GLEAT・G PROWRESTLING Ver.38
(2022年11月19日・土・ 福岡・西鉄ホール:観衆302人完売/札止め)
イントロダクション
この日は、昨年亡くなった友人を偲ぶ会が博多で開催されることもあり、天神で旧友達と合流することになっていた。
GLEAT観戦は4月に日程が発表されていたため、即決で予定に入れていたのだが、なんかの縁でダブルヘッダーになった。
まあ、わざわざ交通費別にするよりはありがたい話ではある。しかも西鉄ホールがある天神だし。
考えてみたら、旧友達のグループで現役のプロレスファンを続けている人間は本当に少なくなった。
今回集まるメンバーで今も変わらずプロレス観戦しているのは、多分私だけだろう。
まあ、それはそれとして、4月以来のGLEATである。前回はちょうど抗がん剤治療明けの「復帰戦」になっていた。
あれから半年も経過したとは思えない。ただ体調は行きつ戻りつしながら、良い日もあれば、悪い日もある。
先週末のワクチン接種からずっと体調がすぐれなかったけれど、当日までにはなんとか出られるコンディションになった。
下関→博多
土曜なんで、週4の鍼灸治療日で朝から北九州にきていた。そのまま一風呂あびて、新幹線で博多に向かう。
時間には余裕がありすぎたので、開場約90分前には西鉄ホールについてしまった。
開場前
仕方ないので遅い昼飯たべてカフェで時間潰して開場まで待つことに。
無駄遣いはしたくないのだが、体調を考えたら立ちっぱなしで待つわけにもいかない。
それでも時間が余ったので、30分ほど待ちつつ、観戦記を途中まで書いて待機。
やはり今回も前売り券は完売。GLEATの場合、全国でソールドアウトになっているらしい。いまだに声出し禁止なんだが・・・
オープ二ング
開場してから開始までの60分はヤマムラタケヒロのDJタイム。
前回はまだ所属ではなかったが、2022年5月18日、5月1日付でGLEAT所属(選手契約)になってからは初の福岡。
来年一月の医師の判断次第で、今後選手として復帰できるかどうかが決まる。
山村の試合はドラゲー時代に見てるし、OWEでは少しお話もできた。
本当に好青年だし、どうか悔いのない道を歩んでほしい。
第一試合前に、メインでタッグ王座を争う3チームが登場。
舌戦を繰り広げた。
第一試合 G PROWRESTLING
【シングルマッチ】20分1本勝負
○石田凱士(8分46秒、ハーフタイガー・スープレックス・ホールド)鬼塚一聖●
ドラゲー退団後、GLEATに活路を見出した石田が福岡登場。
対戦相手は、CIMAの遺伝子をもつ鬼塚ということで、何かのタイミングがずれていたら、ドラゲーで実現していたかもしれない顔合わせである。
系譜としては極めて近いが、対抗戦オーラむき出しの石田に鬼塚がGLEATの門番として、どう出るか?
試合は石田が先に仕掛けて場外戦へ。しかし、鬼塚も場外でドロップキックで石田を吹き飛ばすなど一矢報いようとするが、リングインしても、石田の攻勢は続く。
キャリアで約4年先輩の石田に必死で食いついていく鬼塚だが、受ける時も石田には「付き合ってあげてる」感がみえる。
気迫だけではなかなか先輩の牙城は崩せない。
終始余裕の石田は、ここぞという場面で、鬼塚をハーフタイガーでピンフォール。10分かからない試合でマイクを持つと、同じ元・ドラゲーで60セカンズに加入した椎葉おうじを呼び出す。
緊急決定試合
○石田凱士(3分22秒、変形アンクルホールド)椎葉おうじ●
呼び込まれた椎葉が石田を背後から奇襲。しかし、序盤でペースを握り返されてしまう。
逆に石田は厳しい蹴りと、足関節で椎葉を削りに出てきた。
だんだんとスタート時の勢いがなくなり劣勢になる椎葉。
最後は石田の執拗な足攻めで自らタップアウト。
なおも椎葉に厳しい言葉を浴びせる石田を、同じ60セカンズの井土が救出にはいる。
「(椎葉は)お前の仲間にはならない。お前(石田)は、GLEATで何がしたいんだ?」という井土に対し「それはお楽しみや」と返す石田。
1人で外敵として全方向に喧嘩を打っていく姿勢は面白い。これからどういう方向に向かうのか?興味深く追っていきたい。
第二試合 G PROWRESTLING
【タッグマッチ】20分1本勝負
○フラミータ&YUTANI(9分43秒、スペルフエゴ)田中稔&頓所隼●
コロナ禍で、メキシコ文化のプロレスをメキシコから更に盛り上げるためのプロジェクトをクラウドファンディングで立ち上げている日本人ルチャドール、YUTANIの凱旋試合に相当する試合。
ある意味このカードも対抗戦といえる。
カウント上では第二試合だが、実質第三試合になってしまったこのカード。フラミータ&YUTANIは、普段から同じユニットにいるらしく、連携もスムーズ。
ただ、以前よりフラミータが恰幅よくなってしまったのが気になった。動き自体は昔と変わらないのだが、黒覆面&隣にYUTANIがいるせいか、フラミータの体型がやたら気になってしまった。
一方新日や全日でも活躍した田中稔と頓所準の新旧ジュニアタッグはあえてルチャの動きに合わせているような感じがした。
ただ、合わせすぎてフラミータ&YUTANIのいいところを完全に引き出せたとは言い難かった。
第三試合 LIDET UWF
【シングルバウト】15分1本勝負
○宮城倫子(5分45秒、逆エビ固め)福田茉耶●
今回のUWFルールは女子シングルバウト。もともと所属が少ない上に、呼んでくる外敵が強すぎて、特に福田はYouTubeで見る限り負けているイメージしかない。
試合前、以前なら映像で説明していたLIDET UWFルールを山村リングアナが全部口頭で説明していたが、正直会場のお客さんも「よくわからない」という声がちらほら出ていた。
普段は北側の壁面にスクリーンがあるため、使用は可能なのだが、今回はなぜか塞がれていた。
さて、女子同士のUWFルールははじめてみるが、もともとそれほどUに寄せてない宮城と、格闘色の強い福田では、取り組む姿勢に差がみえた気がした。
ただし、無差別の戦いである以上、宮城が体格差で圧倒したのは悪くない。
でもやっぱり初のダウンがブレーンバスターというのは、なんか違うんだよなあ。キラー・カール・コックスみたいな形だとまだ説得力があったけど、宮城のそれは正調ブレンバスターだったので、やや興が削がれた。
結局、宮城は体格差を生かして、逆片エビ固め→ボストンクラブで粘る福田からタップアウトを奪った。
試合後、悔しくて宮城に突っかかる福田だったが、それは試合中に出して欲しかったなあ。
第四試合 G PROWRESTLING
【シングルマッチ】20分1本勝負
○クワイエット・ストーム(7分24秒、片エビ固め)飯塚優●
※53cm腕ラリアット
飯塚の場合、UWFでやりたいのか、G PROWRESTLINGでやりたいのか?なんか軸みたいなもんが出来るといいんだけど、いきなり二刀流やらされて、極められてない感じがする。
リンダマン一強を崩すには、この世代が伸びないと、外敵のチャレンジャーを探してくるばかりになりかねない。
飯塚が覚醒するとしたら、クワイエット・ストームあたりに一泡吹かせられる試合ができることだろう。
試合前に懸念していたとおり、まだ自分の「これだ!」という軸がみつけられていない飯塚と、バルクオーケストラという軸があるストームでは、明らかにプロレスの表現力に差があった。
飯塚にUWFスタイルを極めたイメージがあれば、体格差をものともせず、蹴って寝かせて締める流れが想像できただろう。
しかし、現実はストームがパワーで圧倒し、終始飯塚にイニシアチブを取らせないまま、最後まで完勝という形で終わってしまった。
休憩
ここで10分間の休憩に入ったが、会場が全然盛り上がっていない。あまりに前半の試合が淡々と進みすぎて、印象に残らない試合ばかりになっていたからだ。
さあ、セミとメインでこの流れを変えることができるだろうか?
セミファイナル G PROWRESTLING
【6人タッグマッチ】20分1本勝負
カズ・ハヤシ&エル・リンダマン&○CIMA(14分57秒メテオラ→片エビ固め)
井土徹也&佐藤恵一&渡辺壮馬●
同じ#STRONG HEARTSにいながら、最近はあまり組んでいるイメージがないリンダマンとCIMA。
ここにカズが加わった三人はさしずめGLEATのベテラン軍といったあたりか。
対する60セカンズは、頓所のかわりに渡辺が入った、こちらも混成軍。ただし立ち位置的には、若手のくくりになるので、この試合はベテラン対若手の世代闘争にもみえる。
試合が始まると圧倒的に元気なベテラン軍。一番キャリアの若い(8年)のリンダマンを敢えて下げさせて、カズが先発を買って出る。
会場はそんなベテラン軍を拍手で後押しする。若手にしてみたらこんなやりにくい構図はない。
若さで圧倒しながら、要所要所でベテランが流れを引き摺り戻し、お客さんもそれを望んでいる。
たしかにプロレスは思い出とも戦うジャンルではあるんだが、若手軍にとっては超えたくても超えられない高い壁にみえていただろう。
最近は一線を退いた感じがあるカズ&CIMAだが、いざ出てみたら元気なことこの上ない。
確かに若い時みたいなガツガツした感じはないんだけど、お客さんが喜ぶツボを皮膚感覚で理解しているから、自分のアピールにしか頭がいかない若手軍が勝てるはずもない。
最後は、カズのファイナルカットから、CIMAのメテオラが炸裂。現G-REX王者リンダマンがかすむくらいの大活躍でベテラン軍完勝。
正直この日の中ではこの試合がベストだったと思う。長すぎず飽きさせず、ピシッとしめたベテランの妙技が堪能できた試合だった。
メインイベント G PROWRESTLING
【3WAYタッグマッチ】時間無制限1本勝負”G-INFINITYチャンピオン決定勝ち残り戦”
第二代王者
田村ハヤト&チェック島谷組
vs
暫定王者
T-Hawk&入江茂弘組
vs
挑戦者
伊藤貴則&神野聖人組
①○T-Hawk(エビ固め)神野聖人●
※ケルベロス
②○チェック島谷(24分0秒、サムソンクラッチ)入江茂弘●
第二代王者田村ハヤト、チェック島谷組が初防衛に成功
新日本以外で見る3WAYは、ワクワク感しかない。
GLEATもどちらかというと、こうしたゲーム性の高い試合は得意にしている団体ではあるし、ユニットごとの色分けもできているから、面白い試合にはなりそうである。
入江みるのは、OWE以来になるのか。T-Hawkとのコンビは魅力的だし、田村&島谷もいいチーム。
ただ、つくづく思うのは3WAYという試合形式は、選手のプロレス脳が試されるんだな、と感じられた。
新日本流の誰か一チームが勝てばそのチームがチャンピオンになるというのは、時間短縮にはなるが、勝ち負けつかない状態で王者からベルトが移動するため、モヤモヤが残る。
他方、今回のような勝ち残り式だと、全チームに勝ち負けがつくため、決着はスッキリするが、試合時間が長すぎるため、お客さんの集中力がもたない。
今回の3WAYタイトルマッチは完全に後者になってしまった。確かに度々ローンバトルになるチェック島谷が、この試合の立役者だったのだが、第一試合前に登場した時にはタッグベルトに意欲を燃やしていた伊藤貴則&神野聖人に、他の二チームほどの熱量が感じられない。
現王者が何がなんでも防衛したいのはわかるし、リンダマンに続いて#STRONG HEARTSに二つ目のタイトルを持ち帰りたいT-Hawk&入江の二チームには明らかに、ベルトへの執念が感じられた。
だが、伊藤と神野はお互いの想いに齟齬があるように感じられてならなかった。
そして、その予感は当たりで真っ先に脱落したのが伊藤&神野という形になった。
試合は残り二チームになってからかなり白熱してきたのだが、いかんせんここまででお客さんの集中力が切れており、チェック島谷の奮闘にも関わらず、今一つ客席がヒートしない。
最後は、粘る入江をDDT出身の後輩・島谷が丸め込んで、王者組防衛!
内容は悪くなかったんだが、これなら3WAYじゃなく、普通に#STRONG HEARTS対バルクオーケストラのタッグマッチとして見たかった。
伊藤組を無理やり?絡めたことで、かえって食い合わせが悪くなってしまったのは残念でならなかった。
エンディング
激闘の末、フラフラで立てない王者チームに、吉野正人GLEATコミッショナーからベルトの授与。
しかし、立ち上がってベルトを受け取れない島谷と田村の上に、吉野コミッショナーがベルトを置く形になった。
しばらくしてようやくマイクを握った田村は、#STRONG HEARTSの2人の健闘を称え、再戦を約束した。
最後は島谷がバルクの決め台詞&「ボキッ!」のポーズで大会を締めた。
後記
今回は軸になるはずの、タッグ王座戦が3WAYという頭を使う試合形式になったため、結果的に選手よりお客さんの集中力が切れてしまった。
マッチメイクというのは、かくも難しい。
帰り際、傘を忘れた事に気づき、エレベーターで西鉄ホールに取りに行くと、ちゃんと保管されていた。
係員さんに「良かったです」と声をかけてもらい、なんだか嬉しくなった。人の人情が身に沁みた。
追伸
そのあとの「プロレス同窓会」も四半世紀ぶりの再会もあり、昔話に花が咲いた。
体力的にはきつかったけど、楽しいダブルヘッダーだった。みなさんありがとう!また生きて会おう!