プロレススーパー仕事人列伝①トニー・セントクレアー編.1
プロレスの職人とは?
プロレスにおいて職人とされる選手というのはどういうイメージがあるでしょうか?あなたはどんな選手をイメージされますか?
私は主に関節技の使い手=職人と呼ばれているケースをみかけることが多々あります。確かにそれは必要な要素ですね。実は一時期まで私もそう考えていた時期がありました。ですからそれは否定しません。
職人=仕事人
だが、しかし私が考える職人とはそれだけではないのです。強いて言い換えるなら仕事人という感じですね。どんなカードに組み込まれても一定のキチンとした仕事をこなせる事。それがやはりプロのレスラーに必要な条件ではないかと私は考えています。
そこへいくと、新日本プロレスに来日していたトニー・セントクレアーは私の考える職人像に近い選手であると言えます。主にヒールサイドで、ですが、どんな選手と組んでも一定以上の試合クオリティを提供します。
価値は下がらない
そしてスーパースターと呼べる選手より決して目立ちません。動けてテクニックもあり、簡単には仕留められません。
また仮に負けたとしても、強さを売りにしていない分、価値は下がりません。もしトニーに変なプライドがあったなら「あの選手とのタッグはNG」とかいう条件も出していたかもしれません。
しかし、あれだけ多種多様な選手と組めていた事実から考えるとNG事項もなく、色んな選手とコミュニケートできる能力が高いと考えられます。
オファーしやすい選手
これはプロモーターや団体側からすれば非常にオファーしやすいということになります。また怪我もしにくく、欠場によるカード変更もあまりないことなども、高得点がつけられる理由としてあげられるでしょう。急なカード変更にも対応できる順応性の高さもポイントが高いですね。
日本人が想像する職人とは自身の腕に絶対の自信があり、まわりに自分の流儀を押し付ける悪い意味でのガンコ職人というイメージがあるかとは思います。もしそれを職人と呼ぶのであれば、トニー・セントクレアーは「仕事人」と言い換えても良いでしょう。
テクニックありき
このような選手がカードの中にいると捨てカードみたいな6人タッグでも非常に内容が締まります。しかし、昨今のスター選手ばかりが組んだ多人数タッグの場合、全員が出てきて数分の顔見せで終わるパターンが少なくありません。プロレスの中では一番つまらないケースですね。
例えば獣神サンダー・ライガーのような選手の場合、彼自身が大スターでありながら、後輩選手をキチンとたてて、率先して汚れ役、やられ役を引き受けることも少なくありません。もっともそれだけ相手の技を受けても壊れない体とテクニックありきだからこそできることでもあります。
プロレスとは
上の映像は1988年のイギリスはウェールズのケーブルテレビS4Cで流れていたと思われる、スティーブ・リーガル(後のWWE、ウィリアム・リーガル)とトニー・セントクレアーの一戦です。14分の試合時間の中でそのほとんどを腕取り、首取りに費やしています。
まだ若手だったころのリーガル卿に「プロレスとはこういうものだよ」とトニーが教えているかのような試合展開です。中盤の逆さ抑え込みをトニーがこらえるシーンなども地味な技がものすごく説得力をもつシーンだと思います。私はこういう試合が大好きですね。
2人とも特別な関節技も使っていません。ただ単純に3カウントを狙って試合をしています。
本来の面白さ
ギブアップを狙う競技はほかにもありますが、カウント3つをとって勝つというプロレス本来の面白さがぎゅっと詰まった試合ですね。
もちろんロープワークもありますが、今のリーガル卿からは想像もつかないくらい、跳び技に固執しています。
仕事人レスラー
しかし、トニーが飛んでいくシーンはほとんどありません。あくまでもカウント3つの攻防を粛々とこなす仕事人同士のシングルマッチとして非常に見応えがあります。やはりプロレスというのはこうでなくては面白くありません。
イギリスのプロレスがまだ息づいていたころの非常に貴重な映像だと思います。
やはりのちにリーガル卿が、ヨーロピアンレスリングに固執し、そのままスターになっていった源流がこの試合にもあるような気がします。そのスターを相手に一歩も引かなかったトニー・セントクレアー。やっぱり彼は仕事人レスラーだなあと思いますね。
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