プロレス的音楽徒然草 Theme from ‘Battlestar Galactica’
驚異のハイノート
今回は、メイナード・ファーガソン(Maynard Ferguson)のアルバム『CARNIVAL』に収録されている「Theme from ‘Battlestar Galactica’」をご紹介します。
1928年にカナダで生まれたファーガソンは、超高音域を正確に吹きこなす「ハイノート・ヒッター」として、ジャズ界で唯一無二の地位を築いた伝説的トランペッターです。13歳でプロの楽団のソリストを務めるなど神童として頭角を現し、21歳でアメリカに渡ると、当時最先端だったスタン・ケントン楽団に参加。そこで「スクリーマー」としての評価を決定的なものにしました。
1954年にはパラマウント・ピクチャーズに入り、映画『十戒』の劇伴でリードトランペットを担当。その後も、テレビ番組のBGMや映画『ロッキー』のテーマ曲(Gonna Fly Now)のカバーなど、ジャンルの枠を超えてお茶の間に浸透する名演を数多く残しています。
浸透したカバー版
そんな彼の楽曲は、日本のプロレス・格闘技界やテレビ番組と非常に深い縁があります。本作「宇宙空母ギャラクティカ」(Theme from ‘Battlestar Galactica’)もその1曲で、世界的スーパースター、ハルク・ホーガンの新日本プロレス参戦時のテーマ曲として語り継がれています。
もともとは同名SF映画のテーマ曲をファーガソンがブラス・ロック風にカバーしたものですが、迫力あるホーンセクションと疾走感あふれるアレンジによって、今や「本家」を凌駕するほどの知名度を誇っています。
ちなみに、当時は『スター・ウォーズ エピソード4』に端を発するSFブームの真っ只中。ブームに沸く中、二匹目のドジョウを狙って作られた(?)スペースオペラのひとつが『ギャラクティカ』という作品で、映画のほかにテレビシリーズも放送されていました。
筋肉繋がりの選曲
なぜか放送時の邦題は「ギャラクティカ」ではなく「ギャラクチカ」になっていたのが、どこか野暮ったい感じがして、実は映画はおろかテレビシリーズも今まで観たことはありません。 ただ、やはりSF映画ブームに沸く70年代後半から80年代のムーブメントを語る上で『宇宙空母ギャラクティカ』は外せない作品です。
余談ですが、この曲はホーガン以前に、同じくマッチョマンタイプのレスラーであったスーパースター・ビリー・グラハムの入場テーマでもありました。すでにスターであったグラハムはともかく、当時まだ一介の若手に過ぎなかったホーガンに同じ曲を当てたのは、おそらく「筋肉つながり」だったからかもしれません。
闘志を彩る名曲群
実はファーガソンの楽曲が日本のリングや茶の間で鳴り響いた例は、枚挙にいとまがありません。 「熊殺し」ウィリー・ウィリアムス選手は「Chameleon(カメレオン)」を使用していますし、マスクド・スーパースター選手は「The Fly(ザ・フライ)」、ボブ・バックランド選手は「Pagliacci(道化師/パリアッチ)」、ドン・ムラコ選手は「How Ya Doin’ Baby?」、ケン・パテラ選手は「It’s My Time」と、錚々たるレスラーがファーガソンの音を背負って戦いました。
また、ボクシング界では具志堅用高氏や比嘉大吾選手が「Conquistador(征服者)」を、プロレスでは百田光雄さんが「Gonna Fly Now(ロッキーのテーマ)」を使用した例もあります。
テレビ界でも『アメリカ横断ウルトラクイズ』のあの有名なファンファーレは「Theme From Star Trek(スタートレックのテーマ)」の終盤部分ですし、『高校生クイズ』の「Hollywood」など、私たちは無意識に彼のハイノートを耳にしてきたのです。
闘魂を揺さぶる音
ただ、言うまでもなく「ギャラクティカ」と筋肉は全く関係ないですし、ファーガソンの音楽性とも本来は無縁のはずです。 しかし、これほどまでにプロレス会場や勝負の場にフィットしたのは、彼の音楽が持つ圧倒的な「パワー」と「高揚感」が、観客のボルテージを最高潮に引き上げる力を持っていたからです。
知らない人が聴けば「凄腕ジャズ屋のインスト曲」なのですが、プロレスファンやテレビ視聴者が聴けば、たちまち熱狂の記憶が呼び覚まされる。まさに、音楽が競技や番組のイメージを増幅させ、新たな価値を生み出した好例ですね。
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