DRAGON GATE~TRUTH GATE 2015
(2015年2月1日・福岡・博多スターレーン)
イントロダクション
年末にドラゲーで締めて、年初の観戦もドラゲーだった記憶はたぶんはじめてのことだと思う。今までは下関に年二回も来る団体だし、と思ってあまり積極的には観には行かなかったけど、年末の鷹木対ハルクにはいろいろ思うところがあって、今回久々にスターレーン大会に足を運んでみた。
まあテレビがついている強みもあって、新日以外では毎回全面使用で満員にしている団体は今のところドラゲーだけである。とはいっても、テレビカメラが届かないところに、うまい具合に隙間を作って椅子を並べているので、本当に会場をぎっしり使っているのはやはり新日だけだろう。
テレビ優先の作りがあちこちに施してあって、機材があるところには絶対選手は乱闘に行かなかった。
オープニング
それはいいんだけど、開場時から場内のライトをきって、ライトアップしているせいで、中が暗い。入る時にすごく入りにくかったし、出入口を一か所にしているせいで、休憩中人が押し寄せて結構大変なことになっていた(終了時も当然出づらかったし・・・・)。
その上、フロアに売店を作っていたこともあって、余計狭くなっていたし、あれだけ隙間があるんであれば、別に会場内に売店作ってもよかったように思う。15年もやっているのであれば、やはりこの辺は観客ありきで一工夫をしてもらいたいんだけど。まあ絵作りのために人を入れてるんだから、その辺はどうでもいいのかな?
ちなみに他団体だと北側にカメラをすえて、北側正面で試合をすることが多い。だがドラゲーは入退場口がある南側にカメラがあって、これも出入りに邪魔。このあたりにドラゲーの博多大会から足が遠のいた原因があったように思う。しばらく来てなかったんで忘れていたけど。
【第1試合】
T—Hawk&U—T&×Kotokavs堀口元気H.A.Gee.Mee!!&○ジミー・ススム&斎藤“ジミー”了
(13分34秒 ジャンボの勝ち!→体固め)
事前にフラミータの帰国にともなってKotokaのミレ二アルズ入りが発表されていたが、正直これには違和感があった。やはりインパクトのあるユニットは可能な限りオリジナルメンバーでやるか、ベテランを補充したMAD BLANKEYのように違和感を前面に出して売っていくかかしかないと思う。それをやらないでいくと、中途半端なユニットになりかねない。メキシコからの逆輸入ファイター同士が組んだところにミレ二アルズの意義があったと思うので、やはり安直なメンバー補強に走ったのは残念な感じがした。まあ、戦力的にMAD BLANKEYと対抗するには人数も必要だったろうけど、そこはやはりMONSTER EXPLESSのように人数減っても頑張ってるユニットをみてると、もう少しなんとかやりようがあったような気がするんだが…新規加入したKotokaから「ミスターハイテンション」を引いてしまうといたって普通の選手だよなあという感じもしたし。
対するジミーズが定番を忠実に守って(まあゴムが途中で切れたのはマジで誤算だったと思うが)いただけに、対極的だったというか、メンバー補強が裏目に出てるような感じしかしなかった。なんとなくだけど、序盤からジミーズはKotoka狙いでいっていたようにも見えたし、それがわかっていながら手が出せなかったミレ二アルズの経験の浅さも浮き彫りになってみえた。わかっていながらジャンボの勝ちという一手をもっていたススムが勝つのもいたって当然の結果というか。つまり新鮮味があるはずの新戦力が全然新鮮味にかけていた時点でミレ二アルズに勝ち目はなかったように思うのだ。
【第2試合】
ヨースケ・サンタマリア&×エル・リンダマンvsジミー・カゲトラ&○Mr.キューキュー“谷嵜なおき”豊中ドルフィン
(12分3秒 車懸り)
せっかく林悠河という名前が定着しはじめた時点でのユニット参加→リングネーム変更(エル・リンダマン)というのは林(あえてそういうけど)にとってどんなメリットがあったのだろう?どうせならマスクマンにでも変身してインパクトを出すとかした方がよかったのではないか?年齢的にはKotokaよりミレ二アルズに入った意義らしきものはまだ見いだせたけど、やっぱり対戦相手が安定しているジミーズだとどうしても急造タッグという感じしかしない。
ましてや林のパートナーがマリアというのも気の毒だった。正直マリアにとって後輩を引っ張って試合を作った経験がそんなにないのだろう。ジミーズのおぜん立てで連携らしきものは多少みせられたけど、マリア自身が林のよさまではひきだせていなかった感じがした。そういう先輩と組んでいくことが多くなるミレ二アルズというユニットで果たして林が清水のような大化けをしていくかどうかというと、ちょっと不安なのだ。この辺がもったいないよなあ。まあドラゲーの場合ユニットの離合集散は日常茶飯事なんでいずれ林にも大化けするチャンスは巡ってこようけど。
【第3試合】◎オープン・ザ・ブレイブゲート選手権試合◎
《王者》○Kzy vs 《挑戦者》×問題龍(11分37秒 KZ time)
Kzyの場合、移ったユニットがベテラン・若手が混在しているDia. HEARTSというのがよかったと思う。人数も増えてベテランヒール軍化したMAD BLANKEYにいるよりは、移籍してベビー転向していくというのはタイミング的にもいい感じだったと思うし、フラミータ不在の中、ブレイブゲートの新しい顔としてKzyはうってつけの逸材だと思う。まあ問題龍とかパンチ富永とかいう連中を光らせるには彼くらいの実力がないとちょっと王座戦としては物足りなくなっただろう。
Kzyがトペ・スイシーダを放つと、問題龍はイスを持ち出してブチ当てる暴挙にでていたし、さらには金具ムキ出しのコーナーに叩きつけ、飛びつきDDT、コーナーに首を固定してのドロップキックも放つなど、随所で問題龍にブーイングが飛ぶようにやられていくKzyを見ているとベビー転向は正解だったなと思わずにはいられなかった。問題龍もヒールとしてはいきいきしていたし、塩攻撃であれだけ反感買った経験はそうないんではないだろうか?
試合後、サイバーが「おい裏切り者のKzy、俺らを裏切った罪は重いぞ。俺たちMAD BLANKEYを敵に回したらどないなるかわかったか。Dia. HEARTS、お前たちはなんとかブレイブ、守ったかもしらんけどな、今日のメインイベンツ、トライアングルゲート、俺たちのもんや。今日のメイン、覚悟はできてるか。」となぜか英語訛りの日本語でアピール。
しかしモッチーのマイクを無視したサイバーは清水にマイク攻撃。「オッサンに興味は無い。ビッグR、お前に興味がある。なんや、ドラゴンゲートでいちばんの力持ち名乗ってるみたいやけどな、俺を差し置いてよくも言えたもんやな。おい、今日のメインでたっぷり力の違いっちゅうもんを見せたろか。」と挑発。やはりメインに向けて何をしたらいいのか、よくわかっているというか、ここで売り出し中の清水と、キャラがかぶるサイバーが対角線にいることをアピールしておくあたりは、長年やってきた経験の積み重ねだろう。ただ、タイトルマッチをメインのフリに使ったのはちょっとどうかな?と思ったけど。内容も悪くなかったんでマイクで余韻を消された感じがした。
【第4試合】
戸澤陽&○しゃちほこBOYvsK—ness&×パンチ富永
(12分53秒 オリオン)
パンチ富永って今の位置が果たしてベストなのかなと思う。年末のタイトルマッチしかり、この試合しかり、彼こそ移籍が必要な気もするのだが、パートナーがなんでもそつなくこなしてしまうがゆえにどこにいってもなじんでしまうK-ness.というのがまた問題で、富永のよさを引き出すでもなし、かといって分裂するほどちぐはぐなものにもなっていないという、ちょっと「どうなんだろう?」という感じのタッグワークになっていた。まあYAMATOやサイバーあたりはこの辺の違和感を売りにできる力があるけど、それを富永クラスに求めるのも気の毒な気がするし。そこへいくと戸澤あたりは実にいい感じでやられていくので試合自体は非常に盛り上がった。富永が戸澤を踏みつけにすると、K-ness.は木槌を使って痛めつける。さらにダブルのニークラッシャーから富永は監獄固めと責め立てる。このあたりは戸澤のやられ役としては真骨頂のシーンだっただろう。もちろんそのあときっちりお返しをしていくのだが、そこが盛り上がるために必要な「タメ」だったのはいうまでもない。
だが、この日の主役はしゃちほこだった。普段は声をいじられて終わりのキャラが最後をとってなんとマイクでアピール!「勝ったぞ! 博多の皆さんの声援のおかげで勝つことができました。今日勝ったということは、俺にもやりたいことがある! おいMAD BLANKEY、お前ら、サイバー・コングとYAMATOがツインゲート持ってるよな。俺に挑戦させろ!
っていうことで、アキラくん、俺と2人でツインゲートに挑戦しよう!」となんとツインゲート挑戦をアピール。だが、「すいません、お断りさせていただきます」と戸澤はまさかの「ごめんなさい」!しかし「いまMONSTER EXPRESSとして危機的状況なんですよ。ユニット抗争にも入ることさえできない。本当にピンチです。この状況を打破するためにもMONSTER EXPRESSの元気印のこの俺がひとりでちょっとやりたいことやらせてもらっていいですか」というと、そこに富永がわって入って「ちょっと待て。お前ツインゲート挑戦表明したよな。いまさら戸澤が断ったところで取り下げることはできねえからな。この俺が責任を持ってサイバーとYAMATOくんに伝えとくからな。覚えとけよ」となぜか挑戦を既成事実化。というかこれどうやって締める気なんだろう?
【セミファイナル】スペシャル・タッグマッチ
B×Bハルク&×鷹木信悟vs○YAMATO&ドン・フジイ
(19分25秒 全知全能のフランケンシュタイナー)
ドラゲーの作り込まれたストーリーラインの中で異彩を放つのが鷹木とハルクの10年である。本当の感情とリアルな人生が織りなす物語は昨年末ひとつの形として昇華した。その余韻を経てのタッグ結成。
長く見ている人ほどこの二人が同じコーナーにたつというのは感慨深いものがあったことだろう。このスペシャルな空間というのはなかなか最近ではお目にかかれない。しかしそのいい雰囲気もYAMATO&フジイが奇襲攻撃を仕掛けて開始のゴングが打ち鳴らされたため、ぶち壊し。前にも書いたけど、違和感を全面に押し出していく芸風は、やはりこのクラスの選手ではないとできない芸当でもある。
まあそのおかげで、「いつ分裂するか」という危うさは、MAD BLANKEYにもっていかれてしまったわけだが、序盤は鷹木もハルクも同士うちが目立ち、観客をハラハラさせる。 ベビー人気としては今が頂点の鷹木には幟もあがり、女性ファンの大歓声があったけど、王者ハルクにはそこまでの声援はない。正直内心微妙だろうなあとは思っていたけど、そこをMAD BLANKEYは上手についてくる。フジイがハルクに凶器攻撃。流れを一気に掴むと、YAMATOも続いてフットスタンプを決める。
しかし中盤以降は鷹木の「オイ、オイ!」の叫びから、雄叫び串刺しパンピング。ハルクも続いて串刺し攻撃を見舞うなど、次第に連携が取れてくる。途中鷹木がYAMATOのスリーパーにつかまるものの、フジイのラリアット連発がYAMATOに誤爆し、そこからハルクがファーストフラッシュを決め、鷹木がMADE IN JAPAN。流れが一気に同期生タッグに傾きかけたが、YAMATOはフランケンシュタイナーで鷹木から逆転勝利。
「おい博多、見たか。元ベテラン軍のゾンビたちを加えた新生MAD BLANKEYの実力をハルク、そして鷹木信悟。お前らは俺が思うに、世界で10本の指に入るプロレスラーだ。
だがしかしお前ら犬猿の仲の2人は所詮急増タッグ。俺とフジイとは訳が違う。メインでは必ずトライアングルのベルトを取ってくれることだろう。この先もドラゴンゲートマットの中心はMAD BLANKEYだ!」と不敵にアピールするYAMATOはそう言い残すと悠々と去っていった。
一方負けた鷹木にはハルクが「貸しでも借りでもなんでもいいよ。もしお前に力が必要な時は今度は俺が力を貸すよ。ここまで来たら俺も逃げも隠れもしない。何かあったらいつでも言ってくれ。今回はタッグ組んでくれてありがとう。それからこの犬猿の仲の俺と鷹木をつないでくれた同期の戸澤くん、ありがとう」とアピール。
ということで、正式にタッグチームということでもなく、組む機会があったら組むよというまあ当たり障りない所に落ち着いたけど、正直この2人のタッグは、ドラゲーの中では「聖域」にしてほしいと思っているので、むやみやたらと引っ張りださないで欲しいし、やはり機会があったら闘っても欲しい。鷹木とハルクの2人しかわからない部分も含めて、リアルな人間関係が反映された数少ないケースなんでそこは大事にしてほしいのだ。
ところで、結局戸澤がいっていた「やりたいこと」は明らかにならなかったのだが、このタッグを実現させた今後何か考えていることがあるのだろうか?いずれ明らかになるのかもしれないが、できたら予告程度でもみせておいてほしかった。
<【メインイベント】オープン・ザ・トライアングルゲート選手権試合
《王者組》望月成晃&ドラゴン・キッド&○ビッグR清水vs《挑戦者組》サイバー・コング&CIMA&×Gamma
(23分23秒 砲丸投げスラム)
昨年末のタイトル戦で死闘を演じた鷹木とハルクのタッグをセミに押しやってメインにきたタイトル戦。今年のドラゲーは清水にかけているという意思表示でもあろう。マイクで煽ったサイバーと清水のぶつかり合いは迫力満点。タックル合戦では共に引かなかったが、数で上回った清水がダウンを奪うあたりにも、期待をかけられた清水自身の気持ちが、勝った瞬間が垣間見えた。やはりいろもので終わらせるには惜しい人材だったのだなあとつくづく思う。まあ、YAMATOにしろ清水にしろ元ネタをNXTから引っ張り過ぎだとは思うけど、本人たちがものにしていれば問題はない。
途中、数にものをいわせるMAD BLANKEYが攻勢に転じて、サイバーも息を吹き返し、パワー対決では一歩も引かない構えを見せる。悪役殺法に絡めて真っ向勝負でも打ち負けないところを見せ付けられたので、まだまだ主役を譲る気はないようだ。こうしてみるとベテランがサポートをしてくれるDia. HEARTSにいる清水は運にも恵まれていると思う。ミレ二アルズのT-Hawkあたりもいい素材なのだが、たぶん清水とは差がついてくる可能性は大だろう。まあユニットの成り立ちを考えるとミレ二アルズにベテランを混ぜるわけにもいかないんだろうけど、逆にいうと今のところサイバーやYAMATOをサポートしている大阪06ら、もとベテラン軍の「ゾンビ」たちが有効に機能しているうちは、MAD BLANKEYも安泰といっていいのかもしれない。まあでもミレ二アルズに必要なのは経験値なんでほかにお客の目が移っている間にレベルアップもしておいてほしい。そうすると来る将来、サイバーと清水とT-Hawkというタイプの違うパワーファイター対決がドラゲーの新しい売りになるだろう。
試合はMAD BLANKEY が押し気味に試合をすすめ、望月やキッドが抵抗する図式になっていったが、このあたりラストを清水に託す信頼感というのが、「ビッグ・R」の存在感を押し上げている要因のひとつにもなっている木がした。ラスト、リングに残ったGammaはガンマスペシャルを狙うが、清水はこれを回避し、ラリアットの打ち合いから首根っこをつかんで、一気に砲丸投げスラムを決め、勝利を飾った。格からいったら清水がGammaに勝つというのはちょっとありえないんだろうけど、それを前に押し出してでも新しいものを提供しようというドラゲーの意気込みは買いたい。
最後のマイクでくたびれた感が漂う中、やはりその輪の中心に清水がいるという図式は新鮮ではある。まだビッグ・Rという名前がしっくりきてないのか、ところどころ噛んだりしていたけど、砲丸投げスラムは説得力のある技だし、ぜひパワーを全面に出してドラゲーの新しい風景を作って言って欲しい。
後記
隙間があるとはいってもフルスペース使って満員にできるドラゲーはやはりすごいし、ところどころおかしなところがあっても勢いで乗り切れるものをもっている強みはやっぱり大切だなあと思う。一方で全員が全員、転向してもうまくいってないところもあったりして、必ずしも盤石とは言い難いのだが、そこらへんがもう少しうまく転がっていくと、さらにドラゲーは面白くなるだろうなとは思う。まあでもやっぱ二カ月に一回見に行くのは正直しんどいし、小倉・博多を含めて全部観に行ったら、今のままだとたぶん飽きがくるとは思う。そこらへんをどう解決していくかが、今後の課題になってくるだろう。一時期なかなか新人が伸びなかった中、やっと待望の若きスターが生まれ始めているので、今年はドラゲーとしても大きな勝負の年になるような気がしてならない。そういう意味では新日に続くメジャー団体の一つとして期待をこめてみてみようとは思っている。