[プロレス観戦記] 全日本プロレス「第2回王道トーナメント ~2014オープン選手権~」

全日本プロレス「第2回王道トーナメント ~2014オープン選手権~」

(2014年9月21日 山口・海峡メッセ下関)

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イントロダクション

この日はカウンセリングの自主練があって、結局3時間ほど小倉で練習してから下関へ戻った。しかし自由席が北一列しかないとの報を受けて正直焦ったが、なんとか会場入りできた。駐車場が満車に近い状態だったんで心配してたんだが、入ってみるとたくさん席を作り過ぎていたせいか、意外とすかすか。もう少し椅子を減らしたら結構満員感もでたと思うのだが、もったいないことをしていたなあ、という気がした。北側にあんな数の席いらないと思う。とはいえ、いち地方大会が日曜開催なんてめったにないことだし、王道トーナメントを下関にもってきてくれた英断は大いに買いたいと思った。ただ日曜はメッセも他のイベントがあったりして、駐車場にとめられないこともあるんで、痛しかゆしというところかな。

第一試合:30分1本勝負

●アステカ(7分44秒・体固め)○金丸 義信

アステカは、アジアンプロレスの北海道ツアーから数えて全日本二連戦を含む11連戦のとり。あとで聞いたらコンディション的にはよくはなかったそうだが、そんな様子はおくびにも見せなかった。やはりメジャーどころのシングルマッチというのは気合が入っていたんだろう。ましてや相手はもとGHCジュニアや世界ジュニアを巻いた金丸である。キャリアは下でも王道経験者と闘うことは、やはり期するものがあったと思う。

試合は金丸の卓越したインサイドワークと、アステカのストロングルチャがかみ合った好勝負になった。派手目な技は少なくても要所要所でお客の目をくぎ付けにするのはやはりこの2人ならでは。と同時にシングル初対決ながら意外とかみ合っていたなという印象を受けた。ただ、第一試合ということで、ここからエンジン全開になりそうなところで終わってしまったが、不思議と満足度は高かった。

アステカの負傷箇所を一切攻めないで、フライングボディアタックを切り替えしで丸め込んだ金丸の卓越した技術と、2人がメイン級の闘いをしたらどうなるだろうという期待感を抱かせたことで「次につながった」試合になった気がした。アステカが負けると不思議と名勝負が生まれるんだが、今年はそういう意味でもいい試合が多い。今回の結果を受けてぜひ第二ラウンドをみてみたいと思った。

第二試合:30分1本勝負

○KENSO(11分57秒・体固め)●佐藤 光留

このカードは期待値も高かったんだが、入場からなんとなくいつもと違ってKENSOがイラつき気味だったのが、 ちょっと気になった。対するひかるんも入場曲(UWFメインテーマ)が鳴り終わらないうちにKENSOを奇襲。これももったいなかった。2人とも入場でも魅せられる選手なんでとっかかりがそれだと、見てる側としては試合に入りにくかった。そして試合が進むにつれてどうも2人のリズムがかみ合わない。

ひかるんも場外トぺをやったり、KENSОもラフプレーが目立ったり、本来の持ち味よりそっちの方が目立ってしまっていた。KENSO自体ラフプレーは普通にするんだけど、それは技を使う時のアクセントで使うことが多く、またひかるんもパンクラシストの顔をうまく使えてない感じがした。唯一「お!」と思ったのは四の字の攻防でこれが軸になって試合が盛り上がったらよかったのに・・・と思ったら終わってしまった。ちょっと残念だったかな。この2人ならもっとハイレベルな試合ができたはずなんで。

第三試合:30分1本勝負

●SUSHI&吉江 豊(12分33秒・片エビ固め)青木 篤志&○ジョー・ドーリング

スーパーヘビー級とジュニアのタッグというのは昔の地方大会ではよく組まれていたものだが、やはり見どころはかなわないにしてもスーパーヘビー級をどれだけきりきり舞いさせられるかというところにある。でかい外国人要員から三冠王者に昇格したドーリングも、そこはわきまえてないと、一方的につぶす試合だけでは王者としての懐が浅くみえてしまう。

そう考えるとやっぱ青木はその辺をよくわかっていてSUSHIはその辺をまだ勉強中ということになるんだろう。生え抜きなんで頑張ってもらいたいんだけど、やっぱ差がみえたかなという感じがした。もっとドーリングを焦らせないといけなかったかな。一方、吉江とドーリングの絡みはもう典型的なスーパーヘビー級の肉弾戦の様相でこれはかなり見応えがあった。もともと全日自体が巨漢選手の多い団体だったからこういうカードは必要なんだけど、今の時点では特に意味合いを見いだせなかったカードだった。

第四試合:45分1本勝負

●中島 洋平&宮原 健斗&潮崎 豪(16分43秒・片エビ固め)○ウルティモ・ドラゴン&ゼウス&秋山 準

ここもキーマンはめんそーれ親父から素顔の中島になった洋平の活躍だった。このメンツだとそうそうはずれはないわけで、他の5人にどれだけ食い下がれるかが決め手になったと思う。今は気持ちだけで立ち向かっていってるけど、かつて金丸が馬場さんに「体の小さいきみにしかでみないプロレスを考えなさい」といわれたように、やっぱ洋平にもそうなっていってほしい。それはたぶん試合中に何度もあしらうかのように洋平をもてあそんでいた秋山も同じ思いだったと思う。で、手本はやっぱり対角線上にいるウルティモドラゴンということになる。もう往年のようなアサイムーンサルトなどの空中戦は出せないまでも、華麗なるルチャの引き出しを数多く持ち、複雑なジャベで観客を魅了するのはさすがとしかいいようがない。

ゼウスもまだ勉強中ということもあって、小技とか駆け引きでは一枚劣るものの、秋山の前ではやはり頑張っているところを見せたいのだろう。必死になっている様子も伝わった。こっちもまた「ゼウスにしかできないプロレス」を模索する必要がある。今回は相手として潮崎や宮原がいたせいでそのあたりぼろが出にくかったということになるが、やはりせっかくの恵まれた体をもっともっと生かす術があるような気がしてならない。

全日に入ってからの宮原は初めてみたけど、もうかなりの風格があって、試合を楽しんでいる様子もうかがえた。潮崎もリーダーらしくなって秋山と対峙してもそん色がない。こうしてみるとこの3人だって最初からすぐれていたわけではないのだから、洋平にしろゼウスにしろ努力次第では、まだまだ伸びていくと思う。王道マットでもまれてもっとたくましくなっていってほしいなと願わずにはいられなかった。

第五試合:▽第2回王道トーナメント2回戦 時間無制限1本

●鈴木 鼓太郎(10分49秒エビ固め) ○曙

ノアの生え抜き第一号選手の鼓太郎が王道マットでのし上がっていくには、やはりスーパーヘビー級レスラーとの対決は避けられないところだろう。もっとも鼓太郎自身はキャリアも豊富でヒールから正統派までなんでもこなせる選手である。たとえ相手が元横綱だろうと元三冠王者であろうと、それは変わらないだろう。実際こういうカードが組まれると「小さい方が負ける」と思われがちだが、そこを「もしかしたら鼓太郎が勝っちゃうかも」と思わせたらこれはもうしめたもの。近年ジュニアはジュニアだけ、ヘビーはヘビーだけというくくりが一般化しているけれど、もともとプロレスは無差別で闘ってこそ面白い。体格差のある試合では小さい方が小回りの利を生かし、大きい方はそれを全身でつぶしにかかる。

果たして試合は鼓太郎が小回りを生かした攻めで前半戦横綱を大いにもてあそんだ展開になった。が、しかし一旦つかまってしまうとそこはもと横綱。近距離の闘いはもともと熟知してる分、鼓太郎にはより不利になる。しかし何度も横綱の攻撃を自爆させ、転がしていくさまはやはり爽快ですらあった。会場からも「もしかしたら鼓太郎いけるかも」と思わせたが、やっぱりプロレスでも経験を積んで成長した今の曙はそこまでいいところどりを許さなかった。小兵対策をたくさん経験値として持っている分、あわてることなく試合をしていたのが印象的だった。そして試合後メインを観戦するべく本部席に陣取った。

第六試合:▽第2回王道トーナメント2回戦 時間無制限1本

○諏訪魔(20分26秒体固め)●大森 隆男

このカードは考えてみたら三冠戦でもおかしくないカードである。今は二人とも無冠だけど、ここで勝ち上がると一気に戴冠も現実化してくる。そう考えるとこのカードは2人にとっても決して生易しくはない。

意外だったのは会場の大森支持率の高さ。かつての全日若手時代からは考えられないような歓迎ぶり。その後、プロレス活動自体も休止したり相当紆余曲折があって、全日に出戻ってきた。とはいってもワイルドというのはそもそも征矢の売りだったんだけど、ピンになってもそのキャラが支持されているということは、長くはなったけどやっと大森の時代が来たんだなと思わせるには十分すぎた。GET WILDが流れただけであれほど会場がわくとは思わなかったし。

試合は序盤から荒れ模様。この日はやたら場外戦が多かったんだが、場外で先手をとったのは大森。和田恭平レフェリーの静止も聞かないくらいに大森の攻撃はしつこかったし、諏訪魔もそれに呼応する形で応酬していたんだが、その諏訪間がリングインしようとしたところで、後ろから大森が膝裏にアックスボンバー一撃。これで動きをとめられた諏訪魔は徹底した大森の足殺しに悲鳴を上げることになる。バックドロップやジャーマン、ラストライド対策として大森の執拗な足殺しはいかんなく効果を発揮した。

だが黙ってやられる諏訪魔ではない。ラリアットやジャーマン、ラストライドなどを立て続けに繰り出し一転大森をピンチに追い込んだ。しかしこの日の大森はかなり粘った。このトーナメントにかける意気込みみたいなものが伝わってきた。ふつうなら劣勢の諏訪魔にコールが集まりそうなものだが、この日の観客は大森の背を押すかのような大声援。これにこたえて大森も何度も立ち上がったが、最後は力突きて諏訪魔の軍門に下った。試合後曙と熱視線で応酬する諏訪魔。こうしてトーナメントは潮崎対宮原、曙対諏訪魔という組み合わせになった。

いや~、でもシングル多いと見応えもまた格別。新日のG1とかとはまだ比べようがないけど、一方の雄として王道トーナメントが盛り上がってくれるとそれはそれでうれしいと思う。終わってみれば非常に満足度の高い大会だった。

余談

試合後アステカ選手と少しお話をした。今度は華☆激で金丸と再戦したいという。ぜひ実現してほしい。今回KINGや新泉といった面々も課題をみつけて帰ってきたようなので、今後第2Rでの全日勢との絡みには大いに期待したい。

そして試合後、がむしゃらで打ち上げ。潮崎選手と宮原選手がきたのだが、この日は小倉タケノコボーイズも打ち上げでがむしゃらを訪れていて、これを知った潮崎選手は「あれ?挨拶がないなあ」とまるで面白いものを見つけたような顔になって、タケノコを自分の席に呼び込んだ。そしてライブと全日の時間がかぶっていたことをうけて「今はやりの興業戦争?」とさらに芸人をおいつめて、とうとうチョップ合戦に。当然あの小橋建太とわたりあった潮崎選手の一撃は、プロレス体験者であるタケノコの面々も軽くふっ飛ばされる破壊力。それに的確に反応したタケノコのプロのリアクション芸が化学反応を起こして宴は大いに盛り上がった。その後も暴走する潮崎選手だったが最後に「お笑いもプロレスもなくなりそうで、でもなくならない。お互い頑張っていこう」となぜか友情モードになって最後は記念撮影。

ちなみに「機会があればぜひ」という但し書きつきながら、潮崎選手も宮原選手もライブに乱入する気満々だったので、今回のチョップ合戦をぜひYY劇場でも再現して、吉本のお客さんの前で響かせてほしい。ああ、面白かった!^^

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