[プロレス] プロレススーパー仕事人列伝⑫ 吉村道明編・2
1971年のアジアタッグ戦
今回はある意味吉村道明さんの代名詞ともいえるタッグ戦から一本ご紹介したいと思います。1971年のアジアタッグ戦、坂口征二&吉村道明対ドリー・ファンク・ジュニア&ディック・マードックの60分三本勝負です。
日本プロレス時代に猪木さんとともに保持していたアジアタッグのベルトを、猪木さんの負傷によって返上、同時にタイトル戦にクレームをつける形で再度挑戦権を得たドリーファンクジュニア(当時NWA世界チャンピオン)とディック・マードックのチーム。
対して前チャンピオンの吉村さんは新鋭の坂口征二さんをパートナーにして王座決定戦という形で挑んだ試合です。ちなみにこの試合はアジア戦の百戦目にあたる試合なんだそうです。
投げで反転
一本目序盤でマードックと吉村さんの実に味わい深い攻防が見られます。首四の字に切ってとったマードックの攻めを抜け出そうとする吉村さんに対し、マードックは腕攻めで切り返しますが、吉村さんはこれを投げで反転させ、あっという間にマードックのリストを固めてしまいます。
そこからすかさずアームバーに移行する攻撃はさすが実力者といえる攻撃です。対してタッチして出てきた坂口さんはまだ若さが目立ち、あっという間にドリーのデスロックで窮地に落ちます。
うまくフォロー
ここでいっておきたいのは、実をいうとこの三本勝負で勝ちも負けも坂口さんが記録している点で、よくイメージされるように日本サイドは吉村さんが一本取られて、相方のスター選手が取り返すという流れにはなっていないことですね。
確かにこの当時の坂口さんは将来を嘱望されたスター候補生でしたが、スターではなかったということですね。職人マードックや名人ドリーのレスリングにたびたび翻弄されるのですが、そこを吉村さんが実にうまくフォローしていますね。
しつこく離さない
9分過ぎに再び吉村さんの出番が来てマードックと対峙しますが、ここでのフロントヘッドロックは坂口さんがヘッドロックで攻めた続きを、吉村さんがやっています。注目すべき点はマードックが投げで跳ねのけようとしてもしつこく離さない吉村さんの技量にあります。
とうとう根負けしたマードックがコーナーポストに吉村さんを座らせてクリーンブレイクし、そのままドリーにつなぐのですが、ドリーはアトミックドロップで吉村さんのヘッドロックをほどくと、ブリッジ付きのデスロックでかなりえげつなく吉村さんの足を決めにいきます。
攻防の密度の濃さ
スピニングトーホールドではなく、徹底した足殺しを仕掛けている点で、ドリーが吉村さんを相当警戒していることが見て取れます。この足殺しが功を奏して、坂口さんのピンチに吉村さんのカットが遅れ、一本目を許す結果となるのですが、この一本目の攻防の密度の濃さは思わず見入ってしうほどですね。
結果は三本目も日本サイドがとって坂口さんが国内で初戴冠することになるわけですが、やはり吉村さんの好サポートが随所に光る試合だなと私は思います。難敵であるドリー・マードックという挑戦者を退けるには、やはり実況席で遠藤幸吉さんが盛んに言っている「根性」だけでは難しいと思うんですよね。
まさに火の玉
やはりスター選手を立てるのには確かな技量と受けの強さを兼ね備えていないと、難しいわけです。
三本目で逆転の口火を切る形になった吉村さんのフロントキックは、まさに火の玉という表現がふさわしいすさまじさで、世界チャンピオンドリーを軽々とフっ飛ばしています。
ここに吉村道明の真骨頂が見られると私は思っています。まさに仕事人の中の仕事人、吉村道明!私のとって最高に格好いいレスラーの一人であることは間違いないですね。
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