プロレスリングNOAH・ABEMA presents DEMOLITION STAGE 2022 in FUKUOKA
(2022年10月16日・日・福岡国際センター:観衆: 1195人)
イントロダクション
昨年秋以来になるNOAH。三月の大会は、ちょうど最後の抗がん剤治療が終わり、退院した当日だった。
正直、藤田対田中のGHCヘビーは生で見たかったが、タイミングが悪いとこうなる。
さて、当初今大会は観戦予定になかった。そもそも発表されたのが、メインのタッグとジュニアのイリミネーションだけ。
武藤はサイン会のみという感じだったし、これなら行かなくていいかな?と思っていたら、急遽試合が組まれ、武藤が出場することになった。
というわけで、慌ててチケット買って、2022年初の国際センターに行くことになった。
下関→国際センター
昼前に母の買い物済ませて、その足で北九州へ。意外と道路も混まず、駐車場にもスムーズに入ることができた。
そのまま新幹線で博多に行き、国際センター行きのバスに乗り換え。
10月も半ば過ぎたとは思えないくらい、昼間の福岡は暑い!そしてバスはガンガン冷房が効いている!
約二時間の移動を経て、国際センターに着くと、チケットの半券ではなく、問診票に個人情報を記入するようになっていた。
と言っても氏名、住所、電話番号だけなんだが、事前にチケット裏に書いて持ってくる、という手は通用しないな。
入場後
パンフを購入して中に入ると、東西の3階席は潰されており、北側と東西の奥は封鎖。リングサイドに、国際センターでは1年半ぶりになる実況スペースが配置されていた。
そして、新日本でもお馴染み?プロレスルールVが流された。
講師は齋藤彰俊とNOAH若手陣。
考えてみたら、東京ドームの六万人が織りなすブーイングを浴びながら、新日に宣戦布告した男が、こういう役割を担うようになったとは、時の流れを感じずにはいられない。
オープニング
Abemaの中継が前説代わりにスタート。例の船木のフライングマイクが流された。
そのマイクがきっかけで生まれたらしい、GHCマーシャルアーツルールってUWFとどう違うんだろう?
どうもロストポイントの代わりに、イエローカード制が入ったルールらしいが。
普段はユニバースとかAbemaでは、前説部分はすっ飛ばすけど、会場にいると嫌でも聞いてしまう。
こうして年月を重ねると、グッズと無駄知識と、思い出で溢れかえり、収拾がつかなくなるのだ。
第一試合:シングルマッチ
○征矢学 対 ●小澤大嗣
(5分55秒ボディスラム → 片エビ固め)
デビュー間もない小澤の試合が見られるのは、ある意味ありがたい話。
昔はこの位置に武藤世代がいて、フレッシュなファイトを繰り広げていた。その武藤世代が続々引退していく時代になった。
小澤がメインイベンターになり、引退するまで生きていられるかどうかは、わからないけど。
期待の新星・小澤だが、征矢と並ぶとやはり見劣りはする。
タッパがある分、将来有望だとは思うが、あらゆる面で、まだまだ新人の域を出ていない。
もともと無我出身の征矢はグラウンドもできるし、パワーもあるから、若手の壁役もできてしまう。
藤田ほど危険な技も使わないから、小澤が壊される心配もない。その分便利屋として使われてしまうのだが。
試合は「このあたりでいいか」と征矢が繰り出したベアバッグが決め手になり、ボディスラムで小澤はフォール負け。
ギブアップする暇もなかったというのが正直なところかもしれない。
小澤には、ところどころにスターの片鱗は伺えたが、まだまだ若手の段階。
これから研鑽を積んでメインイベンターに成長していってほしい。
第二試合:タッグマッチ
マサ北宮&●谷口周平 対 ○モハメド ヨネ&齋藤彰俊
(11分20秒キン肉バスター → 片エビ固め)
ファンキーエクスプレスを辞めて、退路を絶ったはずの谷口は、相変わらず第二試合あたりで、古巣と戦ってばかりいるイメージしかない。
本来なら北宮と組んだチームは、上も十分狙えるポテンシャルがあるはずなんだが、つくづく勿体無いなあと思う。
毎回見るたびに文句しかでない谷口だが、あれだけの体格とあれだけの基礎があれば、誰だって期待したくなる。
しかし、現状第二試合で第二試合の内容しか残せていない。他団体なら意味合いが違う第二試合だけど、NOAHではぶっちゃけメインを張れないということと同じ。
チョップやキックに耐える姿は反撃を期待させるが、そこまで。
最後は古巣の連携プレイで孤立させられ、ヨネのキン肉バスターで谷口轟沈。
小橋直伝のハーフハッチを出す間もない完敗劇だった。
第三試合:6人タッグマッチ
小川良成&●矢野安崇&藤村加偉 対 NOSAWA論外&○Eita&スペル・クレイジー
(13分19秒 Imperial Uno → 片エビ固め)
最近は、スティンガーというより、若手の引率になっている小川だが、個人的にターゲットにされているPERROS DEL MAL DE JAPON との抗争は延々と続いている。
面白いのは、HAYATAやクリスらと同様、小川と組んでいる矢野や藤村が「脱・若手化」し始めているところ。
特に論外に勝利した矢野は、負傷明けのブランクを感じさせない勢いを感じる。
執拗に小川を付け狙うPERROSだが、その小川はなんとEitaに握手を求める。
これは心理戦なのかどうなのか?そして、まるでそれに呼応するかのように、PERROSの連携がギクシャクしはじめる。
挙句、Eitaと論外がリング上で口論まではじめてしまう。
こうなると若手コンビに付け入る隙ができるわけで、ガンガン攻めていくのはよかったが、一度場外に出れば、たちまちPERROSのペースに戻されてしまう。
まあ、大なり小なりの小競り合いは、PERROSのお家芸みたいなもの。
しかし、どうも小川には若手2人をどうこうしようと言う意図はないようで、連携らしい連携はない。
そうこうしているうちに、矢野と藤村が捕まり出し、最後はEitaのインペリアル・ウノで、PERROS軍勝利。
矢野と藤村をリング外に投げ捨てた小川は、なおもEitaを勧誘するが、一旦握手と見せかけて、PERROS総出で小川をボコボコに。
「小川、オレはPERROSや!」と吐き捨てたEitaは、クレイジー共々先に引き上げたが、リング内には論外が一人。
マイクをもつと「来年のドームで引退する」とまさかの電撃引退表明。
どうも本当らしいのだが、今日の試合を見ている限り、素直には受け取り難い。さあ、どうなるのだろうか?
第四試合:シングルマッチ
○中嶋勝彦対●クリス・リッジウェイ
(13分03秒 ヴァーティカルスパイク → 片エビ固め)
NOAHだけではないのだが、近年ヘビー級とジュニアヘビー級に明確な差がなくなってきている。
ジュニアのフィールドで戦っているクリスと、ヘビー級戦線にいる中嶋。2人を見た目で比べたら、ジュニア対ヘビーという図式は描きにくい。
加えて、クリスには階級差を超えられる関節技、中嶋には当たりの強い打撃がそれぞれ武器としてある。
関節か?打撃か?でいう点で見れば興味深いカードかもしれない。
試合は意外にもリッジウェイがキックで応戦。中嶋の土俵で勝負を挑んできた。
しかし、蹴り合いになればやはり体格差をものともせず、ヘビー級のレスラーを蹴りまくってきた中嶋に分があるのは道理。
ところが、これは当然クリスの作戦。序盤はまだしも中盤から終盤にかけては、中嶋の蹴り足を何度も捉えて、足関節地獄に誘っていく。
悶絶する中嶋勝彦だが、クリスはあと一息で決め切らない。グラウンドワークもしっかりこなせる中嶋にしたら、クリスのフィールドは、決してアウェイではない。
終盤息を吹き返した中嶋は、頭部めがけて容赦ない蹴りを放ち、最後はヴァーディカルスパイクで、粘るリッジウェイを仕留めた。
第五試合:6人タッグマッチ
●清宮海斗&稲葉大樹&稲村愛輝 対 ○藤田和之&杉浦貴&田中将斗
(16分01秒 パワーボム → エビ固め)
10.30有明が先に決まっていたので、今回の九州三連戦は、その前座扱いになっている。
だから、この試合も有明で組まれている、清宮対藤田の絡みが主軸になっている前哨戦なのだ。
秋の国際センターは、概ねこのようにカードが一枚落ちになり、タイトルマッチも組まれなくなってしまった。
このように扱いが悪いから行きたくなかったというのが、正直なところである。
さて、やはり先発は清宮と藤田になる。コッテリとしたグラウンドの攻防はさながら嵐の前の静けさのよう。
興味深いのは、ジャイアント馬場の系譜をもつ小川良成の指導をうけた清宮が、猪木最後の弟子と呼ばれる藤田と邂逅している点である。
しかも清宮は、引退する武藤敬司の系譜も引き継ぐわけで、闘魂と王道のハイブリッドになりうるわけだ。
欲を言えば、稲葉や稲村にこういう試合で、わずかながらでも自己主張してもらいたかったのだが、結局清宮対藤田の輪に割って入ることはしなかった。
そこが勿体無いといえば勿体無い。結果を踏まえて言えば、藤田対清宮以外の絡みは印象に残らなかった。
フィニッシュは、藤田が頭部へのサッカーボールキック二発からの、高角度パワーボムで清宮から直接フォール勝ち。
試合後、清宮を抱き起して頬ずりをする野獣。まあ、清宮も武藤がこの後出るせいか?武藤ムーブは温存していたし、とりあえず様子見といったところか。
藤田と清宮以外の人間同士で白黒がつくよりはマシかもしれないが、露骨に前哨戦で決着がつくのも、どうなんだろう?
第六試合:イリミネーションマッチ
小峠篤司&吉岡世起&YO-HEY&アレハンドロ 対 近藤修司&タダスケ&大原はじめ&Hi69
【退場順】
① 〇アレハンドロ(7分05秒 変形エビ固め)●大原はじめ
② 〇Hi69(8分52秒 ストゥーカスプラッシュ → 片エビ固め)●アレハンドロ
③ 〇タダスケ(16分27秒 オーバーザトップロープ)●吉岡世起&●近藤修司
④ 〇タダスケ(17分42秒 オーバーザトップロープ)●YO-HEY
⑤ 〇小峠篤司(18分10秒 キルスイッチ → 片エビ固め)●タダスケ
⑥ 〇小峠篤司(20分26秒 横入り式エビ固め)●Hi69
こちらは事前に発表されていた金剛ジュニア対正規軍ジュニアのイリミネーション。
最初にこのカードを見た感想は「とうとう国際センターでもタイトルマッチは無くなったのか」だった。
最近でこそ、ニンジャ・マックの登場で盛り上がっているような気がするNOAHジュニアだが、基本的には場の雰囲気を変えるようなオーラが絶対的に足りてない。
そこにイリミネーションというゲーム性が高いルールにされても、ワクワク感が薄いのだ。
試合はこのイリミネーションマッチの悪い点が、そのまま試合に反映されてしまった。
皆派手な技は使うけど、なぜか総じて地味な印象を受けるNOAHジュニアなんだが、上から三番目という好位置にマッチメイクされながら、会場が全然盛り上がらない。
致命的だったのは、イリミネーションルールには、オーバー・ザ・トップロープがあるということ。
従ってジュニアの試合なのに、場外弾がないという本末転倒な展開になってしまったのだ。
YO-HEYを除くと、イマイチ華がないといわれるNOAH正規軍にとって、これは宝の持ち腐れ。
しかも対する金剛も然りで、私の後ろのお客さんが「金剛は人数多過ぎて誰が誰だかわからない」とまでいいだす始末。
人数的には、NOAHのジュニアユニットはみんなあんまり変わらないはずだが、一番目立っているのが、無所属のニンジャ・マックだからなあ。
実験することは悪くはないが、メイン共々これは失敗だったように思う。
願わくば、今回の試合の反省点を生かして次に繋げていってほしい、と思う。
セミファイナル・6人タッグマッチ
PRO-WRESTLING LOVE FOREVER .EX FUKUOKA FINAL~TRANS MAGIC~
武藤敬司&小島聡&○ニンジャ・マック 対 丸藤正道&ジャック・モリス&●HAYATA
(14分57秒 ニンジャボム → 片エビ固め)
このカードが組まれなかったら、国際センターには行かなかった。ぶっちゃけ今大会の最大にして唯一の目玉が、武藤敬司の福岡ファイナルなのである。
本当ならこのカードなしで、武藤のサイン会のみで集客ができるなら、NOAHにしてみたら万々歳なんだろうが、そんなに世の中甘くはない。
そう考えると、秋のNOAH国際センターは、よほどのことがないと、来年は行かないかもしれないのだ。
いや、下手したら春も場合によっては見送る可能性もあるなあ。なんか新日本とは違うベクトルで、NOAHのマッチメイクは迷走している印象が強いのだ。
先発を買って出たのは、武藤と丸藤。しかし、武藤からは、かつてGHCを巻いていた時のようなギラつきが、まるで感じられない。
以前、ダブプロレスにいた魁が引退表明した後の試合を見ているが、武藤ほどのレジェンドでも、一旦引退を決めてしまうとこうなるのだろうか?
そう考えると、引退と復帰を繰り返す大仁田の場合、燃え尽きた感は感じられないから、例外ということになるのかもしれない。
さて、武藤絡みだと誰が誰と組んでも、また戦っても実に絵になる。
小島との新日本から続くドラマ。
NOAHにきてからはパートナーとして組む事が多かった丸藤。
ファン時代から憧れて、ムーンサルトをフィニッシャーのひとつにしているHAYATA。
試合が決まった時に、嬉しさのあまりニヤニヤが止まらなかったというジャック・モリス。
その中で強いてポイントをあげるとしたら、かつてブラック・ニンジャとしてアメリカを席巻した、武藤とニンジャ・マックの新旧忍者連携ということになるだろうか?
ハイライトは試合終盤に訪れた。
小島のウエスタンラリアットにはじまり、武藤が援護射撃のシャイニングウィザードをHAYATAに炸裂させる。
最後はニンジャ自らが、ニンジャボムでHAYATAから3カウント。
結果的に有明の前哨戦は、ニンジャがチャンピオンHAYATAから直接勝利して、武藤のラスト福岡に花を添えた。
しかし、自分が主役でもいいのに、敢えて試合で後進に道を譲るというのは、やはり武藤らしくない。
他を押しのけられないくらい、調子が悪いのだろう。
その姿をみたらやはり引退はもう間近にきているんだな、と思わざるをえない。
試合を見終わったあと、同世代としてとても寂しい気持ちになってしまった。
メインイベント・タッグマッチ:ダブルバウトルール
拳王&●船木誠勝 対 ○桜庭和志&鈴木秀樹
(25分36秒 スコーピオンレッグロック)
記憶に間違いがなければ、UWFルールのダブルバウトがメインにきた大会を、私は見たことがない。
4月のGLEAT観戦記でも書いたが、そもそもダブルバウトは「面白くない」ことが前提にある。
通常のタッグマッチのようなグレーゾーンを排除し、ただ淡々と選手が入れ替わるだけなので、ダイナミックさにも欠けるし、シングルマッチを無理やり二試合分詰め込んだ感じがするからだ。
試合を見ていて、印象的だったのは、UWFを経験していない拳王と鈴木がひたすらUを意識した動きに終始していた反面、桜庭と船木は、UWFの先にあった総合のようなスタイルで戦っていたこと。
それはいいとして、このGHCマーシャルアーツルールには、イエローカードが導入されていた。
このイエローカードが厄介なシロモノで、UWFのロストポイント制ならば、エスケープなりダウンなりすると、それなりに盛り上がる。
しかし、この四人だと反則のしようがないのだ。
「ぶっ壊す」と試合前息巻いていた拳王が、実は一番こういうスタイルが好きだし、そもそも根が真面目なのだからどうしようもない。
唯一鈴木が無理やりカットプレイに入って、イエローカードを提示されていたが、これなら5カウント内の反則とあまり変わらない。
その上、膠着したような試合を、ラウンド制でもなく、ひたすら見せられ続けるので、15分過ぎたあたりからは、お客さんの集中力も切れ始めていた。
それこそ総合やボクシングがラウンド制になっているのは、選手への配慮はもちろん、観客の集中力が切れるタイミングでインターバルが入れられるメリットがあるからでもある。
もし、声出し声援OKなら、まだ「〇〇コール」すれば、このルールでも多少集中力は持ち直したかもしれない。
しかし、散発的に発生する拍手では、なかなか会場も盛り上がらないのだ。
試合はまさかの20分超え。通常のプロレスルールならまだしも、マーシャルアーツルールだと拷問に近い。
実況は会場が固唾を飲んでいると言っていたらしいが、少なくとも私は「早く終わってくれ」と思っていた。
正直UWF信者ではない私は、今までUWFルールについては、それほど肯定的なイメージを持っていなかった。
しかし、ロストポイント制でもない、ラウンド制でもないダブルバウトは、少なくともお客さんには優しくないルールだという事は、いやというほど理解できた。
まあ、とはいえ実験的な試みだった事は確かだし、ジュニアのイリミネーションも含め、やってはじめてわかることもある。
今後、GHCマーシャルアーツルールの試合が再び組まれる際には、今回の反省が生かされてほしいと思う。
後記
会場では団体ごとにルールが違う上、以前はOKなものが、現在ではNGになることもある。
声出しのようにプロレスだけでないものなら、なんとなく理解はできるし、女子プロレスの有料サインルールもわからないではない。
しかし、フラッシュも炊いていないカメラの光に対して注意を受けたのは初めてだった。
まあ、動画撮影を疑われるよりはマシだが、そんなのにいちいち文句言っていたら、スマホの写真撮影もNGにしかねないな、と思ってしまった。
あと、前から気になっていたけど、サイン会の様子も写真NGなら事前になんらかの告知はすべきだし、いちいち係員が止めに入るのも「なんだかなあ」と思ってみていた。
とりあえず色々疲れたので、普段なら博多駅まで歩くところを、満員バスに揺られて駅まで行き、食事してから新幹線に乗って、約二時間で実家に戻った。
日曜観戦は介護の関係で遠方の観戦は、年々やりづらくなっているため、NOAHでなくても見直さなければならない。
という感じで2022年の国際センターでの最初にして最後の観戦は、幕を閉じた。
最後に…
武藤ファイナルですら、集客に大して貢献していなかったみたいだし、NOAHも国際センターにこだわらなくてもいいのではないか?と個人的には思うのだが…