プロレス的発想の転換のすすめ(93)メリハリと刺激
刺激を与え続けていくと・・・
今回はメリハリの話をしたいと思います。落差といい変えてもいいですね。
春先のメリハリの効いた気温差は、心身共に変化についていけず、不調を招いてしまうこともあるわけですが、プロレスの試合、あるいは大会そのものはどうでしょうか?
カンフル剤をうち続ける
試合で言うならのべつ幕なしに飛んだり跳ねたりする試合は、メリハリがなく、いわばカンフル剤をうち続けているような状態になっていると私は思います。
刺激を与え続けていくと、観客はいずれその刺激に慣れていき、より過激なパフォーマンスを要求していきます。
超人とはいえ・・・
しかし、超人とはいえプロレスラーも人間です。
高まるばかりの観客の欲求に合わせるばかりでは、自分の身体に負担がかかるだけでなく、結果的によいパフォーマンスを披露できなくなる可能性がか極めて高いと思われます。
刺激になれると
またそのような状況下では、アクシデントも起こりやすく、怪我もしやすいのではないか、と私は考えています。
大会全体を通しても、第一試合から大技を連発していくと、メインにいたるころには、刺激に慣れた観客の欲求がとんでもないレベルに上がっている事も考えられます。
飛べ!飛べ!
よく会場で耳にする「飛べ!飛べ!」という声があります。軽量級ならまだしも、重量級の選手にもそう言う声が飛びます。
一例を挙げると、新日本プロレスのタッグ戦線で活躍したウォーマシン(レイモンドロウ&ハンソン)などは、スーパーヘビー級の身体で、身軽に空中戦を仕掛けていく選手たちです。
ヘビー級の技とは
レイモンドはトペ、空飛ぶ重戦車の異名を持つハンソンはムーンサルトなどで観客の度肝を抜いていきます。
本来ムーンサルトやトペはジュニアヘビー級の技であり、ヘビー級の技ではありませんでした。
飛べるヘビー級の賛否
90年代から日本では武藤、小橋、アメリカではベイダーなどが「飛べるヘビー級」として脚光を浴び、彼らの試合を見て育ったであろうウォーマシンの世代にとっては「飛べるヘビー級」は当たり前かもしれません。
しかし、人間というのは刺激になれてしまうと、それが当たり前になります。
プロレスが持つ魅力とは?
気温差というメリハリはつきすぎると、刺激が強すぎて私のように風邪をひいてしまうわけですが、一方で娯楽で受ける刺激に慣れすぎてしまうと、さらなる快楽を求めて要望がどんどん高まっていきます。
ヘビー級の選手というのはもともと持って生まれた恵まれている体躯をいかした迫力ある攻撃が見せられるのです。
本来持つ魅力が
ジュニアの選手にはそれがないから空中戦や、スピードで見せ場を作る必要があったのです。
私には、今のようにヘビーもジュニアも関係なく飛んだり跳ねたりしていると、プロレスが本来もつ魅力もどんどんそぎ落とされていくような気がしてなしません。
諸刃の剣
しいてはそれが大事故につながっていかないとも言い切れないのです。
特に場外への空中弾は、体重をしょったヘビー級の選手にとってはもろ刃の剣です。
各選手・団体ともどももう一回そのことを考えたうえで、ただ観客の声援に流されるだけのプロレスを見せ続けていきたいのか、本当はどうしたいのかを胸に手を当てて考えてみてほしいと私は願っています。