私的プロレススーパースター烈伝(94) SANADA
武藤全日本に
今回は2023年4月8日、両国国技館大会でオカダカズチカ選手を下し、IWGP世界ヘビー級王座を初戴冠したSANADA選手のご紹介です。
SANADA選手は、『武藤塾』の新人オーディションに合格し、武藤全日本に入門します。
スターになれる素質
2007年3月13日にデビュー。当初からレジェンド級の選手たちに、「彼はスターになれる素質を持っている」と絶賛されていました。
また、征矢学選手と組んで2008年には世界最強タッグ決定リーグ戦出場にも出場。征矢選手が長州力さんに弟子入り志願するなど話題を集めていることにジェラシーを爆発させたこともあります。
無我の後継者
2009年度の最強タッグでは相棒の征矢選手の師匠西村修選手と組んで出場。西村選手から「無我の後継者に相応しい」とのコメントを受けました。
ファイトの幅を広げるために海外遠征を決意、5月から短期間ではあるがカナダへの武者修行に旅立ちます。そして2013年6月30日を以って全日本プロレスを退団し、2013年には武藤さんが旗揚げしたWRESTLE-1に参戦します。
ダブル契約
2014年3月2日には、TNA Xディヴィジョン王座を日本人初の王者として戴冠しました。そして、TNAと契約を交わし入団し、WRESTLE-1とのダブル契約となることを発表します。
2015年にはTNA、WRESTLE-1を共に退団し、フリーとしてアメリカマットを中心に活動を開始します。
新日本へ
2016年4月10日、新日本プロレスで場外から黒い骸骨のマスクを被って乱入し、オカダカズチカ選手の背後から襲撃を仕掛け、マスクを取り正体を現しました。
4月11日、リングネームを本名の真田聖也から「SANADA」に改め、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに加入します。
シングル王座とは縁遠く
ロス・インゴでは主にタッグ戦線で活躍しますが、シングル王座とは縁遠く、度々挑戦しても後一歩及びませんでした。
2023年3月17日、後楽園ホール大会でのNEW JAPAN CUP 2023で内藤選手との同門対決に勝利します。
IWGP初戴冠
試合後には「ロスインゴにいても何も新しいものが生まれないから、今日をもってロスインゴやめます」と語り、Just 5 Guysに加入しました。
3月21日にNEW JAPAN CUP初優勝を果たし、4月8日、両国国技館大会でオカダを下し、IWGP世界ヘビー級王座を初戴冠しました。
こだわりの抑え込み
SANADA選手は、藤波辰爾さんのドラゴン殺法を彷彿とさせる腰への攻めを中心に試合を運んで行くことが多くあります。
レスリング仕込みのスープレックス、スワンダイブ式などの華麗な技、ローリング・クレイドルのようなクラシカルな技など幅広くこなして、特に抑え込み技にはこだわりを持っています。
頭から落とすだけが
2018年のG1 CLIMAXでのザック・セイバーJr.戦後のコメントで、「頭から落とすだけがプロレスではない」と一部の選手のファイトスタイルを批判する旨の発言をしており話題となりました。
この言葉が後々SANADA選手の呪縛のようになって苦しめる結果となるとは思ってもみませんでした。
例外として
急角度に落とすような派手で危険な技に頼ることを好まず、クラシカルでオーソドックスな技をいかに美しく魅せるかということにこだわっており、使う技にもそのこだわりが強く現れています。
例外として、正面から組み付いた相手を右膝の上に乗せ、頭部を右脇下に抱え込み、そこから自らの体を捻り、横回転しながら背面から倒れ込んで相手を脳天からマットに突き刺すスイング式・スパイクDDTである新技「デッドフォール」がありますが、ここぞというところでしか使っていません。
フレアー選手を敬愛
ちなみにこのデッドフォールは、SANADA選手自身が大ファンだと公言しているHi-STANDARDのベーシスト・難波章浩(なんば あきひろ)氏が「上から丸太などが落ちてきて、大きな野獣を捕らえる落とし罠」といった意味で命名したものだそうです。
SANADA選手は、師匠・武藤敬司選手もプロレスのイロハを学んだというリック・フレアー選手を敬愛していることは有名です。
定番ムーブを確立
フレアー選手は限られたムーブでお客さんを沸かすことができるという点で、極めて高い技術を持ったプロレスラーです。
守勢の際にも観客を沸かせる定番ムーブを確立しており、一方的に攻められている局面であっても自らのムーブで相手や観客を自らのペースに引き込む事が出来る技量をもっていました。
キャラクターを崩さない
また、どのような試合展開であっても、絶対に自分のキャラクターを崩さない姿勢を徹底しており、相手を引き立たせ、自らの守勢のムーブもしっかりと決めて試合を終える事が出来るテクニックを併せ持っていたレジェンドです。
時代も違いますし、一概に比較は難しいのですが、SANADA選手はまだフレアー選手の域には達していないように思います。
武藤とフレアーの共通点
私が考える武藤さんとフレアー選手の共通点は二点あります。
①時代時代における自分のライバルを見つけ、作るのがうまい
②時に泥臭くなっても格好つけず試合という作品を作り出す技術をもっている
この二点が今のSANADA選手には不足しているように思います。
SANADAの課題
特に②に関しては、前々から思っていたことですが、SANADA選手の試合はきれいすぎるというところが最大の難点だと思っていました。
今回ロス・インゴ末期からJust 5 Guysに加入する間に見せた「苦悩するSANADA像」は一見すると泥臭くは見えますが、まだまだきれいにみえるんですよね。
武藤選手やフレアー選手のように、やられても絵になるのが理想かとは思いますが、そのためには、SANADA選手には今以上にもがいてもらいたいし、自分のテクニックを生かし切れるライバルを早く作ってみせてほしいですね。