プロレススーパー仕事人列伝⑧ピート・ロバーツ編.2
ブリッジ対ロバーツ
大変遅くなりましたが、仕事人列伝ピート・ロバーツ編の二回目です。(前編はこちらから)
実は今回取り上げる試合を事前に見ようと思ったのですが、どうしても見る暇がなくて、今回やっとじっくり見ることができました。
その試合とは、元大英帝国ヘビー級王者にして英国プロレスOB界筆頭幹事のウェイン・ブリッジ対ピート・ロバーツのシングルマッチです。
ブリッジは身長188cm 体重102kg。ビル・ロビンソンなき後のイギリスを代表するヘビー級のレスラーでした。新日本プロレス草創期にあたる1972年(昭和47年)に初来日してます。
彼を選んだ当時のブッカー・カール・ゴッチさんによると、猪木さんの良さを引き出すにはヨーロッパ・ストロング系の方がよいだろうというはからいがあったとのことです。
事実、ブリッジは1974年、ダニー・クロファット(キング・クロー)とのコンビでNWA認定カナディアン・タッグ王者にもなった実力派でもありました。
前田日明を可愛がった
新日とは緊密な関係を作っていてイギリス遠征した佐山サトルさんや前田日明さんの面倒を見ていたことは有名です。
中でも前田さんの日本凱旋に際しヨーロッパ・ヘビー級を新設し、自らが王者になり前田さんにタイトルを移動させたほど可愛がっていたそうです。
前田さんが結婚し、父親になったときも祝福のメッセージを出しています。
85年にはその前田日明率いる第一次UWFにも来襲。
その三年後引退を表明して、現在は上記のように英国プロレスOB界筆頭幹事として自ら経営するパブ「The Bridges」のオーナーとして第二の人生をあゆんでいます。
ヘッドロックの攻防
そんな実力者ブリッジとロバーツは非常に懇意にしていたそうで、見た目がかなり若いブリッジの本当の年齢を知っているのはロバーツだけだそうです。
そんな信頼関係がある両者の闘いですが、年代はおそらくブリッジのキャリアの晩年のものと思われます。
特筆すべきは序盤ヘッドロックの攻防で、ロバーツが上半身の力をうまく抜いてするっとブリッジの脇を抜けていくところでしょう。この次のラウンドから盛んにブリッジがロバーツに注文を付け始めます。
と同時に体格を生かしたラフな攻撃も目立ち始めますが、比較的ロバーツは淡々と受け流しています。リングを降りれば親密な二人が、珍しく感情的になっているのはかなり珍しいと思います。
ダウンカウントが・・・
格的にはおそらくブリッジの方が上なのでしょうけど、ここで注目したいのはレフェリーが非常に厳格であることと、アメリカだと「ボーリング(boring=つまらない)」といわれそうな両者の攻防も、イギリスのファンがしっかりみていて歓声が上がっていることですね。だからブリッジがラフで攻めたシーンでも容赦なく審判から注意されています。
たぶんサッカーならイエローカードものなんでしょうね。
今のプロレスに当てはめると、特に注意されるほどひどいことはしていないと私は思うのですが、この辺がおもしろいところですね。
またダウンカウントも数えられている点も注目ですね。キックのないUWFスタイルといっても過言ではないでしょう。
己の限界に抗っていた時期?
こうして後半はブリッジのラフにロバーツが付き合っていく展開になるのですが、この試合でほとんど出てないロープワークをやった後、ロバーツが鮮やかなサイドスープレックスをブリッジに見舞い、そのまま3カウント。
実にレジェンドを傷つけないやり方で、ロバーツが一本勝ちを収めています。
ブリッジの体格のせいか、ほんの少しだけ投げっぱなしぎみになっているのですが、このあたりも勝敗をわけた一因かもしれません。
おそらく年代的にはこの数年後にブリッジは引退しているのですが、まだこの試合をやっているときは己の限界にあらがっていた時期なのかもしれません。そう考えるといろいろ興味はつきません。
衰えた自分を見せたくない
ましてやライバルでもあり友でもあるロバーツの前では衰えた自分を見せたくなかったのかもしれません。その辺の事情を汲んで、試合を成立させ、なおかつ勝ってしまうロバーツはやはり仕事人だと思うのです。
今でもイギリスのプロモーションからはレジェンド枠でもいいので、復帰戦を、ともちかけられるそうですが、ブリッジは頑なに拒んでいるそうです。
肉体的には現役時代同様、節制を続けているそうですが、やはり往年のレスラーに比べて小粒になっている現在の英国レスラーの現状を憂いているのは間違いないようです。
偉大なる大英帝国ヘビー級王者を相手にしてもちゃんとした仕事ができているピート・ロバーツはやはりまごうことなき仕事人レスラーだったのです。
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