プロレス的音楽徒然草 Kids Return
元を辿れば
今回は、がむしゃらプロレスベストバウト記念で、YASU選手のタッグパートナーである、土屋クレイジー選手の「Kids Return」です。
YASU選手のテーマ曲「悪巧み」は、元を辿れば、故・大島渚監督が手がけた映画「戦場のメリークリスマス」にいきあたりますが、「Kids Return」は言うまでもなく、北野武監督の「キッズ・リターン」のテーマ曲です。
深い関係性
キッズ・リターンの音楽は、ジブリアニメでも有名な久石譲さんで、「Kids Return」もまた久石作品の一つでもあります。
さて、ここで声を大にして言っておきたいのは、北野武監督、いやビートたけしさんと、大島渚監督とは深い関係性があるということなんです。
そして2人をつないでいるのが、「戦場のメリークリスマス」という作品なんですね。
容赦なく描いている名作
「戦場のメリークリスマス」は、インドネシアのジャワ島での、日本軍俘虜収容所体験を描いた作品で、南アフリカの作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポストさんの実体験に基づく内容になっています。
当時の日本軍による捕虜に対する扱いや、イギリスなどにおける障害者への蔑視行為やパブリックスクールにおけるしごきなど、歴史の闇の部分も容赦なく描いている名作です。
当初は
「戦場のメリークリスマス」でたけしさんは粗暴な軍曹「ハラ」を演じています。しかし当初、主なキャスティングは、本物の俳優さんが起用される予定でした。
ところがスケジュールの問題等によって、たけしさんや坂本龍一教授、デビット・ボウイといった主要キャストに話が持ち込まれました。
ミスしても叱らず
大島監督からオファーを受けた際「自分は漫才師であり、俳優でありませんから、きちんとした演技はできません」とたけしさんは前もって伝えていたそうです。
すると大島監督は、たけしさんや坂本教授がミスしても叱らず、かわりに相手役に「お前がちゃんとしないから(たけしさんや坂本教授が)セリフ話せないんだろう!」と怒ったそうです。
世界的名声を
これは大島監督なりの配慮だったようですが、そのおかげもあって、無事たけしさんたちはクランクアップにまでこぎつけられたのでした。
「戦場のメリークリスマス」公開後、映画のメインキャストはその後、他方面で第一線として活躍し、世界的名声を得ました。
きっかけは、その辺
大島監督は2013年にお亡くなりになられましたが、お通夜で記者団に囲まれたたけしさんは「龍一さんが海外で賞をとって、私も映画で賞をとってね。きっかけは、その辺だったと思う。ありがたい。その前にもっと感謝したらよかった」と語っておられます。
大島監督はご生前、北野作品を応援していたそうで、いずれにしても「映画監督・北野武」の原点は「戦場のメリークリスマス」にあるのは間違い無いでしょう。「戦場のメリークリスマス」なくして「キッズ・リターン」もないということですね。
映画監督・北野武は「戦場のメリークリスマス」なくしては語ることはできないのです。
プロレスでも深い縁
キッズ・リターンと戦場のメリークリスマスの関係性を考えると、YASU選手と土屋クレイジー選手が、それぞれ選んできた楽曲が、プロレスというフィールドでも深い縁を作り上げたのは、非常に興味深いですね。
がむしゃらプロレスでも名タッグとして、二度のベストバウトを獲った土屋&YASU組の活躍に、大島監督とたけしさんの関係性を重ねてみると、奥深いドラマを感じます。
ちなみに、土屋&YASU組は「悪巧み」+「Kids Return」の合体テーマ曲で入場していますが、単なる合体テーマとして聞くのではなく、曲や作品の背景からアプローチしていくと、プロレスはまた二倍・三倍と楽しいものになっていくのです。