[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 AKIRAのテーマ
大友克洋、アニメとの邂逅
今回は1988年公開の映画「AKIRA」のテーマでもある、芸能山城組の「AKIRAのテーマ」をご紹介します。この映画から大友克洋監督は作品発表の軸足をマンガからアニメへと本格的に移していくのですが、大友さんが「AKIRA」以前に手がけたアニメといえば、「幻魔大戦」が有名(キャラクターデザイン担当)ですね。幻魔大戦への参加を機に自作をアニメ化する流れになっていきました。
正直、見ていた当時の我々としては「幻魔大戦」以外に判断材料がないため、AKIRAのアニメという報を受けて「音楽ってどうなるんだろう?想像もつかないな」というのがありました。
幻魔大戦と同じキース・エマーソン&青木望コンビのような音しか想像がつかなかったのです。しいてヒントはあるとしたら、原作版AKIRAにつけられていたサイバーパンクという単語から、「きっとこれはゴリゴリのパンクが音楽としてつくに違いない」という勝手な想像もしていました(ちなみにサイバーパンクというのは、人体や意識を機械的ないし生物工学的に拡張し、それらのギミックが普遍化した世界・社会において個人や集団がより大規模な構造(ネットワーク)に接続ないし取り込まれた状況(または取り込まれてゆく過程)などの描写を主題のひとつの軸とした作品群のことを指します)。
ところが、いざ予告でみたらあの「芸能山城組」の音楽が聞こえてきたわけです。今でこそ「AKIRA」に「芸能山城組」以外の音は想像もつきませんけれど、当初はまるでキツネにつままれたような気分でした。
サイバーパンクの金字塔
流れてきたのがまさかの「和」テイストでしたからね。あまりに意表をつきすぎて驚く以前に呆然としたことを覚えています。しかし、原作者自らが監督したものですし、いくらアニメ初挑戦とはいえ、クリエイターとしての能力がとても高い大友克洋の才能を、とりあえず信じてみるしかなかったのです。
果たしてその答えは吉とでました。今振り返ってみても「AKIRA」=「パンクロック」じゃないよなということだけは嫌というほどわかりますしね。音楽面ではまさに完敗とおいうほかはありませんでした。
とはいえ、負け惜しみをいうわけではないですが、私はアニメのAKIRAより原作のAKIRAが好きなんで、事実上原作の途中で終わってしまったアニメ版を完全に傑作であるとはどうしてもいいたくないのです。確かにあの時代にアナログであそこまでの絵を作り出したことに対しては大いに敬意を表しますし、芸能山城組の音楽も実に素晴らしいものです。
色んな意味で驚愕させられたAKIRAですけど、あの時代に生まれたサイバーパンク物の中では傑出した作品であり、あれを超える作品にもいまだ出会っていません。それはアニメ版・原作版ともに共通していえることですね。
それだけにアニメに熱を上げている大友克洋さんがもう一度マンガに戻ってくれないものかと願ったりもしているのですが、これだけ年月を経てしまうとさすがにもう無理でしょうね。