみてみたい。

だが、この試合もあっさり決着。確かにビッグガンズと丸山、KAIのコンビネーションは良かったのだが、ディランの規格外なパワーに丸山がつかまって、高角度のチョークスラム一発で決着。

三試合あわせて30分ちょいで休憩へ。正直物足りないなんてもんじゃないが、まあ、本編さえよければいいか、と気分転換した。

2018 チャンピオン・カーニバル 公式戦 Aブロック 30分1本勝負

〇ジョー・ドーリングVS×崔領二(5分53秒レボリューションボム→エビ固め)

初期のゼロワンからいざ知らず、崔が上で試合するようになってからは、大型外国人選手と真っ向から激突する機会はそうなかったはず。ランズエンドにそういうタイプの選手を招聘しているという話は聞かないし、そうなると、崔には、対大型外国人選手に対する経験値が乏しい。ここをどうクリアしていくか?相手はただ、デカイだけではない。元・三冠ヘビー級王者のジョー・ドーリングなのだから。

試合はドーリングがパワーで圧倒。崔は序盤から経験不足を露呈。皮肉なもので、選手の小型化が進んで、近年の大型選手には、対大型選手用のスキルが足らないのだが、ひととおり技をうけきったドーリングは、崔を高々と持ち上げてた叩き落して、カウント3!

ここまで短時間で試合が決まるとは思わなかったので、やや拍子抜けした。崔が三冠にたどり着くまでにはクリアすべき課題がたくさんありそうだ。

2018 チャンピオン・カーニバル 公式戦 Aブロック 30分1本勝負

×鷹木信悟VS〇火野裕士(16分25秒 Fucking Bomb→体固め)

2月のスターレーンで対戦カードの発表があってから一番見たかった試合。本当は火野対全日本、鷹木対全日本の方が新鮮といえば新鮮な顔合わせなんだが、この組み合わせが博多で見られる機会なんてそうそうないことである。おまけにありそうでないカードの筆頭といってもいい。

インディ界では傑出した才能をもつ二人の試合ならば、全日本同士の試合をも食う可能性だってある。いくらのぼり調子の秋山全日本とはいえ、このカードが刺激にならないわけじゃないだろう。

当初の予想では火野のパワーに鷹木がドラゲーでつちかったスピードやテクニックで挑むかと私は思っていたが、序盤から鷹木は火野の土俵で勝負を挑んだ。

鷹木こそ、自団体には自分と渡り合えるパワーファイターがいないため、火野とのパワー対決は未知数のはず。実際、場外戦でも火野のチョップ一発で、鷹木がフェンスの外に吹き飛ばされる場面もあり、完全に火野ペースの試合に!

しかし、それでもなお鷹木は火野との真っ向勝負を諦めない。ドラゲーという日常では味わえない痛みや快感を少しでも長く味わいたい。そんな鷹木の思いが聴こえてきそうな頑張りに、会場からは自然発生的に大・鷹木コールがおきる。

普通序盤でロスするとなかなか中盤からの立て直しは難しいものだが、鷹木は真っ向勝負で火野を押し返して五分まで戻してきた。鷹木なりのプライドと意地がみえた瞬間だった。こんな鷹木のすがたはドラゲーではまずお目にはかかれない。

だが、しかし押されてなお、火野にはまだ余裕があった。K-DOJO出身ながら積極的に他団体で経験を積んできた火野は熱くなりながらも終始冷静。だから序盤で鷹木に攻められた右腕も結果的にはハンディには至らなかった。もし、鷹木にウィークポイントを執拗に狙いうちする気があれば、試合はどうなったかわからない。

そして、仮に他団体で同一カードが組まれたとしても、今回の試合と同じにはならないと私は思っている。なぜなら、他団体の人間だからこそ、今回の舞台が全日本プロレスのチャンピオンカーニバルであることを、否が応でも意識せざるを得なかっただろう。

だからこそ、普段着の彼ら以上に限界までぶつかり合うことに固執したのかもしれない。皮肉な話だが、この日組まれたどの公式戦よりも全日本らしくて、どの試合よりチャンピオンカーニバルに相応しい内容がこの試合に詰まっていたことには、見ている私としては感慨深いものがあった。それだけ鷹木と火野が全日本というものを意識して試合に臨んでいた覚悟みたいなものも感じられて、たまらなくうれしくなった。

結果的には真っ向勝負に固執した鷹木が負けるべくして負けた。内容をなぞればそれだけである。でも実際に試合をみた人間なら、この試合からほとばしる熱いエネルギーを肌で感じたことだろう。期待以上の名勝負をみせてくれた2人には感謝するほかない。お見事だった!当然、この日のベストバウトは満場一致でなくてもこの試合で決定!

2018 チャンピオン・カーニバル 公式戦 Bブロック 30分1本勝負

×秋山準VS〇諏訪魔(13分03秒 レフェリーストップ[万力スリーパー])

こちらは、馬場全日本を知る秋山と、馬場以降の全日本の申し子と期待されながら、なかなか伸びきれない諏訪魔との対決。全日本同士とはいえ、正統派の大型選手対決でもある。鷹木対火野に内容で劣るようでは、ある意味全日本の名折れである。

諏訪魔にしてみれば、第一線から撤退しつつある秋山に遅れをとるようでは、話にならない。再び三冠戦線に躍り出たいなら落とせない試合である。

試合は序盤こそ静かな立ち上がりながら、なかなか火がつかない?諏訪魔に秋山が挑発を開始。パンフのインタビューで秋山自身が語っていた通り、キレる諏訪魔で来てほしいという願いがあってのことで、ここまでは作戦通り。

ところが、これに火がつきすぎてしまうのが諏訪魔の悪いくせ。たとえば往年のジャンボ鶴田みたいにリミッターが外れた強さを発揮する分には申し分ないのだが、諏訪魔の場合、場外戦で倍返しを狙って暴走・・・するところまではいいのだが、あげく鉄柵を秋山めがけてぶん投げたり、椅子をリングに投げ入れたりと、ベクトルの違うキレ方をはじめてしまった。

まあ、昨年は観客が椅子投げてたけど、今年は諏訪魔って…つくづく博多のチャンカンは椅子が飛ぶなあという感じがする。それはともかく諏訪魔のキレ方は、本気を出すという形とは、あまりに方向性が違いすぎるので、見ている側からすると「またかよ」という感じにしかならない。

最後も反則気味に秋山を絞め落としてしまったし、せっかく火野と鷹木があげた熱量に水を差しかねない内容だった。

救いは秋山が諏訪魔の土俵の上でも比較的冷静に試合を組み立てていたことと、諏訪魔の性格を熟知している和田京平レフェリーが、レフェリー権限で試合をストップしたことかな?

並の選手とレフェリーでは試合自体が崩壊していたかもしれない。そういう意味では諏訪魔は頭冷やして社長と京平さんに感謝しないといけないだろう。もうベテランなんだから、いい加減キレるにしても、方向性があさってのベクトルになったままでは、プロレスとして試合が成立しない。

この辺が諏訪魔にメインを任せられない大きな理由の一つなんだろうなあ。

2018 チャンピオン・カーニバル 公式戦 Aブロック 30分1本勝負

〇宮原健斗VS×石川修司(16分57秒
シャットダウン・スープレックス・ホールド)

これは確か昨年武道館のメインだったカード。チャンカンの公式戦で石川は2年連続でスターレーンのメインを飾る。この状況を、現・三冠ヘビー級王者、宮原が「面白くない」と思わなければウソである。

実際、このカードが近い将来、三冠ヘビー級王座戦として組まれる可能性もなきにしもあらず。というか可能性はかなり高い。宮原がいつもどおり、受けて耐えてからの逆転勝ちというのを、石川はおそらく許さないだろう。

もちろんチャンカンなんだから、三冠の前哨戦などではない。それは宮原も石川も承知の上だろう。故郷に錦も飾りたい宮原と、それを阻止して再び三冠王者に返り咲く野心を抱く石川。果たして最後に笑うのはどちらだろうか?

試合を見ていて気になったのは石川の「やさしさ」だった。石川もまた飛びぬけて高身長の選手であり、もともと所属していたユニオンなどでも自分より大きな選手、あるいは自分の破壊力を受けきる選手との対戦経験がそれほどない。しいて言えば大日本での参戦経験がスキルにはなっているが、全日本ほど「すべてを受け切る」スタイルではない。

となると、毎日のように耐えて、受けて、でも勝つということを続けている宮原の方に実は分がある。おまけに団体の顔としての責任感ももっている。まあ、「最高」というフレーズが多少鼻につく以外はこれといって責める材料もないのが現実。エボリューションの一員でもあり、レギュラーメンバーとはいえ、石川はフリーランス。その差がでた試合だったのかもしれない。

それでも石川は攻めていた。場外で放ったファイヤーサンダーは強烈の一言だったし、何度も得意の膝で宮原を追い詰めた。投げっぱなしドラゴンからのカミゴエまで出した。ただ、一年前はフリーランスとはいえここでのし上がろうという気構えがあった。しかしすでにのし上がってしまった今年は、その上積みも無い。

心優しき大巨人はそのあたりも正直に試合に出してしまう。だからといって入団しろとはいわない。それを決めるのは石川自身だからだ。しかし、フリーランスとしての立場が結局DDT両国での対竹下戦とか、今回の宮原戦とかのように、攻め手を中途半端にしているとしたら、石川はここを乗り越えないと結果が出てこないのではないだろうか?そんなことを私は思ってみていた。

結局、シャットダウンスープレックス二発の前に石川は沈んだ。満身創痍でよれよれだけど、マイクはしっかりしている宮原にはまだ若さもある。可能性という点では10年選手ながら、伸びしろもある。秋山全日本を代表する選手になっていくのは「間違いないだろう。まさに立ち場が人を作るというやつである。

前半戦がさくさくと進んだため、18時半に会場外に出られた。今までだと下関に帰り着く時間まで計算しないといけなかったのだが、それをしないで済むというのは大変ありがたい。疲れ方も違うし、余裕も生まれる。

後記

今回序盤の客足は鈍かったものの、終わってみたら満員になっていた。実数で600超えというのは立派な数字。しかし昨年は800人超えていたわけだし、秋山が言うようにまだ途上の団体であるので、ここはやはり1000人超えを目指してまだまだ精進してほしい。

正直今まであったPV用のスクリーンを撤去していたり、経費節減のあとが若干見えていただけに、この勢いも本物かどうかというとやや疑わしい。試合も結局一番印象に残ったのは火野対鷹木だったし、ソフト・ハード両面で見直す箇所はたくさんある。だからこそ、秋山全日本には大いに期待もしたいのだ。次回は7月。果たしてこれを受けた全日本がどう進化して帰ってくるか?楽しみにしておこう。

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