[格闘技観戦記] 関門ドラマティックファイトvol.10(2017年6月4日日曜日 :海峡メッセ下関イベントホール)

イントロダクション

基本私はプロレスファンであり、本当は同日吉富町で同日開催されているがむしゃらプロレスに行きたかった。前日にセンダイガールズを同じ海峡メッセで見ているにも関わらず、それでも吉富まで行こうとする魅力がプロレスにはある。

しかし、何の因果か下関でボクシングを見ることになった。正直プロレスで培った観戦能力はどのスポーツでも通用する自信はあったのだけど、後ろ髪ひかれた状態で果たしてボクシングが楽しめるのかどうか・・・・

今回はじめてボクシングを見るにあたり、私の中で一つ基準を設けてきた。

見終わって「やっばりプロレス観に行けば良かった」と私が思ったら、ボクシングの負け。「プロレス蹴ってきてよかった」と私が思ったら、ボクシングの勝ち。

オープニング

開場と同時にプロテストがあった。女子二試合、男子二試合、最後が巴戦になっていた。女子二試合は手数が少なくて、守りに入っている印象を受けた。どちらがどうというわけではないし、ボクシングで守りが大事なことくらいは知っているけど、手数が少ないと消極的にみえた。

逆に男子は比較的手数は多め。しかしパンチにいまひとつ迫力がない。なぜなら私の耳には、プロの先輩選手たちが控え室で練習しているであろうミット打ちの音の方に迫力を感じたからだ。そりゃミット打ちとグローブで打ち合う音が違うのは百も承知。だが、テスト生はそこを乗り越えていかないと先輩の背中はみえてこないだろう。

やはりプロになるからには先輩選手もライバルなんだな、と改めて思わされた。それにしても見えないにしろ、音だけでも緊迫感が伝わるのはなかなかよい。個人的に闘いを前にした緊迫感があるのは大切なポイント。

巴戦にでていた選手の1人がダウンを奪われて、その後もうワンラウンドしないといけないというのはかなり厳しいなと思ったが、プロのいい洗礼になったのかもしれないと私は思った。

プロテストが終わると照明が少し落とされた。こういう演出は素晴らしいと思う。

会場についても少しふれておこう。海峡メッセには4階のイベントホールと、一階の展示見本市会場の2つがあって、プロレスが主に使用する1階は会場費も安く、設営や撤収も簡単。

一方4階は会場費も高いけど、二階席まであって、大型スクリーンがある。後楽園ホールを少し小さめにした感じの会場。それでも1000人は入る。ちなみに関門ドラマティックファイトは毎回この1000人規模の会場を満員にしているのだ。これはとてつもなくすごいことである。

第1試合 (4回戦ウェルター級)

×為田真生 対 ○志賀克史

為田は上背があって、ガードを固めると少しボディが開き気味になる様子で、ボディ攻めを警戒するあまり、身体を丸めた場面が目立った。それは悪くないのだが、頭がちょうど志賀の顔面の位置にきてしまうので、バッティングが心配だなあ、と思いながら観ていたら、案の定終盤にバッティングが。

ワザとではもちろんないのだが、アクシデントで試合が止まるのは、観客にも選手にも不幸なこと。

残念ながらバッティングを怖れたからか、若干為田の足が止まってしまった。地元試合ということを含めても志賀の勝利はバッティングの場面で決したような気がしないでもない。

第2試合 (6回戦ウェルター級)

◯チェンジ濱島 対 ×松坂拓哉

濱島の相手はKO勝利を重ねているという松坂。前回の試合で濱島は黒星を喫しているそうで、再起をかけての地元での大一番。

序盤は慎重な立ち上がりに終始していたが、濱島は冷静に守りに入ってもいたようにみえた。しか松坂の圧力は見ているこちらにも伝わるくらい厳しいもので、これは選手からしたら相当嫌だろうなあ、と見ながら思っていた。

でも、そこは再起にかける濱島の思いが上回ったか、中盤からエンジンがかかり出した濱島は、果敢に攻めに転じる。こうしてみるとわかるが、プロテストの試合には緩急がなく、遮二無二にいくだけ。基本を守るのが精一杯という感じ。しかしやはりプロとして上にいる選手は試合運びから圧力のかけかたまで何もかも違う。

試合は終盤から流れを掴んだ濱島が、TKO勝ち。ボクシングでは「実力差が拮抗するとだいたい判定」という私の固定観念まで見事に打ち砕いてくれた。

第3試合 (8回戦バンタム級)

ジャンプ池尾対吉村裕紀(ドロー)

この試合でお客さんが言われていた言葉で印象的だったのが「(この試合が)ボクシングらしいボクシングだった」というものだった。

素人考えながらこの言葉の意味を考えてみると、お互いが自分の持てるものを出し合って、出し切った末のドローだったからではないだろうか、と私は思った。

意地悪な言い方をすれば、決定打に欠けたともいえるが、同時に全力を出し切った両者の姿勢はたたえられてしかるべきだろう。

お客さんの視点で面白いのは、プロレスファンは興業全体を見ているのに対して、ボクシングファンはあたかも自分がセコンドになったかのような気持ちで見ている人が多かったこと。私の周りだけでなく注意深くみているといろんなところに「セコンド」目線でみている人がいて、それがすごく新鮮だし、楽しかった。

カウンセラーという職業柄、人を観察する事が癖みたいになっているけど、日常ではあまりジロジロ観察することはしないかわりに、こうした非日常の場所では思う存分観察できるので、当たり外れは関係なしに、自分の中で楽しんでいるのだ。

技術論だけでは語れない奥深きプロレスと、技術論を突き詰めていけるからおもしろいボクシング。お客さんの反応がわかる席に座らせてもらってこれほど良かったと思ったことはない。ありがたい話である。

第4試合 (8回戦58キロ契約)

×フィーバー真木 対 ○小澤有殼

この試合も、前述のお客さんの言葉を借りるならば、「ボクシングらしい試合」だったなと私は思う。

真木の対戦相手である小澤は見た目よりかなりしたたかな印象を受けた。見た感じあまり差がないように見せかけて、実は何枚も懐刀を用意しているタイプ。

プロレスでもそうだが、こういうタイプに真っ向勝負を挑むと相手の罠に気づかずハマってしまう場合が多い。見ている側が「もしかしたら策士なんじゃ?」と思った時は真木が最初のダウンを奪われていた。

これで足にきていた真木はあきらかに様子が違う。2度目のダウンを喫するまでは時間の問題だった。ああいう策士みたいなプレイヤーはどの世界にもいるもんだな、と私は小澤をみていて妙に感心してしまった。

真木選手はこれが引退試合だったそうだが、やはり試合を見ていてメンタル面で、どこか「今ここ」にいない感じがしていた。

もしかしたら、私の気のせいかなと思っていたけど、人間というのは、引退を決めてしまうとなかなか以前のようなモチベーションは保てにくくなる。ゴルフの宮里藍選手がそうだったように、プロ選手にとってモチベーションの維持は選手生命に直結する大事な要素だということを改めてこの試合で教わった気がする。

休憩のハーフタイムでは和太鼓の演奏が。重低音のドラムサウンドはやはり格闘技を盛り上げるに相応しい!

バーニング石井引退セレモニー

予算が許すならば、この引退セレモニーで流したVのクオリティで煽りVも製作して欲しいくらい。石井選手の過去を知らなくても十分すぎるくらい素晴らしい出来だった。

プロレスでもそうだけど、引退セレモニーの10カウントゴングは堪らないものがある。

石井選手は言葉を選びながら、ゆっくり思いの丈を話していった。自分の身に置き換えてみると、私にも目の疾患があるため、石井選手も目の怪我で志半ばでリングを去らねばならない無念もにじませていたようにも感じられた。

とはいえ、これからは最強のマネージャーとして第2の人生が待っている。是非とも第2、第3のバーニング石井を育てて、関門ドラマティックファイトを盛り上げていってほしい。

メインイベント (8回戦ライト級)

◯アクセル住吉対×中谷有利

やはり、というかメインイベンターというのは場の支配力が半端ない。それはプロレスでも感じることだけど、ボクシングでも共通する部分だった。中谷は強豪という触れ込みだが、それを感じさせないくらい、住吉のオーラはハンパなかった。

ボクシングも総合もプロレスも喧嘩ではないので、メンチ切って威圧する類の挑発は見ていてもあまり面白いとは思わない。自分の闘争心をわかりやすく表現する一つの手段ではあるが、プロならメンチきる前にやるべきことがある。

それが、住吉の場の支配力であり、相手を圧倒するオーラなのだ。これがない選手はメインのリングに立つ資格はない。

場の支配力を手にするとどういうことが起きるか?それはアクシデントをも味方につけてしまうことすら可能になるのだ。

もしかすると私が素人だからこそこんな見方をしていたのかもしれないが、こういう邪念のない直感というのは意外と当たるものである。

では場の支配力とはどうしたら身につくのか?住吉のようにプロ専業に近い形なら可能なのか?あるいは、豊富な練習量と強い気持ちがあれば可能なのか?あるいは持って生まれた運なのか?

多分いずれの要素も住吉は兼ね備えていると私は想像している。でなければ第1試合と同じようにバッティングが勝敗を分けたはずである。

事実、中谷側のセコンドは「相手、見えてないよ」と盛んに声を出していた。しかし、果たして本当に見えていなかったのはどっちだろうか?案外本質が見えていないのは中谷側だったのかもしれない。

実際、バッティングによるアクシデントの後の住吉からはオーラ以上の殺気が生まれていた。それは完全に相手を飲み込んでいる姿にしか私には見えなかった。

最後の鮮やかなKO勝ちは、戦前の中谷評からすると住吉がおこしたミラクルに映ったかもしれない。しかし住吉が登場した際の空気の変わり方や、バッティング後に放たれた殺気から、私はどんな形であれ、住吉の勝ちを確信していた。そのくらいあまりにも圧倒的な空気感だったのだ。

試合後のインタビューで「下関の人間がベルトを巻けないわけがない!」と言い切った住吉。確かにその日はそう遠くはなさそうである。

後記

観戦記の中に書ききれなかった全体を見ての感想を最後に。

インターバル

実はインターバルに曲を流せないか、事前に提案させてもらったのだが、現場で感じたのは「音楽いらないな」ということだった。ただ、現場にいると一分はとても短いのだが、テレビや映像で見ると長い。ドラマティックファイトも回数を重ねていくとこの差をどう扱っていくかを考えないといけないだろう。いつか今よりメジャーになった場合、こうした問題は必ずでてくるだろう。

選曲

大変失礼だが、私にはボクシング業界というのは入場テーマにしろ、会場で流すBGMにしろ、非常に「遅れている」イメージがあった。しかし、関門ドラマティックファイトは高橋会長の肝いりで、想像以上にしっかりしていたことにびっくりした。各選手のテーマ曲も一ひねり以上のものがあって、感心してしまった。メインのアクセル住吉選手のテーマが、KO勝利→インタビューのあとに流れた時は鳥肌が立った。ボクシングで入場テーマ曲が語られる時代が来る日もそう遠くないかもしれない。

余談だが、セミまでの勝利者の退場用にT-SQUAREの「TRAVELERS」を提案させてもらったのだが、会場で聞くと手前味噌だが想像以上にはまっていてぞくっとした。もともと個人的には何回もT-SQUAREのライブで聞いてきた曲なんだけど、格別な思いがあった。

応援

これもボクシング独特というか、選手のコールがおこるのはインターバルの間というのが面白かった。ゴルフやテニスみたいにプレイ中の発声禁止というルールはないと思うのだが、結構新鮮だった。もっとも試合に熱を帯びてきたら自然発生でコールが起きることは過去テレビ中継でみた試合でもあったことなんで、決まっていることではないのだろう。

あと、プロレスの場合多くが禁止になっていることだが、花道での「のぼり」が立った時は正直ぞくっとした。あれ、本当はとても雰囲気あるしやると盛り上がるんだけど。関門の場合特に各選手に用意されているのもよかった。

ライティング

これも予算の範囲で非常に工夫されていてよかった。やっぱ暗転って大事だなあということと、特に北九州の門司赤煉瓦では不可能な演出なんで、羨ましかった。下関市民なのに、プロレスファンよりでみてしまうので、なんか悔しかった。

全ての観戦を終了した現在、プロレスファン的には、正直いうと「面白すぎて悔しい!」という感想しかでてこない。完璧にわたしの完敗である。4時間強の大会が短く感じられるくらい劇的で、まさにドラマティック!そりゃ毎回1000人もの集客ができるはずだわ!

しかもそこに満足せずさらなる高みを目指している関門ジャパンは、正直な話プロスポーツのエンターテインメントとして、プロレス界には十二分に驚異的な存在である。

エンターテインメントの部分ではプロレスに勝てるスポーツなどない、と見くびっていた私が浅はかだった。

考えようによっては、前日の仙女にしろ、この日の関門ドラマティックファイトにしろ、身近にこれほど素晴らしいお手本があるのだから、向上心もなく、営業努力もしないプロレス団体など滅びてしまえばいいのだ。それくらい私にとって、この二日間は得難い体験をさせていただいた。

終わってなお悔しい私のこの気持ちを、今度は目撃者として何とかプロレス界に伝えていきたいと思う。高橋会長、関門ジャパンのみなさん、ありがとうございました!

素晴らしい大会でした!そしてこんな素晴らしいプロスポーツが地元にあることを私は誇りに思いたいとおもいます!

[プロレス観戦記] 松江だんだんプロレス主催試合「BATTLE DIMENSION 5」Inスサノオカフェ(2016年3月6日(日)会場/スサノオカフェ特設リング)
松江だんだんプロレス主催試合「BATTLE DIMENSION 5」Inスサノオカフェ (2016年3月6日(日)会場/スサノオカフェ特設リング) イントロダクション 松江だんだんプロレスは総合格闘技団体「YAMATO」を母体として派生した






follow us in feedly

タイトルとURLをコピーしました