回転!揺りイス固め.NEO

アニメ好きが高じて色んな感想を書いている老害オタクのブログ

*

[コラム] 世間に物申したい!老害ヲタクの独り言コラム・ 二次元と親和性の高い「必殺!」vol.4

市原悦子さんの偉業

最近、どうも昔話がしたくなって仕方ない時があります。しかも無性にそういう思いに駆られるんですね。年取った証拠かもしれないですし、独り身の寂しさが身に染みているせいかもしれません。

2019年1月12日に俳優の市原悦子さんがお亡くなりになられました。市原さんといえば「まんが日本昔話」があまりに有名ですが、アニメ界ではもう一つ大きな偉業を成し遂げた方でもあります。

市原さんは、2018年4月にお亡くなりになられた高畑勲監督の映画監督デビュー作である「太陽の王子ホルスの大冒険」で、ヒロインのヒルダを演じられています。この「太陽の王子ホルスの大冒険」には、宮崎駿監督をはじめ、のちのアニメ界で名作を送り出す、錚々たるメンバーが参加しています。

尋常ならざる執念

公開されたのは1968年7月。市原悦子さんは当時30歳。アフレコは20代の時に行われているはずですから、ヒロイン役はむしろ当たり前のように出来たわけです。

このヒルダについては、残された膨大な資料を見ていくと、ヒロインを女性としてみている宮崎駿さんが、若き日に尋常ならざる執念を持って、描き出していることがわかります。のちに未来少年コナンや、ルパン三世カリオストロの城などで、ヒロイン描写に執着した仕事ぶりの一端が伺えます。

先程も申しました通り、太陽の王子ホルスの大冒険は、1968年公開の映画です。当然、60年代後半に「萌え」などという概念すらありません。そんな中、従来のヒロイン像を覆すかのようなヒルダの登場は、それはそれは鮮烈だったはずです。

太陽の王子ホルスの大冒険は、動画枚数48255枚、製作期間約2年を経た超大作ですが、高畑監督にありがちな制作段階での予算超過、納期超過をデビュー作でやらかし、なおかつ興行収入も芳しいものではなかったと言われています(これには諸説あります)。

ヒルダの魅力

しかしながら、作品の再評価に繋がったのは、やはりヒロイン・ヒルダの魅力でした。「スケバン刑事」などで知られる漫画家の故・和田慎二さんは、熱狂的「ヒルダニスト」として知られ、自作にもたびたびヒルダをモチーフにしたキャラクターを登場させています。Wikipediaによると…

ヒロインのヒルダに従来のアニメ作品にはなかった描き方をしたことで、本作は公開終了後も上映会が開かれるようになった。アニメーション愛好者サークル「東京アニメーション同好会」(アニドウ)を主宰するなみきたかしは、「公開時に観た僕の世代は、みなヒルダにイカレてしまった。それは可愛いとか萌えとかいうものとは断じて違う。二次元の作られたものではなく、考え行動する、そして主張を持った一人の人間を感じて、忘れられない実在の人物となったものなのだ。」と述べている。

とあります。このようにヒルダがアニメファンに与えた衝撃はそれは絶大なものがあり、その一端として市原悦子さんの声と演技力があったのは間違いないと私は思っています。

うらごろしのおばさん

私はアニメファンとしてだけでなく、時代劇の必殺シリーズのファンとしても、市原悦子さんの功績を語りたいのですが、市原さんの演技力に関しては今更私ごときがどうのこうの言う問題ではないか、とは思います。

しかし、市原悦子さんが出演された、必殺シリーズ第14作にあたる「翔べ!必殺うらごろし」は、数ある必殺シリーズの中でも超異色作として知られています。

その中で市原さんは、記憶喪失の元殺し屋で、生き別れの子供を捜す「おばさん」を演じていますが、この「おばさん」の凄みが「翔べ!必殺うらごろし」をより異色にした要因ではないか、と私は思っています。

何より特徴的なのは、裏稼業のほとんどが夜中に行われ、ライティングによる様式美にもなっている必殺シリーズの中で、「翔べ!必殺うらごろし」は、行者である「先生」が日の出の際に死者の声を聞くこともあり、裏稼業が日中に行われていることです。

そもそも、仕事人ら裏稼業の人間が依頼者からお金を受け取るのは、自分たちには正義がなく、お金を貰う事で自身の行為を正当化させているにほかなりません。つまり仕事人稼業は、決して正義の味方ではないわけです。

自らの正義感に基づいて

対してうらごろしのメンバーは、先生が聞く「死者の声」が「依頼人」であり、基本的にお金は貰えていません。よって自身の行為にそれぞれ思うところがありながら、基本死者の復讐代行を自らの正義感に基づいて行動しています。それが白昼堂々と殺しにいたる裏稼業という表現につながっています。

翔べ!必殺うらごろしでは、他のメンバーが黙々と殺しを行うのに対して、おばさんは比較的口数が多いのも特徴です。このおばさんの魂の叫びが、市原悦子さんの名演によって、観ている私の心に深く刺さるわけです。

考えてみれば、アニメや特撮で夜間に闘うヒーローは少数派でもあります。身もふたもない言い方をするならば、正義であろうが悪であろうが、戦闘は暴力であり破壊行為でもあります。それが白昼堂々と行われているのは、その行為を正当化させる演出の一つとも言えるわけです。

実は世の中には正義も悪も存在しておらず、己の正義のために、それぞれの拳を振るいあっているにすぎません。正義は光、悪は闇というのは単なる思い込みにすぎないわけです。

 

悪魔の囁き

太陽の王子ホルスの大冒険の話に戻すと、主人公ホルスが迷いの森を彷徨う際に、幻覚のヒルダがホルスに囁きかける場面があります。この時のヒルダはいわゆる「悪魔の囁き」をホルスに投げかけてくる存在なんですが、単なる美少女キャラでは到底表現できない深みがあります。

もちろん作画の説得力は言うに及びませんが、この場面での市原悦子さんの演技は鬼気迫るものがあります。まんが日本むかし話の頃ならいざ知らず、これを20代で表現していた市原さんの演技力は、おそるべきものがあります。

まんが日本むかし話で聞く市原さんの声はどこまでも優しく、全てを包み込むような包容力を感じますが、実は人間の怖い部分もきちんと表現できる確かな実力に裏打ちされたものであることは、今更いうまでもないでしょう。

迷いの森のヒルダしかり、翔べ!必殺うらごろしのおばさんしかり。市原悦子さんの代表作としては取り上げられる事はあまりないかもしれませんが、この二役における市原悦子さんの表現力の物凄さに関しては、自分としてはどうしても形にして残しておきたかったのです。

改めまして、市原悦子さんのご冥福をお祈りいたします。





にほんブログ村 アニメブログへ

au公式/ビデオパス

-[コラム] 世間に物申したい!老害ヲタクの独り言コラム, アニメ好きが高じて色んな感想を書いている老害オタクブログ, 二次元と親和性の高い「必殺!」