プロレススーパースター本列伝 ケンドーナガサキ自伝
一度お話を聞いて見たかった
買ってしばらく積ん読になっていたので、正月に手をつけてみた一冊。それがこれからご紹介する「ケンドーナガサキ自伝」である。
ケンドー・ナガサキさんは残念ながらお亡くなりになられたが、以前からFacebookで繋がりがあり、一度お会いしてお話を聞いて見たかった。そういう意味では残念でならない。
ミスターヒトさん経由で
「ケンドーナガサキ自伝」の文中でも触れられているが、私が知るケンドーナガサキ像は、主にミスターヒトさん経由で知った話が多い。
ヒトさんと中島らもさんの「クマと闘ったヒト」の中でもナガサキさんの武勇伝は出てくるが、この「ケンドーナガサキ自伝」で、ご本人が語られる内容はまた少しニュアンスが異なっている。
いわゆる喧嘩屋というイメージは、本人からするとあくまで「仕事の一環」でしかなかったということのようだ。
「失敗」だったランボー・サクラダ
もっとも新日本で正規軍サイドについた時のベビーフェイス「ランボー・サクラダ」への変身は、ご本人いわく「イスや竹刀で殴れない」から「失敗」だったとも語っている。
ラフファイトを主体に、試合を引っ張っていけるヒールの方が向いていたということのようだ。
他者への悪口は
事実、ランボー・サクラダは1シリーズで消滅し、次のシリーズからは、何事もなかったかのように「ケンドー・ナガサキ」として出場している。
レジェンドの自伝を見ると、だいたい近すぎる上司・先輩にはどうしても辛口になりがち。
ナガサキさんの自伝では、ほかと比べてそれほど他者への悪口はでてこないのだが、例外はもちろんある。
小鹿さんとは仲違いしたまま
馬場さんは除くとして、主に出てくるのがミスター・ポーゴさんと、グレート小鹿さんの2人。あと、ブルーザー・ブロディに関してもナガサキさんは辛辣である。
「ケンドー・ナガサキ自伝」によると、大日本を離れて小鹿さんとは仲違いしたままだったようで、自分をナイフで刺そうとした選手とはfacebookで友人になっているのに、小鹿さんからの友達申請は断ったという記述がある。
ロックアップの技術に関しても
その仲違いの原因になったのが大日本のバーリトゥード路線と、その後のベテラン勢に対するリストラにあったという事のようだ。
ほかにも2021年に話題になったロックアップの技術に関しても、事細かい内容が書かれている。
カミングアウトすべきか
そして私が一番注目したのは、SWS時代、当初プロレスというビジネスの仕組みを知らなかった田中八郎社長に、カミングアウトすべきかどうかというところ。
これは多分ほかでは書かれていないと思う。実際ナガサキさんがカミングアウトしたのかどうか?
それがSWS崩壊の引き金になったのかどうか?是非ともご自分の目で確認していただきたい。
プロレスは夢やロマンではない
「ケンドーナガサキ自伝」のあとがきで、ナガサキさんはこう書かれている。
「プロレスは夢やロマンではない。俺にとってはあくまでも生きていくために必要な仕事だった。プロレスをやって一番よかったのは、金を稼げたことだ。」
まさにプロレス仕事人の矜恃がぎゅっと詰まった言葉だと思う。単なる喧嘩屋、壊し屋ではない、プロの悪役「ケンドー・ナガサキ」の美学がこの言葉に凝縮されていると私は思っている。