プロレス的音楽徒然草 SWS維新力のテーマ
オリジナルのテーマ曲
今回はSWS時代の維新力浩司選手が入場テーマ曲にしていた「SWS維新力のテーマ」のご紹介です。
長らく音源化されていませんでしたが、2002年5月に発売された「格闘音楽大全 プロレスQ11PM」に収録され、タイトルもつけられました。
ちなみに、SWS勢には既成の楽曲ではなく、オリジナルのテーマ曲が用意され、SWS初期の頃に天龍選手の入場テーマ曲だった「SWS天龍源一郎のテーマ」は、宇崎竜童さんが率いた「竜童組」の作品です。
コーラスの歌詞
さて、「SWS維新力のテーマ」には、英語詞によるコーラスが入っているんですが、長らく何を歌っているのかわからないままでいました。
すると、とある番組のラジオで流れてきた局の歌詞に聞き覚えがあったのです。
ネットで調べてみるとそれが、ザ・ビートルズが1966年に発表した「エリナー・リグビー」(Eleanor Rigby)という曲だということがわかりました。
すべての孤独な人々に
SWS維新力のテーマに流用されていた歌詞とはおそらく「エリナー・リグビー」の「Ah, look at all the lonely people」という冒頭のフレーズだと思われます。
意味は、「ああ、すべての孤独な人々を見てください」となるようです。
このフレーズは、「エリナー・リグビー」を作曲したポール・マッカートニーの演奏を聴いた、ビートルズのメンバーであるジョージ・アイディアアイディアなんだそうです。
複雑な人間関係
プロレスから話はそれますが、この「エリナ・リグビー」には、ビートルズメンバーの複雑な人間関係が反映されています。
「エリナー・リグビー」の作詞について、メンバーのジョン・レノンは1971年に「歌詞の半分以上を書いた」とし、1980年に「最初の一行はポールで、残りは、基本的にぼくのだ。ポールは、結婚式の最中の教会にいるエリナー・リグビーというメイン・テーマだけを持っていた。彼はこのテーマが手元にあって。手助けが必要なことを知っていながら、ぼくに詞をつけてくれとは頼まなかった。」
「そのかわりに、あの時、『オイ、君たち、詞を書き上げちゃってくれよ』とぼくらに声をかけたんだ。」
末期のポールとジョン
「EMIのどでかいスタジオ向こうで、録音をしたり、アレンジや、何か他の事をしながらね。ポールは、ものをそのへんにほうりなげるみたいなやり方をされて、ぼくはばかにされたような気がして、傷ついた。」
「彼は実際はぼくに詞をつけてくれと言おうとしたんだけど、彼は、頼もうとしなかった。ぼくが頭にきたのは、末期の頃のポールのこういった無神経さなんだ。彼はとにかくそういう男だった」と主張しています。
これについてマッカートニーは「ジョンにはいくつか言葉を助けてもらったけど、8割は僕が書いた」としています。(引用はWikipediaより。一部省略・抜粋)
なぜコーラスに引用されたのか?
ちなみに、「SWS維新力のテーマ」と「エリナー・リグビー」には引用された歌詞以上に接点はないようで、両曲を聴き比べても共通項はなさそうだな、と私は思いました。
ただ、なぜ「SWS維新力のテーマ」に「Ah, look at all the lonely people」という一説が繰り返し使われていたのか?という点が新たな謎として浮かびあがりました。
そもそも維新力選手に「孤独な人々」というフレーズは不似合いに思います。
人間関係で崩壊したSWS
強いて言えば、SWSという団体自体が一枚岩ではなく、各選手それぞれが「孤独な人々」と言えなくもないですが、少し無理やりすぎますね(笑)
ただ、奇しくも部屋別制度という革新的スタイルを導入し、時代に先駆けたスタイリッシュな演出など、後世にも多大な影響を残したSWSも、結局人間関係の問題で崩壊しました。
少数派が抱えた不満
ザ・ビートルズは、1960年代末、メンバーそれぞれが個性を発揮するようになり目標を別々にもつようになった時、自分たちを守るはずの会社に自由を奪われたことを実感するようになり、不満をつのらせることになりました。
そうした状況の中、ジョン、ジョージ、リンに対し、ポールは常に少数派として意見を無視される傾向にあり、より不満を感じていたと考えられています。
SWSの映し絵?
なぜなら、会社の方針を決める際、4人には一人一票の権限が与えられていたため、3体という結果になりがちだったのです。このことが明確になり、作品にまで大きな影響を与えることになっていきました。
まるでSWSの映し絵にでも解釈できるようなエピソードです。
超えられなかった壁
「SWS維新力のテーマ」が用意されたタイミングでは、SWS自体の崩壊までは予測されていなかったと思われます。
とはいえ、結果的に皮肉な話ではありますが、偉大なるビートルズも、革新的なSWSも「人間問題」という壁は越えられなかったということになってしまったわけですね。