新日本プロレス・レスリングどんたく 2016観戦記(2016/05/03(火) 17:00 福岡・福岡国際センター | 観衆 5,299人(超満員)
最近は比較的晴れの日が多いレスリングどんたくだが、今年は雨天。しかも、大強風吹きすさぶ荒天。ダイヤは乱れまくり、強風で前日購入した傘は3秒で曲がり、使い物にならなくなる有様。
幸い気温が高めなのは幸いしたけど、海沿いの国際センターでこの強風はさすがに参った。
しかし、それでも会場外の売店と入場を待つ列は例年より多少少ないものの、変わらず一定数いるのである。
さすが国内最大手!しかし、WWEはこの10倍のスケールなんだよなあ。福岡ドーム開催は毎年噂に上がりながら、今年もない。
だが、やはり世界に照準絞るならやはりドームツアーは最低必須だろう。それはかつて新日本が通ってきた道であり、未体験ゾーンではない。
どんたくは菅林会長が思い入れを込めて続けている大会なんで、昨年みたいに間引かれた地方大会みたいなカードでは、レスリングどんたくの名が泣く。
中邑、AJスタイルズ、アンダーソン、ギャローズらの脱退を受けてやっとなんか本腰入れてきたけど、こういう離脱劇がないと、スイッチが入らないのも新日本ならではの悪い伝統である。
本当ならWWEに追撃できるタレントを揃えながら、世界二位に甘んじている現状は重く受け止めてほしい。
あと、地震の募金もしていたけど、阪神大震災の時は選手のサイン色紙を購入すると、その売り上げが全額被災地にいき、お客は選手と握手ができる特典があった。そういうのは積極的に復活させてほしい。震災を利用するのではなく、記憶に刻む意味で単なる募金ではなく、後世に形として残るからである。
第1試合20分1本勝負
ジュース・ロビンソン
×キャプテン・ニュージャパン
[02分26秒]
グラネード→片エビ固め
高橋 裕二郎
○バッドラック・ファレ
第一試合はその大会のキモという扱いになっている昨今、こういう箸にも棒にもかからない試合を持ってこられても反応に困る。昔の新日はあれでも若手の熱い試合があってそれなりに核ができあがるんだけど、この試合は正直何にもなっていない。
キャプテン対ファレになった時点で、いくらキャプテンが下から回転エビ固めや、地獄突きを食らわせても、ファレがカウンターラリアットで報復して、もうここで試合が終わるなというのがまるわかり。案の定、ファレが串刺しボディアタックで追撃すると、グラネードで一気に勝負を決めた。
2分しかないのに、時間の無駄でしかなかった。しかしキャプテンもそうだが、ロビンソン以外の選手があまりに淡々と試合していたのが気になった。
キャプテンはあれでいいかもしれないがロビンソンがあまりに気のどくすぎる。
第2試合20分1本
×デビッド・フィンレー
ジェイ・ホワイト
田口 隆祐
タイガーマスク
[07分23秒]
オスカッター→片エビ固め
外道
○ウィル・オスプレイ
YOSHI-HASHI
桜庭 和志
前ならこの試合が第0試合という扱いなんだろう。しかしこの位置にいて桜庭の名前があるのは何とも寂しい。
だが試合は意外にも格闘系の四代目タイガーが桜庭と激しくやりあう意外な副産物も!この絡みはできたら継続してみたいけど、桜庭の参戦スケジュールではこれをストーリー化はできないだろうなあ。もったいない。
試合が格闘系になると、意外と期待していた田口が割を食う形に。田口もいまが旬の選手だからこんな使い方はしなくてもいいのになあ。
個人的にはオスプレイとか伸び盛りの若手にもう少し活躍して欲しかったかな。オスプレイはフィンレーをコーナー最上段へ固定し、トラースキックをお見舞いしたり、場外の田口たちをサスケスペシャルで押ししたりと、下旬からのスーパージュニアへのアピールタイム的な動きに終始していた。
が、今では空中戦って誰でもやっちゃうんで、それ以外で何かみたかったかな?この試合にもあまりテーマらしいテーマは感じられなかった。
第3試合60分1本勝負
IWGPジュニアタッグ選手権試合
(チャレンジャーチーム)
マット・サイダル
○リコシェ
[16分26秒]
シューティングスタープレス→片エビ固め
※リコシェ&サイダルが新王者に。
(第46代チャンピオンチーム)
×バレッタ
ロッキー・ロメロ
このジュニアタッグはビッグマッチの前座が定位置になり、しかも4WAYが当たり前みたいなぞんざいな扱いのおかげですっかり権威を失ってしまった感がある。
正直NXTみたいに別ブランドで用意されたステップアップのためのタイトルでもなし、NEVERシングルみたいに歴代王者が意味合いを変えて、印象を強くしたわけでもない。
人間離れしたクオリティの空中戦は毎回素晴らしいのだが、最近はそれすら記憶に残らない。これでは何のために身体を張っているのかわからない。
やはりタイトルの在り方を考えると最低限通常のタッグマッチにするべきであったのだと思う。
で、実際試合を見てみてつくづく今までの4WAYってやる意味あったのか?という疑問しかわかなかった。
この4人が普通のタッグマッチの定石を踏んだ試合ができていたからだ。
序盤はじっくりとグラウンドで攻め、中盤から終盤で空中戦で競い、最後はタッグワークの妙で締める典型的なタッグマッチ。違うのはやはり無重力のような空中戦がハイライトになっていることぐらい。
何度も書いてきたが、ジュニアタッグの衰退を招いたのは3WAYや4WAYの乱発にあったことは疑いようがない。こんなまっとうな選手権試合ができるんだから、今後はいっそのこと封印してもいいんではないだろうか?
第4試合60分1本勝負
NEVER無差別級6人タッグ選手権試合
(第5代チャンピオンチーム)
×ヨシタツ
棚橋 弘至
マイケル・エルガン
[14分03秒]
片翼の天使→片エビ固め
※ケニー&ヤングバックスが新王者に
(チャレンジャーチーム)
ニック・ジャクソン
マット・ジャクソン
○ケニー・オメガ
新日本初の6人タッグベルトというのは、増える一方の新日本のタイトルの中では、比較的存在意義を見出しやすい王座である。
しかし、伝統的にシングル中心で歴史を重ねてきた新日本にはやはりどこか似合わない感じもする。
不思議なもんで6人タッグの魅力を生み出してきた全日系で6人タッグ王座を作ったのはWARだけ。
どっちかというと新日本の6人タッグは地方大会の顔見せや、ビッグマッチ前の前哨戦という使われ方をしてきた歴史から、あまり意味が見出しにくいというのもあるかもしれない。
ましてや、エルガンはまだしも、ヨシタツみたいに使いづらいタレントに、なんらかの箔付けするとしたらこういうことしかできないという限界みたいなものも感じてならない。
年末のタッグリーグで正パートナーになったエルガンと棚橋との連携はスムーズにいくのだけど、ヨシタツがでてくると試合のリズムがとたんに崩れてしまう。これでは6人タッグのチームとしては機能不全になっているといっていいと思う。
まあでもこの試合の肝は実をいうと新チャンピオン側にあったといってもいい。
The Eliteは昨年からでてきたバレットクラブ内ユニットであるが、もともとジュニア枠で戦っていたヤングバックスとケニーがジュニアユニットではなく、対ヘビーユニットとして、自分たちこそがバレットクラブの一軍なんだという自己主張をしはじめているようにも見える。
そのためにもインターコンチとこの6人タッグベルトのコンプリートは、The Eliteにとって必要なミッションであったといっていい。こっちの方はヨシタツ救済とかいうネガティヴなモチベーションよりはるかに能動的だし、必然性もある。
そして試合後再挑戦を迫る棚橋に対してこの試合でも散々介入させたラダーに上ったケニーが「ラダーマッチでなら」という条件を出し、これを棚橋が受けたため、次回のインターコンチは新日初のラダーマッチになることに決定した。
しかし、ラダーとケニーの相性はもはや恋人以上といっていいだろう。マイクでは「Welcome to the american wrestling」といっていたけど本当は「DDTワールド」へのいざないへの意味があることなのは、DDT時代を知る者にとっては容易に想像がつく話。
確かにDDT在籍当時はMIKAMIというラダーのスペシャリストがいたせいで、ラダー=ケニーという想像はしにくいかもしれない。しかし彼はなんといっても「カナダの路上王」であり、こういう試合形式は得意中の得意。シングルマッチだけど、今の時点ではラダー&ケニー対棚橋のハンディキャップマッチにすらなっているのではないか?
この状況を辛酸なめつくしてきた逸材がどう覆していくのか?今後のなりゆきに注目したい。
第5試合60分1本勝負試合
IWGPタッグ選手権試合
(チャレンジャーチーム)
×本間 朋晃
真壁 刀義
[12分12秒]
ゲリラ・ウォーフェア→片エビ固め
※タマ・トンガ&タンガ・ロアが初防衛に成功。
(第70代チャンピオンチーム)
タンガ・ロア
○タマ・トンガ
わたしが未だに本間人気にしっくりこないのは、やはりこけしの危険性がある。tプ部を使う攻撃はあまりにリスクが高い技だから。
頭突きといえば今では藤原組長だが、その前は大木金太郎さんの代名詞であった。その大木金太郎さんの晩年は半身付随でお世辞にも恵まれたものには見えなかった。
ダイビングヘッドバットで一世風靡したハーリー・レイスやダイナマイトキッドも今や車椅子生活である。
そういうレジェンドの晩年の姿を知れば知るほど今のこけし人気には違和感しか感じられない。
ましてや自爆してナンボみたいな風潮があるのにも嫌悪感すらある。お客のリクエストどおりに動く本間に対してもそうである。
だからどうしてもこのタイトルマッチに関していうとあまり印象に残らなかったというか・・・正直トンガ兄弟がとっても真壁たちがとっても、次に誰が挑戦すんだろうというわくわく感がこの王座にはないんだよなあ。
第6試合60分1本勝負
NEVER無差別級選手権試合
(第10代チャンピオン)
×柴田 勝頼
[11分53秒]
バックドロップホールド
※永田裕志が新王者に。
(チャレンジャー)
○永田 裕志
皮肉な話だが、熊本大会が中止になり代替開催として振り分けられたカードがこれ。本来は実現していなかったのだから、熊本の方々には申し訳ないが、このカードが入ってやっとレスリングどんたくらしくなったかな、とも言える。
まあ、永田が本戦に出られず第0試合でお茶を濁していたことを考えると、本筋に絡むのは多分博多ではG1以来かな?
これまで第三世代の挑戦をことごとく退け、驀進してきた柴田が第三世代討伐を果たせるか?それとも最後の一花を咲かせて永田の春が来るか?
試合を見ていて思ったのは本当に柴田が楽しそうに見えたことだった。一時はプロレスに嫌気をさし、退団して総合へ転出。しかし求め続けた「強さ」は柴田をしばり、足かせにさえなった。
望まないプロレスリターンだったかもしれないが、今の柴田は芯から望んだ戦いを喜々としてやっているように思う。
その10も年下の柴田にムキになってつっかかっていける永田もステキだなと思った。たぶん体力的にはあの動きをキープするのは相当きついはずである。
アンチエイジングがかつての柴田の「強さ」みたいに足カセになる可能性だってあったのに、その難行をこちらもうれしそうにやっている。
これならどっちが勝っても文句はない。お互いが似た系統にあるせいか、NEVERらしい意地の張り合い的な攻防も織り交ぜていたし、永田はあえて白目も封印していた。それはたぶんこのタイトルと柴田に対する敬意であったのだろう。
さてこの結果を受けて、だれが挑戦してくるかなんだが、第三世代活性化に針を振るか?世代闘争を継続していくか?どっちにしても新チャンピオンなら新しいNEVERの闘いをみせてくれそうである。
第7試合60分1本勝負
IWGP Jr.ヘビー級選手権試合
(第73代チャンピオン)
○KUSHIDA
[14分37秒]
リストクラッチ式ホバーボードロック
※KUSHIDAが4度目の防衛に成功。
(チャレンジャー)
×獣神サンダー・ライガー
第三世代より一回り以上も上の、初代ヤングライオン世代がライガーである。武藤や蝶野がセミリタイアし、第三世代も隠居を迫られている昨今、昨年のWWE登場で健在ぶりを証明し、今なお第一線で気を吐くライガーは、私的には同年齢の希望の星である。
ただ、ライガーがあまりに普通に第一線で活躍しているせいか?しばしば自分の年齢も忘れそうになるのだが、正直いえばもうお互い年齢的に老境の域にあるのは間違いない。
しかし、抗いようのない時間の経過をやすやすと飛び越えてくるライガーの勇姿をみるたびに本当に頭がさがる。
その時間さえ超越してくる獣神をタイム・スプリッターズであるKUSHIDAが迎え撃つのも興味深い。そして今の時流にあらがうかのように、実にストロングなジュニアの攻防を二人は見せてくれた。
KUSHIDAの本来の持ち味は空中殺法ではなく、実はライガーをも追い込める関節技にあり、そこに自信をもっていることは、この試合で2人が一回もコーナーから飛ばなかったことで証明されていると思う。
安易に空中殺法を安売りすることは本来のジュニアの闘いからは違うものになっていく危惧は、私もずっともっていた。でも現役の選手で、しかも今の時点でのチャンピオンがそれを自覚しているということがわかっただけでも大きかったと思う。
たぶんKUSHIDAならライガーでなくてもこうした試合でお客を沸かせることはできると思う。やはりジュニアの試合はこうでないといけない。空中殺法も悪くはないんだけど、そればかりに偏りすぎてはダメなのだ。
だから心の底からライガーを応援していたけど、KUSHIDAが勝った事実にも納得がいった。
しかも「ぼくの時計で時間を止めましたので、最終章などといわずいつまでもライガーでいてください」というKUSHIDAに「お前が本気でそう言ってくれるならもう一回チャンスをくれ!そして今度こそベルトを巻いてみせる」と大人げなくおお放ったライガーもステキだった。
プロレスでハッピーになれるっていうのはこういうことをいうのかもしれない。
第8試合30分1本勝負
スペシャルシングルマッチ
×後藤 洋央紀
[09分53秒]
EVIL→体固め
○“キング・オブ・ダークネス”EVIL
前の2試合がとにかく素晴らしい内容で大歓声に包まれたこの空気を頼むから壊さないでくださいでくれ、と祈るようにみていたこの試合。
意外にもEVILの試合巧者ぶりがいかんなく発揮された試合展開にひとまずホッとした。それにしても今のEVILには渡辺高幸の面影はかけらもない。カマイタチを見た時も衝撃だったけど、最近の新日の若手は海外へ行くとおおよそ変身に成功して帰ってくるイメージがある。
ここまで試合を圧倒的に支配できるレスラーになっていようとは想像外だった。
にしても後藤である。
場の空気をクラッシュさせたら今の後藤の右にでるものはいない。
あれだけのキャリアがありながら試合をリードできない不器用さと、技の破壊力を増すために作るタメが、一呼吸間をあけてしまう欠点はCHAOSにいっても変わっていなかった。
牛殺しも昇天・改も「あたればホームランだが、外れたら空振り三振」系の技なんではずされたり読まれたりした場合のリスクが半端ない。
だが、後藤はどうもそれに無自覚であるようにしか思えない。
学習できないとか、懲りないとかいう問題ではなく、考えすぎて何が問題なのかを自分でわからなくしているようにしか見えないからだ。
後藤の場合は一回何も考えないで試合をしてみたらいいとは思うんだけど。今のままだとどうにもこうにもならないまま終わりそうでなんか惜しいのだ。
第9試合30分1本勝負
スペシャルシングルマッチ
○オカダ・カズチカ
[15分11秒]
レインメーカー→片エビ固め
×SANADA
この試合は武藤の遺伝子をもつ真田改めSANADAがロス軍の一員としての正式なデビュー戦となる。
真田については正直ただ、フリーで各団体に参戦するだけではなんかもったいない感じがしていた。
3月の大日本の一騎当千でみたSANADAはまだ真田聖也だった。外観はかなり変わっていたけど、まだ我々が知る真田だったのだ。
フリーランスになるとお声がかかるところにお仕事としてあがるだけになり、なかなかライバルストーリーが作りにくい。そもそも全日時代にもこれといったライバルに恵まれず、フリーになってもなかなかメインストーリーに絡めないでいる真田は見ていてもどかしく思えてならなかった。
そこでオカダの存在がでてくる。同学年の28歳同士で、海外経験もある。しかしかたや明日をも知れぬフリーランスであり、かたや団体を背負って立つスター選手のひとり。
SANADAが噛み付く理由としては十分すぎる動機があるわけだ。真田が単純にヒール転向してSANADAになったわけではないのである。
その思いの丈をSANADAは思い切りぶつけていた。オカダにしても自分と同学年や同年代のライバル登場にどこか期待していたのだろう。
いつもなら理詰めで攻めるオカダに久々に若者らしさを感じられたからだ。
とはいえ、同年齢のライバルになりうるというだけで、やはりタイトルマッチを数多くこなしてきたオカダにはどこか余裕があったし、SANADAもヒールにはなりきれてはいなかった。
いい試合はしていたけどオカダを焦らすところはついに見られずじまいだった。
ただSANADAには真田聖也にはなかった可能性を感じることもできた。そこは大きな収穫である。伸びソロがあるという点では近い将来オカダの牙城を脅かす存在の芋なれるだろう。
そこは多分これから全日時代からの同士でもあるBUSHIに指南されていけば、解決していくと思われる。
単純に内藤哲也のボディーガードで終わるようではSANADAになった意味がない。そこはこれからSANADAが成長していく上で忘れてはならないことだと思う。
第10試合60分1本勝負試合
IWGPヘビー級選手権試合
(チャレンジャー)
×石井 智宏
[30分33秒]
デスティーノ→体固め
※内藤哲也が初防衛に成功。
(第64代チャンピオン)
○内藤 哲也
正直ロス軍の乱入とそれを阻止せんとするCHAOSの乱闘でぐっちゃぐちゃな試合になるであろうという予想をしていたため、全く期待しないでいたメインは、あろうことかこちらのあきらめを打ち砕いた名勝負になった!
正直名勝負になるなら石井が主導で、内藤はついていくだけだという予想もしていたが、私が想像する以上に内藤はしたたかかつ、凄いレスラーになっていた。
序盤で徹底的にすかす内藤に、20年選手の石井はなかなかリズムを作れない。が、しかし様々な団体で辛酸を舐めてきた体験は伊達ではない。
内藤の古傷である膝に集中放火の関節地獄!だが、普通ならそれをトランキーロとばかりに場外に出たり、セコンドを介入させてくる内藤が、タイマン勝負に出たのだ!
何方かと言えば制御不能な面ばかりがクローズアップされがちだが、内藤には予測不能という側面もある。それを見ている我々に完全に悟らせないで場を支配し始めていたのだ。
戦前散々「消化試合」宣言していたのもおそらく周到に用意した内藤の作戦だったのだろう。
予想したであろうセコンド対策で、前試合からそのまま居残りでセコンドについたオカダや外道も面食らっていたのかもしれない。
中盤レフェリー不在にしてセコンド介入→CHAOS乱入という流れも確かにありはしたけど、それも内藤の計算だったような気がしてならない。
なぜなら、両軍のセコンドが退場してからが、このメインの本番だったからだ。なおも執拗に膝を攻める石井に内藤は頭突きで応戦!
まさか石井の土俵で内藤が仕掛けてくるとは思いもしなかったが、当然自分の土俵に入られた以上、石井がスリーカウントを大人しくきくはずもない。
だが、そうして浮き足立った石井に終盤隙ができはじめていた。そこからは自分の土俵で仕留めらない焦りや、かつての内藤からは想像できない本来の内藤がベビー時代にももちながら開花しなかった才能を、開き始めている事への恐怖がみてとれた。
執念に関しては負け知らずの石井が自分の土俵に上がられてしかも敗北を喫するとは!そして消化試合などする気がサラサラなかった王者の奥深い頭脳派レスリングに我々すら完璧に騙された!
終わってみれば30分超えの大熱戦!これぞレスリングどんたくのメインに相応しい試合であった。
試合後、噛み付いてきたオカダには「トランキーロ」で切り返し、返す刀でオーナー批判と終わってみれば内藤ワールド一色!
これは大誤算でもあり、同時に嬉しい出来事でもあった。内藤はまさしく正統なチャンピオンであり、今日の試合をみたらとてもじゃないが「顔じゃない」なんて言えやしない。
しかし、あの塩漬けになりかけていた内藤がよもやの大化けを果たすなんて、プロレスを40年以上見続けていながら予想すらできなかった。
改めて人間の可能性の奥深さと、内藤哲也の才能に白旗をあげる以外にない。いや、まいりました。
本当にいつの間にか内藤が王者の器になっていたのにはひたすら驚いた。内藤ブームが一過性のものでないことはこの日それでもでていたブーイングを実力でかき消した内藤の試合運びで証明されたと思う。
そしてNEVERの枠を超えた石井もまた立派な挑戦資格を持つ選手であることがこの日証明された。このリマッチなら正直どこであっても見てみたいと思う。きっと消化試合になんかならないことだけは保証できると思うからだ。
とはいえ、オカダ対石井はないから、やっぱり内藤とオカダが軸になるしかないんだけど、それでも昨年のことを思えば、これだけ離脱者がでてなお、チャレンジャーには困らないというのもすごい話である。
あとはこの熱を高めていけばドーム復活も夢ではないだろう。素晴らしい大会だった。こういうのがみられるとプロレスファンでよかったなあと本気で思えるのだ。